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SECプレビュー【2020年度シーズン】

SECプレビュー【2020年度シーズン】

カレッジフットボール界において数々の強豪チームを世に解き放ち続けてきたのがアメリカは主に南部に主戦場を構えるサウスイースタンカンファレンス(SEC)です。

過去15年間のナショナルチャンピオンを振り返ると実にその内10チームがSEC所属チーム。昨年度もルイジアナ州立大が近年稀に見る圧倒的強さを見せつけて全米タイトルを手中に入れました。

今年はコロナウイルスの影響を受けて開幕が危ぶまれるも、シーズン続行を目指したカンファレンスの中では最も遅い9月26日開幕を決めていました。そして遂に今週末彼らのシーズンが幕を開けることになるのです。

今年のSECは例年通りの強豪校に加え、新監督を迎えて今シーズン挑戦するチームが数チームあり、またその監督の面々を見ただけでもドラマが起きる匂いがプンプンします。そんな実力・話題性バツグンのSECの今季の見どころをお届けします。

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ベースボール・マガジン社 (編集)

ストーリーライン

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LSUの連覇なるか?

昨年度史上稀に見る圧倒的強さでカレッジフットボール界を駆け抜けたルイジアナ州立大(LSU)。SECタイトル獲得は当然のこと彼らは完全無敗で全米王者に輝きました。彼らが今年連覇を果たすことが出来るのか?

SECで連覇と言えば最近ならばアラバマ大が2014年から2016年まで3連覇を果たしています。ルイジアナ州立大が前回SEC覇者となったのは2011年度ですが、彼らのその翌年はアラバマ大に競り負けて西地区タイトルをのがしています。

果たしてルイジアナ州立大が再び歴史を作ることが出来るのか?

アラバマ大の復権なるか?

ニック・セイバン(Nick Saban)監督がやって来て以来アラバマ大は過去12年間にレギュラーシーズンで2敗したシーズンは2回しかありません。1つは2010年度でもう1つは昨年の2019年度で上に挙げたルイジアナ州立大とアーバン大に敗れ、その結果彼らのカレッジフットボールプレーオフ(CFP)連続出場記録が5回で途切れてしまいました。

それまで彼らの強さが抜きん出ていたのは事実ですが、一方で彼らに課せられた高いハードルを越えられないと「いよいよアラバマ大の時代にも陰りが見えてきたか」などと囁かれ始めるのが常勝チームの宿命。果たして彼らは再びSECの頂点に今年立つことが出来るでしょうか?

テネシー大の復活?

かつて筆者がカレッジフットボールにハマりだした頃、テネシー大は毎年ランキングで上位に食い込む強豪チームでした。当時シーズン序盤の3週目に行われるのが通例となっていたテネシー大とフロリダ大のビッグマッチアップに興奮していたのを今でもよく覚えています。

そんなテネシー大ですがここ何年も全米の表舞台に姿を表していません。私が見始めていた頃のテネシー大は現同大学体育局長であるフィリップ・フルマー(Phillip Fulmer)氏が監督を務めていましたが、2008年シーズ後に彼が去って以来チームは迷走を続け未だに目立った結果を残していません。

そんな彼らが今年はプレシーズンランキングで久しぶりにランクイン(25位)。最新のランキングでは試合がないのに(笑)16位にまで上昇してきています。元アラバマ大DCジェレミー・プルイット(Jeremy Pruitt)監督3季目となる今年、昨年3年ぶりに勝ち越すことに成功したテネシー大がSEC東地区タイトル争いに絡んでくることが出来るでしょうか?

ミシシッピ州が熱い!

アメリカには多くのカレッジフットボールチームがりますが、その数だけヘッドコーチが存在することになります。その中には大変なカリスマ性を持つ人物から話題に事欠かない人物まで多岐にわたりますが、この度ミシシッピ州内にある2つのSECチームにやって来た新コーチはどちらもその2つの素質を持つ大変興味深い人物たちです。

まずミシシッピ大の新コーチに就任したのは元フロリダアトランティック大レーン・キフィン(Lane Kiffin)氏。彼は2007年に若干31歳でオークランド(現ラスベガス)レイダースのHCに抜擢されますが、ここでは当時のオーナーであるアル・デーヴィス(Al Davis)氏と反りが合わず2年目のシーズン中に解雇されてしまいます。その後テネシー大サザンカリフォルニア大を渡り歩きますが、2013年から2017年までアラバマ大でニック・セイバン監督の下でOCとして活躍。2015年度のタイトル取りに大いに貢献しました。

ただ行く先々で様々なゴシップ事が絶えなかったキフィン氏はアラバマ大でもセイバン監督とは微妙な関係だったようで、今回彼がアラバマ大と同じ西地区に所属するミシシッピ大監督に就任したのはなにか因縁めいたものを感じずに入られません。

そしてミシシッピ州立大にやって来たのは元ワシントン州立大マイク・リーチ(Mike Leach)監督。彼はオフェンスの天才として知られ、超パス重視の「エアーレイド」オフェンスをモットーとする監督。かつて指揮したテキサス工科大、そして前職のワシントン州立大では数々のパスオフェンス記録を樹立するQBを育て上げました。

リーチ監督が有名なのはフィールド上だけではありません。歯に衣着せぬ発言で有名な彼はときにフットボールとは全く関係ない哲学的な会見を開いて記者団を煙に巻くなど掴みどころのない人物。時にその発言が行き過ぎて炎上することもありますが、ここまでくればそれは「リーチ節」としてカレッジフットボール界になくてはならない風物となりました。

そんな二人がSECに殴り込んでくるわけですから特に彼らが属する西地区は見どころ満載と言えます。そして言うまでもなく彼らが直接対決するライバリーゲーム、通称「エッグボウル」は見逃せない試合となるでしょう。

カンファレンス戦のみのスケジュール

SECの今季試合予定はカンファレンス戦のみのトータル10試合となっています。SECチームは例年弱小チームと対戦して出来レースを展開させる傾向にありましたが、今年は全ての対戦相手がSECチームということで強豪がひしめくこのカンファレンスのスケジュールは毎週見どころ満載です。


注目のチーム

アラバマ大

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昨年はルイジアナ州立大に覇権を譲りましたが、今年は総合的に見てアラバマ大がSECで一歩抜きん出ている感じです。確かに昨年のメンバーからはQBトゥア・タガヴァイロア(Tua Tagovailoa、現マイアミドルフィンズ)やWRジェリー・ジュディ(Jerry Jeudy、現デンバーブロンコス)といったトップレベルの選手が抜けましたが、ランゲーム、パスゲーム、攻守におけるラインプレーとどれをとってもSECでトップレベル。またディラン・モーゼス(Dylan Moses)とジョシュア・マクミロン(Joshua McMillon)が今年も戻ってくるということでLB陣も万全です。

タガヴァイロアの後継者となる新QB(マック・ジョーンズ)、LSUとのアウェーゲーム、そして東地区の雄ジョージア大との対戦を控えており、決して立ちはだかる壁がないわけではありませんが、現時点で彼らをSECタイトル最有力候補に推すのは至極自然なことと言えそうです。

ジョージア大

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過去3年間SEC東地区を連覇しているジョージア大の目標は当然この地区を制してSECタイトルゲームに勝利し、3年ぶりのCFP進出を果たすことです。今季で5シーズン目を迎えるカービー・スマート(Kirby Smart)監督にとってその高い期待度は常勝チームを率いる上で避けられない目標です。

東地区4連覇も堅いと言われていたプレシーズンでしたが、当サイトでもご紹介したように開幕を目前にして今季先発QBとしてプレーすると思われていたジェイミー・ニューマン(Jamie Newman)がコロナウイルスの影響を危惧して今季オプトアウト(出場見送り)。チームにはサザンカリフォルニア大からの転校生であるJ.T.ダニエルズ(J.T. Daniels)がおり今季からの出場が可能ですが、昨年膝に負った怪我の調子が未知数ですのでニューマンの離脱は大打撃と言えそうです。

もっとも彼らの屋台骨であるディフェンス陣は健在ですので、新QBに合わせていかにオフェンスを再構築できるかで彼らのシーズンは如何様にもなりそうです。新OCトッド・モンケン(Todd Monken)氏のお手並み拝見です。

ルイジアナ州立大

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前年度王者のルイジアナ州立大の強さは近年まれに見るものでしたが、ハイズマントロフィー受賞QBジョー・バロウ(Joe Burrow、現シンシナティベンガルズ)、LBケイラヴォン・チェイソン(K’Lavon Chaisson、現ジャクソンビルジャガーズ)、WRジャスティン・ジェファーソン(Justin Jefferson、現ミネソタヴァイキングス)、LBパトリック・クィーン(Patrick Queen、現ボルチモアレイヴンズ)、RBクライド・エドワーズ・へレイヤー(Clyde Edwards-Helaire、現カンザスシティチーフス)ら1巡目選手を含め全部で実に14人もの主力選手がチームを去ってしまいました。

また昨年バロウの真価を引き出したとされるパスゲームコーディネーターだったジョー・ブレディ(Joe Brady)氏は今年からカロライナパンサーズのOCに就任すれば、DCのデイブ・アランダ(Dave Aranda)氏がベイラー大の新監督に就任するためにチームを離脱。さらにはダメ押しとして今季全米ナンバーワンWRの呼び声が高かったジャマー・チェイス(J’Marr Chase)がオプトアウト。チームは大幅なオーバーホールを余儀なくされます。エド・オルジェロン(Ed Orgeron)監督の腕の見せ所です。

フロリダ大

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SEC東地区所属のフロリダ大は同じ地区所属のジョージア大と雌雄を分け合う間柄です。2008年以来直接対決でお互いが3連勝を繰り返すパターンでここまできましたが、その流れで行くと今年はフロリダ大がジョージア大を倒すことになりますが・・・。

オフェンスの鬼才、ダン・マレン(Dan Mullen)監督は今季でフロリダ大3シーズン目となりますが、1年目は10勝3敗、2年目は11勝2敗と確実に結果を残してきています。今年は元5つ星リクルートだったRBロレンゾ・リンガード(Lorenzo Lingard、元マイアミ大)、WRジャスティン・ショーター(Justin Shorter、元ペンシルバニア州立大)、LBブレントン・コックス(Brenton Cox、元ジョージア大)という超逸材転校生を迎え入れロースターの厚みは十分です。

果たして彼らが4年ぶりに東地区制することができるのか、そして2008年以来のSEC制覇を成し遂げることができるのか・・・(ちなみに2008年にはフロリダ大が全米チャンピオンに輝いています)。

アーバン大

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先程ルイジアナ州立大で多くのタレントが流出したことを紹介しましたが、同じSEC西地区所属のアーバン大も彼らほどとはいかないとはいえかなりの主力選手が抜けてしまいました。

一番影響を受けると思われるのはオフェンシブライン。ここが手薄になるところに昨年のリーディングラッシャーであるRBジャタヴィウス・ウィットロー(JaTarvious Whitlow)が転校してしまう(FCSのウエスタンイリノイ大へ)というダブルパンチ。

QBには若きリーダーのボ・ニックス(Bo Nix)が健在とは言え、彼一人で猛者揃いのSECを勝ち抜けるとは思えません。昨年は憎きライバル・アラバマ大に土を付けることに成功しましたが・・・。

テキサスA&M大

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ルイジアナ州立大およびアーバン大が人員補充にあえいでいる中、同じ西地区所属のテキサスA&M大は昨年のメンバーから16人が今季も残留するとあり経験値は十分です。

彼らの課題は守備陣。知将ジンボ・フィッシャー(Jimbo Fisher)監督の3年目に大きな飛躍を見せるためにはアラバマ大、ルイジアナ州立大、フロリダ大といったハイパワーオフェンスに対抗する必要があります。名門完全復活のためにも今年は負けられない年になります。

注目の選手

ジェイレン・ワドル(Jaylen Waddle)
アラバマ大WR

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これまで数々の超カレッジ級WRを輩出してきたアラバマ大。昨年はジェリー・ジュディヘンリー・ラグス(Henry Ruggs III、現ロサンゼルスレイダース)、デヴォンタ・スミス(DeVonta Smith)というトリオが活躍しましたが、第4の男であるジェイレン・ワドルも見逃せません。WRとしてはもちろんですが彼はリターナーとしても非凡な才能を発揮。その類まれなるスピードで2つのリターンTDを奪うなどして存在感を発揮しました。

ジュディとラグスがチームを去りスミスに注目が集まりますが、このワドルこそ今年のアラバマ大の大きな起爆剤になると予想します。

カイル・トラスク(Kyle Trask)
フロリダ大QB

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昨シーズンのフロリダ大の開幕時先発QBはフェリペ・フランクス(Feleipe Franks)でしたが、彼が怪我で戦線を離脱した際に先発を任されたのがカイル・トラスク。そしてトラスクはそのチャンスを確実にものにして結果的にフランクスからその座をもぎ取りました。そのフランクスは今オフにアーカンソー大へ転校。つまり今年のフロリダ大オフェンスはトラスクのものとなったわけです。

数々の名QBを育て上げたダン・マレン監督がトラスクをどのように成長させたのか大変気になるところです。

K.J.コステロ(K.J. Costello)
ミシシッピ州立大QB

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昨年までスタンフォード大に在籍し一時は先発も任されたことがあるコステロ。彼は今オフ試合出場機会を求めて転校を決意しミシシッピ州立大に流れ着きました。プロ級のサイズ(身長195cm、体重102kg)にスタンフォード大で養った経験値もあり即戦力としては十分です。

そしてそのコステロを操るのがエアーレイドオフェンスの申し子であるリーチ監督です。今季コステロがとんでもない数字を残すことになっても何ら不思議なことではありません。

ケレン・モンド(Kellen Mond)
テキサスA&M大QB

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2019年度のSECチームから二人のスターQB(LSUのバロウ、アラバマ大のタガヴァイロア)がNFL入りし、QB個人としての才能だけ見れば彼らと同じレベルにあるQBは今季このカンファレンスには正直見当たりません。しかしテキサスA&M大のケレン・モンドにはそのポテンシャルを秘めている選手です。

機動力、サイズ、投力どれをとってもトップレベルなモンドですが、昨年までの課題であったパスの精度が上がっていれば彼が今季全米でも名を挙げるほどのQBに昇華する可能性はあるはずです。

デレク・スティングレー(Derek Stingley Jr)
ルイジアナ州立大CB

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上記の通り昨年の優勝メンバーから雪崩のごとく主力が抜け、しかもWRチェイスがオプトアウトしてしまった今、ルイジアナ州立大に残された唯一のダイアモンドはこのデレク・スティングレーです。

昨年は1年生ながら先発を任され並み居る強敵をもろともせずに活躍。6つのパスINTに15つのパスブロックと既にベテラン並みの数字を残し相手QBの大いなる驚異となりました。今年まだ2年生ですがロースターが手薄な中彼のリーダーシップが既に求められそうです。

注目の試合

アーバン大@ジョージア大(10月13日)

深南部最古のライバリー」という異名を持つこの対戦は今年2戦目という序盤に行われることになります。この試合は毎年僅差となり今年もそれに漏れることはない激戦となるでしょう。

アラバマ大@ミシシッピ大(10月10日)

先にも述べましたがこの試合はセイバン監督とキフィン監督の旧師弟対決とも呼べます。キフィン監督としては何としてもアラバマ大を倒してセイバン監督にギャフンと言わせたいことでしょう。

ジョージア大@アラバマ大(10月17日)

SECタイトルゲームの前哨戦とも言えるこのビッグゲームがシーズン4試合目に既に組み込まれています。2年前のタイトルゲームでの対戦ではアラバマ大が劇的な逆転勝利を収めましたが今年はどうなるでしょうか?

ルイジアナ州立大@アーバン大(10月31日)

アラバマ大が独走体制に入っているとすればそれを追いかけるのはこの2チームのどれかになるというシナリオが見えてきます。負けたチームはこの時点で既に地区優勝争いから脱落することになるでしょう。

フロリダ大vsジョージア大@フロリダ州ジャクソンビル(11月7日)

現時点で言えばこの試合がSEC東地区の優勝決定戦となると言ってもいいでしょう。現在ジョージア大が3連勝中ですがフロリダ大がその連敗記録を今年で止めることが出来るでしょうか?

アラバマ大@ルイジアナ州立大(11月14日)

昨年のこの試合の激戦ぶりは記憶に新しいところですが、ルイジアナ州立大が宿敵アラバマ大を9年ぶりに倒し全米制覇へはずみをつけました。今年のルイジアナ州立大は昨年のチームと比べると天と地の差でしょうが、ライバリーゲームは何が起こるかわかりません・・・。

アーバン大@アラバマ大(11月28日)

言わずとしれた全米屈指のライバリーゲーム「アイロンボウル」。これ以上の説明は入りません。

ミシシッピ大@ミシシッピ州立大(11月28日)

既述の通りどちらのチームも新監督を迎えますが、このカリスマ性たっぷりの二人のコーチが相見えるとなれば俄然注目度は上がるはずです。

AGS予想

本命:アラバマ大
対抗:フロリダ大
単穴:ジョージア大
連下:ルイジアナ州立大
穴:テキサスA&M大
大穴:ミシシッピ州立大

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