Big Tenカンファレンスメディアデー:リキャップ

Big Tenカンファレンスメディアデー:リキャップ

シーズン開幕まであと1ヶ月と迫り、来週にはプレシーズンキャンプが各地で開催されることになります。ここにきてようやくBig Tenカンファレンスもメディアデーを開催し、各チームの監督及び主要選手たちがメディアとのセッションを行いました。

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ベースボール・マガジン社 (編集)

すでにSECACCBig 12カンファレンスはそれぞれのメディアデーの内容をこのサイトでも載せましたが、今回もそれにならいBig Tenのメディアデーの様子を数チームに絞って紹介したいと思います。

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カンファレンス業務連絡

Big Tenカンファレンスは自身のメディアネットワークである「Big Tenネットワーク(BTN)」は今季からアメリカの大手ネットワークであるFOXABC/ESPNCBSと提携を結ぶことになりました。FOXとABC/ESPNとはフットボールゲームの放映権において6年契約を、CBSとは男子バスケットボール部のゲームの放映権の提携を結んだのです。BTNの放映する試合がそれぞれの全米ネットワークでも流されるということでカンファレンスにとってはさらなる収入が見込めることになります。


オハイオ州立大

2014年度に導入されたカレッジフットボールプレーオフ(CFP)の初代王者に輝いたのがオハイオ州立大でしたが、2年ぶりに出場した昨年のCFPではクレムソン大に完封負け(31対0)するという屈辱を味わってしまいました。常に勝ち組とされてきたアーバン・マイヤー(Urban Meyer)監督にしてみればこれは一生忘れられない記憶となって刻まれたことでしょうが、メディアデーではこの時の敗戦が2017年度シーズンを迎えるにあたりどのように影響しているかと聞かれ、次のように話していました。

「それはもう過去の話であり、過去においてきました。コーチング業に携わるプロフェッショナルとしては、今後のオフェンスへのアプローチの仕方を変えるきっかけをくれましたが、我々はすでに前に進んでいるのです。」

オフシーズンには新オフェンシブコーディネーターに元インディアナ大監督のケヴィン・ウィルソン(Kevin Wilson)氏を招聘。ウィルソン氏はマイヤー監督にとっては初となる監督経験のあるオフェンシブコーディネーターとなります。マイヤー監督は今季のオフェンスはウィルソン氏に託すと言っていますので、おそらく今までのオフェンスとは一味違ったものになっていると思われます。

オハイオ州立大はメディアの中ではカンファレンス優勝最有力候補に挙げられており、必然的にCFP出場チーム候補としても名を連ねることになります。そうなればチームは否が応でも昨年の雪辱を晴らさんと意気込むことでしょうが、それが今季に向けてのモチベーション材料となるかと尋ねられたマイヤー監督は、「それはみんなの心の何処かに存在する思いでしょう。それを私自身が彼らを指導していく上で発奮材料として使うかどうかは今後の動向次第です。」と答えていました。

オハイオ州立大のDC、グレッグ・シアーノ氏

ところでチームのディフェンシブコーディネーターはウィルソン氏と同じく監督経験者であるグレッグ・シアーノ(Greg Schiano)氏です。彼は以前ラトガース大でヘッドコーチを務め、弱小だったチームを全米ランク入りするようなチームにまで育て上げ、その手腕を買われNFLタンパベイバッカニアーズの監督を任されるまでに至りました。

そのシアーノ氏ですが実は昨年2つの「有力チーム」からヘッドコーチ就任を打診されていたことがマイヤー監督自身の口から明らかになりました。マイヤー監督も「彼はいずれまたどこかのチームで監督の職を得ることになるでしょう。その日が来るまで私は彼を引き止め続けるつもりです。何と言っても彼は私が出会ってきた中でも最高のコーチの一人なのですから。」と話しています。

その2チームというのがどのチームかは分かりませんが、シアーノ氏にとってベストだと思うチームがタイミングよく監督を探すようなことになれば、遅かれ早かれ彼がオハイオ州立大を離れ別のチームの指揮官に就任する日もやって来ることでしょう。

今季オハイオ州立大で5季目を迎えるアーバン・マイヤー監督

マイヤー監督はオハイオ州立大で今季5シーズン目を迎えようとしています。それ以前にはフロリダ大で2つのナショナルタイトルを獲得するなどして彼の名前を不動のものにしましたが、当時世間を席巻していたSECに所属していたマイヤー氏はSECがどれだけ強豪ぞろいのカンファレンスであったか身をもって経験しました。

しかし現在SECのレベルが低下しているとわれる中、オハイオ州立大が所属するBig TenカンファレンスはSECと比べてどの程度の差があるかと質問されこう答えました。

「今現在カンファレンス同士で差があるとは思いません。それは他のカンファレンス(=SEC)を卑下するものでは決してありませんが、当時最強と言われたSECの東地区をこの目で見てきた者として、今のBig Ten東地区のレベルはSEC東地区と比べてもなんら遜色ないと思います。」

またマイヤー監督がオハイオ州立大に就任した当初、Big Tenチームのリクルーティングは大変過小評価されていたと言っていましたが、それも5年後の今では大きく変わったと言いました。

「今世に言うリクルーティングランキングを見てみれば、そこら中にBig Tenチームの名前を見つけることができます。これが我々が目指してきた形なのです。ここにたどり着くまでに各関係者、コーチスタッフらが重ねてきた努力が実ったと言うわけです。そしてその結果我々は全米でも随一のカンファレンスに成長したのです。」

ちょっと前の投稿で昨年のナンバーワンカンファレンスはアトランティックコーストカンファレンスだ、と書いたことがありましたが、Big Tenカンファレンスのレベルも勝るとも劣らないものになってきているのです。

ミシガン州立大

近年のミシガン州立大といえばカーク・カズンズ(Kirk Cousins)やコナー・クック(Connor Cook)と言った名QBを輩出してきていますが、マーク・ダントニオ(Mark Dantonio)監督は現在のチームに彼らに匹敵する才能を持つQBが存在すると話していました。それがブライアン・リワーク(Brian Lewerk)です。

「ブライアンは多くの面でカーク・カズンズやコナー・クックに似ている部分があります。彼には実践の経験があり、オフシーズンから筋力を強化してきました。そして投力も十分でプレッシャー下でも冷静でいられるという才能を持ち合わせています。また彼は他の選手たちの長所短所をよく理解しており、新しい戦術にもすぐに対処できるという素質を持っています。偉大なるQBとなるために必要な要素を全て彼は持ち合わせているのです。」とダントニオ監督はかなりの高評価を与えています。

リワークは昨年ミシガン大でシーズンを棒に振る大怪我を覆い戦線を離脱していまいましたが、ダントニオ監督は彼が来たるシーズンに向けて準備は万端だと太鼓判を押しています。昨年パスオフェンスで全米74位と振るわなかったミシガン州立大オフェンスが復活するにはリワークの完全復帰が必須事項です。

アイオワ大

アイオワ大カーク・フェレンツ(Kirk Ferentz)監督は今年で在位19年目を迎えますが、これは現在FBSにおいて最長記録となっています。ちょっと前まではこのタイトルはオクラホマ大ボブ・ストゥープス(Bob Stoops)氏のものでしたが、ご存知の通りストゥープス氏は先日電撃的にコーチング界から引退。それによりフェレンツ監督が繰り上がったのです。

フェレンス監督は19季目を迎えるにあたりその心境を以下のように述べました。

「これが19シーズン目だということはあまり考えてきませんでした。私はとにかくラッキーだと思わずに入られません。1981年にひょんなことからアススタントとしてアイオワ大にやってきてからここでの年数はトータルで28年にもなるのですから。」

ストゥープス氏が引退したことについてフェレンツ監督は「我々はカレッジフットボール界において最高のコーチの一人を失いました。でも彼は今非常にハッピーということで本当に良かったなと思っているところです。」と語りました。

実はストゥープス氏はアイオワ大出身でフェレンツ監督がアシスタントコーチだった時にチームに在籍していたのです。しかもストゥープス氏がアイオワ大でコーチ業に足を踏み入れた際にはフェレンツ監督と仕事を共にしたこともあり、彼らはいわば師弟関係でもあるのです。

長い間一つのチームで指揮を続けることは勝利至上主義が蔓延る近代カレッジフットボールでは簡単なことではありません。それを18年もづつけ、未だにアイオワ大でヘッドコーチを任されているのは彼の確かな手腕と人柄にあると言えます。フェレンツ監督のこれまでの活躍にはカンファレンスのコミッショナーであるジム・デラニー氏も賞賛の声を寄せています。

「私は彼に多大なる尊敬の意を表しています。彼はこれまで20年以上にわたりフットボールコーチとしてだけでなく、若き選手たちのリーダーとして活躍し続けてきたのです。私にとって彼は友人でもありますが、何よりもカレッジフットボールの発展に貢献してきた偉大な人物の一人でもあるのです。」

フェレンツ監督率いるアイオワ大は堅実で大崩れしないチームとしてよく知られています。2015年度シーズンには近年稀に見る快進撃でカンファレンス西地区を制しあともう一歩のところでプレーオフ進出かというところまで行きました。昨年は8勝5敗と少々足踏みしましたので、今季はまた2年前のようなシーズンを再現できるかどうかが楽しみなところです。

ペンシルバニア州立大

昨年大外から巻いてBig Tenカンファレンスタイトルを獲得し、勢いだけ見れば全米でもトップクラスのパフォーマンスを見せてくれたペンシルバニア州立大ローズボウルではサザンカリフォルニア大に悔しい形で敗戦を喫してしまいましたが、それでも彼らの快進撃は「サンダスキー事件」ばかりとりだたされるペンシルバニア州立大に新たな希望を与えるには十分でした。

昨年のスター選手であるRBセイクワン・バークリー(Saquon Barkley)、QBトレース・マクソリー(Trace McSorley)らが今年も健在であり、おそらく開幕前のプレシーズンランキングではトップ10入りを果たすほどの高い期待が彼らにはかけられることでしょう。

もともとペンシルバニア州立大は全米でも強豪校とされており、ファンらは自分たちが強豪校の一つであると自負していることでしょうが、ここ最近表舞台から消えていた同チームにとっては昨年の快進撃が自身を再び全米の表舞台に復帰させたとジェームス・フランクリン(James Franklin)監督は感じているようです。

「ペンシルバニア州立大フットボール部に寄せられる期待はいつでも大きいものですが、その期待度は我々が昨年残した成績のおかげで地元だけでなく全国区で大きく跳ね上がりました。おそらくこれまでになく我々の名前が全国各地で聞かれるようになったのではないでしょうか。」

昨年カンファレンスタイトルを獲得したおかげで、今年の目標は連覇することだけでなくその上にあるCFP出場も視野に入れられることになるでしょうが、フランクリン監督は決して足元をおろそかにせず、第2戦目の同州内ライバルであるピッツバーグ大よりもまずは開幕戦のアクロン大戦に焦点を絞っていると言うことです。

「我々はアクロン大戦でシーズンを開幕します。ですからアクロン大以外のチームのことは今のところ眼中にありません。もちろん我々は今年対戦する全てのチームとの試合を心待ちにしていますが、全てはまずアクロン大戦から始まるのです。」

優勝候補筆頭のオハイオ州立大、そのライバルのミシガン大、そして昨年の不調を取り戻すべく復活を狙うミシガン州立大と同じ地区内には強豪ぞろいですので、ペンシルバニア州立大が再び地区を制してカンファレンスタイトルを連覇するのは簡単なことではありません。しかし確実に言えるのは昨年ほぼ存在感ゼロであったペンシルバニア州立大が今年は追われる存在となったと言うことです。

ペンステートの元キッカー、ジョーイ・ジュリアス

ところでペンシルバニア州立大で昨年ちょっとした話題をかっさらった人物にキッカーであるジョーイ・ジュリアス(Joey Julius)がいます。彼はキッカーに似合わず巨漢で、彼がキックオフリターンで数々のビッグヒットを相手選手に喰らわせたことで注目を浴びることになりました。

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そんなジュリアスですが、実は彼は摂食障害(Eating Disorder)持ちでも話題になりました。そのことを公表して同じ症状で苦しむ人たちに希望を与えもしましたが、彼の障害のレベルが悪化し、残念ながら現在はフットボールを続けることのできない状況にまで達してしまったと言うことで、今年はチームに所属しないと言うことが明らかになりました。

人生はフットボールだけではありませんから、彼にはこの障害を克服し一刻も早く普段の生活が送れるようになってほしいものです。

ミシガン大

ミシガン大といえばジム・ハーボー(Jim Harbaugh)監督。2015年にチームのヘッドコーチに就任したハーボー監督はすぐにミシガン大を全米のトップレベルで戦えるチームに育て上げ、その勢いは増すばかりです。その類稀なるコーチング術でスポットライトを浴びるのはもちろんですが、やはりハーボー監督といえば他の誰もやらないことをルール違反ギリギリでやってのけ話題をかっさらうことで有名ですよね。それはリクルーティングの方法だったり、コメントだったり、ある時はフロリダ州で春季トレーニングをしてみたり、またある時はチーム全員をイタリア遠征に連れていったり・・・。好き嫌いは分かれるでしょうが、彼がカレッジフットボール界に新たな風を吹き込む異端児であり、それが近年のカレッジフットボールを面白くしていることは間違いありません。

そして彼はこのメディアデーでも「人と違うこと」を大胆にもやってのけてくれました。

メディアデーはテレビでも取り上げられ、カンファレンスの公式行事であることもありコーチや参加する選手たちはみんなスーツを纏うものですが、この日唯一正装をしてこなかったのがハーボー監督なのです。

しかもミシガン大のキャップまで被ってる!写真では見えませんが、ズボンは彼のトレードマークになりつつあるカーキパンツ。こんなことをやってのけることができるのはハーボー監督以外他に考えられません。そしてこの服装に関して彼がいった言葉は、

「私は極力荷物を軽くしたかったのです。持ってきたものといえば歯ブラシと大きなやる気ぐらいです。」

なんとも茶目っ気あるコメントではないですか!!

そして「人と違うことをする」ということに関していえば、前述の通り今オフにチームをイタリアへ連れていったハーボー監督は、来年にはフランスのパリ、及びノルマンディーにチームを連れて行くと公言したのです。全く次から次へと大胆な行動を起こすハーボー監督です・・・。

メディアデーでのジム・ハーボー監督

もちろんメディアデーですのでフットボールの話もしていったわけですが、ハーボー監督は今のところ今季の先発QBを誰にするかまだ決めていないといっていました。昨年の先発選手であるウィルトン・スピート(Wilton Speight)は未だ健在なのですが。

「ウィルトンはジョン・オコーン(John O’Korn)とブランドン・ピーターズ(Brandon Peters)と横一線で並んでいます。春季トレーニングでは15セッションありましたがいずれの選手も素晴らしくまさにデッドヒートでした。そしてそれぞれが良い面をさらに磨いてくれたのです。」

ウィルトンは昨年13試合中12試合で先発出場しました。彼が怪我で欠場した1試合にはオコーンが代打で出場しました。試合経験値だけでいえばウィルトンに軍配が上がりそうです。今年3年生になるウィルトンは昨年2538パスヤードに18TD、7INTと安定したプレーを見せてくれました。

また2016年のリクルーティングにおいて全米ナンバー3QBと称された1年生のピーターズにもチャンスがあるということで、誰が先発に指名されるかプレシーズンキャンプに注目が集まりそうです。

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