今シーズンのカレッジフットボールもいよいよ第4コーナーに差し掛かってくる頃です。カレッジフットボールプレーオフレースおよび各チームが所属するカンファレンスタイトルレースが加熱する中、それらを狙える位置にチームたちにとっては1敗も許されない状況になってきています。そんな第11週目の見どころを見ていきたいと思います。
クレムソン大(2位)@ ボストンカレッジ(17位)
現在2位のクレムソン大はここまでほぼ全対戦チームに圧倒的な強さを持って白星を重ね続けています。そしてその次なる餌食となりそうなのが17位のボストンカレッジです。
クレムソン大は2010年にボストンカレッジに敗れて以来ここまで同一カード7連勝中。特に2015年にクレムソン大がプレーオフに進出しだした頃からは勝負にならないほどの力の差が開いていますが、今年はボストンカレッジは7勝2敗で全米17位と彼らにとっては非常に好位置に付けています。しかしそれがクレムソン大を倒すのに十分かと言えば・・・。
クレムソン大QBトレヴァー・ローレンス(Trevor Lawrence)はケリー・ブライアント(Kelly Bryant)から先発の座を奪って以来、平均得点47.8点というハイパワーオフェンスの中軸を担ってきました。特にここ最近4試合では9つのTDに加えたった1つのINT、65.5%のパス成功率と1年生とは思えない類稀なる才能を披露してきました。そして彼にはRBトラヴィス・エティエン(Travis Etienne)という頼れるバディが存在します。同じ最近4試合でエティエンは7つのTDを奪う活躍をし、前試合のルイビル大戦では驚きの1キャリー平均19.1ヤードという数字を残しています。
しかしもっと凄いのは彼らのディフェンス陣。失点数で全米4位となる平均13.3失点という数字を持つ強力ディフェンスはシーズンを追うごとにその精度を上げ、10月だけで見れば平均失点数約9点という、まさに鉄壁の強さを持っているのです。
このディフェンスに対抗しなければならないボストンカレッジはスコアリングオフェンスで全米41位とそこそこと言った程度。しかしもっと深く見ていくと強豪チームと戦ったときのオフェンス力は極端に下がっており、勝つには勝っても相手を圧倒するほどの力を持ち合わせていません。
ボストンカレッジ唯一の希望はラッシュヤードで全米20位(897ヤード、8TD)のRB A.J.ディロン(A.J. Dillon)ですが、その彼はバージニア工科大戦で足首を痛め、このクレムソン大戦に出場できるかどうかまだ分かっていません。ただでさえクレムソン大のランディフェンスは全米6位というほどの厳しい相手だというのに、ディロンが出場できない、ないしは万全でないとなると、いかにボストンカレッジのホームでプライムタイムのゲームであったとしても、今からファイナルスコアを考えるのが末恐ろしいです・・・。
ミシシッピ州立大(16位)@ アラバマ大(1位)
全米1位で全勝中のアラバマ大が全米16位のミシシッピ州立大をホームに迎えます。先週当時3位のルイジアナ州立大をアウェーでながら29対0と一蹴。このルイジアナ州立大戦以前までアラバマ大が対戦したランカーは第4週目のテキサスA&M大(当時22位)のみでした。ですからアラバマ大にとってはこのルイジアナ州立大との戦いは全米中に彼らの確固たる強さを見せつけるにはうってつけのマッチアップだったのです。
ミシシッピ州立大は今季ランキングへの出入りが激しく、ランクを上げれば敗戦してランク外へ転落するということを繰り返していますが、最新のCFPランキングで16位にまで浮上してきました。そして今回2007年以来のアラバマ大戦勝利を目指して敵地に乗り込みます。ミシシッピ州立大はSEC内でもトップクラスのラインプレーを持っていますが、QBニック・フィッツジェラルド(Nick Fitzgerald)のパフォーマンスにムレがあり、安定したオフェンス力を披露できていません。
彼らの魅力は全米2位となる失点数(1試合平均12.3失点)を誇るディフェンス陣です。ランディフェンスで18位(1試合平均111.4ヤード)、パスディフェンスで7位(167.2ヤード)と数字の上ではかなりのエリート守備陣です。彼らがアラバマ大のダイナミックなオフェンスをどれだけ抑えられるか・・・。かなりハードルの高いタスクですが。
すでにSEC西地区を制しているアラバマ大はこのまま勝ち続けて第1シードでプレーオフに進出したいところ。それを阻むチームは現在のところSEC優勝決定戦で対戦が決まっているジョージア大くらいなものでしょう。ニック・セイバン(Nick Saban)監督が選手たちに油断などという気持ちを植え付けさせることはまず無いでしょうから、このミシシッピ州立大戦を経て10勝目を挙げている姿は容易に想像できます。
フロリダ州立大 @ ノートルダム大(3位)
全米3位のノートルダム大は上記のアラバマ大、クレムソン大と並びいまだ無敗のチームです。この勢いを引っさげて今週末フロリダ州立大をホームに誘います。
今季のノートルダム大はここ最近のどのシーズンよりもプレーオフ進出の可能性を大いに秘めているチームです。この快進撃を支えるのがQBイアン・ブック(Ian Book)です。第4試合目にブランドン・ウィンブッシュ(Brandon Wimbush)から先発の座をもぎ取って以来ここまで6勝無敗の好記録を残しています。ウィンブッシュが先発を務めた3試合の得失点差が約6点だったのに対し、ブック指揮下のオフェンスになってから約18点にまで増えました。ギリギリ勝つ展開から余裕の展開で勝てるチームに生まれ変わったのも、ブックのパサーとして、そして勝負師としての才能があってのことでしょう。
が、そんなオフェンスの要であるブックがこのフロリダ州立大でなんと怪我のために不出場となることが明らかになっています。自ずとウィンブッシュが代役として今季10勝目を狙うわけですが、ウィンブッシュはブックと違い機動系QBであるため、プレーコーリングをアジャストしなければならないこと、そして何よりウィンブッシュ自身が過去6試合試合に出場していないせいで試合感が鈍ってしまっていないか、というこが懸念されます。
それに対するフロリダ州立大ですが、ブックの不在をチャンスに変えたいところですが、彼らの最大の弱点はディフェンシブバックフィールドの貧弱さです。パスディフェンスはなんと全米120位というお粗末さ。これならばパスが苦手なウィンブッシュでも何とか攻略できそうです。ただフロリダ州立大のランディフェンスは全米17位となる1試合平均約111ヤードですので、ウィンブッシュ並びにRBデクスター・ウィリアムス(Dexter Williams)のランアタックを止めることは出来るかもしれません。
現在4勝5敗のフロリダ州立大はここ何年も経験していないボウルゲーム出場権を逃すという可能性が非常に高くなってきました。残り3試合のうち2勝しなければそれが現実のものとなるわけですが、今週末のノートルダム大、来週のボストンカレッジ、そして最終戦のフロリダ大とどれも今の彼らにしては強敵ばかり。今年初年度となるウィリー・タガート(Willie Taggart)監督は正念場を迎えています。
アーバン大(24位)@ ジョージア大(5位)
先週ケンタッキー大に勝利したジョージア大はすでにSEC東地区優勝を決めており、リーグ決勝戦で昨年のナショナルタイトルゲームの再現となるアラバマ大との試合が決定しました。もちろんフットボールファンの注目は自ずとそのゲームに向くことになりますが、ジョージア大にはアラバマ大との再戦の前にまだやらなければならないことが残っています。何と言ってもすでに1敗しているため、いかにSECチャンプになる可能性があると言ってももしそこに至るまでに2敗目を喫してしまったらプレーオフ進出という夢は途絶えてしまうからです。そして今週末の刺客となるのが24位にランクされたアーバン大です。
7試合目にルイジアナ州立大に敗れたジョージア大でしたが、その敗戦で目が覚めたのかフロリダ大とケンタッキー大のランカーとの試合で相手に付け入る隙きを与えずに快勝。特に先週のケンタッキー大は全米8位となるスコアリングディフェンス(平均15.8失点)を誇るディフェンスを擁したのにも関わらず、ジョージア大はその彼らから34点をもぎ取ったのです。それはQBジェイク・フローム(Jake Fromm)の安定したパフォーマンスにRBデアンドレ・スウィフト(D’Andre Swift)とイライジャ・ホリフィールド(Elijah Holyfield)というツインタワーを誇り、それは昨年まで活躍したニック・チャブ(Nick Chubb、現クリーブランドブラウンズ)とソニー・ミシェル(Sony Michel、現ニューイングランドペイトリオッツ)のコンビを髣髴とさせるものです。因みにホリフィールドは名前からも想像できるようにあのボクサーのイヴェンダー・ホリフィールド(Evander Holyfield)の実の息子であります。
アーバン大はちょうど去年の同じ頃当時1位だったジョージア大を破る大金星を挙げました。今年もその再現を・・・と企んでいることでしょうが、今年はそう簡単には行きそうもありません。というのもアーバン大は先週テキサスA&M大を番狂わせの末に倒してランキングに上場してきたとはいえ、今年は明らかにパワーダウンの年。QBジャレット・スティッドハム(Jarrett Stidham)は期待を裏切る不調続きですし、彼らの強みであったランアタックは昨年のRBケリオン・ジョンソン(Kerryon Johnson、現デトロイトライオンズ)が抜けた穴を今の今まで埋めることが出来ずにいるからです。
「深南部最古のライバリー(Deep South’s Oldest Rivalry)」という異名をもつこのライバル対決。1892年から始まったこの宿敵の関係は今のところジョージア大が58勝56敗8分けでわずかにリードしています。果たして今年はどちらに勝利の女神が微笑むでしょうか。
オクラホマ州立大 @ オクラホマ大(6位)
「ベッドラムシリーズ(Bedlam Series)」と呼ばれるこのライバリーも今年で113回目を迎えます。今年はオクラホマ大のホームゲームとなりますが、昨年はオクラホマ州立大が11位にランクされていたのに対し今年は5勝4敗でランク外となっています。
オクラホマ大の原動力となっているのはハイズマントロフィー候補QBカイラー・マレー(Kyler Murray)です。シーズン開始前に大リーグのオークランドアスレチックスとプロ契約を結んだマレーはこのまま行けば今年でアメフトキャリアに終止符を打つことになりますが、そうするには惜しすぎるほどの大活躍を見せ続けています。QBとしてのトータルの才能を表すQBレーティングでは同じくハイズマントロフィー候補であるアラバマ大のトゥア・タガヴァイロア(Tua Tagovailoa)を出し抜いて全米1位の数字を残しているほどです。
またそれだけでなくマレーは1度のパスで稼ぐヤードの平均数で全米1位(12.3ヤード)、パスTD数で全米2位(31TD)、パス成功率で全米6位(70.6%)と全米トップQBにふさわしい記録揃いです。そしてそんなQBに率いられるオフェンスもユニットとして全米トップクラス。オフェンシブヤードは全米2位、平均得点数は全米3位、パスヤードは全米12位とまさにアンストッパブルな攻撃力を誇っています。
ただし問題はディフェンス陣。オクラホマ大は今季ここまで失点数で全米74位、ランディフェンスが45位、パスディフェンスが90位、トータルディフェンスも60位と全米6位チームとは思えないほどの不甲斐ないディフェンス力に甘んじています。ただ、対するオクラホマ州立大も主なディフェンスカテゴリーにて過半数以下ということで、この両チームはノーガードの打ち合いになる可能性を秘めていると言えます。
オクラホマ州立大は5勝4敗と正直残念なシーズンを送っていますが、そんな中でも全米19位のパスオフェンス、トータルオフェンスでも10位としっかりと点を取れるチーム。このオフェンスがマレー率いるオクラホマ大オフェンスに追随できるかどうか・・・。
オハイオ州立大(10位)@ ミシガン州立大(18位)
全米10位のオハイオ州立大は8試合目に今季初となる黒星をパデュー大から喰らいました。バイウィークを経て気を取り直して臨んだネブラスカ大戦では何とか勝ったものの36対31というスコアからもわかるように2勝6敗のネブラスカ大を突き放せなかったことは不安材料として残ってしまいました。そんなオハイオ州立大が18位のミシガン州立大へ乗り込みます。
ミシガン州立大は現在パデュー大とメリーランド大から2試合連続白星を重ねシーズン終盤を迎えるにあたりいい流れに乗っています。数字的にはBig Ten東地区の優勝への可能性をわずかながら残しているミシガン州立大はなんとしてもこのオハイオ州立大に苦虫を噛ませたいところ。そんなチームのオフェンスはQBブライアン・レウワーキ(Brian Lewerke)が肩の怪我のためパフォーマンスの低下が顕著。パスオフェンスは全米66位と厳しいシーズンが続いていますが、それよりもさらに悪いのがランオフェンス(111位)。トータルオフェンスも107位というところで、相手を脅かすほどの力を持っているとはいえません。
しかしそんな中ミシガン州立大のランディフェンスだけは輝いています。というのも1試合平均71ヤードしか相手に許しておらず、これは全米1位となる数字です。失点数も全米16位となる平均約19失点ということで、相手オフェンスにとってはちょっとした脅威です。パスディフェンスは98位ですが・・・。
オハイオ州立大QBドウェイン・ハスキンズ(Dwayne Haskins)はここまで3000超えのパスヤード、32TD、6INT、69%のパス成功率ということでパスオフェンスで全米3位となる攻撃陣を牽引しています。ミシガン州立大のランディフェンスが全米随一の力を保持し、彼らのパスディフェンスが貧弱であることを考えればオハイオ州立大はその弱みを彼らの強みを最大限に活かして攻略していくことでしょう。ミシガン州立大としてはディフェンスのフロントセブンがハスキンズにどれだけのプレッシャーを賭けられるかが重要になるのではないでしょうか。ここまで全米14位となる12個のパスINTを記録している彼らにとって、ハスキンズのミスを誘うことは最重要課題です。
ノースウエスタン大 @ アイオワ大(21位)
混戦が続くBig Ten西地区において念願の地区制覇を狙うノースウエスタン大はその高みにたどり着くまで後もう少しという所まで来ています。そんな彼らに今週末立ち向かうのが21位のアイオワ大です。現在ノースウエスタン大は地区レースでウィスコンシン大とパデュー大に1ゲーム差を付け首位を走っていますが、直接対決でそれぞれに競り勝っているノースウエスタン大は地区制覇に向け有利な位置に付けています。そしてこのアイオワ大から勝利を奪うことが出来れば部史上初となるカンファレンス優勝決定戦出場が現実のものとなります。
アイオワ大は現在カンファレンスレコードで3勝3敗と大きく遅れを取っていますが、計算上はまだ地区制覇の可能性を残しています。それには残りの試合をすべて勝ち、ノースウエスタン大が3連敗するような奇跡が起きる必要がありますが・・・。それでもこの試合がホームゲームであることもアイオワ大を後押しする要素となるでしょう。今季アイオワ大のホームでの戦績が4勝1敗であることからもわかるようにアイオワ大でのホームフィールドアドバンテージは大きいのです。ただノースウエスタン大は今季アウェーゲームでパーフェクトレコード(3勝無敗)を誇るチームでもあります・・・。
悲願の地区優勝が目前となたノースウエスタン大とホームで強さを見せる全米21位のアイオワ大。どちらに転んでもおかしくないゲームではありますが、ミシガン州立大とウィスコンシン大というランカー(当時)チームから勝利を奪ったノースウエスタン大の底力を見過ごすことは出来ません。