フットボール以外の事件でばかりスポットライトを浴び続けてきたペンシルバニア州立大(ペンステート)ですが、昨年は3年目のヘッドコーチ、ジェームス・フランクリン(James Franklin)監督がチームをBig Tenカンファレンス優勝チームに仕立て上げ、出場したローズボウルでは惜しくも敗れはしたもののサザンカリフォルニア大相手に近年稀に見る名勝負を繰り広げ、ようやくフットボール部として名を上げることに成功しました。
【関連記事】1月2日のボウルゲーム寸評
元々強豪校として知られていたペンステートですが、ここ最近は前述の通りスキャンダルのせいもあってフットボールチームとしては全米の表舞台からは遠ざかっていました。しかし昨年の大活躍、及びそれを演出したキープレーヤーたちが今年も健在であることもあり、周囲の期待はこれまでになく大きなものとなっています。果たして彼らはこの期待に答えることができるのでしょうか?
オフェンス
2年前FCSのフォーダム大からペンステートのオフェンシブコーディネーターに引き抜かれたジョー・モアヘッド(Joe Moorhead)氏ですが、彼を射止めたフランクリン監督の眼力が的中。昨年の彼らのオフェンスはモアヘッドの指揮のもと強力なブロッキングとここぞという時にいいプレーを連発するという勝負強さを備えて試合をこなすごとにチームの状況は良くなっていきました。昨年全米14位(パスエフィシエンシー、パスオフェンスの効率の良さを示す)のオフェンスから9人が今年も健在。しかもその軸をなすQBトレース・マクソーリー(Trace McSorley)、RBサクオン・バークレー(Saquon Barkley)が再びチームを率いることを考えれば、否応無くファンの期待度は高まります。
マクソーリーは昨シーズン序盤こそプレーの波が激しかったですが、運命のオハイオ州立大戦での勝利を経験して一気にプレーの質が急上昇。特に差し迫った第4Qに試合の流れを変えるプレーを連発してチームに勝利を引き込んでいきました。それは3600パスヤードに29TDという数字にも表れています。
そしてマクソーリーが台頭してくるまではチームのオフェンスの鍵を握っていると言われていたバークリーも今季再びチームに戻ってきました。オールラウンドの活躍を見せてくれたバークリーはRBとして今季もっともハイズマントロフィー受賞に近いと言われる逸材。昨年のメンバー5人中4人が同じ面子という安定したOL陣を盾に縦横無尽にフィールドを駆けまわることでしょう。フランクリン監督就任後最初の2シーズンで合計83個ものQBサックを献上してしまったOL陣は昨年だけでその数字を24にまで押さえ込むことに成功しました。
レシーバー陣からはトップWRクリス・ゴッドウィン(Chris Godwin)がドラフト入りしてしまったのは非常に大きいですが、その他のWRは全員今季もラインアップに残っています。さらにオールBig TenのTEマイク・ガシキ(Mike Gesicki)はドラフト入りを保留してカレッジ最後のシーズンのために再び紺色のユニフォームに袖を通します。ゴッドウィンが去ったことで多少の変化はやむを得ないレシーバー陣になりそうですが、その攻撃力は昨年に勝るとも劣らないものになりそうです。
ディフェンス
ディフェンス陣には昨年のメンバーから7人が戻ってきます。DL陣からはギャレット・シックルズ(Garrett Sickels)とイヴァン・シュワン(Evan Schwan)を失い、パスラッシュに少々の不安が残ります。タックルは非常に頼りになる選手たちが揃っていますので、シックルズとシュワンに取って代わるエンドポジションの選手の急成長が待たれます。
LBからはブランドン・ベル(Brandon Bell)がチームを去りましたが、「ラインバッカーU」と呼ばれる伝統は生きており、次世代の「ラインバッカーU」を背負う若手たちが自分たちの出番を待っているところです。
バックフィールドにはスター選手でハードヒッターなSマーカス・アレン(Marcus Allen)が今年も健在。彼を中心にペンステートのセカンダリーはカンファレンスを代表するくらいの実力をもつユニットと言えるでしょう。
基本的にペンステートは強固なディフェンスと堅実なランオフェンスを旨としていました。ですから昨年見せた40個のQBサックに114個のタックロフォーロス(TFL)という数字は本領発揮といっても言い過ぎではなかったかもしれません。しかし3敗したゲームではQBサックを決めることができませんでした。ローズボウルではたったの1つ。そしてミシガン大とピッツバーク大戦では相手から一つもサックを奪えませんでした。ここぞという時のフロントセブンのプレッシャーが今季はさらに必要とされそうです。
見どころ
開幕後5試合中4試合がホームゲームというのはペンステートにとっては朗報ですが、2試合目のピッツバーグ大との古き良きライバル対決は見ものです。昨年は彼らに敗れているので是非リベンジを果たしておきたいところ。また4試合目のアイオワ大とのアウェーゲームは油断できません。アイオワ大は毎年派手さはなくても堅実な良いチームを輩出するのが常です。が10月21日のミシガン大戦まで無敗を貫く可能性も大いにあると思います。
ミシガン大とのホームゲーム、そしてその翌週のオハイオ州立大とのアウェーゲームの2連戦が勝負です。前評判ではこの3チームが東地区の三つ巴となると予想されていますので、この2週間がカンファレンスタイトルの行方を占う上でも非常に重要になってきます。
ペンステートの昨年の躍進は誰も予想することができませんでした。それもひとえにフランクリン監督の手腕のおかげだとも言えますが、今年は彼らが「一発屋」ではないことを証明するために非常に大事なシーズンとなります。昨年のようにBig Tenカンファレンスを争えるようなチームになるのか?そしてプレーオフに進出するに値するチームなのか?非常に気になるところです。
またQBマクソーリー、RBバークリーはすでにどちらもハイズマントロフィー候補に挙げられている選手たち。ペンステートのオフェンスは彼らの出来にかかっているとも言えますが、彼らがその期待に応えることができるか?もっと言えばその期待というプレッシャーに押しつぶされずに自分たちのプレーを披露できるかも注目点であると言えます。
どちらにしても世間を驚かせた昨年のチームよりもパワーアップしていることは確かです。昨年の転機の試合となったオハイオ州立大での勝利がまぐれでなかったことを証明するためには、今度は彼らの敵地に乗り込んで勝利をもぎ取らなければなりませんし、大敗したミシガン大にもレベンジを果たしたいところ。Big Ten東地区を制するのは生半可ではいきませんが、彼らペンステートにもチャンスはあると思われます。
2017年度スケジュール
9月2日 | アクロン大 |
|
9月9日 | ピッツバーグ大 |
|
9月16日 | ジョージア州立大 |
|
9月23日 | アイオワ大 |
|
9月29日 インディアナ大 | ||
10月7日 | ノースウェスタン大 |
|
10月21日 | ミシガン大 |
|
10月28日 | オハイオ州立大 |
|
11月4日 | ミシガン州立大 |
|
11月11日 | ラトガース大 |
|
11月18日 | ネブラスカ大 |
|
11月25日 | メリーランド大 |
*太字はホーム
チーム情報
所在地
ペンシルバニア州ステートカレッジ
所属カンファレンス
Big Ten(東地区)
ホームスタジアム
ビーバースタジアム
通算戦績
867勝384敗42分け
通算ボウルゲーム戦績
28勝17敗2分け
ヘッドコーチ
ジェームズ・フランクリン
25勝15敗(4年目)
【キャリア通算:49勝30敗】
前回全米優勝年度
1986年度
前回Big Ten優勝年度
2016年度
前回ボウルゲーム出場年度
2016年度(ローズボウル)