第11週目のカレッジフットボールはCFPランキングトップ4チーム中2チームが敗れるという大波乱がおきました。しかもどちらのチームも大敗という驚くべき結果を残して・・・。
全米1位の陥落
アーバン大 40、ジョージア大 17
ここまで9連勝で一気にナショナルタイトル獲りにまっしぐらだった全米1位のジョージア大でしたが、敵地のアーバン大で完膚なきまでに叩きのめされてしまいました。
チームの主軸であり、全米でも屈指の力を誇るジョージア大のランオフェンスはこの日アーバン大ディフェンスの前に沈黙。これまで今季平均250ヤード以上のランオフェンスを誇るところ、この試合ではRBニック・チャブ(Nick Chubb)とソニー・ミシェル(Sony Michel)らは合計で46ヤードしか足で稼げませんでした。
一方アーバン大RBケリオン・ジョンソン(Kerryon Johnson)はジョージア大ディフェンス相手に167ヤードを獲得。元ベイラー大のQBジャレット・スティッドハム(Jarrett Stidham)も3TDを含む214パスヤードを記録。とにかく「アウトマッチ」とはこのことを言うのだという典型的な展開でアーバン大がジョージア大を圧倒。だれも予想しなかった大差で全米1位チームに土をつけたのでした。
「The U」is back!!
マイアミ大 41、ノートルダム大 8
先週のバージニア工科大戦につづきマイアミ大は3位のノートルダム大というランクチームと対決。そして全米中が見守る中行われたこの試合でマイアミ大はノールダム大を41対8と圧倒。今季9勝目として昨年から続く連勝記録も全米で最長の14に伸ばしました。
ノートルダム大はこれまで全米1位のジョージア大との僅差による敗戦の1敗のみでここまで順調に勝ち星を獲得して3位にまで躍り出ましたが、この日マイアミ大とノートルダム大とのタレントの差は明らかで、スピート・運動能力で勝るマイアミ大に全くついてけませんでした。
今シーズンのマイアミ大の象徴とも言える「ターンオーバーチェーン」(ターンオーバーを引き起こしたディフェンス選手に与えられる、黄金のどでかいネックレス、というか文字通りチェーン)もこの日4度も登場。これでマイアミ大ディフェンスは4試合連続4つのターンオーバーを奪う驚異的なパフォーマンスで勝利に貢献しました。
今季2年目となる、元ジョージア大監督でマイアミ大の卒業生でもあるマーク・リクト(Mark Richt)監督は、現在のチームをかつて無敵の荒くれ者集団であった「The U」を彷彿とさせるチームに着実に変貌させています。これで火曜日に発表される最新のCFPランキングでマイアミ大がどれだけ上位に食い込めるか非常に楽しみになってきました。
一方のノートルダム大にとってはこれで2敗目となりここまでドリームシーズンを送ってきたものの、おそらくこの敗戦のせいで彼等のプレーオフ進出の夢は閉ざされてしまうことになるでしょう。カレッジフットボール界を盛り上げるという意味で彼等のプレーオフ進出を願っていましたが、それも夢のまた夢となってしまいそうです。
メイフィールド、ハイズマントロフィーにまた一歩近づく
オクラホマ大 38、テキサスクリスチャン大 20
オクラホマ大史上最多観客数となる88000人以上が見守る中行われたこの大一番。QBベーカー・メイフィールド(Baker Mayfield)は3TDを含む333パスヤードに50ランヤード、またRBロドニー・アンダーソン(Rodney Anderson)はトータル290ヤードに4つのTDを記録。さらに先週オクラホマ州立大に対して52失点を喫したオクラホマ大ディフェンスはこの日踏ん張り、テキサスクリスチャン大QBケニー・ヒル(Kenny Hill)には270ヤードを投げられましたが、パス成功回数を28回中13回に抑え、また彼の得意な機動力に関してもトータル40ヤードに押さえ込み、先週の大量失点にて心配された守備陣は全米6位のテキサスクリスチャン大を圧倒。その力の差を存分に見せつけてBig 12カンファレンスレギュラーシーズンタイトルに大きく近づきました。
ハーフタイムですでに38対14と大きくリードしたオクラホマ大はハイズマントロフィーレースで現在ナンバーワンと目されるメイフィールドを軸に持ち味のハイパワーオフェンスをいかんなく発揮。これまで数々のハイズマントロフィー候補選手たちが現れては消えていきましたが、このメイフィールドは依然としてコンスタントに素晴らしいプレーを披露し続けており、このテキサスクリスチャン大戦での活躍も合間って彼が今の所最右翼のプレーヤーと言えそうです。
前述の通りジョージア大とノートルダム大が敗れたため、オクラホマ大は次に発表されるCFPランキングで上位4位に食い込んでくることは間違い無いでしょう。テキサスクリスチャン大はこのままいけばカンファレンスタイトルゲームで再びオクラホマ大と対戦する可能性が大ですが、2敗目を喫してしまったため彼らのナショナルタイトル獲りは大変厳しくなってきました。
苦しみながらも10勝目
アラバマ大 31、ミシシッピ州立大 24
ジョージア大とノートルダム大という1位と3位のチームが同日に敗れたこの日。2位のアラバマ大は16位のミシシッピ州立大との対戦となりましたが、終始押される展開となり「もしかして同じ日に上位3チーム全員こけてしまうのか?」と多くの人が感じていたことでしょう。しかしアラバマ大は最後の最後で相手を突き放し、辛くも大番狂わせを回避できたのでした。
ディフェンスの要とも言えるLB陣の多くを怪我で欠き、このユニットの出来が心配されましたが、その悪い予感は的中。さらにラインプレーでも攻守ともにミシシッピ州立大に押され気味で前半は持ち味のランオフェンスを全く披露できなかったアラバマ大。一方のミシシッピ州立大は機動力に長けるQBニック・フィッツジェラルド(Nick Fitzgerald)とRBエアリス・ウィリアムス(Aeris Williams)がアラバマ大ディフェンスを翻弄。ディフェンスの助けもあり試合のほぼ全般において押せ押せムードが漂っていました。
アラバマ大は前半QBジャレン・ハーツ(Jalen Hurts)からWRカルヴィン・リドリー(Calvin Ridley)への二つの60ヤード越えパスのおかげで2TDを挙げてスコアを僅差に持ち込みますが、ハーツに加えRBダミアン・ハリス(Damien Harris)、ボ・スカーボロー(Bo Scarbrough)ら強力なランオフェンスが沈黙。ミシシッピ州立大スタジアムは歓喜に包まれますが、後半に入ると少しずつ彼らが相手ディフェンス陣をこじ開け始め、第4QにようやくハリスのTDランが決まって24対24のタイゲームとします。
アラバマ大は残り2分となったところで試合をリードするFGのチャンスを得ますが、これがポストに弾かれミシシッピ州立大は九死に一生を得ます。ダン・マレン(Dan Mullen)監督はおそらくオーバータイムに持ち込もうという腹積もりだったのでしょうが、3つのタイムアウトを残していたアラバマ大は残り時間1分というところで攻撃権を取り返します。途中3rd&15ヤードというピンチを迎えましたが、これをハーツとリドリーのパス&キャッチで切り抜け、最後は残り25秒というところで1年生WRデヴォンタ・スミス(DeVonta Smith)への26ヤードTDパスが決まって土壇場でアラバマ大がスコアを決め、盛り上がっていたスタジアムは一気に静まりかえります。
ミシシッピ州立大最後のチャンスではフィッツジェラルドのヘイルマリーパスが弾かれるもパスインターフェアレンスの反則のおかげで最後にもう1度同点のチャンスを得ますが、2度目のヘイルマリーパスは無情にもエンドゾーンを越えてオーバースロー。試合開始から第4Q中盤までアラバマ大から大金星を奪うチャンスがあったミシシッピ州立大でしたが、あと少しというところでそのチャンスを失ってしまったのでした。
ディフェンス陣の怪我のせいもあり最強と言われてきたアラバマ大ディフェンス陣はその脆さを露呈。またスクリメージでの対決でも相手を圧倒することができず、彼らが完全無欠のチームではないことが知れ渡ってしまいましたが、それでもこの苦しい戦いを勝ち抜いて10勝目を挙げることができました。前述の通りジョージア大とノートルダム大が敗れた中、このミシシッピ州立大から奪った白星はアラバマ大にとって大変価値のあるものになったのでした。
これで2週間後に行われるアーバン大との伝統のライバリー「アイロンボウル」に俄然注目が集まることになりそうです。
ウィスコンシン大、西地区王者に
ウィスコンシン大 38、アイオワ大 14
今シーズン未だに無敗を守っきているウィスコンシン大は、そのスケジュールの弱さからノートルダム大、クレムソン大、オクラホマ大などにランキングで上を行かれています。しかし彼らのチームとしての強さは上に挙げたどのチームにも劣るものではなく、先週末もアイオワ大をその強力なディフェンス力で圧倒。見事に10勝目を飾って早々にBig Tenカンファレンス西地区タイトルを獲得しました。
先々週にオハイオ州立大から大金星を挙げて20位に躍り出たアイオワ大でしたが、この日はウィスコンシン大ディフェンスを前に何もさせてもらえませんでした。唯一得点できたのはウィスコンシン大QBアレックス・ホーニブルック(Alex Hornibrook)のパスを2度インターセプトしてどちらもスコアに繋げたDBジョシュワ・ジャクソン(Joshua Jackson)の活躍のみ。オハイオ州立大戦での勝利に大いに貢献したQBネイサン・スタンリー(Nathan Stanley)は相手ディフェンスの前にたったの43ヤードしかパスさせてもらえませんでした。
そしてウィスコンシン大はディフェンスの活躍に加え、カンファレンスのラッシュリーダーであるRBジョナサン・テイラー(Jonathan Taylor)の150ヤード越えのランもありアイオワ大に快勝。派手さはなくてもやるべきことをしっかりやって勝ち続けているウィスコンシン大にはチームとしての成熟さを見ることができます。
今後ウィスコンシン大はミシガン大、ミネソタ大、そしてカンファレンス優勝決定戦でおそらくオハイオ州立大と対戦することになります。いくら彼らのストレングスオブスケジュールが他の上位チームに劣っていたとしても、彼らが全勝でBig Tenを制することができれば、プレーオフ選考委員会はウィスコンシン大を無視することはできなくなるでしょうね。
先週の不調はどこへやら
オハイオ州立大 48、ミシガン州立大 3
先々週アイオワ大にまさかの大敗を喫して2敗目を記録してしまったオハイオ州立大。一体何が起こったんだと言わんばかりの体たらくぶりでしたが、先週のミシガン州立大戦ではその鬱憤を晴らすべく相手を圧倒。Big Tenカンファレンス東地区の首位争いでオハイオ州立大がトップに立つことになりました。
これまでミシガン州立大は全米3位のランディフェンスを誇ってきましたが(1試合平均87ヤード)、そのディフェンスに対してオハイオ州立大のRBマイク・ウェバー(Mike Weber)はたったの9度のキャリーで162ヤードに2TDを奪う活躍。数字上では1キャリー平均18ヤードという驚異的な記録を残しミシガン州立大ディフェンスを粉砕。またオハイオ州立大ディフェンスもここまで2試合連続400ヤード越えのパスを披露してきたブライアン・レウワーキ(Brian Lewerke)をたったの131ヤードに押さえ込み、INTも2つ引き出すことに成功。両チームの力の差は歴然でした。
これでオハイオ州立大は東地区レースで単独首位に躍り出ました。唯一彼らにチャンスがあるとすれば最終戦で対戦するミシガン大ぐらいなもの。どちらのチームもこのまま勝ち進めばこの直接対決の勝者が東地区代表として西地区代表のウィスコンシン大と対戦することになります。
Pac-12の夢、散る
スタンフォード大 30、ワシントン大 22
金曜日に行われたワシントン大とスタンフォード大の一戦。Pac-12カンファレンス所属のチームとしては最高位となる9位にランクされていたワシントン大でしたが、この日スタンフォード大に30対20で敗退。彼らのプレーオフ進出の夢が砕け散っただけでなく、Pac-12カンファレンスとしてもプレーオフチームを輩出する可能性がほぼなくなったことになり、これは大きな痛手となります。
スタンフォード大は足首の怪我に悩まされるスターRBブライス・ラブ(Bryce Love)が160ランヤードに3TDと全米でもトップクラスのワシントン大ディフェンスを手玉に取りました。これでスタンフォード大はトップ10チームと対戦時の連勝記録を5に伸ばし、大舞台での勝負強さを見せつけてくれました。またカンファレンス北地区においても地区優勝への望みをつなぎ、ワシントン大がワシントン州立大を下せばタイブレークでスタンフォード大がカンファレンスタイトルゲームに進出することになります。もちろん彼らは次戦のカリフォルニア大戦に勝たなければなりませんが。
それにしても今年のPac-12は絶対的なチーム不在の中「共食い」を続け、プレーオフ進出に関して言えば自滅している感が強いです。カンファレンスタイトルを取ることは非常に大きな目標ですが、自身のカンファレンスからプレーオフチームを送り出せないというのは、カンファレンスの威厳を保つという点と、プレーオフにチームを送り出したカンファレンスにはボーナスが支払われる、という点において痛手であります。