1月1日
セントラルフロリダ大 vs アーバン大
今年のピーチボウルのマッチアップは今季唯一全勝を守っているセントラルフロリダ大(UCF)とSECの強豪アーバン大となりました。もっともどちらかといえばこのマッチメーキングは、「グループオブ5」を代表して「ニューイヤーズ6ボウル」出場権を獲得したセントラルフロリダ大にアーバン大が対戦相手として当てがわれた、という見方が強いです。
アーバン大は今季尻上がりに調子を上げ、対戦当時どちらも全米1位だったジョージア大とアラバマ大をなぎ倒し、当時すでに2敗を喫していたにもかかわらず、カレッジフットボールプレーオフ(CFP)出場に王手をかけた状態でSECチャンピオンシップゲームに臨みました。しかしここで再戦となったジョージア大にリベンジを食わされ夢のプレーオフ進出を逃したのでした。そんな彼らにしてみればピーチボウル出場の意義がどれだけあるのか不透明ではあります。
しかし対するUCFにとってはこのピーチボウルで勝利することは大変大きな意味があります。つい3シーズン前まで全敗という屈辱を味わったUCFは前述の通り今季唯一の無敗チームとして未だ君臨しています。そしてもちろん狙うはピーチボウルに出場して完全シーズンをレコードブックに残すことです。また無敗であるとはいえ、強豪チームと対戦してこなかったことが彼らの本当の実力に懐疑的な人々を多く生み出しましたが、そういった連中を黙らせるためにこのアーバン大戦で勝つことは非常に重要だといえます。そして何よりもこのUCFを短期間でここまでのチームに成長させたスコット・フロスト(Scott Frost)監督に花道を用意するためにも是非勝っておきたい試合なのです。
フロスト監督は就任3年でUCFをここまで育て上げましたが、今季所属するアメリカンアスレティックカンファレンス(AAC)の優勝決定戦後に彼の母校であるネブラスカ大の新監督に就任することが決定しました。普通ならこういったケースの場合は新チームに合流するために旧チームをボウルゲームで指揮することを辞退するものですが、フロスト監督はネブラスカ大での職務を続けながら、ここまで苦楽を共にしてきた選手ならびにスタッフと最後の試合に臨むためにUCFの監督業を兼務しているのです。
「これは決して普通ではやるようなことではありませんが、私そして私のスタッフ一同誠心誠意込めてこのチームのためにできることを精一杯行なっているのです。」とはフロスト監督。
UCFは今季全米ナンバーワンスコアリングオフェンス(1試合平均49.4得点)を提げて会場であるメルセデスベンツスタジアムに乗り込んできます。それもこれもフロスト監督が前チームであるオレゴン大でオフェンシブコーディネーターとして腕を鳴らしてきた経験値が還元されたからに他ありません。QBマッケンジー・ミルトン(McKenzie Milton)は今季出場した12試合トータルで3795パスヤード、35TD、9INTと素晴らしい数字を残してきましたし、WRトレクゥアン・スミス(Tre’Quan Smith)もスクールレコードとなる1082レシーブヤード(13TD)を記録。ランゲームでは1000ヤードラッシャーは不在なものの、貢献できるRBが3人揃い、ミルトンの足にも期待できるということで、非常にトレンディーなスプレッドオフェンスを得意とします。
オフェンスに特化したUCFに対しアーバン大はよりバランスのとれたチームです。残念ながらSECタイトルゲームでジョージア大に攻略され敗れはしましたが、実際最終戦時には2敗しながらその強さだけみれば全米のどのチームとも渡り合えることができそうな戦力を持っていました。開幕時スロースタートだった際にはガス・マルザーン(Gus Malzahn)監督不要論が噴出しもしましたが、結局今年の成績のリワードとして彼はアーバン大と7年トータル約5000万ドル(約50億円)という破格の契約更新をしたほどです。
今シーズンチームの浮上の鍵を握っていたのはQBジャレット・スティッドハム(Jarrett Stidham)。ベイラー大でその才能の片鱗を見せていた彼はベイラー大がスキャンダルに巻き込まれて崩壊していく中転校を決意。1年間の浪人生活を経てアーバン大にたどり着きました。その彼がシーズン中に試合を追うごとに調子を尻上がりに上げ、前述の通りジョージア大(初戦)とアラバマ大という全米トップランカーを相次いで下すという偉業を成し遂げたのです。またRBケリオン・ジョンソン(Kerryon Johnson)も1320ヤードに17TDと大暴れ。マルザーン監督及びオフェンシブコーディネーターのチップ・リンジー(Chip Lindsey)氏のアップテンポなオフェンスが相手チームのディフェンスを大いに混乱させました。
しかしアーバン大の本当の強さはその守備陣にあります。トータルディフェンスで全米12位というそのユニットは強力なランオフェンスを擁するジョージア大とアラバマ大をほぼシャットダウンしました。いかにUCFのオフェンスがダイナミックであると言えど、おそらく彼らはアーバン大ディフェンス陣ほどの力を持つ守備陣と対決したことはないでしょう。フロスト監督の戦術が勝つか、もしくはアーバン大の守備陣がUCFの攻撃陣をシャットダウンするか・・・。UCFのディフェンスはラッシュディフェンスが全米67位、パスディフェンスが111位、トータルディフェスが94位ということで、アーバン大のオフェンスを止められるとは思えませんから、UCFがもし大金星を挙げたいのであれば彼らのオフェンスがアーバン大の鉄壁ディフェスに風穴をあける必要があります。
アーバン大とUCFの直接対決戦績は3戦全勝でアーバン大に軍配が上がっており、チーム力を見てもアーバン大有利と見て間違いなさそうです。しかしUCF監督として最後となるフロスト監督の意気込みと彼を慕う選手たちの熱い想いがシーズンフィナーレとなるこのピーチボウルで奇跡を呼び起こすかもしれません。