Survival Dance 〜第5週目レビュー〜

雨天での激戦

クレムソン大24,ノートルダム大22

アメリカ東海岸は北から南まで全域に渡って接近していたハリケーンの影響で、試合当日の土曜日は全日雨模様となりましたが、そんな中クレムソン大のホームで行われたこのゲームもそれに漏れず激しい雨が打ちつける中行われました。試合は終盤までもつれて、残り時間10秒を切ったところでノートルダム大がTDを決め、2ポイントコンバージョンが決まれば同点でオーバータイムか、というところでクレムソン大ディフェンスが踏ん張り2点差で逃げ切る劇的な幕切れでした。

ノートルダム大は終盤8点を追う状態で3度得点可能なチャンスがありましたが、その度にことごとくクレムソン大ディフェンスに阻まれました。試合時間残り2分9秒、ノートルダム大はクレムソン大陣内4ヤード地点まで攻め込みますが、クレムソン大DBジェイロン・カース(Jayron Kearse)がファンブルを誘いノートルダム大の攻撃を阻止。さらにその後ノートルダム大は再び残り時間1分5秒の時点で攻撃権を得てTDと2ポイントコンバージョンでオーターバーイムに持ち込もうと企みます。ノートルダム大はあれよあれよと言う間にボールをクレムソン大陣内へ押し込み、最終的に残り7秒でTDを奪います。しかし続く2ポイントコンバージョンはノートルダム大QBデショーン・カイザー(DeShone Kizer)がオプションランを試みますが、それをいち早く察知したクレムソン大ディフェンスが波の様にカイザーに押し寄せ、結局カイザーはエンドゾーンにたどり着く事なくあともう少しと言う所で悔しい敗戦を喫したのでした。

この試合に勝利したクレムソン大は11月にあるフロリダ州立大戦を除けばスケジュール的に見てACCタイトルレース最有力候補に挙げられるでしょう。後は上位チームが転げ落ちるのを待てば念願のプレーオフ進出も現実味を帯びてきます。

一方ノートルダム大にとっては非常に痛い1敗となりました。雨が原因であったにせよ、4つのターンオーバー、そして絶好機に犯したペナルティーで勝てる試合を自滅する形で逃したからです。一番の疑問は第4Q残り14分13秒にカイザーからWRのC.J. プロシス(C.J. Prosise)への56ヤードTDパスが決まり、いよいよ反撃ののろしを揚げるかと思われたときです。アイリッシュのヘッドコーチ、ブライアン・ケリー(Brian Kelly)監督はここで何故か2ポイントコンバージョンに打って出ます。自身のタイムアウトを使ってまでして博打に出たケリー氏の采配はカイザーのパスが通らずあえなく失敗。もしこのときPATを蹴っていれば、試合終了直前のプレーでTDした後に2ポイントコンバージョンを試みる必要がなかったのです。これでアイリッシュは残りの試合を全勝しなければプレーオフ進出は難しくなりました。しかし現実的に言って仮に全勝したとしても自力での進出は厳しく、上位チームの変動次第となるでしょう。

雨天での快勝

アラバマ大38、ジョージア大10

この試合でも激しい雨が降り注ぎましたが、先のクレムソン大対ノートルダム大戦のような接戦とは正反対のワンサイドゲームとなったのはこのアラバマ大ジョージア大の一戦。アラバマ大が非常に稀なアンダードッグとしてジョージア大キャンパスに乗り込みましたが、「本来の」アラバマ大の強さを見せジョージア大を一蹴しました。ジョージア大にとってはここ近年で最も注目度、期待度が大変高いホームゲームとなりましたが、DLジャラン・リード(Jarran Reed)とアショーン・ロビンソン(A’Shawn Robinson)が軸となるアラバマ大ディフェンスを押さえることが出来ず、逆に返り討ちにあってしまいました。第3Q中盤には早くも多くのジョージア大ファンがびしょぬれになりながらスタジアムを後にする姿が多く見られたほど、彼らの失望感は大変大きかったに違いありません。

またアラバマ大は得意の地上戦が機能し、ゲームのほぼ全般を通して試合の流れをコントロールしました。不安視されていたQBのポジションでしたが、この日先発出場したジェイク・コーカー(Jake Coker)が今季最高レベルの安定したパフォーマンスを見せ、ジョージア大ディフェンスをオフバランスに仕向けました。コーカーは前半だけで8回中7回パスを成功させ、158ヤードのパスを通しハーフタイム時で24対3と大きくリード。またRBデリック・ヘンリー(Derrick Henry)は1TDを含む148ヤードを足で稼ぎ勝利に貢献。スロースタートだったものの、第2Qに30ヤードのTDランを決めるとそれが準備運動となったのか、徐々にジョージア大ディフェンスの穴を付いてラッシュヤードを重ねていきました。

ジョージア大はゲーム全般においてオフェンスが機能せず、前半だけで実に7回もパントを余儀なくされました。しかもそのパントの一つはアラバマ大DBミンカー・フィッツパトリック(Minkah Fitzpatrick)にブロックされそのままリターンTDを奪われます。ジョージア大オフェンスの要であるRBニック・チャブ(Nick Chubb)は第3Q終了間際に決めた83ヤードTDラン以外はいい所が全くなく、全米屈指のランディフェンスを誇るアラバマ大に完全にシャットダウンされました。先のサウスカロライナ大戦でNCAA記録となる、25回中24回のパスを繋ぎその名を全米に知らしめたQBグレイソン・ランバート(Greyson Lambert)はこの日は冴えず17回中7度しかパスがパスが通らず結果ベンチに下げられてしまいました。

2週間前、ホームでミシシッピ大にまさかの敗戦を喫し、今季のアラバマ大はナショナルチャンピオンシップを争うに足るチームなのか疑問視する声が多く聞かれましたが、その雑念はこの試合で完全に払拭されたと言っていいでしょう。仮にコーカーが今日のようなパフォーマンスを今後も維持することが出来るならば、アラバマ大の勝利の方程式、つまりピンポイントのパスを要所に織り交ぜながらランオフェンスで相手ディフェンスを力でねじ伏せ、そして圧倒的なディフェンス力て相手オフェンスに仕事をさせないという、従来の全米中が知っている強豪アラバマ大フットボールチームが復活したと言えるでしょう。ジョージア大にとっては今季初の敗戦というだけでなく、その負け方が一方的だったというのは今後チームを立て直してSEC東地区レースを勝ち抜き、プレーオフ進出を狙うにあたり非常に不安材料となってしまいました。

ゲーターアタック!

フロリダ大38、ミシシッピ大10

今季初のランクインを果たし、ホームに全米3位のミシシッピ大を迎えてその実力を試される事となったフロリダ大。先発QBウィル・グリアー(Will Grier)が風邪で万全でなく出場すら危ぶまれましたが、前半だけで4つのTDパスを決めるなどその体調の悪さを全く見せる事なく、ミシシッピ大を一蹴する立役者となりました。またグリアーの「壁」となったフロリダ大オフェンシブラインがミシシッピ大ディフェンスにグリアーを触れさせる事なく、彼にポケット内で十分な時間を与える事に貢献してくれました。その強固なOLに恩恵をあやかった、RBケルヴィン・テイラー(Kelvin Taylor)も87ラッシュヤードを記録。非常にバランスの取れた、テンポのいいオフェンスはかつての常勝フロリダ大を彷彿とさせるものでした。

フロリダ大ディフェンスもオフェンスに負けじとその底力を発揮。ミシシッピ大QBチャド・ケリー(Chad Kelly)にプレッシャーを掛け続け、またファンの大声援も相まってケリーに無駄なタイムアウトをとらせるなどミシシッピ大オフェンスを混乱させる事に成功。ミシシッピ大から4つものターンオーバーを引き出し、完全に試合の流れを掌握しました。

フロリダ大が全米ランクトップ3以上のチームにホームで勝ったのは1999年に当時2位だったテネシー大を破って以来の快挙。また今季初めて指揮を執るフロリダ大ヘッドコーチ、ジム・マクエルウェイン(Jim McElwain)は1990年のスティーブ・スパリアー(Steve Spurrier、元ヘッドコーチで現在サウスカロライナ大を指揮)以来となる、チームを開幕5連勝に導いたコーチとなりました。

一方ミシシッピ大は2週間前にアラバマ大を破る大金星を挙げ、全米3位までに上り詰めたものの先週は格下バンダビル大に思わぬ苦戦を強いられ、その流れでこのフロリダ大戦を迎え、結果として土を付けられる事となりました。まだまだカンファレンスゲームは沢山残ってはいますが、ナショナルタイトルを狙う上で絶好の順位にランクインしていただけあって、この黒星は非常に痛いものとなりました。

オハイオ州立大、思わぬ苦戦

オハイオ州立大34、インディアナ大27

全米トップランクのオハイオ州立大がアウェーで格下インディアナ大に大苦戦。試合終了直前、オハイオ州立大陣内ゴールラインまで迫ったインディアナ大の猛追をオハイオ州立大ディフェンスがなんとか止めて逃げ切る形で勝利。今季最大の大番狂わせをなんとか回避することができました。インディアナは全米リーディングラッシャー、ジョーダン・ハワード(Jordan Howard)と先発QBネイト・サッドフェルド(Nate Sudfeld)が怪我で途中退場するという苦しい展開でしたが、それでも全米ナンバーワンチームに食らいつき、あともう一歩というところまでオハイオ州立大を追い詰めました。オハイオ州立大をピンチから救ったのはRBイゼキール・エリオット(Ezekiel Elliott)。この日エリオットは自己記録となる274ヤードを足で稼ぎチームを勝利に導きました。これでオハイオ州立大はアウェー15連勝を含む、トータル18連勝中。どちらの記録もアクティブな記録としては最長記録になります。しかし格下と言われるチームに絶対的なワンサイドゲームで勝利することができないバッカイズに不安がよぎりますが、逆に言えばそんな中でも勝ちを拾うという地力がモノを言わせているというところでしょうか。

その他

テキサスA&M大30、ミシシッピ州立大17

テキサスA&M大QBカイル・アレン(Kyle Allen)が2TDを含む322パスヤードを記録する活躍でミシシッピ州立大を30対17で下し無敗を守りました。これでテキサスA&M大は昨年同様、開幕から無傷の5連勝となりました。2年連続で5勝0敗を記録するのは1951年以来の事です。一方先週ランキング入りを果たしたばかりのミシシッピ州立大でしたが、この敗戦で2敗目となりプレオーフ進出レースから早くも脱落。

オクラホマ大44、ウエストバージニア24

オクラホマ大の強固なディフェンスが5つのターンオーバーを誘い、実に7つのQBサックをお見舞いして全米23位のウエストバージニア大に快勝しました。その原動力となったのはLBエリック・ストライカー(Eric Striker)。13タックル、2QBサック、3タックルフォーロス、そして相手からファンブルを1つ誘発するなど大車輪の活躍。オクラホマ大はいまだ全勝中です。

テキサスクリスチャン大50、テキサス大7

テキサス大の絶不調が止まりません。州内ライバル・テキサスクリスチャン大に50点の失点を許し大敗。ヘッドコーチ、チャーリー・ストロング(Charlie Strong)に「ヘッドコーチとして史上最悪の日」と言わしめたこの日のチームのパフォーマンスは、テキサス大のチーム状況がいかに厳しいものであるかを露呈しました。先週のオクラホマ州立大戦では敗れはしたものの、最後の最後までチームは戦い抜き、ようやくチームの調子も上向きになりかけたかと思われた翌週のこの醜態。かつてはテキサス州の大学=テキサス大として君臨して来たロングホーンズですが、近年ではテキサスクリスチャン大、ベイラー大、テキサスA&M大に大きく差を広げられ、それがリクルーティングにまで響き始めています。テキサス州出身ならば皆テキサス大に憧れるという神話は崩れ、多くの有能なリクルートがテキサス大以外のチームを選び始めているのです。現在1勝4敗で次戦はライバル・オクラホマ大との「Red River Shootout」が待ち受けており、1勝5敗となるのは目に見えています。ストロング監督の周囲はまだ彼を見捨ててはいないようですが、カレッジフットボール界で最も短気と言われるテキサス大ファンはこのままでは黙っていないでしょう。

アリゾナ州立大38、UCLA23

今季絶好調でPac-12カンファレンスレースでトップを走っていたUCLAがホームでアリゾナ州立大にまさかの敗戦。前試合のサザンカリフォルニア大戦では42失点を犯したアリゾナ州立大ディフェンスでしたが、この試合ではUCLAのランオフェンスを完全に封じ込め、1年生のシンデレラボーイ、QBジョシュ・ローゼン(Josh Rosen)にプレッシャーを掛け続けて彼に仕事をさせませんでした。もう一人のプレーメーカー、RBポール・パーキンス(Paul Perkins)もたったの63ヤードしか走らせてもらえませんでした。UCLAディフェンスは怪我で3人の先発ディフェンダーが欠場したのがとうとう試合に響いた形になり、今後に不安を残しました。プレシーズンでは優勝候補にも挙げられたこともあったアリゾナ州立大は開幕スタートダッシュに失敗してランキングから早々にその名前を消しましたが、この勝利で彼らの復活を予感させてくれました。すでに2敗してプレーオフ進出はほぼ無くなりましたが、それでもカンファレンスで優勝して2年連続ローズボウル出場を目指すには十分やり直しがきくタイミングです。

ミシガン大28、メリーランド大0

9つのタックルにパスインターセプションを記録した、LBデスモンド・モーガン(Desmond Morgan)を中心としたミシガン大ディフェンスがメリーランド大を完全に封じ込め、ミシガン大が28対0と完封勝利を収めました。カンファレンスゲーム初戦だったこの試合、ディフェンスが3度に渡りパスをインターセプトするなどして、メリーランド大のオフェンスをたったの105ヤードに押さえ込み、Big Tenカンファレンス戦初勝利。また前試合でブリガムヤング大を31対0とシャットアウトで勝利したのに続く、2週連続の完封勝利。これは2000年シーズン以来の偉業。新コーチ、ジム・ハーボー(Jim Harbaugh)の元、早くもミシガン大復活の気運が流れています。ちなみにこのゲームにはハーボー監督の兄で、NFLボルチモアレイベンズのヘッドコーチのジョン・ハーボー氏がサイドラインに駆けつけていました。お兄ちゃんのアドバイスも今回の完封勝利に貢献したのでしょうか?!

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左が弟のジム、右が兄のジョン