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第14週目レビュー

第14週目レビュー

各カンファレンスでの優勝決定戦が行われた第14週目。それぞれのチームが所属するカンファレンスの頂点を目指して最後の戦いに挑んだわけですが、それだけではなくカレッジフットボールプレーオフ(CFP)出場に向けて最後のテストマッチ、並びにアピールのチャンスでもあったのです。そんな様々なチーム、選手、コーチたちの思惑が凝縮した第14週目を振り返ります。

アラバマ大35、ジョージア大28

サウスイースタンカンファレンス(SEC)優勝決定戦の顔合わせは奇しくも昨年度のナショナルチャンピオンシップゲームと同じものになりました。しかも試合会場もジョージア州アトランタ市にあるメルセデスベンツスタジアムアトランタファルコンズの本拠地)と全く同じだったため、おそらく試合に臨んだ選手や監督たちは前回の激戦が脳裏を駆け巡ったことでしょう。

その試合で勝ったのはアラバマ大。今年も全米1位で5年連続プレーオフ進出を目論みます。一方のジョージア大は現在4位でCFP出場可能圏内に入っていますが、アラバマ大に勝つことは必須条件でしたし、何よりも彼らにとっては前回のリベンジを果たすことに相当燃えていたことでしょう。

だからなのか分かりませんが、出だしこそアラバマ大ディフェンスがジョージア大OL陣に襲いかかって言い滑りだしを見せたかに見えましたが、その後はジョージア大OLが全米最強とも歌われるアラバマ大フロントセブンのプレッシャーをほぼ完全に押さえ込み、RBデアンドレ・スウィフト(D’Andre Swift)とイライジャ・ホリフィールド(Elijah Holyfield)のパワフルでスピーディーなランが効果的にヤードを稼げば、OL陣のプロテクションによりQBジェイク・フローム(Jake Fromm)は次々とパスをWRやTEに決め続けてアラバマ大ディフェンスを翻弄します。

またアラバマ大オフェンスはハイズマントロフィー候補者QBトゥア・タガヴァイロア(Tua Tagovailoa)がいつもと違ってボールを手放すタイミングを何度も誤り、またジョージア大ディフェンスが2列目のプレッシャーを上手く隠してタガヴァイロアを苦しめました。そして普段なら難なくキャッチできそうなパスを何度もレシーバーたちが取りこぼし、いつものアラバマ大らしからぬ浮ついた感満載のチグハグな展開が続きました。そして前半早々タガヴァイロアは足首を捻挫。このことも2つのINTパスを犯すという彼らしくない結果に繋がったのでしょう。

21対7と今シーズンアラバマ大にとって最大の点差をつけられ、昨年のタイトルゲームのように前半だけでジョージア大が完全に試合を掌握した感じになった前半終了間際。アラバマ大はランゲームでリズムを掴みだし、RBジョシュ・ジェコブス(Josh Jacobs)の59ヤードのロングランとダミアン・ハリス(Damien Harris)のランでジョージア大陣内へ急襲するとジェコブスがエンドゾーンで一回ファンブルするもそれを自らリカバーする好プレーでTDを奪い、前半は21対14でジョージア大リードのままハーフタイムに突入。

後半アラバマ大がどのように戦略を練り直してくるか注目されましたが、掴みかけたと思われたリズムもジョージア大の魂のこもったディフェンス、そして相変わらず健在なスウィフトとホリフィールドのランアタックとフロームの正確無比のパスで逆にアラバマ大はジョージア大に追加点を許してしまいます。しかし第3Q終了間際にはタガヴァイロアからWRジェイレン・ワドル(Jaylen Waddle )への51ヤードパスTDが決まって28対21と追いすがりゲームはいよいよ第4Qへ。

しかしここにドラマが待っていたのです。第4Q残り11分でタガヴァイロアは味方OLに足首を踏まれて再び捻挫をおこし、今度は立ち上がれないほどの激痛にフィールド上で悶絶。この土壇場で途中退場を余儀なくされたのです。その彼の代わりに登場したのがジェイレン・ハーツ(Jalen Hurts)。彼は2016年、2017年の先発QBでしたが、今年は下級生のタガヴァイロアに先発を奪われバックアップに徹してきた人物です。

もっと言えばハーツは昨年のジョージア大とのタイトルマッチにも先発として出場しましたが、前半まったく何も出来ずにその大舞台でベンチに下げられたという経緯があります。しかも彼の代わりに出場したタガヴァイロアがチームを救って逆転優勝し、結局そのまま今年先発の座をタガヴァイロアに奪われていたのです。

今シーズン、ハーツはプレー機会を模索するためにトランスファー(転校)することも出来たでしょう。しかし彼はチームのために残留。タガヴァイロアが活躍しハイズマントロフィー候補と騒がれる中、ハーツはいつか来るやもしれない出番のために常に準備を怠ってきませんでした。それは決して容易なことではなかったでしょう。

満を持して登場したハーツ。対戦相手、試合会場と昨年彼がベンチに下げられた時と全く同じという場面で、今度はリードされた場面で途中出場してチームを救わなければならないという真逆のシチュエーションが揃ったわけで、ハーツにとってはまさに昨年の借りを返す絶好のチャンスが訪れたのです。

ハーツはもともと走れるQBとして何度も相手を苦しめましたが、パサーとしての能力でタガヴァイロアに遅れを取っていたために先発の座を失ったという背景がありました。ハーツ自身は26勝2敗という先発戦績を持っており経験値は抜群でしたが、このジョージア大ディフェンス相手にハーツが本当にアラバマ大のカムバックを演出してくれるのかは分かりませんでした。

そんな彼の能力に疑問を持つ多くの人達を裏切る形でハーツは次々と難しいパスを決め、ジョージア大陣内へ侵入すると残り時間5分というところでジェリー・ジュディ(Jerry Jeudy)への10ヤードTDパスを決めて28対28の同点に。

そしてそれに感化されたのかジョージア大にやられっぱなしだったディフェンスがこの貴重な時間帯に立て続けにジョージア大オフェンスを止め、しかも残り時間3分4秒というところで迎えた4thダウンでジョージア大のカービー・スマート(Kirby Smart)監督はフェイクパントを決行。しかしそれに騙されなかったアラバマ大スペシャルチームはミッドフィールド地点でボールを奪うという絶好のチャンスを獲得します。

TEアーヴ・スミス(Irv Smith Jr.)、そしてWRワドルに立て続けにパスを繋いで相手陣内15ヤード地点まで攻め込んだハーツは自らのスクランブルから15ヤードのランTDを決めついにアラバマ大が残り時間1分というところでついに逆転。ジョージア大ファンの押せ押せムード全開だったメルセデスベンツスタジアムはアラバマ大ファンの大歓声で埋まったのです。

残り1分で同点に追いつかなければならなかったジョージア大はフロームのパスでアラバマ大陣内に攻め込みますが、アラバマ大ディフェンスが踏ん張り、最後の望みのヘイルマリーパスもディフェンダーに弾かれて試合終了。完全にジョージア大ペースだった試合を途中から出場したハーツがひっくり返してチームにSECタイトルをもたらしたのです。そしてもちろんそれだけでなくハーツにとって見ればこれまでの雪辱を晴らした試合になったのでした。

開幕前からハーツを擁護するも明らかにタガヴァイロアの方がチームに勝利をもたらしてくれることからハーツをベンチに下げざるを得なかったニック・セイバン(Nick Saban)監督は、試合後のインタビューでハーツの活躍のことをインタビューされると感極まってハーツを絶賛するという珍しく感情を表に出すというシーンも見られました。それはここまでのハーツの心情を慮って自然に出たエモーションだったのでしょう。

それにしても同じ相手に同じスタジアムでハーツが途中出場してチームを勝利に導くというこのシナリオ。一体誰がこんな脚本をかけるというのでしょうか。それぐらい出来すぎたストーリーでアラバマ大が見事13勝無敗としてCFP出場を確実なものにしました。

一方ジョージア大は全米1位のアラバマ大を終始凌駕し、チーム力だけ見ればトップ4チームの一角を担えると言えそうですが、この敗戦で2敗目となってしまったことが、彼らのプレーオフ進出に大きく立ちはだかる壁となるでしょう。

どちらにしても手に汗握る素晴らしいゲームとなったのでした。


オクラホマ大39、テキサス大27

Big 12カンファレンスの優勝決定戦は今シーズン第6週目に行われた「レッドリバーの戦い」と同じマッチアップになりました。この時の対戦では48対45でテキサス大が勝利を収めていました。1年間の間に同じチームを2度倒すことは容易ではない中、テキサス大はライバル・オクラホマ大のCFP進出への希望を打ち砕くため、そしてオクラホマ大は虎の子の1敗を守ってプレーオフ進出への望みを繋ぐため、両チームがテキサス州アーリントン市で激突しました。

オクラホマ大は先週のウエストバージニア大との一戦に59対56で競り勝ちましたが、この試合でディフェンス陣は700ヤードも相手に与えてしまいました。それでも試合が僅差となった状態で彼らが2つのディフェンシブTDを奪うなど、まさにここぞというピンポイントで力を発揮して勝利に貢献したのでした。そしてこのテキサス大との再戦でもベストなタイミングでディフェンスが威力を発揮して、ゲームの流れを自らに手繰り寄せたのです。

試合はテキサス大の先制で始まりましたが、相変わらずディフェンスがビッグプレーを止められない中、QBカイラー・マレー(Kyler Murray)らの活躍で前半終了までにはオクラホマ大が20対14で逆転して後半へ突入。

しかし後半に入りオクラホマ大が更に1TDを追加して転差を2TD差に広げますが、テキサス大QBサム・エリンガー(Sam Ehlinger)の2つのパスTDで第3Q終了までにテキサス大が27対27と同点に追いつきます(二つ目のTDではPATキックを失敗)。

第4Qに入りFGを決めて30対27とオクラホマ大が僅かにリードしますが、このクォーター中盤、同点ないし逆転を狙うテキサス大の攻撃が彼らの自陣7ヤード地点から始まります。ここでオクラホマ大CBトレイ・ブラウン(Tre Brown)が強烈なブリッツでエリンガーをエンドゾーンでタックルしてセーフティを獲得。

そしてその返しのオクラホマ大の攻撃ではマレーからパスをグラント・カルカテラ(Grant Calcaterra)が信じられないワンハンドキャッチでTDレセプション。これが実質的にテキサス大にとどめを刺すプレーとなったのです。

それもこれもブラウンのセーフティから始まったこと。この試合でもテキサス大相手に437ヤードを与えてしまいましたが、肝心要のタイミングで試合の流れを決めるディフェンシブプレーを見せることが出来たオクラホマ大には「どんなに苦しくても勝つ方法を見つけ出す(Find a way to win)」精神を見たような気がしました。

これでオクラホマ大はBig 12カンファレンスタイトル4連覇。すでにお伝えしたようにCFP4位のジョージア大が敗れたため、オクラホマ大にCFP進出のチャンスが見えてきました。

オハイオ州立大45、ノースウエスタン大24

Big Ten優勝決定戦は全米6位のオハイオ州立大と21位のノースウエスタン大との対決になりました。オハイオ州立大にとってはカンファレンスタイトル獲得と言う意味だけでなく、プレーオフ出場もかけた戦いであったため、CFP選出委員会に5位のオクラホマ大よりも自分たちの方が強いチームであると言うことをアピールする必要がありました。

この試合が始まる頃にはすでにオクラホマ大がテキサス大に39対27で勝っていたことがわかっていましたから、オハイオ州立大としてはなんとしても有無を言わさぬ圧倒的な勝ち方が必要でした。しかし試合は格下とされるノースウエスタン大を押さえ込みはしたものの点差をつけることがなかなかできず、前半を終えて24対7とたったの15点のリード。

後半に入るとノースウエスタン大に2つのTDを許し一時は24対21と3点差までに詰め寄られます。結局第4QにQBドゥウェイン・ハスキンズ(Dwayne Haskins)の2つのTDパスでようやく相手を突き放し最終的に45対24というスコアで2年連続となるBig Tenカンファレンスタイトルを手に入れました。

ハスキンズはこの日優勝決定戦での新記録となる499パスヤードを樹立。また合計5つのTD数も新記録。少なくともハスキンズはハイズマントロフィーの最優秀候補として授賞式に招待されることでしょう。

しかしチームとしてはオクラホマ大を超えるだけの試合をこのノースウエスタン大戦だけでは見せることは出来ず、先週のミシガン大戦みせたような神がかった強さを持っていることを証明したものの、シーズン全体で考えるとそのポテンシャルを開放するのが少し遅すぎた感じです。実際これを執筆中にはすでにオクラホマ大がプレーオフ進出を決めたことが発表されましたから。

クレムソン大42、ピッツバーグ大10

クレムソン大とピッツバーグ大の間で争われたアトランティックコーストカンファレンス(ACC)のタイトルゲームは予想通りにクレムソン大の圧勝で幕を閉じ、彼らが4連覇を飾りました。

試合は開始最初のプレーでクレムソン大RBトラヴィス・エティエン(Travis Etienne)が75ヤードのランTDを決めていきなり試合の主導権を握り、その後はクレムソン大の一人舞台。ピッツバーグ大はクレムソン大ディフェンスから合計192ランヤードを奪いましたが、奪えた得点はたったの10点。優勝決定戦というにはあまりにも力の差がありすぎました。

この試合の勝利でクレムソン大はレギュラーシーズンを13勝0敗で終了。宣告発表されたファイナルCFPランキングでは2位を守り、見事4年連続プレーオフ出場を決めました。

ワシントン大10、ユタ大3

11月30日の金曜日に行われたPac-12カンファレンス優勝決定戦。北地区代表のワシントン大と南地区代表のユタ大との対戦となりましたが、Pac-12出身チームはどのチームもCFPレースに絡んでおらず、この試合は優勝決定戦ながらパワー5カンファレンス内でもっとも注目の薄い試合となっていました。そのせいか試合が行われたリーバイススタジアムはガラガラ・・・。

スコアからもわかるように双方のディフェンスが互いに相手オフェンスを圧倒する試合展開で第3Q終盤まで3対3の同点という展開になりましたが、この試合を決定づけた2つのプレーのうちの一つが第3Q終了間際に炸裂。ユタ大の攻撃でQBジェイソン・シェリー(Jason Shelley)がWRシアオシ・マリナー(Siaosi Mariner)に投げたパスがインコンプリートかと思われたところ、ボールが地面に付く前にワシントン大DBバイロン・マーフィー(Byron Murphy)がキャッチしてそのまま66ヤードのリターンTD。ここでようやく試合の均衡が破れました。

そしてもう一つのキープレーはユタ大が同点に向けて最後の攻撃をしている最中、残り時間1分を切りワシントン大陣内42ヤード地点で迎えた4th&12ヤードという状況。QBシェリーはミッドフィールドに再びマリナーを見つけ渾身のパスを放りますが、ここでも登場したマーフィーがこのパスをブロック。しかしビデオの再生では明らかにマリナーがボールをキャッチする前にマーフィーがコンタクトしているのが映りだされ、完全にパスインターフェアレンスに見えましたが、審判団のどの人物もイエローフラッグをポケットから取り出すことなくユタ大最後のドライブは敢え無く終了。これを見たユタ大監督カイル・ウィッティングハム(Kyle Whittingham)監督は審判団に激昂。何をしても判定が覆ることはありませんが、ウィッティングハム監督の気持ちは痛いほど伝わってきました。

とにもかくにもワシントン大が今年のPac-12カンファレンス王者に輝き、お正月のローズボウルに出場が決定。ここでBig Tenカンファレンスの覇者・オハイオ州立大と対決することになります。開幕前からCFP出場を目指してきたチームとしては当初の目標を果たすことは出来ませんでしたが、2000年度シーズン以来となるローズボウル出場は依然として意義あるものだと思います。

セントラルフロリダ大56、メンフィス大41

アメリカンスレティックカンファレンス(AAC)優勝決定戦となったセントラルフロリダ大対メンフィス大の対戦。セントラルフロリダ大は24連勝中で現在CFP8位。彼らがプレーオフに進出するためには上位チームがすべて負けてしまうほどのミラクルが必要でしたが、彼らがこの日対戦したメンフィス大は非常に手強い相手。レギュラーシーズン中には31対30と僅差でセントラルフロリダ大が勝ち星を拾いましたが、セントラルフロリダ大はチームの大黒柱であるマッケンジー・ミルトン(Mckenzie Milton)が先週の試合で膝に大怪我を負ってシーズンを棒に振りました。ミルトン不在がセントラルフロリダ大攻撃陣にどのような影響を与えるのか注目を集めましたが・・・。

前半からミルトン不在という不安が的中し、第1Qにメンフィス大RBダレル・ヘンダーソン(Darrell Henderson)の2つのTDなどで24対7と素晴らしい滑り出しを見せると、第2Qにもヘンダーソンがもう1つTDランを決めて前半を終えたところで38対21となり、いよいよ無敵艦隊セントラルフロリダ大に土がつくか・・・と誰しもが思ったことでしょう。

しかし第3Qに入るとミルトンの代役として出場したダリエル・マック(Darriel Mack Jr)がパスTDとランTDを決めて38対35と3点差まで迫ります。そして第4Q。このクォーターはまさにマックのワンマンショーで、ショートヤードのランTDを実に3つも決めて最大17点あった点差をひっくり返したのです。マックはこの日投げては348ヤードに2TD、さらに走っては56ヤードになんと4TDを決めてミルトン不在中の無敗チームを守りました。

これでセントラルフロリダ大は12勝無敗で昨年から続く連続無敗記録を25試合に伸ばしました。またポストシーズンではルイジアナ州立大フィエスタボウルで相まみえることが決まりました。昨年セントラルフロリダ大はピーチボウルでアーバン大を倒しており、これで2年連続「ニューイヤーズ6」ボウルに出場が決定。彼らは昨年に続きSECの強豪チームと対戦することになります。願わくばルイジアナ州立大をも倒して26連勝目を飾りたいところです。

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