ACCメディアデー:リキャップ②

アトランティックコーストカンファレンス(ACC)のメディアデーの様子、第2弾です

【関連記事】ACCメディアデー:リキャップ①

クレムソン大

昨年2015年度の雪辱を晴らし1981年以来の全米制覇を成し遂げたクレムソン大。名実ともにカレッジフットボール界の強豪チームと見なされるようになった彼らですが、ダボ・スウィニー(Dabo Swinney)監督はそのことでリクルーティングに追い風が吹いていると話していました。

「リクルーティングは変わりました。かつてタジ・ボイド(Tajh Boyd、2009年から2013年まで在籍していたQB)をリクルートしていた際、彼にクレムソン大のキャンパスに足を運んでもらうことだけで一苦労だったのを覚えていますが、今では我々の知名度が上がったおかげでリクルートと繋がりやすくなりました。我々がリクルートに電話をすればそれをとってくれるようになりましたし、キャンパスに招待すれば皆足を運んでくれるようになりましたから。」と過去と比べてリクルーティングしやすくなったことをスウィニー監督は証言しています。

クレムソン大の強さの秘密はスウィニー監督らコーチ陣の地道なリクルーティングです。リクルーティングがモノを言う昨今のカレッジフットボールにおいて、これを成功させるか否かは直接チームの成功に影響すると言えます。スウィニー監督の持つカリスマ性、そして施設のアップグレードなどが功を奏し、ここ5年から10年間の間で追うチームから追われるチームに変貌を遂げたのでした。

「7年ぐらい前なら(トップリクルートと称された)クリスチャン・ウィルキンス(Christian Wilkins)のような有能選手を獲得することはできなかったでしょう。しかし徐々にチームが成功を収めていった結果、彼のような選手達が『クレムソン大に進学したい』といってくれるようになったのです。」とスウィニー監督は加えました。

ただ来たるシーズンに目を向けると、昨年度のチャンピオンチームから多くの選手が抜けてしまい、いくばくかの不安材料がない訳でもありません。かつて3年間先発QBを務め、クレムソン大フットボールの顔にまで成長したQBデショーン・ワトソン(Deshaun Watson)はすでにNFLヒューストンテキサンズの一員ですし、RBウェイン・ガルマン(Wayne Gallman)、WRマイク・ウィリアムス(Mike Williams)など大量の先発選手がチームを離れてしまったのです。

しかしメディアデーでは当のスウィニー監督は彼らの抜けた穴を埋めることに関しては案外楽観視しているように聞こえました。

「チーム内の選手の入れ替えは毎年起こるものです。そして毎年全く同じチームであることはないのです。タジ・ボイドが卒業してしまったあと、2014年度に向けどう彼の後継者を見つけようかとなりましたが、我々にはその時すでにデショーンがいました。そして彼は皆さんもご存知の通り立派に先発QBを務めてくれました。」と他にも数名の選手の例を挙げてチーム内ではリクルーティングのおかげで主力選手が抜けてもすでに自分の順番が回ってくるのを待ち望んでいる選手達が沢山いることを指摘しました。

とは言えやはりワトソンのようなQBの後釜を探すのは容易なことではないでしょう。今のところ次期先発QBが誰なのかは明らかにされていませんが、誰がなるにせよワトソン並みのパフォーマンスを期待できるとは思えませんから、クレムソン大のオフェンスは多少これまでのものとは違ったものになるかもしれませんね。

ちなみにスウィニー監督はアラバマ大フロリダ州立大の開幕戦の大一番について意見を求められましたが、彼は同じACC所属のフロリダ州立大を応援すると答えました。アラバマ大と言えばクレムソン大が過去2年連続ナショナルタイトルゲームで対戦した相手ですが、実はアラバマ大はスウィニー監督の母校でもあるのです。しかもアラバマ大のニック・セイバン(Nick Saban)監督とは公私ともに親しい間柄にあるようですから、アラバマ大を応援してもおかしくはなさそうですが・・・。


マイアミ大

かつてカレッジフットボール界に敵なしという時代を築いたこともあるマイアミ大。「スワグ(Swag=荒くれ者)」という言葉を生み出したと言っても過言ではない当時のマイアミ大はマイケル・アーヴィン(Michael Irvin)、ウォレン・サップ(Warren Sap)、レイ・ルイス(Ray Lewis)、エド・リード(Ed Reed)という濃いキャラクターの面々を擁してカレッジフットボール界を席巻したものです。その証拠にマイアミ大は1983年から2001年までの間に5つものナショナルタイトルを獲得しています。

強いマイアミ大=スワグと連想する、かつての常勝マイアミ大を知るファンはチームが再び全米トップに上り詰めるにはそのスワグをもう一度取り戻すべきだという声も多いです。しかしマーク・リクト(Mark Richt)監督はマイアミ大の過去の栄光を取り戻すことに異議はないとしながらも、「スワグ」に別の意味合いを感じているようです。

「スワガー(スワグを体現する者)という言葉が生まれたのは彼らがいくつものナショナルタイトルを獲得したからです。つまりスワグとはただ勝つだけではなく大勝する、ということと同義なのです。」

マイアミ大はスワグを地で行っているころ、試合に勝ち続けるだけでなく、フィールド外での問題も数多く起こしたものでした。だからこそ「荒くれ者」と呼ばれ続けた彼らなのですが、リクト監督はチームがナショナルタイトルを取るために選手が「荒くれ者」になる必要はないと考えているようです。マイアミ大の衰退は実際のところそれらのフィールド外での問題の副産物ともいえますから、クリーンさで知られるリクト監督にしてみればそんな部分まで復活させたいとは思わないのでしょうね。

ただ2004年にBig EastカンファレンスからACCに移籍してきたときは彼らがACCで旋風を巻き起こすと思われていましたが、未だ地区タイトルすら獲得したことがありません。ですからスワグの定義がなんであれファンとしては一刻も早く強いハリケーンズの復活を望んでいることでしょう。

チームには朗報もあります。これまでマイアミ大はグレッグ・オルセン(Greg Olsen)、ジミー・グラハム(Jim Graham)、ケレン・ウィンズロー・Jr.(Kellen Winslow Jr.)、ブッバ・フランクス(Bubba Franks)、ジェレミー・ショッキー(Jeremy Shockey)、そしてつい昨年度まで在籍していたデヴィッド・ヌジョク(David Njoku)など数々の名高いTEを輩出してました。そして今年チーム2年目となるリクト監督は現在所属する選手の中に、今に挙げた錚々たるメンバーにも負けないぐらいのポテンシャルを持つTEが存在すると話してくれました。それがクリス・ヘーンドン(Chris Herndon)です。

昨年度の主力TEであったヌジョクの片われとしてプレーしたヘーンドンは2TDを含む334レシーブヤードを記録。そんな彼をリクト監督はメディアデーのスピーチの中で「自分が今まで見てきた中でも最高のTEの一人」と高評価。非常にフィジカルであるにも関わらずボールの扱い方が非常に上手いTEとして、大きな期待を寄せているということです。それはリクト監督のオフェンスがTEセットを重用する傾向にあることも意味しています。

しかしながらやはりオフェンスの要となるのはQBです。マイアミ大は昨年までの先発だったブラッド・カーヤ(Brad Kaaya)が4年生シーズンを待たずにNFL入りしてしまい、2017年度は新QBの元攻撃陣を組み立てなければなりません。リクト監督はどうやらカーヤの後継者を誰にするかまだ決めかねているようです。誰が先発の座を射止めるにしてもリクト監督が次期先発QBに求めるのは以下のようなことだそうです。

「我々はどんなプレッシャーの中でも対応できるQBを欲しています。我々が100%頼れるQBです。ターゲットに正確にパスを通せるか?正しい判断を下すことができるか?そして我々マイアミ大の先発QBとしてのプレッシャーを受け止められるか?これらのことを我々はQB陣に求めているのです。そしてそれが誰になるのかは彼らがその素質を披露してくれるまでわかりません。」

リクト監督のマイアミ大再生計画は未だ現在進行形のようです。

バージニア工科大

バージニア工科大もマイアミ大と同じく先発QBを失ったチームです。昨年のリーディングラッシャーでもあったジェロッド・エヴァンズ(Jerod Evans)は半ば自殺行為的にNFLドラフト入りを決め、結局彼はドラフトでどこからも指名されなかったのですが、残されたチームは彼の後釜を探さなければなりません。

【関連記事】NFLドラフト入りしなければよかった選手たち

しかし今年2年目を迎えるジャスティン・フエンテ(Justin Fuente)監督の焦点はQBよりもその周りのサポート陣だと言っています。

「我々の一番の課題はWRやRBなどのサポート陣がいかにチームのためになるプレーをしてくれるかどうかということです。これが解決すれば誰が先発QBになろうともいい結果を残してくれるチャンスを得るというものです。」

特にランオフェンスではエヴァンズがチーム1の地上戦力であったとは言ってもトータル846ヤードで1キャリー平均ヤードはたったの4ヤードですから、ランを生業とするRB陣には大きな進化が要求されます。

「私にとっては誰がボールをキャリーするかは問題ではありません。QBだろうがRBだろうがWRだろうが誰でも構わないのです。しかし誰が走るにしろ我々は強固なランオフェンスを確立しなければなりません。昨年は(エヴァンズという)巨漢でタフなQBが走ることにも長けていたため彼にボールを集めたということです。」

とはいえ、はなからQBにボールをキャリーさせることを要求するのは戦術的にも相手に手の内を見せるようなものですから、できればそれが本業であるRB陣に頑張ってほしいものです。

ノースカロライナ大

ノースカロライナ大も前出のチームたちと同様先発QBが抜けてしまったチームですが、彼らの場合はNFLドラフトで総合2番目に指名されたミッチ・トルビスキー(Mitch Trubisky)を失ったということで、その空いた穴を埋めるのは一筋縄ではいかないでしょう。さらにチームはナンバー1、2のRBと同じくナンバー1、2のWRまでもがチームを去ってしまい、チームの戦力ダウンは免れません。それはラリー・フェドラ(Larry Fedora)監督も感じていることのようです。

「私はこれまで18年間ほどコーチング業に携わってきましたが、こんなに一度に多くの戦力を失うようなことは今まで経験したことがありません。だから今季どうなるかは始まって見ないとわからない、というのが本音です。ただ我々のスタッフはリクルーティングにおいて非常にいい仕事をしてくれています。チームには高校時代に名を馳せつつもまだ大学で試合に出場したことがない選手がたくさんいます。今年は彼らのような選手に台頭してほしいシーズンとなるでしょう。彼らにとってようやく自分の名を世間に知らしめることができるチャンスが訪れるのです。」

トルビスキーほどの選手の後継者となるには若い選手には荷が重そうですが、ノースカロライナ大はオフシーズンにルイジアナ州立大からの転校生、ブランドン・ハリス(Brandon Harris)を受け入れました。経験値の件から言っても彼が先発QB最右翼ですが、昨年ルイジアナ州立大では先発の座を明け渡したという事実もあり、彼が自動的に先発QBとしてノースカロライナ大で大暴れするかと言うには時期相応でしょう。

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