いよいよ2018年のNFLドラフトまで24時間を切りました。そこでこのドラフトをカレッジフットボールファンとしてどう楽しむかを書いてみたいと思います。
ドライチ選手輩出は監督の誇り?
ドラフト総合順位1位(ドライチ)の選手が必ずしもその年のベストプレーヤーということにはなりません。それはドライチを引き抜く権利を持っているチームのニーズに左右されるからです。とはいえやはり一番最初に選ばれるというのは栄誉なことですし、今後一生歴史にその名が刻まれることを考えればそれが誰であろうと注目されるのは当然のこと。
そしてもっといえばそんなドライチ選手を世に送り出すことのできるカレッジチームの監督にとってもそれは大いに胸を張れる勲章なのではないでしょうか。
現在FBS(フットボールボウルサブディビジョン)で未だ現役で監督業を営んでいるコーチは7人います。
監督 | ドライチ選手 | 年 |
---|---|---|
ケヴィン・サムリン (現アリゾナ大) | マイルズ・ギャレット (テキサスA&M大) | 2017 |
ソニー・ダイクス (現SMU) | ジャレッド・ゴフ (カリフォルニア大) | 2016 |
ジンボ・フィッシャー (現テキサスA&M大) | ジェーミス・ウィンストン (フロリダ州立大) | 2015 |
デヴィッド・ショウ (現スタンフォード大) | アンドリュー・ラック (スタンフォード大) | 2012 |
マーク・リクト (現マイアミ大) | マット・スタフォード (ジョージア大) | 2009 |
アーバン・マイヤー (現オハイオ州立大) | アレックス・スミス (ユタ大) | 2005 |
デヴィッド・カットクリフ (現デューク大) | イーライ・マニング (ミシシッピ大) | 2004 |
気付かされるのは昨年のギャレット以外は皆QBであるということです。マニングやスミスは10年以上前にドラフトされたのにも関わらずまだ現役でいられるのはひとえにQBというポジションのお陰なのでしょう。
またその他では上にあげた監督のうちスタンフォード大のショウ監督以外は皆チームを乗り換えたか解雇されて別のチームで起用されています。カレッジフットボール界のコーチング市場が非常に流動的であることの証ともいえそうです。
そして今年このリストに新たに加わる可能性があるのはセイクワン・バークリー(Saquon Barkley)を輩出したペンシルバニア州立大のジェームス・フランクリン(James Franklin)監督、ジョシュ・アレン(Josh Allen)を輩出したワイオミング大のクレッグ・ボール(Craig Bohl)監督、サム・ダーノルド(Sam Darnold)を輩出したサザンカリフォルニア大のクレイ・ヘルトン(Clay Helton)監督の3人が有力とされています。またここ数日の報道ではにわかにオクラホマ大出身のベーカー・メイフィールド(Baker Mayfield)の株が急上昇中のようなので、そうなると彼の出身チーム監督であるリンカーン・ライリー(Lincoln Riley)氏も仲間入りを果たすことができるのではないでしょうか。
ちなみに上に紹介した名前を見て気づかれた方もいるかもしれませんが、現在最強コーチと謳われるアラバマ大のニック・セイバン(Nick Saban)監督の名前がありませんよね。彼はこれまで6度のナショナルタイトル獲得に成功していますが、いまだにドライチ選手をプロの世界へ送り出していないわけです。彼の息のかかった選手で最もそれに近づいたのは2012年のRBトレント・リチャードソン(Trent Richardson)の総合3位でした。しかもそのリチャードソンは今では「ドラフトバスト」として知られるようになってしまい、セイバン監督にとっては決して胸を晴れるようなことではありません(もっとも本人はそんなことは気にも留めないのでしょうが)。
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ドライチ選手は誰か?
今年のドライチ指名権を持っているの昨年全敗と撃沈したクリーブランドブラウンズです。もうご存知かもしれませんが(ファンの方には失礼!)ブラウンズはもう長いこと日の目を見ない残念なチームとされています。筆者はNFLのことに関しては突っ込んだ話をできるほどの知識を持っていないので大きなことは言えませんが、彼らの低迷の歴史をたどるとやはりフランチャイズQBと言える選手を輩出していないことが挙げられるのではないでしょうか。
遡れば1999年のドラフトで彼らがドライチで選択したケンタッキー大出身のティム・カウチ(Tim Couch)氏のバストぶりから始まり、最近で言えばやはり2014年に第1巡目22位で選択したテキサスA&M大出身のジョニー・マンゼル(Johnny Manziel)の失敗に見れるように彼らはことごとくQBの指名においてハズレくじを引き続けています。
そんな中上にも少し触れましたが専門家のドラフト指名予想(俗に言うモックドラフト)においてこれまでドライチ予想で名前が上がってこなかったオクラホマ大出身のベーカー・メイフィールドがブラウンズによって総合ナンバーワンでドラフトされるのではないかという話が浮上してきています。
メイフィールドは2017年度のハイズマントロフィー受賞者であり、その翌年の2016年度にもファイナリストに選ばれた逸材。大学生としての先発QB戦績は39勝9敗、昨年だけ見ればパス成功率は全米でも唯一の70%超え(70.5%)にパスレーティングでも全米でダントツ一位の198.9ポイント。43TDに6INTと驚異的なエフィシェンシーを誇り、ハイズマントロフィーを受賞したことからも明らかなように彼が昨シーズンカレッジフットボール界でナンバーワンQBであることに疑いはありませんでした。
ただ彼の問題はフィールド外での行動でした。例えば先シーズン開幕前に公共の門前で泥酔したこととその場から逃亡を図ったことで逮捕されてしまったこと、オハイオ州立大でのホーム戦に勝利した後に彼らを侮辱するかのごとくオクラホマ大のフラッグをフィールド中央に突き刺したこと、そしてカンザス大では試合前の握手を拒否されたことに感情的になってサイドラインで悪態をついたことで彼の人格に疑念を抱く人たちが増えてしまったのです。
そしてこのことでメイフィールドは頻繁に元テキサスA&M大でクリーブランドブラウンズの2014年の第1巡目選手だったジョニー・マンゼルと比べられることが多くなったのです。
マンゼルもまたハイズマントロフィーを1年生次に獲得し、フィールド上ではマジシャンのごとく振る舞いながらも素行の悪さでその株を落とし、結局2016年にブラウンズから解雇され、現在NFL復帰を目指しているものの、その道はまだまだ険しいと言われている人物。このまま復帰できなければ十中八九彼も「ドラフトバスト」の仲間入りを果たすであろう選手です。
そんな彼と比較されているメイフィールドをブラウンズがドラフトするというのはなんとなく危険な匂いがプンプンしてきます。確かにドラフトはギャンブルのようなもので、どんなにカレッジで活躍していてもそれがそのままプロで通用するとは限りません。しかしもし素行で疑惑の残るメイフィールドをドラフトして彼がマンゼルの二の舞いを演じてしまったとしたら、その時はブラウンズの上層部への批判は免れそうにありません。
QBが必要ならばプロスタイルのジョシュ・アレンやジョシュ・ローゼンのほうがいいのではないかという声も聞こえますし、もしくはハズレがなさそうなRBセイクワン・バークリーを選んだほうが得策なのではないかとか、色々言われています。誰がQBになってもブラウンズではその才能を殺されてしまうなんていう声も聞こえるくらいですから、もしそうならばあえて型破りなメイフィールドに賭けてみてはどうかという人たちもいます。
なんとなく負の匂いがプンプンな今年のドライチ事情ですが、誰がブラウンズに選ばれるのか興味津々です。
カレッジフットボールファンが見るドラフト
当サイトはカレッジフットボールファンサイトですので、NFLドラフトに関してはNFLファンの視点としてよりもカレッジフットボールファンとしての視点として情報をお伝えしているつもりです。前述の通り筆者はNFLのディープな話をできるほど詳しい知識を持ち得ていませんので、そういった方にとっては非常に物足りない情報ばかりかもしれませんが・・・。
それはさておき、NFLドラフトをカレッジフットボールファンが捉えるとき、まずはカレッジ界で名を馳せた名選手たちがどのチームに選ばれるのか、そしてどこまでプロの世界でやれるのか、といった点が気になるところだと思います。
そしてもう一つは自分の贔屓のチームから何人の選手がドラフトされていったのか、というのも興味津々な点です。それはそのチームのファンの自己満足であるという側面は否定できませんが、一方でその数が多ければ多いほどそのチームは翌シーズンにて戦力ダウンは間逃れないという見方もできるはずです。
もっともドラフトで何人の選手が選ばれていったかを知らなくても、シーズン終了時にどれだけの選手が卒業ないし早期ドラフト入り宣言をしてチームを去っていくかは既に分かっているはずですから、ドラフト前からどれだけ戦力が落ちるかはわかっているはずです。しかしそれでもやはりドラフトで同じチームから二桁数の選手が一度にプロへ流出したとしたら、ファンへのインパクトは超弩級です。
例えば昨年のドラフトではミシガン大が11人もの選手をプロ入りで失いました。そしてそれが直接の原因かどうかはわかりませんが、昨年のミシガン大は調子を大きく落として8勝5敗と残念なシーズンを送る羽目になってしまいました。
一方で10人をプロ入りで失ったアラバマ大はミシガン大とは違って選手の補填に成功して昨年ナショナルチャンピオンに輝きました。ニック・セイバン監督以下コーチ陣のリクルート力にコーチ力が実を結んだ証拠ともいえます。強いチームは選手が抜けても次世代の選手たちがしっかりと育っているものです。それをドラフトの結果で確認できるというわけです。
また毎年ドラフトごとに各ポジションで豊作になるものとそうでないものが出てきたりすることもあります。例えば昨年ならばDB選手が豊作の年でしたし、2013年はOLが豊作だったと言われています。今年も特定のポジションが多くドラフトされるような年となるのでしょうか?
個人的に注目
今年のドラフトにおいて、個人的に(というか世の中的にもおそらくそうなのでしょうが)気になるのはセントラルフロリダ大出身のLB、シャキーム・グリフィン(Shaquem Griffin)がドラフトされるかどうかということです。
彼が有名になったのは先天的な病気のために左腕が発達しなかったグリフィンが義手をつけてスカウティングコンバインに臨み、ベンチプレスを20回、そして40ヤードダッシュでは脅威の4.38秒を叩き出したからです。フィールド上でも活躍し、2016年度はセントラルフロリダ大が所属するアメリカンアスレティックカンファレンスの最優秀ディフェンダーに選ばれたり、昨年度出場したピーチボウルでアーバン大と対戦しこれを見事一蹴して守備選手としてのMVPを授与されて利しました。
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ハンディキャップはあってもフットボール選手として立派に結果を残したグリフィン。その彼がプロでも通用するのかどうかぜひこの目で見てみたいものです。
スペシャルゲスト!
今では3日に分けて行われるようになったドラフトですが、とりわけ2日目と3日目はTV中継されるものの非常に長いプロセスとなります。第1巡目や2巡目はまだいいものの、その後のラウンドでは同じことの繰り返しで全体的に中だるみしがちです。
それを解消するためかどうかはわかりませんが、プロチームの中には場を持たせるために(?)特別ゲストに指名選手を発表させることを画策しているチームもあるということです。
たとえば・・・
タンパベイバッカニアーズは第4巡目の指名をオウムに発表させるそうです。
サンフランシスコ49ersは映画「スターウォーズ」シリーズでおなじみのR2-D2が第4巡目、チューバッカが第5巡目の指名を行うとか。
ミネソタヴァイキングスは2月に行われた平昌冬季五輪の男子カーリングで金メダルを取ったアメリカ代表チームに発表を任せるらしいです。が、そのうちの一人はヴァイキングのライバルでもあるグリーンベイパッカーズの大ファンということでこのオファーを拒否したとか。
アリゾナカーディナルスは3日目の指名をアリゾナ州ウィンズローから行うらしいです。ここはディズニー・ピクサーが制作した「カーズ(Cars)」に出て来る旧街道のモデルになった国道66号線(ルート66)が通っている場所なのです。
マイアミドルフィンズの3日目の指名は今年2月に校舎内で銃撃を受け17名の犠牲者を出したマジョリー・ストーンマン・ダグラス高校(Marjory Stoneman Douglas)のサバイバー、及びここで犠牲になった高校アメフト部のアシスタントコーチの家族たちによって行われるそうです。
最後に・・・
NFLチームとしては戦力補充として最重要なドラフト。一方カレッジフットボール界に関して言えばそこまで影響があるとはいえませんが、各地で行われてきた春季キャンプも終りを迎え、いよいよアメフトの話題がなくなってくるというタイミングでのドラフト開催ですから、アメフトに植えているファンにとっては格好の話題のネタになるわけです。
当日はライブで更新はできないかもしれませんが、別ページにて選択選手たちを紹介してみたいと思っています。お楽しみに