今シーズンのカレッジフットボールも9月最後となる5週目を迎えます。今週もハイランカー同士の対決やいわくつきのカードが組まれており、楽しみな週末となりそうです。それでは第5週目の気になるゲームを紹介していきたいと思います。
オハイオ州立大(4位)@ ペンシルバニア州立大(9位)
今季のカレッジフットボールプレーオフ(CFP)の行方を占う上で最も重要な試合とも言われるこの試合。Big Tenカンファレンス東地区は混戦模様と言われていますが、その中でも上位を争うこの2チームが激突します。
ホームのペンシルバニア州立大は初戦のアパラチアン州立大戦で思わぬ苦戦を強いられ、オーバータイムの末辛くも勝利するという試合を見せましたが、それ以降は復活しこれまで大量得点で勝利を重ねてきました。そのチームの大黒柱はQBトレース・マクソーリー(Trace McSorley)。昨年のスターRBセイクワン・バークリー(Saquon Barkley、現ニューヨークジャイアンツ)が抜けた後、押しも押されもせぬ絶対的リーダーとなった彼はこれまで32試合連続で最低でも1つのTDを稼ぎ続けており、まさに彼がペンステートオフェンスを一手に引き受けている感じです。
オハイオ州立大にもドゥウェイン・ハスキンズ(Dwayne Haskins)という2年生のスーパーQBが健在。昨年までのベテランQBであるJ.T. バレット(J.T. Barrett)の後継者として注目されていたハスキンズは期待以上の働きを見せ、2年生とは思えない正確なパスとポケット内での冷静さでハイスコアの攻撃陣の起点となってきました。
オハイオ州立大はさらにハスキンズのサポーティングキャストたちも充実。ディフェンス陣はスターDLニック・ボーサ(Nick Bosa)を怪我で欠くものの、底の厚さは他に類を見ないほどのもので、今のところボーサ不在が守備力に影響しているとは思えません。
ペンステートはこれまでオハイオ州立大ほどの強敵と対戦してきていません。ですから真の強さをまだ試されていないのです。そういった意味では攻守の両ラインプレー、そしてパスディフェンスならびにランディフェンスがどれだけオハイオ州立大のハイパワーオフェンスに対抗できるのかが勝負となってきます。
下馬評はオハイオ州立大有利ですが、クラッチプレーで何度も道を切り開いてきたマクソーリーの存在、そしてこの試合がペンステートのホームゲームであり、スタジアムを真っ白に染めて敵を迎え撃つ「ホワイトアウト」であることはペンステートを大いに後押ししてくれるでしょう。どちらにしても勝ったほうがカンファレンスレース、並びにCFPレースで大きく前進することになるでしょう。
スタンフォード大(7位)@ ノートルダム大(8位)
スタンフォード大とノートルダム大のこのライバリーゲームも上記のゲームに負けず劣らず重要な試合となります。
スタンフォード大は先週劇的な逆転劇でオレゴン大を倒しました。この試合ではほぼ全体でオレゴン大オフェンスにやられっぱなしでしたが、敵のミスを逃さず流れを引き寄せ、オーバータイムの末に奇跡の大逆転勝利を収めました。正確なパスが魅力のQB K.J.コステロ(K.J. Costello)そしてこれまで昨年までのような爆発力を発揮できては居ないもののその能力は無限大であるRBブライス・ラブ(Bryce Love)、そして長身のWR・TE揃いのレシーバー陣はハマれば誰にも止められません。
ノートルダム大は初戦のミシガン大戦でこそシャープなプレーを見せたもののその後苦戦続きだったQBブランドン・ウィンブッシュ(Brandon Wimbush)に代えてイアン・ブック(Ian Book)を先週のウェイクフォレスト大戦に投入。これが当たって56点というハイスコアを叩き出すことに成功。おそらくこのままブックが正QBの座を確保することでしょうから、これまでとは全く違う点の取れるオフェンスが期待できそうです。
Pac-12カンファレンスではスタンフォード大が今のところランキングで最上位(7位)に位置していますが、もしこのカンファレンス所属チームがCFPに出場するならばリーグ優勝を果たすだけでなく、無敗であることが条件となってくるでしょう。つまりワシントン大、オレゴン大が既に1杯を喫してしまった今、Pac-12の希望はスタンフォード大のみに残されていると言っても過言ではありません。
一方独立校であるノートルダム大がCFPに出場するためには、おそらく彼らも無敗であることが条件です。というよりも彼らがもし全勝した場合はそのネームバリューからも彼らをトップ4チームに推さないわけにはいかないと思われます。そして今後のスケジュールを見ればこのスタンフォード大がおそらく全勝に向けての最大の難関といえます。つまりノートルダム大にとってこの試合を獲ればCFP進出がぐっと近づくということになります。
スタンフォード大は先週のオレゴン大戦に引き続きアウェーゲーム。そして新先発QBを据えてホームに帰ってくるノートルダム大。宿敵同士でもあるこの対決、どちらに軍配が上がるでしょうか。
ウエストバージニア大(12位)@ テキサス工科大(25位)
オクラホマ大が注目の集めるBig 12カンファレンスで虎視眈々と下克上を画策するウエストバージニア大。彼らはシーズン最終戦でそのオクラホマ大との試合が組まれており、開幕時はその試合がカンファレンスの雌雄を決する試合になると思われていましたが、テキサス大が調子を上げ、さらにテキサス工科大もランク入りするなどウエストバージニア大にとってはオクラホマ大戦の前に乗り越えなければならない壁が高くなってきました。
多くの転校生で構成されているウエストバージニア大ですが、その最たる人物がQBウィル・グリアー(Will Grier)です。彼は2015年にフロリダ大で1年生ながら先発QBを任され開幕6連勝の原動力になりましたが、禁止薬物摂取が明らかになり1年間の試合出場禁止処分に処されてしまいました。その後フロリダ大から転校してウエストバージニア大に編入。2017年から先発QBとして活躍している彼は今季ハイズマントロフィー候補にも上げられている頼れる選手に成長しました。
一方のテキサス工科大はクリフ・キングスバリー(Kliff Kingsbury)監督の勝負の年として注目されてきましたが、開幕戦こそミシシッピ大に敗れましたもののその後は3連勝。ヒューストン大、オクラホマ州立大というハイパワーオフェンスチームを倒して今季初めてランクインを果たしてきました。彼らの絶好調の影にはQBアラン・ボウマン(Alan Bowman)の存在があります。これまで1557ヤード、10TD、2INTという素晴らしい数字を叩き出している彼はキングスバリー監督の目指すオフェンスを完璧に体現できる選手です。またそれだけでなく先週のオクラホマ州立大戦でも見せたように、従来ハイスコアとなる相手チームを17点に抑えたディフェンス陣にも3連勝の理由が隠されていると思います。
ウエストバージニア大にとって変革途中のテキサス工科大をあなどることはできません。
ブリガムヤング大(20位)@ ワシントン大(11位)
既に1敗を喫しているワシントン大はCFP進出を目指す上でもう1つも試合を落とすことはできません。今後オレゴン大、スタンフォード大、コロラド大、カリフォルニア大と厳しいスケジュールが続く中、交流戦であるブリガムヤング大が20位にランクされるチームとなったことは一長一短あると思います。
負けられない状況でさらに強いチームとの対戦が増えることは負けるリスクが増えるということですが、逆に言うとそのような厳しいスケジュールを切り抜けられたとなれば、その事実はCFP選考委員会へ良いアピールになります。もちろんワシントン大が負ければ2敗となりその時点で彼らのCFP進出はほぼ絶望的となりますが。
ワシントン大が足元をすくわれないか気になるところです。
オレゴン大(19位)@ カリフォルニア大(24位)
オレゴン大は先週ホームでスタンフォード大に大逆転負けを喫してしまいました。あまりの衝撃に選手だけでなくファンたちもしばらくスタジアムで呆然と立ち尽くす姿が印象的でした。その精神的ダメージを敵地のカリフォルニア大に持ち込んでしまわないか心配です。
ただ試合に負けたもののQBジャスティン・ハバート(Justin Herbert)が操るオフェンスは全米のどのチームにも通用すると思わせるには十分で、彼らを止めるのはそう容易なことではないでしょう。またスタンフォード大に敗れた原因にコーチ陣の不明瞭なプレーコーリングも挙げられました。この問題をしっかりと改善してくれば、オレゴン大が負けるとは考えられません。
カリフォルニア大は元ウィスコンシン大DCであるジャスティン・ウィルコックス(Justin Wilcox)監督2年目の今年、早くもチーム再生への結果が出始めてきました。3勝0敗でランク入りをしましたが、今回対戦するオレゴン大はこれまで彼らが戦ってきた3チームとは次元が違う相手であり、彼らが無敗だとしてもオレゴン大戦でその力の真価を問われることになるでしょう。
サウスカロライナ大 @ ケンタッキー大(17位)
これまでフロリダ大とミシシッピ州立大を倒し、今週圏外からいきなり17位にランクインしてきたケンタッキー大。今シーズンのサプライズチームの一つに数えられますが、どうやらその実力はまぐれではなく本物のようです。フロリダ大はまだ再建中、ミシシッピ州立大はアラバマ大やジョージア大のような存在とも言えませんが、それでもこの両チームを倒したことは大きく評価するべきです。
今回対戦するサウスカロライナ大はSEC内で上位チームとは言えませんが、ケンタッキー大が楽に勝てるといえるチームでもありません。しかしケンタッキー大といえば何と言ってもRBベニー・スネル(Benny Snell Jr.)。これまで過去4試合中3試合で100ヤード超えを果たし、先週のミシシッピ州立大戦でも165ランヤードに4TDと大活躍。彼の狂犬ぶりも相まって、注目度は現在うなぎのぼりです。
ケンタッキー大のシンデレラシーズンがどこまで続くのか、というのと共にスネルがサウスカロライナ大ディフェンスにも通用するか見ものです。
フロリダ大 @ ミシシッピ州立大(23位)
たった今紹介したケンタッキー大が共に倒したチーム同士の戦いですが、それ以上にこの試合は昨年まで9年間ミシシッピ州立大を率い、今シーズンからフロリダ大に移籍してチームを指揮しているダン・マレン(Dan Mullen)監督が、古巣と対戦(しかもミシシッピ州立大のホーム)するという興味深いカードなのです。
ミシシッピ州立大が現在ランカーであるのは新監督のジョー・モアヘッド(Joe Moorhead)監督の手腕であることは確かですが、彼が起用している選手たちはほぼ全てマレン監督が引っ張ってきた選手たちです。ということはマレン監督はミシシッピ州立大のロースターを熟知していることになりますから、これは大きなアドバンテージとなるでしょう。
マレン監督は惜しまれながらミシシッピ州立大を去っていったようですから、ミシシッピ州立大の選手たちが恨みを持ってフロリダ大戦に望むとは思えませんが、恩師に一泡吹かせてやろうと一同狙っていることに違いありません。それにマレン監督にしても相手選手のことをよく知っているとは言え、やはりやりづらいところは多少なりともあるはずですから。
パデュー大 @ ネブラスカ大
古豪ネブラスカ大の再建を任され凱旋してきたチームの元スターQBスコット・フロスト(Scott Frost)監督。昨年は前チームであるセントラルフロリダ大を完全無敗チームに育て上げ、その手腕を母校でも活かせるとファンは多大なる期待を寄せましたが、その期待は大外れ。今のところ3戦全敗でこれは1945年以来の大失態ということになっています。
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今回彼らが対戦するパデュー大は先週全米23位のボストンカレッジを破る金星を挙げました。が、そもそもボストンカレッジが本当に23位の実力だったのかは疑問で、たしかに彼らは3連勝で波に乗っては居ましたがその勝利はマサチューセッツ大、ホーリークロス大(FCS)、ウェイクフォレスト大から奪ったもので、お世辞にも強豪チームを倒してきたとはいえませんでした。
そんなボストンカレッジを倒したパデュー大がネブラスカ大に乗り込んでくるわけですが、フロスト監督は週例会見の中で「パデュー大は我々が勝てるはずのチーム」と宣ってしまい、パデュー大選手やコーチたちの神経に触れてしまいました。
たしかにパデュー大はBig Tenカンファレンスタイトルを獲得できるようなチームではありませんが、現在全米ディフェンスランキングで74位のネブラスカ大にとって「勝てるはず」なチームなどそうは見当たらないはずです。シーズン初戦のコロラド大戦では負けたものの非常にいいファイトを見せてくれましたが、それ以降はファンのため息を誘うような試合ばかり。
初勝利に飢える選手やファンにとって今季初の白星、そしてフロスト監督にとっても母校での初勝利を飾ることが出来るでしょうか?