今季最初のカレッジフットボールプレーオフランキングが発表されてから初めての週末となった第10週目。2018年度シーズンのここまでの試合で最も注目を浴びたと言っても過言ではなかった全米1位と3位の対決、その他にもプレーオフ進出を狙うトップランカー達がその立ち位置を確立する週末、「Statement Saturday」となりました。そんなエキサイティングなウィークエンドを振り返ります。
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アラバマ大29、ルイジアナ州立大0
CFPランキング発表後にいきなりトップ3同士の対決が実現した週末。全米1位のアラバマ大が同3位のルイジアナ州立大に乗り込むという、今季屈指のマッチアップとなりました。下馬評では3位でホームチームでありながらアンダードッグに位置づけされたルイジアナ州立大がハイズマントロフィー候補QBトゥア・タガヴァイロア(Tua Tagovailoa)と鉄壁ディフェンスを擁するアラバマ大にどれだけ立ち向かえるかに注目が集まりましたが・・・。
ルイジアナ州立大ディフェンスは確かにアラバマ大にとって今季最大の難敵であったことは確かです。ここまで全米1位となる1試合平均54得点という強力オフェンスを29点に抑え、今季初めて最初のドライブでのTDを阻止し、またこの試合まで第4Qにプレーする必要がなかったタガヴァイロアを試合最後まで引っ張り出した上に今までINTパスを記録していなかった彼から今季最初のINTを奪うなど、ルイジアナ州立大守備陣はアラバマ大にとって今シーズン一番手強いディフェンスだったのです。
ただ違いはルイジアナ州立大のオフェンス陣。QBジョー・バロウ(Joe Burrow)は終始プレッシャーを受け続けポケットでろくな時間を与えてもらえませんでしたし、ジョージア大戦で275ヤードも稼いだランオフェンスはこの日なんとたったの12ヤードに抑え込まれてしまいました。これまでアラバマ大を倒したチームにはティム・ティーボ(Tim Tebow、元フロリダ大)、キャム・ニュートン(Cam Newton、元アーバン大)、ジョニー・マンゼル(Johnny Manziel、元テキサスA&M大)、デショーン・ワトソン(Deshaun Watson、元クレムソン大)という、一人で試合の流れを変えてしまえるほどの人物によって率いられていましたが、残念ながらバロウにはそこまでの能力はなかったということです。
タガヴァイロアはこの試合で前述の通り今季初INTを記録してしまいましたが、295パスヤードに2TDというパスプレーに加え、44ヤードのTDランを含む合計49ヤードを足で稼ぎ、オールパーパスで339ヤードを一人で叩き出す大活躍。もはやハイズマントロフィーレースで彼を脅かす人物は見当たらないというくらいの働きぶりで9連勝目を飾りました。唯一の不安材料と言えば彼が右膝に抱えている怪我ぐらいなもの。この日も自身のランTD後にびっこを引く姿が映りましたが、試合後の会見では何ら問題ないと自ら説明していました。
ただ今季のアラバマ大はタガヴァイロア率いるオフェンス力ばかりが取りだたされますが、この試合で分かったことは彼らのディフェンスもまた全米随一のパワーを持つものだということ。先にも紹介した通りこの日ルイジアナ州立大のランオフェンスを12ヤードに抑え、5つのQBサック、そして10つのTFL(タックル・フォー・ロス)を食らわせるなど相手オフェンスに全く仕事をさせませんでした。特にDLクウィンエン・ウィリアムス(Quinnen Williams)の存在感は抜群でチームトップとなる10つのタックルを記録し再三に渡りバロウに襲いかかっていきました。またディフェンスのバックフィールドも完封勝ちするのに大いに貢献。最後の最後でバロウのパスをDBマック・ウィルソン(Mack Wilson)がエンドゾーンでインターセプトし、無失点ゲームを完結させました。
先日も紹介した通りルイジアナ州立大のスターLBデヴィン・ホワイト(Devin White)がミシシッピ州立大戦で食らったターゲッティングの反則のためこの試合では後半からの出場となりましたが、結果的に言えば彼がいてもいなくてもアラバマ大オフェンスにとっては特に問題にはならなかったということです。
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ルイジアナ州立大が全米3位ということで実質プレーオフの準々決勝戦かなどと言われていたこの試合ですが、1位と3位との試合にも関わらず両校の力の差は歴然。アラバマ大はここまで楽なスケジュールで勝ち進んできたなどという批判の声もありましたが、これでそのような声を黙らせることが出来るでしょう。一体彼らに立ち向かえるチームがいるのかどうか疑問に思うくらいです。
またこの試合で勝利したためアラバマ大は今後もう2試合のカンファレンス戦(ミシシッピ州立大とアーバン大)を残しているものの、彼らがSEC西地区タイトルを確保。12月1日に行われるSECチャンピオンシップゲームに出場することが確実となりました。その優勝決定戦で対戦する相手とは・・・。
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ジョージア大34、ケンタッキー大17
全米6位のジョージア大と9位のケンタッキー大との対戦となったこの試合、勝ったほうがSEC東地区代表としてSECタイトルゲームに進出することになっていました。今季大躍進を遂げたケンタッキー大はこの試合にのぞむにあたってこれまでに無いくらいの盛り上がりをホームで見せましたが・・・。
今季のケンタッキー大の強みは失点率全米8位(15.3)という強力ディフェンス。しかしこの日のジョージア大は相手ディフェンスからトータル444ヤードを獲得。特にランオフェンスは脅威の331ヤードでケンタッキー大のディフェンスを屋台骨から崩していきました。RBデアンドレ・スウィフト(D’Andre Swift)は2つのTDを含む156ヤード、同じくRBのイライジャ・ホリフィールド(Elijah Holyfield)が1つのTDを含む115ヤードを走るなど地上戦力で圧倒。ケンタッキー大は試合終了までこのオフェンスを止める術をあみ出せずにいました。
地力で勝っていたとは言え全米9位のケンタッキー大を倒せたのはジョージア大にとって大きな財産といえます。これでジョージア大がSEC東地区を制覇し、2年連続SECタイトルゲームに進出です。ここでは先に挙げたようにアラバマ大と対戦することになっています。これは言うまでもなく昨年のナショナルタイトルゲームでのマッチアップの再現。試合自体はあと4週間経たないと実現しませんが、CFPの動向とともに今から非常に注目が集まります。
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ミシガン大42、ペンシルバニア州立大7
全米5位のミシガン大と全米14位のペンシルバニア州立大との対決はスコアが示すようにミシガン大の大勝となりました。
Big TenカンファレンスならびにCFPタイトルレースを争うミシガン大はここまで7連勝中。強力ディフェンスが売りの彼らはジム・ハーボー(Jim Harbaugh)監督4シーズン目にしてようやくそのポテンシャルを開花させています。もともとハーボー監督の2年目からディフェンシブコーディネーターを務めているドン・ブラウン(Don Brown)氏指揮下で守備力には定評があったミシガン大ですが、適当なQBが不在でハーボー監督最初の3年間は全米タイトルどころかBig Tenカンファレンスのタイトルにさえ手が届かなかったのです。
今季はミシシッピ大からの転校生であるQBシェイ・パターソン(Shea Patterson)を先発に据えた攻撃陣がいよいよその殻を脱ぎ破るかと思われましたが開幕戦でいきなりノートルダム大に敗戦。そのパターソンはピュアパサーとして期待されながらもその前評判に応えることは出来ませんでした。そこでハーボー監督はパターソンをパサーとして使うのではなくポケットの外で仕事ができるプレーを採用することに活路を見出し、それがハマってここまでやってきました。またそれに連動してオフェンス自体も地上攻撃に重みを置き、RBカラン・ヒグドン(Karan Higdon)という頼れるバックを擁して「鉄壁のディフェンスと強力なランゲーム」という古き良きBig Tenの典型的なチームに変貌を遂げたのです。
このペンシルバニア州立大戦では前半から流れを掴み14対0で前半を折り返すと後半にはペンステートのエースQBトレース・マクソーリー(Trace McSorley)に代わり投入されたトミー・スティーヴンス(Tommy Stevens)のパスをミシガン大DBブランドン・ワトソン(Brandon Watson)がインターセプトしてそのままTD。その後も再びフィールドに戻されたマクソーリーからINTを奪い、それを起点にTDを挙げるなどして42対0と大きくリード。試合終了直前にスティーヴンスにランTDを奪われましたが、とにかくミシガン大の圧倒的強さにペンステートは為す術もなく敗れ去りました。
これでミシガン大は8連勝を含む8勝1敗。残り試合はラトガース大、インディアナ大、そしてオハイオ州立大ということで10勝1敗で宿命のライバルとの決戦を迎えることが濃厚となってきました。ハーボー監督は就任以来いまだオハイオ州立大からの勝ち星がありません。どんなに強いチームを育て上げてもオハイオ州立大に勝てなければ評価されないと言われるミシガン大の監督としていよいよその壁を打ち砕く時が刻一刻と近づいています。
一方のペンシルバニア州立大はこれで3敗目を喫しBig Tenカンファレンス東地区レースから完全に脱落。開幕前の期待度を考えると完全にそれを裏切る展開に陥っています。何よりもいくら不調だったとは言え、エースQBマクソーリーを21対0の時点でベンチに下げたジェームス・フランクリン(James Franklin)監督の采配には疑問が残ります。
ウエストバージニア大42、テキサス大41
Big 12カンファレンスでの行く末を占う大一番となったこの試合はハイスコアゲームとなりましたが、試合を決めたのはウエストバージニア大ダナ・ホルゴーセン(Dana Holgorsen)監督の大博打でした。
第4Q終盤34対34で迎えたテキサス大の攻撃、残り2分半というところでテキサス大QBサム・エリンガー(Sam Ehlinger)の48ヤードのロングTDパスが決まってウエストバージニア大を突き放し、ホームスタジアムは大いに盛り上がりました。しかしウエストバージニア大も諦めず、残り時間16秒というところでQBウィル・グリアー(Will Grier)からゲリー・ジェニングス(Gary Jennings)への33ヤードパスTDが決まり土壇場で同点となりオーバータイムへ突入するかと思われました。
しかしここでホルゴーセン監督はPATのFGではなく2ポイントコンバージョンに打って出ます。そしてグリアーのQBランがエンドゾーン左手に決まり見事コンバージョンを成功させ42対41と逆転。結局これが決勝点となり、ウエストバージニア大がアウェーで貴重な金星を手に入れたのです。
しかし負ければプレーオフだけでなくカンファレンスタイトルレースでも遅れを取りかねないという状況で、FGではなく2ポイントコンバージョンを敢行したホルゴーセン監督。失敗していれば非難轟々だったことでしょうから、紙一重の采配でしたが見事にこの大博打を成功させました。Big 12カンファレンスはこれでいよいよシーズン最終戦のウエストバージニア大とオクラホマ大の一騎打ち、そしておそらく同一カードとなるカンファレンスタイトルゲームで雌雄を決することになりそうです。
オクラホマ大51、テキサス工科大46
全米7位のオクラホマ大がテキサス工科大に乗り込んだこの対戦。2016年にベーカー・メイフィールド(Baker Mayfield、現クリーブランドブラウンズ)とパトリック・マホームズ(Patrick Mahomes、現カンザスシティーチーフス)が対戦したときの再現のようなシュートアウトになりましたが、これをオクラホマ大が何とか制しました。
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オクラホマ大のハイズマントロフィー候補QBカイラー・マレー(Kyler Murray)は珍しく最初の2つのドライブにて連続でINTパスを献上し、しかもその2つともが相手のTDに繋がるという嫌な立ち上がりとなりましたが、ここでマレーは平常心を崩さず反撃を開始。その後の4度の攻撃全てにおいてTDを奪うという完璧な立ち直りをみせて立ち上がりの失敗を帳消しにします。
テキサス工科大はQBアラン・ボウマン(Alan Bowman)がマレーとの投げ合いを見せて前半31対28と僅かにテキサス工科大がリードしてハーフタイムを迎えますが、ボウマンは5週間前に負った気胸の怪我を再び再発しそのまま病院送りに。チームはバックアップのジェット・ダフィー(Jett Duffey)に攻撃を託します。
しかしダフィーもボウマンから引き継いでハイスコアのオクラホマ大に食らいついていきますが、結局後もう少しというところでアップセットならず。マレーが一人で360ヤード(3TD、2INT)投げたところボウマンとダフィー合わせて366ヤード(それぞれ2TDづつ)を記録して空中戦ではいい勝負を見せました。しかし違いは地上戦。テキサス工科大がチーム全体で107ヤードだったのにたいしてオクラホマ大はトータルで323ヤード。しかもRBトレイ・サーモン(Trey Sermon)は206ヤード(3TD)、マレーが100ヤード(1TD)と二人の100ヤード超えラッシャーを輩出し力の違いを見せました。
オクラホマ大は来週「ベッドラムシリーズ(Bedlam Series)」の異名を持つオクラホマ州立大とのライバリーゲームを控えます。そしてシーズン最終戦には前述の通りウエストバージニア大との直接対決が待っており、上を目指すオクラホマ大にとって気が抜けない週末が続きます。
クレムソン大77、ルイビル大17
全米2位のクレムソン大がまるでバスケットボールの試合のような得点数(77)を記録してルイビル大を撃破。この日はクレムソン大のランアタックがすこぶる好調で3人のRBが100ヤード以上を記録しトータルで492ヤード(5TD)を叩き出す暴れぶり。全勝でプレーオフに進出するというシナリオにまた一歩近づきました。
それにしてもこの2チームのマッチアップはクレムソン大のデショーン・ワトソン(Deshaun Watson、現ヒューストンテキサンズ)、ルイビル大のラマー・ジャクソン(Lamar Jackson、現ボルティモアレイヴンズ)が在籍した過去2年間に素晴らしいバトルを繰り広げていましたが、ジャクソンが去ったルイビル大の戦力ダウンは著しく、ボビー・ペトリノ(Bobby Petrino)監督の進退伺にも話が及ぶほどです。選手一人でチーム力が変わってしまうことの恐ろしさを思い知らされます。
ノートルダム大31、ノースウエスタン大21
4位のノートルダム大はランディフェンスで定評のあるノースウエスタン大に前半苦戦。後半もランオフェンスが全く機能しませんでしたが、QBイアン・ブック(Ian Book)が343パスヤードに2TDを記録して最終的にノースウエスタン大を突き放し、アウェーでの番狂わせを逃れました。
ノートルダム大はここまで9連勝ですが、チームの勢いに波があるチーム。とはいえこのまま無敗を守れば十中八九プレーオフに進出すると言われていますから、残りの試合(フロリダ州立大、シラキュース大、サザンカリフォルニア大)も形はどうあれ白星を飾ることが当面の目標となります。
一方ノースウエスタン大は敗れはしましたがこの試合は交流戦(ノンカンファレンス戦)であったため、所属するBig Tenカンファレンス西地区の順位では未だに首位を守っています。しかも今週末対戦するアイオワ大がパデュー大に敗れたため、ノースウエスタン大の西地区制覇の夢はまた一歩近づきました。
ワシントン州立大19、カリフォルニア大13
全米8位のワシントン州立大がホームでカリフォルニア大に大苦戦。試合自体が両チームに切れが全く見られず、ターンオーバー、数々のペナルティー、FGミス、パスドロップ・・・と目も当てられない試合展開となりましたが、ハイズマントロフィー候補QBガードナー・ミンシュー(Gardner Minshew)が最後の最後で彼らしいドライブを決め、試合残り時間32秒でイーソップ・ウィンストン(Easop Winston)への10ヤードTDパスで何とかカリフォルニア大を突き放し、ホームでのアップセットを間逃れました。
Pac-12カンファレンス出身チームとして数字上はCFP出場に最も近いと言われるワシントン州立大ですが、この試合のような内容を見せられては流石に選考委員会に良いアピールが出来たとは言えないでしょう。
オハイオ州立大36、ネブラスカ大31
10位のオハイオ州立大はホームに今季たった2勝のネブラスカ大を迎えましたが、オフェンスが点を重ねる一方ディフェンスも相手に得点を許し、最後までネブラスカ大に粘られるという不甲斐ない展開を見せてしまいました。
この日のオハイオ州立大はJ.K.ドビンズ(J.K. Dobbins)の163ヤード(3TD)とマイク・ウェバー(Mike Weber)の99ヤードに見られるようにランゲームが冴え、QBドウェイン・ハスキンズ(Dwayne Haskins)も252パスヤードに2TDとオフェンスの得点に貢献しました。しかしディフェンス陣はネブラスカ大の1年生QBエイドリアン・マルティネス(Adrian Martinez)の肩と足に翻弄され、全米10位らしからぬ展開に陥りました。
試合には勝ち、Big Tenカンファレンス東地区レース及びCFPレース生き残りに望みをつなぎましたが、ライバルであるミシガン大が圧倒的な強さを見せ続ける中、オハイオ州立大の現状は少々物足りなくも感じます。