マッチアップ
アラバマ大オフェンス vs ジョージア大ディフェンス
このレビューの連載で何度も紹介してきた通りアラバマ大のオフェンス(ジョージア大も)はラン重視オフェンスです。1試合平均ヤード255ランヤードは全米10位の数字。パスでは91位となる193ヤードという数字から見てもそれは明らかです。RBダミエン・ハリス(Damien Hurris)、ボ・スカーボロー(Bo Scarbrough)に加え、QBジャレン・ハーツ(Jalen Hurts)らの能力をしてそれを使わない手はありません。この方程式はニック・セイバン(Nick Saban)監督が就任した2007年以来不変のものです。
アラバマ大QBジャレン・ハーツ
ランゲームが確立されて試合の流れがアラバマ大に寄るとアラバマ大の王道の展開となります。ラインオブスクリメージを制することによりディフェンス側のスタミナを徐々に削り、後半になればなるほどそれはボディーブローのように効いてくるはずです。ジョージア大ディフェンスは序盤から立て続けに点を取られることをまず第一に気をつけなければなりません。
ジョージア大ディフェンスにとってのぞましい展開は、パスがそれほど得意ではないハーツにパスを投げさせる展開に持っていくことです。それにはジョージア大オフェンスの力も借りなければなりませんが、終盤にジョージア大がリードしてアラバマ大が追う展開になり、パスに頼らざるを得ない状況を作ることができれば、ジョージア大のアグレッシブなディフェンス陣がハーツを追い詰めることができるでしょう。3rdダウンで距離を残すのも大いに威力を発揮するはずです。
またアラバマ大はスウィングパスやスクリーンパスを多用するチームです。これにはスピードのあるLBロクアン・スミス(Roquan Smith)が迅速に対応することができるでしょう。アラバマ大のパスプレーはランプレーのセットアップであることが多いですが、パサーとしての能力に不安があると言われるハーツでも彼の肩の力はなかなかのもので、非常に正確なロングボールを投げることができる選手です。アグレッシブなジョージア大守備陣を逆手にとってハーツにスペースを見つけてあげることができれば、少ないパスプレーでも十分にジョージア大ディフェンスを切り崩すことができるのではないでしょうか。
ジョージア大LBロクアン・スミス
故にジョージア大フロントセブンが戦術的にハーツにプレッシャーをかけることが必須事項です。ハーツはこれまでターンオーバーを最小限に抑えてきたスマートな選手ですが、ジョージア大にとっては是非とも彼からボールを奪いたいところです。
ジョージア大オフェンス vs アラバマ大ディフェンス
ジョージア大もアラバマ大と同じくラン重視オフェンスを敷きます。RBニッック・チャブ(Nick Chubb)とソニー・ミシェル(Sony Michel)という武器を持っていれば当然のことです。そしてこれはセイバン監督のアシスタントとして長いこと彼と仕事をしてきたカービー・スマート(Kirby Smart)監督がアラバマ大のスタイルをそのまま取り入れたと考えたとしてもおかしくありません。
ジョージア大RBニック・チャブ(左)とソニー・ミシェル(右)
彼らのスピードをすれば容易にディフェンスの2列目まで到達することが可能です。このスピードに追いつくためにはLBとセーフティーの戦術眼が重要になってきます。もちろんフィジカルな面もなければタックルできませんが、彼らがかわされればロングランは必至なわけで、ラインオブスクリメージを抜けてきたRBたちを2列目で抑え込むことができるかが鍵です。スピードに乗ってしまったミシェルやチャブを止めることは難しいですから。
ジョージア大のWR陣はアラバマ大のそれと比べると少し物足りない気がします。しかもアラバマ大のパスディフェンスは全米3位ということで、ミンカー・フィッツパトリック(Minkah Fitzpatrick)、ロニー・ハリソン(Ronnie Harrison)、トニー・ブラウン(Tony Brown)、リーヴァイ・ワレス(Levi Wallace)といった高い能力をもつDB陣にパスで攻撃の起点を作っていくのは簡単なことではありません。
アラバマ大DBミンカー・フィッツパトリック
それを考えるとアラバマ大はQBジェイク・フローム(Jake Fromm)にパスさせざるを得ない状況、例えば3rdダウン&ロングのようなシーンを作り出すことが出来ればアラバマ大としてはディフェンスしやすくなるでしょう。
フロームとしてはこれまで通り脇役に徹し、キープレーヤーたちが活躍できるようなプレーをお膳立てすることが重要です。未だ1年生のQBですからベテランのRB陣がいるのは心強いです。ただフロームを守るOL陣も押し迫るアラバマ大の強力フロントセブンを止めなければなりません。特にリークォン・デーヴィス(Reakwon Davis)、ダロン・ペイン(Da’Ron Payne)、ダショーン・ハンド(Da’Shawn Hand)といった重量級のDL陣の揃う全米1位のディフェンスは並ではないですから。