2016年度にカレッジフットボール界に現れた「シンデレラチーム」と言えばBig Tenカンファレンスを制したペンシルバニア州立大、Pac-12カンファレンス南地区タイトルを奪ったコロラド大、そしてグループオブ5チームとはいえレギュラーシーズンを無敗で終えたウエスタンミシガン大などが挙げられます。これらのチームは2016年度シーズン開始時には誰からも注目されませんでしたが、シーズンを通して驚きの記録を残し、ファンを大いに楽しませてくれました。
彼らは正真正銘の「シンデレラチーム」と言えると思いますが、他にも例えば昨年まさかのカレッジフットボールプレーオフに出場するまでに至ったワシントン大、2015年度に3勝9敗だったのに昨年度9勝4敗という成績を残したジョージア工科大も、誰も想像できなかったという点では「シンデレラチーム」に相当すると言えるのかもしれません。
とにもかくにも今挙げたチームはそれぞれ驚きのレベルは違えど、いい意味で世間の期待に反してくれたチームたちです。果たしてそのような演出を見せてくれるチームが来たる2017年度シーズンにも現れるでしょうか?今回はそんなポテンシャルを秘めていそうなチームをパワー5カンファレンスから厳選してみたいと思います。
シラキュース大
シラキュース大といえば男子バスケットボール部で知られる大学です。フットボール部は1992年以来10勝を挙げたシーズンは1度しかなく、彼らが最後にシーズン終了時にトップ25位入りを果たしたのはその唯一の10勝シーズンであった2001年度のことです。
ディノ・バーバーズ(Dino Babers)監督の初年度となった2016年度シーズンは4勝8敗と大きく負け越しましたが、それでも攻撃陣ではこれまでにない可能性を示してくれました。QBエリック・ダンジー(Eric Dungey)の成長は著しく、特にパス成功率は64.8%と安定感を増してきました。今年3年生となるダンジーはさらに成長したプレーを見せてくれるでしょう。
オフェンスが点を取ってくれることは期待できそうですが、彼らが本当に我々ファンを驚かせてくれるようなシーズンを送るにはディフェンスの出来にかかっています。昨年度の総失点数は463点で、これは1試合平均38.6失点という計算になります。そして相手に許したヤード数も1しあい平均500ヤードと大変お粗末でした。
もしディフェンス陣が昨年度と同じ轍を踏まず大きく成長していれば、シラキュース大が予想以上の戦績を残すかもしれません。
マイアミ大
マイアミ大は昨年までの先発QBだったブラッド・カーヤ(Brad Kaaya)を失い新たなオフェンシブリーダーを発掘しなければなりません。しかしマーク・リクト(Mark Richt)監督はすでに昨年非常に高い評価を受けていたQBジャック・アリソン(Jack Allison)を入部させることに成功しました。またディフェンスではCBトラジャン・バンディ(Trajan Bandy)、DLジョナサン・ガーヴィン(Jonathan・Garvin)といった若く才能あふれる選手が溢れています。
昨年すでに9勝4敗という今後に大きな期待を持てるシーズンを送ったリクト監督。彼らが所属するACC海岸地区にはピッツバーグ大やジョージア工科大といった波にのるチームもいますが、ピッツバーグ大はマイアミ大と同じように新QBを据えなければならない上にペンシルバニア州立大やオクラホマ州立大といった強敵相手の交流戦が組まれていますし、ジョージア工科大もまたQBジャスティン・トーマス(Justin Thomas)、OLフレディー・バーデン(Freddie Burden)、LB P.J. デーヴィス(P.J. Davis)といった主力を失ってしまいました。それを考えればマイアミ大がこの地区を制することは難しいことではないでしょう。
昨年度ボウルゲームで全米16位のウエストバージニア大を倒し、2006年度以来のポストゲームでの勝利を挙げたマイアミ大がその勢いのまま2017年度にはかつて彼らが一時代を築いた時のような強さを見せつけてくれるかもしれません。
カンザス州立大
カンザス州立大のビル・シュナイダー(Bill Snyder)監督はオフシーズン中に咽頭ガンと診断されましたが、今年で77歳になる名翁はドクターのゴーサインを貰い今年もチームを率いていくことになりました。
昨年のチームは最後の7試合で6勝を挙げ、ボウルゲームでもテキサスボウルで強豪テキサスA&M大相手に33対28で勝利を収めることに成功しています。そして今年はそのチームからほぼ全員が残留し、その中にはQBジェシー・アーツ(Jesse Ertz)、WRバイロン・プリングル(Byron Pringle)、RBアレックス・バーンズ(Alex Barnes)らが顔を連ねます。またカンザス州立大の強さの理由であるディフェンス陣は昨年のBig 12カンファレンス内で最少失点数を誇るユニットです。数名の4年生選手が卒業していったとはいえ、彼らディフェンス陣は今年も健在であるとみていいでしょう。
Big 12ではオクラホマ大やオクラホマ州立大がスポットライトを浴びがちですが、カンザス州立大が今年彼らの足元をすくう存在となるかもしれません。
テキサス大
今年初陣を飾るトム・ハーマン(Tom Herman)。ヒューストン大での手腕を買われて名門テキサス大からヘッドハントされた、現在全米で最も注目される若き指揮官の中の一人です。彼の初年度となる2017年度はリクルーティングで全米28位ということで、真の意味で彼のチームとなるにはまだ時間がかかりますが、前コーチのチャーリー・ストロング(Charlie Strong)氏から受け継いだ多くの有能選手たちを就任以来半年以上指導してきました。
その中には期待度の高いQBシェーン・ビューシェル(Shane Buechele)、卒業したスターRBドンタ・フォアマン(D’Onta Foreman)の後を継ぐRBクリス・ワレン(Chris Warren)、そして3人のポテンシャルの高いWRが含まれています。またディフェンス陣でも多くの主軸選手が今年も健在。
昨年5勝7敗と振るわなかったテキサス大ですが、新コーチ・ハーマン監督の下最低でも昨年を超える戦績、そしてひょっとすればライバル・オクラホマ大らを脅かす存在になる可能性もあるのではないでしょうか?
ノースウエスタン大
2016年度のスター選手であったWRオースティン・カー(Austin Carr)を失う事にはなりましたが、ノースウエスタン大の攻撃陣は彼以外はほぼ同じ面子が今年も帰ってきます。QBクレイトン・トーソン(Clayton Thorson)は昨年22TDを含む3000パスヤードを記録した波に乗る選手ですし、RBジャスティン・ジャクソン(Justin Jackson)は昨年出場したピンストライプボウルで224ランヤードに3TDを記録して最優秀選手に選ばれた期待の選手です。
そして今年のスケジュールも彼らに追い風となっています。強敵のミシガン大とオハイオ州立大との対戦は無く、ペンシルバニア州立大、ミシガン州立大、アイオワ大、ミネソタ大らをホームで迎え撃つことになっています。もし彼らがカンファレンス戦最初の3試合(ウィスコンシン大、ペンシルバニア州立大、メリーランド大)のうち2勝を挙げることができれば、Big Tenカンファレンスタイトルレースが面白いことになるかもしれません。
オレゴン大
オレゴン大自体がこのリストに載っていること自体数年前なら考えられないことでした。しかし昨年は4勝8敗ととんでもないシーズンを送ってしまい、その結果マーク・ヘルフリッチ(Mark Helfrich)監督が解雇されてしまうという事態に。そして新監督として就任した元サウスフロリダ大のウィリー・タガート(Willie Taggart)監督は就任後いきなり自らの選手たちを病院送りにするという失態を犯し、前途多難なスタートとなってしまいました。
しかしチームの再建は確実に進んでいます。コーチ陣では昨年コロラド大の大躍進を影で支えたジム・レヴィット(Jim Leavitt)氏をディフェンシブコーディネーターに、そして元アラバマ大のOLコーチだったマリオ・クリストーバル(Mario Christobal)氏をオフェンシブコーディネーターに迎えました。
期待の選手は1年生ながらコーチ陣を唸らせたQBジャスティン・ハーバート(Justin Herbert)。そして彼を守るOL陣には昨年1年生ながら先発出場した4人が2年生となり戻ってきます。そしてそんな若いオフェンス陣をまとめるのが4年生RBロイス・フリーマン(Royce Freeman)。カレッジキャリア最後の年を迎えるにあたり気合が入っているに違いありません。
彼らがトップ10入りするようなチームかどうかはわかりませんが、少なくとも昨年の4勝8敗と言う成績を上回ることは大いに期待できそうです。
UCLA
Pac-12カンファレンス南地区において現在のところ頭一つ文抜き出ているのはサザンカリフォルニア大でしょう。そして昨年のシンデレラボーイズ・コロラド大、そしてユタ大もまた今季に向け昨年の勢いを再び再現しようと躍起になるでしょうが、彼らがサザンカリフォルニア大と対等にやりあえるかといったら正直少々役不足感が否めません。
ここで注目したいのはUCLAです。UCLAは昨年NFL級QBと謳われたジョシュ・ローゼン(Josh Rosen)を擁しシーズンを迎えましたが、途中で彼が肩を故障し残り7試合で欠場を余儀なくされました。彼が出場した最初の6試合では1915パスヤード、10TD、5TDと言う数字を残していたローゼン。彼のポテンシャルを最大限に生かすためにジム・モーラ(Jim Mora)監督はミシガン大でパスコーディネーターを務めていたジェド・フィッシュ(Jedd Fisch)氏を招聘。ローゼンが怪我を克服し、なおかつシーズンを無傷で乗り切り、そして昨年気を吐いたディフェンス陣が今年も健在であれば、UCLAこそが彼らのご近所ライバルであるサザンカリフォルニア大の前に立ちはだかる存在となることができるかもしれません。
アーバン大
昨年は8勝5敗と言う成績ながらもシュガーボウルに出場できたアーバン大。最終ランキングも24位とトップ25入りを果たし、必ずしも結果を残していないチームとは言えません。しかしそれでもこのリスト入りを果たしたと言うからには彼らが今季これ以上の大きな結果を残す可能性があるのではないか、と思うからです。
やはり特筆すべきはQBジャレット・スティッドハム(Jarrett Stidham)。元ベイラー大のタレントQBであるスティッドハムがアーバン大への転校を決めた時、おそらくアーバン大ファンのテンションはかなり上がったことでしょう。昨年の先発QBであるショーン・ホワイト(Sean White)、ジョン・フランクリン・III(John Franklin III)らとの先発争いに勝たなければなりませんが、スティッドハムが噂通りの凄腕QBであるならば、アーバン大のオフェンスは一見の価値あり、となるでしょう。
ディフェンス陣からは大黒柱であったDLカール・ローソン(Carl Lawson)がNFLへと旅立って行きました。彼に加えDLモントラヴィウス・アダムス(Montravius Adams)が抜けたのは非常に痛手ではありますが、それでもディフェンシブコーディネーターのケヴィン・スティール(Kevin Steele)氏率いるアーバン大守備陣はSEC内でも随一のユニットとなるでしょう。
ですからもしQBのスティッドハム(もしくは彼を凌駕する他のQB)が真の実力を解放できるようであれば、最近同じ地区内で全く歯が立たないアラバマ大に苦汁を嘗めさせるだけのチームとなりえるかもしれません。
まとめ
いかがでしたでしょうか?どのチームがブレークアウトするかと言うのはなかなか予測が難しいですが、どのシーズンでも大抵そういった予想外の成績を残すチームというのが現れるものです。それがどのチームなのかを考えるのもまた一興ですよね。