今季Pac-12カンファレンスチームが好調です。ランキングを見ると7位にUCLA、10位にユタ大、17位にサザンカリフォルニア大(USC)、18位にスタンフォード大、24位にカリフォルニア大と5チームがランクイン。特にUCLAとユタ大の活躍には目を見張るものがあります。
UCLAは長らく全米の檜舞台から遠ざかっていましたが、2012年に現監督のジム・モーラ氏をヘッドコーチに迎えて着実に力を付けて来ました。注目したいのはモーラ氏のリクルーティング力。現在チームの大半は彼のコーチ陣がリクルートしてきた選手たちですが、その多くはかつてならば同じロサンゼルスに本拠地をもつUSCに獲られていたようなタレントを誇る選手たちばかりです。そういったリクルーティング力でチームのレベルが底上げされ、今の好調に繋がっていると思われます。
その最たる例がQBジョシュ・ローゼン(Josh Rosen)です。若干まだ1年生にもかかわらず先発の座を射止め、4連勝中のチームの大黒柱になりつつあります。まだまだ荒削りな部分もありますが、先週のアリゾナ大戦で見せたようにシーズンが進むにつれて彼のプレーの精度も上がっています。これからどんどん楽しみになってくる選手です。
しかしUCLAはローゼンだけのチームではありません。RBポール・パーキンス(Paul Perkins)は現在までトータルで6TD(全米11位タイ)を含む514ラッシュヤード(同10位)を記録しています。またオフェンシブラインのメンツはベテラン選手ばかり。若いローゼンをしっかりと守ってくれています。ディフェンスはチームリーダーであるマイルズ・ジャック(Myles Jack)を怪我で欠き、先週だけで言えばさらに先発2選手が欠場したにも関わらず、バックアップを含むディフェンス陣がしっかりと仕事をこなしアリゾナ大の追随を許しませんでした。マーキープレーヤーの存在と層の厚さが好調UCLAを支える原動力となっているのです。
全米で見ても現在最も波に乗っていると言っても過言ではないのがユタ大です。ユタ大は開幕戦から試合を重ねるにつれ相手チームとの得点差をどんどん広げ(ミシガン大戦24対17=7点差、ユタ州立大戦24対14=10点差、フレズノ州立大戦45対24=21点差)、そして先週にはオレゴン大に62対20で勝利、その点差は実に42点と圧倒的です。初戦に戦ったミシガン大が現在ランキング入り(22位)した事を考えると、7点差でしかなかったこの試合の結果もむしろユタ大を評価する材料になっているとも言えます。ランキングを見ると今週10位にまでランクアップしたユタ大に1票だけではありますが、1位票が入れられている事を見ればユタ大の株がどれだけ上昇しているかが分かると思います。
そのユタ大を引っ張るのは4年生QBトラヴィス・ウィルソン(Travis Wilson)です。オレゴン大戦では自己最多となる4TDパスを含む227パスヤードに加え、100ランヤード(1TD)を記録し縦横無尽にフィールドで暴れまくりました。もともとユタ大オフェンスの主軸と言えばRBデヴォンテイ・ブーカー(Devontae Booker)を中心としたランオフェンスでした。ディフェンスとスペシャルチームも近年は安定した強さを見せ、それが現在の好調を裏付けていると言えます。
しかしやはり現在のユタ大の主役はウィルソン。今季の好調とは裏腹に昨年は2度も先発の座を奪われ、プレシーズンキャンプにてようやく先発の座を勝ち取ったという長い道のりをたどった選手でもあるのです。今では4年生WRケネス・スコット(Kenneth Scott)らレシーバー陣らの全幅の信頼を得てチームリーダーとなりました。
オレゴン大戦での大勝で否が応でもPac-12タイトルレースの最有力候補に名が挙げられ始めたユタ大。今まではブーカー一辺倒だったオフェンスにウィルソンの確固たる指揮力が加わり、彼自身の精密なパス、そして正確な判断力でオフェンスに厚みが加わりました。ウィルソンの肩の怪我が不安材料ではありますが、現時点でもっともカンファレンスタイトルに近い、そしてその先に見えるプレーオフ進出が十分狙えるチームと言えそうです。
もっとも今後のスケジュールは決して楽なものではなく、今週末のブレークを挟んで来週には現24位のカリフォルニア大、そのあとは17位のUSC、そして7位のUCLA戦が待ち受けています。この厳しいスケジュールを勝ち抜くことが出来れば、ユタ大は間違いなくプレーオフ進出チームに選ばれている事でしょう。
プレシーズンでPac-12タイトルの最有力候補に挙げられていたUSCは3戦目にスタンフォード大に破れ順位を一気に下げましたが、だからといって元々の彼らの力が過大評価されていたと言う訳ではありません。実際先週のアリゾナ州立大戦では42対14と大勝してその力を見せつけてくれました。アリゾナ州立大が不調である事は間違いありませんが、それでもシーズン前にはナショナルタイトルのダークホース的存在にも挙げられていたサンデビルズに対してこれまで圧倒出来たのは仕切り直しと言う意味だけでなく、スタンフォード大とのまさかの敗戦からのショックから立ち直ると言う意味でも意義のある勝利だったと言えます。
2000年代中盤から後半にかけて前ヘッドコーチ、ピート・キャロル(Pete Carroll)のもと一時代を築き上げたUSCでしたが、キャロル氏がNFLへと去ってからはかつての絶対的強さが陰を潜めてしまいました。その復活を期待されて昨年キャロル時代のオフェンシブコーディネーターだったスティーブ・サーキシアン(Steve Sarkisian)がヘッドのポジションを任されました。2年目の今年はファンの期待ども昨年とは桁違いに高いものになっています。
1敗を喫したものの、USCの強さは未だ健在です。QBコディ・ケスラー(Cody Kessler)率いるオフェンスはPac-12の上位チームと比較しても引けを取るものではありません。それに重要なのは今後のスケジュール。現在彼らより上位にランクされているUCLAとユタ大をホームで迎え撃つことが出来るのは大きな強みです。上位チームがつぶしあいさえすれば1敗のUSCにもチャンスがまだあると言えます。しかしもう負けることが出来ないのも事実。負ければこの強豪ひしめくPac-12で2敗となり、おそらくカンファレンスタイトルの道は完全に途切れることになるでしょう。
前述のUSCを破ったスタンフォード大もまたすでに1敗してしまったチームです。当時ランク外だったノースウェスタン大にまさかの敗北を喫し、一時はランク外に転落したスタンフォード大でしたが、宿敵USCをアウェーで破り再びランクインを果たしました。唯一の敗戦相手であるノースウェスタンが現在も無敗で好調を維持している事を見れば、スタンフォード大の黒星も将来的に多少評価されるでしょう。USCと同じ様にこれから全勝することが出来ればスタンフォード大にも十分チャンスが残されています。
24位にランクしたのはカリフォルニア大。長らくPac-12の下位に甘んじていたカリフォルニア大ですが今季はここまで全勝と調子をのばしています。しかしカリフォルニア大が他のチームと決定的に違うのは4勝した4チームのレベルが他のトップチームのものと比べ格段に低い事です。次戦ワシントン州立大を終えるとその後はユタ大、UCLA、USCと3連戦が続きます。ここを仮に2勝で切り抜けられたとしたならば、それはむしろカリフォルニア大にしてみれば「勝利」と言えるかもしれません。いずれにせよ彼らの真の力はまだ試されていないと言えますが、現時点で4戦全勝でランクインしたと言う事実は評価に値すると思います。
さらにこの他にもタイトルレースに絡んで来るチームがあるとすればアリゾナ大でしょうか。UCLAに破れたとはいえ成績は3勝1敗と数字だけ見ればまだ終わった訳ではありません。実力はあるチームですからまだ彼らを過小評価する事は時期早々だと思われます。上に挙げた上位チームがアリゾナ大に足をすくわれることも容易に想像出来ます。
今まで長い間サウスイースタンカンファレンス(SEC)がカレッジフットボールを引っ張って来たような図式でしたが、今シーズンに限って言えばSECチームが以前のような強さを見せていない事も相まって、カンファレンスの勢力図を見ればPac-12が今季は一番強豪ぞろいのカンファレンスと言っても過言ではないかもしれません。