CFPナショナルチャンピオンシップゲームプレビュー⑤

CFPナショナルチャンピオンシップゲームプレビュー⑤

コーチング

このプレビュー連載でも少し触れましたがジョージア大のカービー・スマート(Kirby Smart)監督は2年前にジョージア大監督に就任するまでアラバマ大のディフェンシブコーディネーターを務めていました。実際アラバマ大が2015年度のCFPナショナルチャンピオンシップに進出した際、当時すでにジョージア大の監督に就任していたスマート監督はプレーオフが終了するまでアラバマ大のDCとジョージア大の監督を兼任。そして見事アラバマ大はナショナルタイトルを獲得し、スマート監督は任務を全うしてアラバマ大を去っていったという背景があります。

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アラバマ大時代のスマート監督とセイバン監督

もっと言えばスマート監督とニック・セイバン(Nick Saban)監督の関係は2004年まで遡り、当時ルイジアナ州立大で監督をしていたセイバン監督のDBコーチとしてスマート監督はセイバン監督に師事するようになります。そして2005年には母校であるジョージア大のRBコーチとして一旦セイバン監督と別れますが、セイバン監督が2004年度シーズン終了後にマイアミドルフィンズのヘッドコーチを務めると2006年にセイバン監督からスマート監督へドルフィンズコーチ陣入閣の声がかかり、ここでセーフティーコーチを任されます。そしてセイバン監督がドルフィンズを去ってアラバマ大の新監督に就任した2007年、スマート監督も共にアラバマ大に移動。そして2008年からはDCを任され、2009年、2011年、2012年、2015年のナショナルチャンピオン獲得に大いに貢献したのでした。

つまりこのアラバマ大とジョージア大の対決はセイバン監督とスマート監督の師弟対決でもあるわけです。

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これまで5度の全米制覇を成し遂げてきたセイバン監督

現時点で現役最高の監督とも言われるセイバン監督ですが、これまで彼は5人の弟子と師弟対決を経験しており、そのどの試合にも勝利しています。2015年のCFP準決勝戦で対決したミシガン州立大マーク・ダントニオ(Mark Dantonio)監督(セイバン監督がミシガン州立大監督だった時のDBコーチ)、元テネシー大監督のデレク・ドゥーリー(Derek Dooley、現ダラスカウボーイズWRコーチ;ルイジアナ州立大時代のアシスタント)氏、元フロリダ大ジム・マクエルウェイン(Jim McElwain、元アラバマ大のOC)氏、元フロリダ大ウィル・ムスチャンプ(Will Muschamp、現サウスカロライナ大監督;ルイジアナ州立大時代のDC)、今季開幕戦で対決した元フロリダ州立大ジンボ・フィッシャー(Jimbo Fisher、現テキサスA&M大;ルイジアナ州立大時代のOC)監督とそうそうたるメンバーがセイバン監督から巣立ち、のちに彼に腕試しを試みたわけですが、誰も「ボス」を倒すことはできなかったのです。

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2017年度開幕戦で対戦したフィッシャー監督とセイバン監督

そんな無敵のセイバン監督に挑む6人目の弟子であるスマート監督ですが、セイバン監督に師事した時間は他のどの弟子たちよりも長いものです。そしてアラバマ大がこれまで築いてきているダイナスティを支えたのが紛れもないスマート監督でもあります。それはセイバン監督のディフェンス哲学を見事に体現したコーチとしての手腕だけでなく、彼自身が持つリクルーティング術も大いに役に立ったと言えるでしょう。そんなアラバマ大でのセイバン監督の必勝論を側近として学んだスマート監督がその全てをジョージア大に注入。そしてたったの2年でチームをナショナルチャンピオンシップに進出するまでに育て上げたのです。

ジョージア大のスタイル – 強力なランオフェンスとディフェンス力で相手を倒していくもの – はまさにアラバマ大のスタイルそのもの。また外からは目に見えない、CEOとしてのリーダーシップもセイバン監督直伝のやり方でチームを立て直していたとしても驚きではありません。さらにすでにリクルーティングでは元々アラバマ大で築き上げてきたネットワークを活かして2018年度クラスでは今の所全米ナンバーワンと評価されています。セイバン監督にとっては自らの最大の敵を自らが育て上げてしまったのかもしれません。

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ジョージア大で2年目のスマート監督は早くも結果を残しています

また長年セイバン監督と仕事をしてきたということは、スマート監督にとってセイバン監督がコーチとしてどのような思考をするかはお見通しかもしれません。これは非常にジョージア大にとって有利です。もちろんジョージア大のディフェンスがどんなものかセイバン監督に筒抜けであるのも同じことですが、「ボス」を倒す上でこの事実は何物にも変えがたい情報なはずです。おまけにアラバマ大ディフェンス陣の選手はほぼ全員スマート監督の息のかかった選手なのですから。

ただアラバマ大内部にもジョージア大と繋がっている人物がいます。それがディフェンシブコーディネーターのジェレミー・プルイット(Jeremy Pruitt)氏です。彼はアラバマ大に来る以前はジョージア大のDCであり、スマート監督がジョージア大へ去った時にセイバン監督がプルイット氏をスマート監督の後継者としてジョージア大から引き抜いたのです。つまり、ジョージア大のディフェンス選手たちの多くもプルイット氏にリクルートされた選手であり、プルイット氏も彼らのことをよく知っていることでしょう。

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アラバマ大DCのジェレミー・プルイット氏

面白いことにプルイット氏はレギュラーシーズン終了後にアラバマ大のライバルであるテネシー大のヘッドコーチのポジションをオファーされそれを受諾。しかしながらアラバマ大がプレーオフを戦い切るまでアラバマ大に帯同することになっています。これはまさに2015年のスマート監督の状況と同じです。

これで来年にはセイバン監督にとって7人目の弟子との対決が待ち受けることになります。もちろん現時点ではプルイット氏はアラバマ大が優勝するために全力を尽くしていることでしょう。しかし来年にはライバルチームの指揮をとることになる・・・。「昨日の敵は今日の友」ならぬ「昨日の友は今日の敵」ということでしょうか。

兎にも角にもお互いを尊敬し合う中でもあるセイバン監督とスマート監督ですが、試合が始まってしまえば勝利のために相手の手の内を読もうと必死になるでしょう。セイバン監督が元上司としてその差を見せつけるか?もしくはスマート監督が下克上を狙うか?この点も楽しみです。

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