ルイジアナ州立大の行く末 - ANY GIVEN SATURDAY

ルイジアナ州立大の行く末

ルイジアナ州立大の行く末

サウスイースタンカンファレンス(SEC)の名門・ルイジアナ州立大(LSU)はカンファレンスタイトル14つ、ナショナルタイトル3つ、これまでオールアメリカン選手も31名輩出するほどの強豪校として知られてきました。2000年以降は2003年にニック・セイバン(Nick Saban、現アラバマ大監督)氏、2007年にレス・マイルズ(Les Miles)氏がそれぞれチームを全米優勝へと導き、SECでも非常に存在感のあるチームとして健在。また今年のNFL開幕時の時点ではFBS(フットボールボウルサブディビジョン)出身校として最多の51人のプロ選手がLSU出身というデータもあり、マイルズ氏及びセイバン氏の息のかかった選手たちが多くプロレベルで活躍しているというわけです。

 

マイルズ氏の解雇劇

そんなLSUですが、彼らはカンファレンスタイトルからは2011年、ナショナルタイトルからは2007年を最後に遠ざかっています。それでもマイルズ氏が率いたチームは2012年から2015年まではそれぞれ10勝3敗、10勝3敗、8勝5敗、9勝3敗と決して悪い数字を残してきたわけではありません。しかしそのマイルズ氏は2016年度途中に解雇されてしまいました。

マイルズ氏解雇の予兆はありました。2015年度最高位全米2位にまで上り詰め迎えたアラバマ大との一騎打ちに敗れると、続くアーカンソー大戦とミシシッピ大戦を落としてシーズン終盤の大事な時期に3連敗。一気にナショナルタイトル争いはもとよりカンファレンスタイトル獲得の夢も潰えてしまったのです。

この時大学側は水面下でマイルズ監督と袂を分かつことを画策していたらしくその情報が漏れ一時は騒然となりました。シーズン最終戦のテキサスA&M大戦に勝ち、更にファンたちのマイルズ氏続投を熱望する声に押され彼の監督の座は一時確保されたという経緯があったのです。しかしこの時の一連の騒動は大学側からすればマイルズ氏への「最後通告」だったに違いありません。

2016年度のLSUは開幕前のランキングで全米5位につけ、RBレナード・フォーネット(Leonard Fournette、現ジャクソンビルジャガーズ)らを擁しチームへの期待は膨らみましたが、初戦のウィスコンシン大で敗れると4戦目のアーバン大戦にも敗れ開幕後4試合で2勝2敗となるとついに大学側はマイルズ氏解雇を断行。同チームでの11年間のコーチ生活にピリオドを打ちました。


高まるハードル

LSUでの総合成績は114勝34敗、カンファレンス成績は62勝28敗。1つの全米タイトルと2つのカンファレンスタイトル。就任以来負け越しシーズンはただの1つもなく、ボウルゲームにも毎年出場(7勝4敗)。これだけみればなぜ彼が解雇されたのかと疑問を持つ人は多いでしょう。しかも数字だけみれば決して晩年も悪い成績を残していたわけではありません。それでも大学側はマイルズ氏を見限ったわけです。それはなぜか?

それは偏に大学側が求めているハードルをマイルズ氏が超えられなかったからに他ありません。そのハードルとはいうまでもなくカンファレンスタイトル、そしてナショナルタイトル獲得というわけです。その悲願達成のためにはたとえ毎年二桁勝利をあげていたとしても、それを予感させてくれなければマイルズ氏級の監督でもクビを切るというわけです。

もっともカンファレンスタイトルはともかくナショナルタイトルを頻繁に獲得するなんてことはそうたやすいことではありません。今シーズン開幕前に引退したオクラホマ大の名将、ボブ・ストゥープス(Bob Stoops)氏は同チームを17年間指揮し惜しまれつつチームを去りましたが、ナショナルタイトルは2000年度に獲得した1つのみ(カンファレンスタイトルは10度獲得していますが)。全米のトップに立つことがいかに難しいかを示していると思います。

ただ一方でそれをいともたやすく(もちろんそんなことはないですが)やってのける人物がいます。それがアラバマ大のニック・セイバン(Nick Saban)監督です。彼はアラバマ大に就任した2007年から実に4度(2009、2011、2012、2015年)全米王座に輝き、昨年は敗れたもののナショナルタイトルゲームに進出も果たしています。彼は常にカンファレンスタイトル(現在3連勝中)だけでなくナショナルタイトルを毎年狙えるチームを毎年輩出しているといわけです。

つまりセイバン監督が他のチームが監督に求めるハードルを高めてしまったのです。「アラバマ大ができるなら我がチームにもできるだろう!」とアラバマ大のようなチームを作ってくれる監督を欲するわけです。そしてそれができないならばクビを切って別の監督を探す・・・。それが強豪校で結果を常に求められるチームで横行しているというのが現状です。

LSUにとってはさらにこのプレッシャーは高くなります。というのも彼らが所属するSEC西地区にはそのアラバマ大が所属し、先も言ったようにアラバマ大は現在カンファレンス3連覇中と敵なしです。LSUが上に行き着くためにはアラバマ大は避けて通れない壁な訳で、彼らを倒せなければカンファレンスタイトルゲームにすらたどり着けないのです。しかも彼らにとって厄介なのはセイバン監督はかつて自分たちをを指揮していたコーチであったということ。彼の下チームは2003年に全米制覇もなしとけています。彼は2004年にチームを離れマイアミドルフィンズの監督に就任することになりますが、LSUはセイバン監督に裏切られたという思いを抱いており、そんな人物が率いるアラバマ大に手も足も出ない今の現状には耐えられないという側面も無きにしも非ずでしょう。


オルジェロン体制

そのような背景を経てLSUはマイルズ氏ほどのコーチとの縁を切り、結果2016年度に臨時監督を務めていたエド・オルジェロン(Ed Orgeron)を正式な監督に任命しましたが、それはまだ彼らが2016年度シーズンを終える前の話でした。普通ならシーズン終了を待って本当に任せられる監督を吟味するものだと思われましたが、大学側はオルジェロン監督にマイルズ氏の後を正式に継がせたのです。それは選手たちからの多大なるサポートがあったからだとも言われています。

オルジェロン監督はこれまでマイアミ大、シラキュース大、ミシシッピ大、テネシー大、サザンカリフォルニア大らでコーチングの経験がありますが、ヘッドコーチを務めたのはミシシッピ大のみ。彼はその前職であるサザンカリフォルニア大での功績が認められてミシシッピ大にやってきたのですが、2005年から2007年まで全て負け越してしまい2007年度シーズン後に解雇されてしまいます。2010年に再びサザンカリフォルニア大に帰ってきたオルジェロン氏は当時USCの監督であったレーン・キフィン(Lane Kiffin)氏が2013年度シーズン途中に解雇されると臨時監督に指名されそのシーズンを乗り越えました。その間チームは6勝2敗と好成績を残します。シーズン後オルジェロン氏は正式に監督になるべくインタビューを行いましたが、USCは彼ではなくワシントン大のヘッドコーチだったスティーブ・サーキジアン(Steve Sarkisian)氏にチームのバトンを渡します。その直後オルジェロン氏はUSCを去ることになるのです。

2015年度にオルジェロン氏はマイルズ氏によってLSUのディフェンシブラインコーチに任命されます。ルイジアナ州出身のオルジェロン氏にとってLSUでコーチのポジションを拝命されることは特別な意味がありました。そして既述の通り彼はそのままヘッドコーチにまで昇格し生まれ故郷の旗艦大学で監督を勤めることになったわけです。

今季プレシーズン13位とまずまずの位置から発進したLSUは開幕後2連勝として第3戦目にカンファレンス戦初戦となるミシシッピ州立大との試合を迎えます。しかしこの試合を37対7という完敗で落とすと、4戦目のシラキュース大戦では35対26と格下相手に接戦を強いられ、そして5戦目にはさらに格下のトロイ大にホームで24対21とまさかの敗戦を喫するという体たらくを見せてしまいました。もちろん全米ランキングでは圏外に転げ落ちています。

チームのスターRBであるデリウス・ガイス(Derrius Guice)がミシシッピ州立大で負った怪我で欠場を強いられているという状況はありますが、彼が試合に出れないということがチームの不調の唯一の原因とは言えません。マイルズ氏を解雇してこの結果か?という疑問は自ずとオルジェロン監督の手腕に向けられるのは当然のことでしょう。そしてもっと言えばそれを断行した大学側の決断は正しかったのか?と思わずに入られません。

オルジェロン監督新体制下のLSUはチームとしてはどうなのでしょうか?第4戦目に対戦したシラキュース大のディノ・バーバーズ(Dino Babers)監督は5戦目に対戦したノースカロライナ州立大とLSUを比べて「ノースカロライナ州立大のほうがLSUよりも強い」とインタビューで応えていますし、またある匿名のコーチは現在のLSUを「ハードにプレーしないチームに成り下がってしまった」とか「どうしてかわからないかとにかく彼等は軟弱になってしまった」とトロイ大戦での敗戦を見てコメントを残しています。

また別のコーチは「ディフェンス選手はただ突っ立っているだけなんです。ボールのほうへ走っていかない。本当に理解できません。」とか、「私は(ディフェンシブコーディネーターの)デイヴ・アランダ(Dave Aranda)氏のことはよく知りませんが、彼はDCとして高額のサラリーを受け取っていることは知っています」とアランダ氏を揶揄するような言い方をするコーチまで現れる始末。

スポーツ専門局ESPNのアナリストでルイジアナ州立大出身のブーガー・マクファーランド(Booger McFarland)氏も「LSUが(オフェンシブコーディネーターの)マット・カナダ(Matt Canada)氏を起用すると知ったときからチームが『ソフト』になってしまうのではないかと危惧していましたが、その不安が的中し今目の前で彼等がそのようになってしまっているんです。ラインオブスクリメージでは相手にフィジカルで劣っていますし、それはオフェンスがラン主体ではなくスプレッドオフェンスに移行してしまったことの副産物でもあります。」と母校の醜態に嘆いています。

トロイ大戦での恥ずべき敗戦から明けた翌週、オルジェロン監督はトロイ大戦を迎えるにあたって自らがオフェンスの戦略の舵取りをして作戦を変えたと認めました。この試合では1年生のOLを二人も投入することが決まっていたため、彼らに合わせオフェンスをよりシンプルなものにしたかったというのが、彼がオフェンスの戦略を変えた理由だそうです。しかしそれは功を奏することはなく、それが主な原因かどうかは分かりませんがチームはトロイ大に敗れたのです。

「今後私がオフェンスに介入することはありません。このチームのオフェンスはマット(カナダ氏)のものであり、私が口出しすべきではなかった。今後は彼が作戦を立て、プレーコールしていきます。」とオルジェロン監督は話しました。


大学側の決断は正しかったのか?

シーズンはまだ半分しか経っておらず、3勝2敗のLSUが今後立て直して二桁勝利を挙げる可能性もありますし、もしそうなればこうしてつらつらと書いている私の考察も無意味なものになってしまいますが(笑)、今のところオルジェロン監督の指揮するチームは周囲の期待を裏切るものになっていると言わざるを得ません。

マイルズ氏が解雇された時、それを支持する人の数と同じくらい彼の解雇に失望したファンも居たことだと思います。私もそのうちの一人です。先にも述べましたが、彼は解雇されるまで一度も負け越したことがない名将です。これが別のチームならばこうも彼のことを見限ることはしなかったでしょう。あのセイバン監督ですらマイルズ氏がLSUからクビを切られたことを「ナショナルタイトルを獲得したほどの監督をシーズン途中に解雇するなんて馬鹿げている」と話したくらいです。

誰もが皆全米で一番の高みを目指します。それを極度に望む大学側、もっと言えば資金的にバックアップをしている支持者達の無茶に高く設定されたゴールのためにマイルズ氏はチームを去らなければならなかった。そこまでしたからには次期監督には彼以上の成績をいち早く残してほしいと願うことでしょう。それがオルジェロン監督で達成できるのか、というのがイマイチ分からないところです。

仮にオルジェロン監督がミシシッピ大監督時のような成績しか残せないような監督であったならばその責任は彼を監督に指名した大学側の非であるといわざるをえません。マイルズ氏の後釜を決めるのをシーズンが終わってからゆっくり考えても良かったはずです。それをせずにフライング気味にオルジェロン監督に託してしまったのですから。

実際すでに「オルジェロン監督ではだめだ」と考えているファンはおり、クラウドファンディングの「GoFundMe」のページでファンの一人が「Save LSU Football」という名のファンディングページを立ち上げました。その目的は唯一。「オルジェロン監督をHCの座から引きずり下ろす」ということです。今すぐにオルジェロン監督を解雇すると多額のバイアウト費をLSUは支払わなければならないため、それをファンが肩代わりする代わりにオルジェロン監督に出ていってもらおう、というのがこのクラウドファンディングの趣旨らしいです。もちろんまだフルタイムの監督として1シーズンも過ぎていないオルジェロン監督を解雇せよというのは行き過ぎだと思いますし、まずありえないと思いますが、これに賛同するファンは少なくはないでしょう。これが今ファンが感じている本音なのかも知れません。


解決策は?

マイルズ氏が解雇された原因の一つに彼のオフェンスが機能しなくなっていたことが上げられます。ランを主体としたオーソドックスなオフェンスは相手に攻略され昔ほどの威力を発揮しなくなっていました。彼がもう少し柔軟に近代のオフェンスのトレンドを取り入れていればひょっとしたら状況は変わっていたのかも知れません。その解決策としてピッツバーグ大のOCだったカナダ氏を招聘したわけですが、残念ながら今季5試合を終えて新オフェンスの威力は鳴りを潜めたままです。

パスオフェンスが皆無に近かったマイルズ氏のオフェンスに代わってよりボールを散らすオフェンスが得意であったカナダ氏が率いる今季のオフェンスではパスオフェンスで全米76位、スコアリングオフェンスで83位と半分以下の数字しか残せていません。また今季ダニー・エトリング(Danny Etling)とマイルズ・ブレナン(Myles Brennan)のツインQBシステムを敷いていますが、これも功を奏しているとは言い難いです。というよりも彼等を使い分けるタイミングに疑問が残るシーンが多く見られるのです。それは明らかにコーチ陣の問題であります。

ディフェンスは失点数で全米31位と悪くない数字を残しており、このチームの強みともいえますが、ミシシッピ州立大は彼等から285ヤードをラン攻撃で奪っていますし、シラキュース大戦では265ヤードも相手に投げられてしまいました。そして大失態となったトロイ大との敗戦ゲームでは格下相手に191ヤードも走られてしまったのです。DCのアランダ氏は優れたディフェンス眼を持ったコーチとして知られてきましたが、これまでのディフェンスのパフォーマンスは彼の描く理想像とはまだかけ離れていることでしょう。

また今後のスケジュールも厳しくなっていくこととなっており、それも彼等の不安材料に拍車をかけています。今週末のフロリダ大、アーバン大、アラバマ大、テキサスA&M大などは大変タフな試合になるはずです。このままの調子で行けばカンファレンス戦で彼等がどれだけ勝ち星を重ねることが出来るか・・・。

今後彼等が立ち直って勝利を増やしていく可能性も十分ありますが、それにはオフェンス・ディフェンス双方でのテコ入れが必須事項です。チームがタフじゃなくなった、という評価は非常に気になります。それは往々にして監督のスタイルとか振る舞いとか哲学とかが影響してくるものです。サウスイースタンカンファレンスという猛獣だらけのカンファレンスで生き残るためにはそれなりの「荒さ」が無いと太刀打ちできないでしょう。それがLSU不調の原因だとしたらオルジェロン監督がこのチームの長として適任なのか・・・。弱いLSUはSECを弱くします。願わくば私の不安を覆して彼等が再び全米の檜舞台に帰ってきて欲しいものです。

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