今年のドラフトも3日間の工程を無事終了。1巡目から7巡目までの指名合戦が幕を閉じまずは一息といったところですが、7巡目が終わって間髪入れず今度はドラフトに漏れた選手たちのドラフト外フリーエージェント(UDFA)契約の動きが始まっています。
ドラフトされたからと言ってすべての選手たちが実際に最終的な53人ロースター入り出来るまで生き残れるかと言ったらそんな保証は何処にもありません。UDFAで契約にこぎつけた選手にしてみればチームの一員として無事にシーズンを迎えられる確率というのはさらに減るわけです。
それでも子供の頃から夢にまで見たNFLの大舞台に立つべく、ドラフトされた選手もUDFAで僅かな望みを手にしようとしている選手たちもこれからの数ヶ月を過ごしていくわけです。
そんな様々な人達の思いが詰まったドラフトでしたが、今回は今年のドラフトをカレッジフットボールファンの目線で振り返ってみたいと思いますが、前編の今回は主にファーストラウンドを振り返ります。
目次
今年の総合ドライチ選手は・・・
ケイレブ・ウィリアムス(QB/サザンカリフォルニア大)
ドラフトで最も注目されるのはやはり第1巡目総合第1番目に指名を受ける「ドライチ」選手だと思います。今年の総合ドライチ指名権を持っていたのはシカゴベアーズでしたが、その輝かしい称号を今年手に入れたのは大方の予想通りサザンカリフォルニア大のQBケイレブ・ウィリアムス(Caleb Williams)でした。
サザンカリフォルニア大出身選手が総合ドライチで指名を受けるのはこれで史上6人目。これまでオクラホマ大、ノートルダム大、ジョージア大が5人で並んでいましたが、これでサザンカリフォルニア大が単独で最多チームとなりました。
ちなみに過去10年のドラフトでドライチとなった選手のうち、実に8人の選手がQB選手です。
- ケイレブ・ウィリアムス(2024年/サザンカリフォルニア大QB)
- ブライス・ヤング(2023年/アラバマ大QB)
- トレヴォン・ウォーカー(2022年/ジョージア大DT)
- トレヴァー・ローレンス(2021年/クレムソン大QB)
- ジョー・バロウ(2020年/ルイジアナ州立大QB)
- カイラー・マレー(2019年/オクラホマ大QB)
- ベーカー・メイフィールド(2018年/オクラホマ大QB)
- マイルズ・ギャレット(2017年/テキサスA&M大DE)
- ジャレッド・ゴフ(2016年/カリフォルニア大QB)
- ジェーミス・ウィンストン(2015年/フロリダ州立大QB)
ドラフト史上トータルで見ても、総合ドライチでQBが選出されたのはウィリアムスで35人目となります。さらにいうと、2022年度にウィリアムスはハイズマントロフィーを受賞していますが、そのトロフィーを手に入れ尚且つ総合ドライチ選手になったというのはウィリアムスで25人目となります。最近だと・・・
- ケイレブ・ウィリアムス(2023年受賞/サザンカリフォルニア大)
- ブライス・ヤング(2022年受賞/アラバマ大)
- ジョー・バロウ(2019年受賞/ルイジアナ州立大)
- カイラー・マレー(2018年受賞/オクラホマ大)
- ベーカー・メイフィールド(2017年受賞/オクラホマ大)
- ジェーミス・ウィンストン(2013年受賞/フロリダ州立大)
- キャム・ニュートン(2010年受賞/アーバン大)
- サム・ブラッドフォード(2008年受賞/オクラホマ大)
- カーソン・パルマー(2002年受賞/サザンカリフォルニア大)
またウィリアムスはサザンカリフォルニア大にてリンカーン・ライリー(Lincoln Riley)監督の指導を受けた選手ですが、ライリー監督の教え子でハイズマントロフィーを獲得しドラフトで総合1番目に指名を受けたのは全部で3人もいます。
- ケイレブ・ウィリアムス(2023年受賞/サザンカリフォルニア大)
- カイラー・マレー(2018年受賞/オクラホマ大)
- ベーカー・メイフィールド(2017年受賞/オクラホマ大)
ウィリアムスは元々ライリー監督が指揮を取っていたオクラホマ大へ入部しますが、2022年にサザンカリフォルニア大へライリー監督が移籍するとそれを追うようにウィリアムスも同校へトランスファー。その甲斐あったというものです。
実際ウィリアムスはオクラホマ大へ進学を決めた理由は「ライリー監督がいたから」と言っていましたから、いかにライリー監督へ全幅の信頼を寄せていたかということが計り知れると思います。
数字で見る1巡目選択選手たち
出身大学別1巡目選手数
第1巡目で選ばれた全32選手数を大学別に見てみると・・・
- 3人:ワシントン大、テキサス大、アラバマ大
- 2人:ペンシルバニア州立大、ジョージア大
- 1人:その他19チーム
これまでの1巡目での最高人数が2021年のジョージア大で5人だったのでそれには及びませんでしたが、3チームが3人をファーストラウンダーとして輩出しています。そしてこの3チームはもれなく昨年のCFP(カレッジフットボールプレーオフ)に進出したチーム。さすがと言ったところです。
その中でも特筆すべきはワシントン大。彼らが3人(マイケル・ペニックス・Jr、ローム・オドゥンゼ、トロイ・フアタヌ)も1巡目選手を送り出したのは2015年のドラフト以来史上2度目の快挙となりました。
ちなみに、過去5年間のドラフトにおいて28校のFBS(フットボールボウルサブディビジョン)チームが複数の選手をファーストラウンダーとして輩出してきましたが、その中で最も多い選手をプロ選手として誕生させたのはアラバマ大で18人。時点がジョージア大の13人ですから、アラバマ大が抜きん出ていることがわかります。
さらに、過去10年間において1巡目に送り出した選手数の平均を見てみると・・・
- アラバマ大:平均3.1人
- オハイオ州立大:平均2.2人
- ジョージア大:平均1.9人
- クレムソン大:平均1.5人
- ルイジアナ州立大:平均1.4人
ここでもやっぱりアラバマ大の強さが表れていますよね。
ところで、ここまでの全ドラフトにおいて第1巡選手を最も世に送り込んだ大学は・・・
- オハイオ州立大:91人(前年度比+1)
- サザンカリフォルニア大:86人(前年度比+1)
- アラバマ大:73人(前年度比+3)
- ノートルダム大:71人(前年度比+1)
- マイアミ:67人(前年度比±0)
また、今回3人のファーストラウンダーを生み出したアラバマ大ですが、これで彼らは16年連続で最低でも1人の選手をファーストラウンドでピックされたというチームになりました。これはここまでの最長連続記録。次点はマイアミ大で14年連続でした(1995年から2008年まで)。
カンファレンス別ドラフト選手数
次は32人の選ばれし選手たちを出身カンファレンス別に見ていきましょう。
- SEC:11人
- Pac-12:8人
- Big Ten/ACC:4人
- Big 12:3人
- MAC:1人
- 独立校(ノートルダム大):1人
相変わらずSEC(サウスイースタンカンファレンス)が多いですが、驚きなのはPac-12カンファレンスの8人という数。昨年度を最後にPac-12カンファレンスは事実上消滅(所属チーム12チーム中10チームが他カンファレンスへ鞍替えするため)するにも関わらず、その最後の年にここまで躍進するとは因果なものです。
また直近10年間のドラフトの1巡目をカンファレンス別にみると・・・
- SEC:104人
- Big Tenカンファレンス:59人
- ACC:51人
- Pac-12カンファレンス:47人
- Big 12カンファレンス:24人
- American:11人
- 独立校(ノートルダム大):1人
- MWC:4人
- C-USA:2
- MAC:2人
やはりここでもSECの力が。時点のBig Tenカンファレンスと比べても倍近い人数が・・・。
ハイズマンパワー!
2番目の指名権を持っていたのはワシントンコマンダーズでしたが、彼らが射止めたのはルイジアナ州立大のQBで昨年のハイズマントロフィー受賞者であるジェイデン・ダニエルズ(Jayden Daniels)でした。
これでウィリアムスに続きハイズマントロフィー受賞選手がワンツーフィニッシュを飾ったことになりますが、これはドラフト史上2度目のこと。最初のケースは2015年のドラフトで、この時は総合1位がジェーミス・ウィンストン(2013年受賞)で2位がマーカス・マリオタ(2014年受賞)という組み合わせでした。
ちなみにルイジアナ州立大出身QBとしてトップ3以内でドラフトされるのはこれで4人目となります。
- ジョー・バロウ(2020年ドラフト総合1番目)
- ジャマーカス・ラッセル(2007年ドラフト総合1番目)
- バート・ジョーンズ(1973年ドラフト/総合2番目)
2007年に総合ドライチ選手としてオークランド(現ラスベガス)レイダースに入団したジャマーカス・ラッセル(JaMarcus Russell)は結局史上最大級の「バスト」(期待はずれ)選手となってしまいましたが・・・。
QB、QB、またQB!
今年のドラフト1日目では何と上位12ピックで6人ものQBがドラフトされていきました。
- ケイレブ・ウィリアムス(総合1番目/サザンカリフォルニア大)
- ジェイデン・ダニエルズ(総合2番目/ルイジアナ州立大)
- ドレイク・メイ(総合3番目/ノースカロライナ大)
- マイケル・ペニックス・Jr(総合8番目/ワシントン大)
- JJ・マッカーシー(総合10番目/ミシガン大)
- ボ・ニックス(総合12番目/アーバン大)
上位12名の中に6人もQBが指名されたのは1983年以来初。さらにいうとご覧の通りウィリアムス、ダニエルズ、メイとトップ3がすべてQBになりましたが、これは1967年以来(=Common Draft Era、NFLとAFLが合併した以降)でいうと4度目となります。
- 2021年
- トレヴァー・ローレンス(クレムソン大)
- ザック・ウィルソン(ブリガムヤング大)
- トレイ・ランス(ノースダコタ州立大)
- 1999年
- ティム・カウチ(ケンタッキー大)
- ドノヴァン・マクナブ(シラキュース大)
- アキリー・スミス(オレゴン大)
- 1971年
- ジム・プランケット(スタンフォード大)
- アーチー・マニング(ミシシッピ大)
- ダン・パストリーニ(サンタクララ大)
QBで1-2-3を飾るのは素晴らしいことですが、一方で2021年および1999年のケースを見ると成功していると言えるのはローレンスとマクナブ氏のみ。はたして今年のトップ3QBがそれぞれ活躍できるかどうか・・・。
WRU (x2)
総合4番手に指名されたのはオハイオ州立大のWRマーヴィン・ハリソン・Jr(Marvin Harrison Jr)でした。これでオハイオ州立大出身のWRが第1巡目にピックされたのは3年連続となります。
- ギャレット・ウィルソン(2022年ドラフト総合10番目)
- クリス・オラヴェ(2022年ドラフト総合11番目)
- ジャクソン・スミス・エンジグバ(2023年ドラフト総合20番目)
3年間で実に4人のファーストラウンダーWRを抱えていたことになりますが、2021年度シーズンのオハイオ州立大にはこの4人が勢揃いしていたんです。
2021 Spring WR Room.
— Buckeyes Network (@BuckeyesNetwork) January 6, 2023
Garrett Wilson
Chris Olave
Jaxon Smith-Njigba
Jameson Williams
Marvin Harrison Jr
Emeka Egbuka
Julian Fleming
STACKED. pic.twitter.com/qM35l3pegI
さらに来年にはエメカ・イブカ(Emeka Egbuka)がドラフトで高順位での指名が期待されており、まさに「WRU」といえそうです。
しかしそれに負けていないのがルイジアナ州立大。今年は1巡目で総合6番目にマリク・ネイバーズ(Malik Nabers)がニューヨークジャイアンツにドラフトされましたが、ルイジアナ州立大出身WRとしては2000年以降7人目の1巡目WRです。
- ジャマー・チェイス(2021総合1番目→CIN)
- ジェイデン・ダニエルズ(2020年総合2番目→MIN)
- オデル・ベッカム・Jr(2014年総合12番目→NYG)
- ドゥウェイン・ボウ(2007年総合23番目→KC)
- クレッグ・デーヴィス(2007年総合30番目→SDC)
- マイケル・クレイトン(2004年総合15番目→TB)
ネイバーズは2014年のOBJに続いてLSU出身の1巡目WRとしてジャイアンツ入りを果たしました。
また今年は1巡目総合23番目にてブライアン・トーマス・Jr(Brian Thomas Jr)もジャクソンビルジャガーズに指名を受けており、LSU出身WRが2人もファーストラウンダーとなりました。
ちなみにこれでLSUはQB(ジェイデン・ダニエルズ)とWR(マリク・ネイバーズ)が同時に1巡目、しかもトップ6ピック以内で選ばれたわけですが、同じドラフトで同じチームからQBとWRが1巡目上位6人以内で指名されたのはこれで史上初となります。
オフェンシブラインは武器!
ロサンゼルスチャージャーズは今年から昨年までミシガン大を指揮してきたジム・ハーボー(Jim Harbaugh)監督が指揮を執ることになりますが、チャージャーズの監督として最初のファーストピックはノートルダム大のOTジョー・アルト(Joe Alt)でした。
これでチャージャーズは過去4年間で3人のOL選手を1巡目でドラフトしたことになります。
- ラシャーン・スレイター(2021年総合13番目/ノースウエスタン大)
- ザイオン・ジョンソン(2022年総合17番目/ボストンカレッジ)
- ジョー・アルト(2024年総合6番目/ノートルダム大)
才能のあるOLを集めてQBジャスティン・ハバート(Justin Herbert)をガッチリ守ろうということかもしれませんが、一方でスキルポジションという「武器」をなぜ新たに確保しないのかという質問にハーボー監督は「我々に取ってはオフェンシブラインこそが武器なのです」と話していたのが印象的でした。
“offensive linemen we look at as weapons” pic.twitter.com/3mBgFfcKDj
— Los Angeles Chargers (@chargers) April 26, 2024
TEU!!
近年のドラフトにおいて、TEのプロスペクトとしては数年に一度の至宝と言われているのがジョージア大出身のブロック・バウワーズ(Brock Bowers)でしたが、彼は第13番目にてラスベガスレイダーズに指名を受けました。実はこれでジョージア大TEは6年連続でドラフトされたことになるのです。
- ブロック・バウワーズ(2024年R1-13→LV)
- ダーネル・ワシントン(2023年R3-30→PIT)
- ジョン・フィッツパトリック(2022年R6-34→ATL)
- トレイ・マッキティ(2021年R3-33→LAC)
- チャーリー・ウォーナー(2020年R6-11→SF)
- アイザック・ナウタ(2019年R7-10→DET)
TEだけで6年連続とはすごいですよね。まさにジョージア大こそ「TEU」ですね。
オフェンス真っ盛り!
今年のドラフトはこれまで紹介してきた通り、3人連続のQBピックから始まり、オフェンス選手の指名が目立ちましたが、実際のところ1位指名から14位指名(タリース・フアガ:オレゴン州立大OL→ニューオーリンズセインツ)まですべてオフェンス選手だったのです。
これまでのオフェンス選手連続指名最長記録が2021年の7人連続でしたから、今回は実にその倍の数に!そして1巡目トータルでも32人中23人と7割がオフェンス選手だったという事実が浮かび上がってきました。
その内訳を見ると以下の通りです。
- QB:6
- WR:7
- TE:1
- OL:9
RBが1巡目で1人もいないのは何だか現在の風潮を表しているようですが、どちらにしてもオフェンスが花なのかなと思わせてくれるデータです。
その他・・・
- 総合7番目で選ばれた、アラバマ大のOTであるJ.C.レイサム(J.C. Latham、テネシータイタンズ)。彼が1巡目で選ばれたことで、昨シーズン後に引退したニック・セイバン(Nick Saban)元監督の息のかかったOLが1巡目となったのは9人目に。
- 総合8番目にアトランタファルコンズにドラフトされたワシントン大出身のQBマイケル・ペニックス・Jr(Michael Penix Jr)。アトランタはQBであるペニックス・Jrを1巡目でドラフトしたことで、直近4度のドラフトでスキルプレーヤー全てをファーストラウンダーでコンプ達成!
- QB:マイケル・ペニックス・Jr(2024年/ワシントン大)
- RB:ビジャン・ロビンソン(2023年/テキサス大)
- WR:ドレイク・ロンドン(2022年/USC)
- TE:カイル・ピッツ(2021年/フロリダ大)
- 第10番目にミネソタヴァイキングスに指名されたのはミシガン大のQBだったJ.J.マッカーシー(J.J. McCarthy)。彼はミシガン大出身QBとしては史上2番目でドラフト1巡目にて名前を呼ばれた選手となりましたが、史上1番目だったのは既出のジム・ハーボー監督(1987年)。昨年師弟で関係で結ばれていた2人がこうして名前を連ねるとは偶然にしてはできすぎていますよね。
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