今シーズンもすでに10月に突入していますが、開幕してから既に5週間たち開幕当初の勢力図に多少の変化が見られています。そんな中下馬評通りのチーム達、9月に躍進したチーム達、そして逆に期待はずれとなってしまったチーム達と様々です。今回は開幕後9月に行われた5週間の試合の出来を振り返り、筆者の独断と偏見でそれぞれのチームの通信簿を付けてみたいと思います。
A(大変良く出来ました!)
アラバマ大
開幕前から首位であるアラバマ大はここまで5戦全勝でトップを守っています。というか今のところ彼らが他のチームを大きく引き離している感じが大です。それは従来の彼らの特徴である強力なディフェンスとランゲームで試合を構築するという、ボールコントロール主体のフットボールだけでなく、フィールドをストレッチできるオフェンスリーダーが現れたからに他ありません。QBトゥア・タガヴァイロア(Tua Tagovailoa)の存在です。
これまでのアラバマ大には居なかった、パスセンスに非常に長けまた機動力も十分というQBを擁し、いよいよ手が出せなくなってしまったディフェンディングチャンピオン。しかもタガヴァイロアのバックアップが昨年までの先発QBで26勝2敗という先発戦績をもつジェイレン・ハーツ(Jalen Hurts)なのですから鬼に金棒です。
ちなみにアラバマ大は総得点数でFBS(フットボールボウルサブディビジョン)ナンバーワンを誇っていますが、タガヴァイロアはこれまで4Qすべてでプレーしておらず(大差になった時点でハーツや3番手のQBに出番を譲っているため)、にも関わらずこの数字を叩き出せていることに脅威を感じます。さらに言えば、この限られた出場時間であるのにタガヴァイロアはFBSのQBレーティングでも1位を獲得しており、アラバマ大とタガヴァイロアの凄さを物語っています。
オハイオ州立大
オハイオ州立大は開幕前にアーバン・マイヤー(Urban Meyer)監督を3試合の謹慎処分で失うという危機を迎えましたが、その間ライアン・デイ(Ryan Day)臨時監督のもの見事に勝利を重ね、さらに先週にはペンシルバニア州立大とのアウェーゲームでの接戦を制して無敗を守りました。全米ランキングも3位に上昇し、今のところカレッジフットボールプレーオフ(CFP)出場に多いに値するチームであるといえます。
またQBドゥウェイン・ハスキンズ(Dwayne Haskins)が2年生とは思えない冷静沈着さでオフェンスを牽引。上記のタガヴァイロアと並びハイズマントロフィーレース筆頭候補に挙げられています。
ケンタッキー大
全米で強豪とされる男子バスケットボール部に隠れあまりスポットライトが当たってこなかったケンタッキー大のアメフト部ですが、今年はフロリダ大やミシシッピ州立大をなぎ倒してこれまで5戦連勝中。RBベニー・スネル(Benny Snell)の活躍は勿論ですが、彼らの真の強さはそのディフェンス力にあります。強豪ひしめくSEC内で台風の目になりつつあります。
ちなみにケンタッキー大が最後に5勝0敗だったのは2007年度シーズンですが、もし今週末のテキサスA&M大戦に勝ち6勝0敗となるとこれは実に1950年ぶりの快挙となります。この1950年度チームを率いていたのは何を隠そうあのポール・「ベアー」・ブライアント(Paul “Bear” Bryant、アラバマ大のレジェンド)。そしてこの年のケンタッキー大は10勝1敗でシーズンを終えSECチャンピオンに輝き、出場したシュガーボウルではオクラホマ大を13対6で倒して11勝1敗でシーズンを終えるという素晴らしいシーズンを送りました。果たして今年はその1950年度の再現となるでしょうか?
ルイジアナ州立大
エド・オルジェロン(Ed Orgeron)監督2期目となった今年のルイジアナ州立大は開幕戦でマイアミ大に勝利するとさらにはアーバン大にも競り勝ちランカー2チームから勝利を奪うという周囲をうならせる結果を出し、現在までいまだ無敗。今後ジョージア大、アラバマ大との試合を残していますが、少なくともこれまでの展開は周囲の予想を大きく裏切るこれ以上無い素晴らしいものとなっています。
ノートルダム大
ノートルダム大は開幕戦でミシガン大を蹴散らしていいスタートを切りましたが、その後2試合でQBブランドン・ウィンブッシュ(Brandon Wimbush)が大苦戦。しかし4戦目のウェイクフォレスト大で先発QBをイアン・ブック(Ian Book)に替えるとチームは激変。途端にハイスコアチームに生まれ変わり、先週のスタンフォード大戦も快勝。ディフェンス力には定評がありましたから、オフェンスをスムースに動かせるブックというQBを得たことでノートルダム大はCFP進出に現実味が出てきました。
その他のA評価チーム
ウエストバージニア大、セントラルフロリダ大、コロラド大
B(よく出来ました)
ジョージア大
ジョージア代はこれまで5連勝と無傷のシーズンが続いています。順位も2位と好位置に付けていますが、正直これまで世間をあっと驚かすようなゲームをこなしてきていません。彼らの最初の試練は来週末のルイジアナ州立大戦。そこで彼らの今年の真の実力を知ることが出来るでしょう。
クレムソン大
クレムソン大もまたここまで5戦無敗ですが、開幕時に全米2位だったのが現在は4位まで順位を落としています。テキサスA&M大には2点差、シラキュース大には4点差と周囲を満足させるような絶対的強さを持ち得ていないように思えます。先週勃発したQB事情も相まって今後このまま突っ走れるか不安材料を残しました。
オクラホマ大
オクラホマ大も前出の2チームと同じようにこれまで無敗街道まっしくら。QBカイラー・マレー(Kyler Murray)は昨年までの絶対的QBベーカー・メイフィールド(Baker Mayfield)の抜けた穴を十分すぎるほど埋め尽くしています。ただ気になるのは彼らのディフェンス。陸軍士官学校に21点、そしてベイラー大に33点とCFP進出を目指すチームとしては格下チームに点を取られ過ぎているのが後々響かないか心配です。
アーバン大
アーバン大は初戦でワシントン大を倒すもルイジアナ州立大との「虎対決」に敗れ早くも8敗を喫してしまいました。しかしその後は順調に勝ち星を重ねて現在全米9位に。彼らにも十分CFP進出の可能性は残されていると思いますが、やはり1敗は痛いです。
ワシントン大
上記のアーバン大に開幕戦で敗れたワシントン大ですが、それ以降は強みのディフェンス陣が息を吹き返しスタンフォード大が先週敗れたためPac-12チームで現在CFPに一番近いチームとなりました。9月はQBジェイク・ブラウニング(Jake Browning)が不完全燃焼気味でしたが、彼が2年前にチームをプレーオフに牽引したときのような輝きを取り戻せれば、彼らにもまだチャンスがないわけではありません。
ペンシルバニア州立大
先週オハイオ州立大戦でみせたパフォーマンス、特にQBトレース・マクソーリー(Trace McSorley)の見る人を引きつけるプレースタイルは、この試合で負けはしたものの非常に評価できるものだと思います。確かにBig Ten東地区の激突となったオハイオ州立大戦に敗れたのは痛手ですが、彼らをCFPレースから除外するにはまだ早すぎると思います。
シラキュース大
先週まで4戦全勝で迎えたクレムソン大との大一番。アウェーチームにも関わらずクレムソン大から終始リードを奪う展開で、後もう少しで特大金星を奪うところまで相手を追い詰めました。これまでのシラキュース大の停滞ぶりからすれば、ディノ・バーバー(Dino Babers)監督のチーム改革が確実に実を結んでいることになります。彼らの強さは本物です。
その他のB評価チーム
ミシガン大、マイアミ大、ウィスコンシン大、オレゴン大、テキサス大など
C(頑張りましょう)
ミシシッピ州立大
今季から元ペンステートOCであるジョー・モアヘッド(Joe Moorhead)監督に率いられているミシシッピ州立大。開幕後3連勝で14位まで上昇しましたが、今季快調のケンタッキー大に敗れると先週はフロリダ大にも敗れ2連敗で急降下。SEC内でも随一のOL・DLを保持していると言われていましたが、カンファレンス戦で2連敗というのはモアヘッド監督の戦略がSECで通用しないのかと思わせてしまいます。
テキサス工科大
今季結果を残さなければ後がないと言われているテキサス工科大のクリフ・キングスバリー(Kliff Kingsbury)監督。開幕戦でミシシッピ大に敗れるもその後ヒューストン大やオクラホマ州立大から勝利を奪うなど3連勝。久しぶりにランキングにも登場しましたが、先週はウエストバージニア大に敗戦。これで既に2敗となり今後テキサスクリスチャン大、テキサス大、オクラホマ大との試合を残していることを考えれば、キングスバリー監督の首をつなぐにはもう1試合も負けられません。
テネシー大
前監督のブッチ・ジョーンズ(Butch Jones)氏の作り上げた、負けることに慣れてしまった環境を改革するために起用された、元アラバマ大DCのジェレミー・プルイット(Jeremy Pruitt)監督率いるテネシー大。確かに昨年よりは戦える予感を感じさせてはくれますが、流石に1年目ですべてを変えるのは難しいようです。
フロリダ州立大
彼らの不甲斐なさを見ればむしろD評価を与えても良さそうなものですが、とりあえず3勝しているのでC評価にしておきます。初年度監督のウィリー・タガート(Willie Taggart)監督はバージニア工科大とシラキュース大にトータル44失点を犯して敗退しました。開幕後数試合はとにかくOL陣の脆さが目立ち、また怪我から復帰してきたQBデオンドレ・フランソワ(Deondre Francois)の出来もいまいち。今週末のマイアミ大戦に競り勝てればこのシーズンをまだ救う可能性は残されています。
サザンカリフォルニア大
QBサム・ダーノルド(Sam Darnold)、RBロナルド・ジョーンズ(Ronald Jones)ら昨年までの主力がごっそり抜け、戦力ダウンは否めなかったサザンカリフォルニア大ですが、正直これまでの強さというかUSCのカリスマ性が全く感じられなくなってしまいました。クレイ・ヒルトン(Clay Hilton)監督体制の終わりの始まりでないことを祈りたいです。
D(残念です)
ネブラスカ大
昨年セントラルフロリダ大を全勝チームに育て上げ、今季から母校のネブラスカ大の再建を任されているスコット・フロスト(Scott Frost)監督。しかし今のところチームは開幕後4連敗中で1945年以来の醜態を晒していることになります。1年目からカンファレンス優勝を狙えるとは誰も思っていなかったでしょうが、ネブラスカ大の熱狂的なファンたちのため息が聞こえてきそうです。
UCLA
フットボールにお金をなかなかつぎ込まないUCLAが大金をはたいてチップ・ケリー(Chip Kelly)氏を次期監督に指名した際にはかつて無いほどの期待がかけられていましたが、蓋を開ければこれまで全敗中。点が取れないどころか(総得点数68点)ディフェンスも総崩れ(総失点数151点)とあり、彼らの躍進は来年以降に持ち越しとなりそうです。