Coaching Carousel 2017 – アリゾナ大の場合

Pac-12カンファレンス所属のアリゾナ大は2004年から2011年までマイク・ストゥープス(Mike Stoops、元オクラホマ大監督ボブ・ストゥープス氏の弟)監督に率いられましたが、8年間の戦績は44勝53敗と振るわず、出場できたボウルゲームもたったの3つ。そして2011年度シーズンに開幕後1勝5敗とするとシーズン途中で大学側はストゥープス氏に見切りをつけて彼を解雇します。

その後釜に任命されたのがリッチ・ロドリゲス(Rich Rodriguez)氏でした。

ロドリゲス氏といえば1998年に奇跡的に無敗チームとなったトゥレーン大でオフェンシブコーディネーターを務めていたことで名が知れるようになり、当時の監督だったトミー・バウデン(Tommy Bowden、元フロリダ州立大監督のボビー・バウデン氏の実子)氏に追従してクレムソン大のオフェンシブコーディネーターに就任。当時まだ目新しかったスプレッドオフェンスを駆使して、当時のコーチングマーケットにおいて急先鋒となっていました。

そして2000年のシーズン後にロドリゲス氏の母校であるウエストバージニア大が彼に監督就任を打診。母校に凱旋というこれ以上ない形で自身初のFBSレベルでのヘッドコーチを職を得ることになります。当時まだ存在したBig Eastカンファレンス(のちのAACの母体)では7年間で4度のカンファレンスタイトル獲得、彼のベストシーズンとなった2005年には11勝1敗でシュガーボウルでも勝利し最終ランキングで5位にまでつけるほどになりました。

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ウエストバージニア大時代のロドリゲス氏

しかし2007年度シーズン後にミシガン大のHCに空きができるとロドリゲス氏は母校を去ってミシガン大の新監督に就任することになります。これを巡っては一悶着あり、例えばロドリゲス氏がウエストバージニア大の所有物であるデータなどを持ち出したとか、バイアウト費を払うとか払わないとかで揉めたとか、立つ鳥跡を濁しまくっていました。しかし何よりもウエストバージニア大を怒らせたのは4ヶ月前に契約更新し「一生ウエストバージニア大に仕える」という旨の発言をしたにもかかわらずチームを去ることになり、しかもせっかく出場することになったBCSボウルゲームのひとつ、フィエスタボウル(オクラホマ大と対決)も指揮しないとなったからです。

ウエストバージニア州では裏切り者となってしまったロドリゲス氏ですが、ミシガン大で初年度となった2008年度は3勝8敗としミシガン大の長いフットボール部史上でも最低のシーズンを送ってしまいました。またそれだけでなくロドリゲス氏陣営は再三にわたりNCAAのルールを破りつづけ、クリーンで名門なイメージのあるミシガン大において初めてメジャーなNCAAの捜査のメスが入るという醜態を犯してしまったのです。

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満を持して名門ミシガン大の監督に任命されたロドリゲス氏でしたが・・・

結局ミシガン大では2008年に3勝9敗、2009年に5勝7敗、そして2010年にはなんとか勝ち越して7勝6敗とするも、トータルで15勝22敗とし3年でミシガン大の監督の座を追われることになります。

そしてその2年後、ストゥープス氏を解雇したアリゾナ大がロドリゲス氏を新監督に起用することを決定。アリゾナ大では汚名を挽回するように勝ち越しシーズンを積み重ねることに成功。2014年にはPac-12カンファレンス南地区を制してタイトルゲームに進むにまで至りました。2016年度は3勝9敗(カンファレンス成績は1勝8敗)と惨敗しますが、昨年度はシーズン途中から登場したQBカリル・テイト(Khalil Tate)が周囲を驚かす素晴らしいパフォーマンスを見せ続け、2勝2敗スタートと沈みかけていたチームに新たな浮力を与え、またそれはロドリゲス氏のクビを繋ぐ大きな要因になったのでした。

テイトのおかげでシーズン中盤に持ち直したアリゾナ大は終盤5試合中4試合を落として期待を膨らませたファンたちにため息をつかせましたが、まだ2年生であるテイトはロドリゲス氏がウエストバージニア大時代に擁したQBパット・ホワイト(Pat White)を彷彿とさせ、彼の存在だけでもロドリゲス氏率いるアリゾナ大の来季は明るいと思われましたが・・・。

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ロドリゲス氏とカリル・テイト

年明けの今年1月2日、カレッジフットボール界はジョージア大アラバマ大のナショナルチャンピオンシップゲームへ向け盛り上がりを見せていた頃、アリゾナ大はロドリゲス氏を解雇してしまいます。あまりにも急な話で聞く耳を疑いましたが、どうやら彼は元スタッフの女性からセクハラで訴えられていたということで3ヶ月の調査の結果、大学側はロドリゲス氏に落ち度があったとして彼と袂を別つ決断をしたのです。セクハラが社会的問題に発展している今日、少しでもその疑いがあればなんらかの処罰は間逃れないのが現状であり、ロドリゲス氏解雇は不可避の出来事であったと言えます。

もっともこのセクハラ事件の背景にはロドリゲス氏が不倫していたことを知ったスタッフの女性にロドリゲス氏が口止めを強要したことから発展した事件でもあり、ロドリゲス氏自身は不倫の事実は認めたもののセクハラ疑惑は未だに否定しています。またロドリゲス氏との和解のためにこの女性が700万ドル(約7億円)もの和解金を要求していたという話もあり、この事件自体はまだ尾を引きそうです。

水面下でアリゾナ大が3ヶ月もこのことに関して調査していたとは言え、一般のファンには寝耳に水だったロドリゲス氏の解雇。ヘッドコーチマーケットはある程度落ち着いた頃に起こったこの解雇劇だったため、アリゾナ大は新監督獲得レースに遅れを取る形になりました。が、結局アリゾナ大はレギュラーシーズン後にテキサスA&M大から解雇されていたケヴィン・サムリン(Kevin Sumlin)氏に白羽の矢を立てます。

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テキサスA&M大時代のサムリン監督

Coaching Carousel 2017 – テキサスA&M大の場合」の記事でも紹介した通り、テキサスA&M大でのサムリン監督の戦績は歳を追うごとに下降し、大学関係者やファンの期待に応えることはできませんでした。それは彼が2年目に5年間で3000万ドル(約30億円)という途方も無い契約更新をしたほどに大学が彼に大きな期待をかけていたからに他ありません。

テキサス州という、フットボールが「州技」のような場所では自然と監督に課せられるハードルは高くなりますが、お世辞にもフットボール強豪校とは言えないアリゾナ大ならば、サムリン監督は無謀とも言えるほどのとんでもない期待をかけられることもないでしょう。それならば向こう2、3年の結果に焦燥感を感じる必要もなく、落ち着いてチーム育成に取り組めるはずです。ただここでしくじればサムリン監督にサードチャンスが訪れるかどうかはわかりませんから、何としてもそれなりの結果をフィールド上で残しておきたいものです。

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