ミシシッピ大といえばサウスイースタンカンファレンス(SEC)の老舗チームとしてカンファレンスの中核を成してきました。1947年から1970年までチームを率いたジョニー・ヴァウト(Johnny Vaught)氏指揮下でカンファレンスタイトル7度、ナショナルタイトル3度と一時代をきずきましたが、それ以降は特に目立った活躍もなくナショナルチャンピオンはおろかSECタイトルからも1963年以来遠ざかったままです。
近年でも2003年にデヴィッド・カットクリフ(David Cutcliffe、現デューク大監督)監督時に10勝を挙げSEC西地区を制したもののそれ以外では鳴かず飛ばず。常にリーグで中堅的な位置付けをされてきたチームでした。
しかしそんな彼らに転機が訪れます。2011年にアーカンソー州立大をたったの1年で10勝2敗に導いたヒュー・フリーズ(Hugh Freeze)監督を新HCに招聘したのです。
ヒュー・フリーズ監督
フリーズ監督率いるミシシッピ大は急激に力をつけ、2014年と2015年には当時無敵と謳われていたアラバマ大から2年連続白星う奪うなどしてミシシッピ大のブランド力は一気に膨れ上がりました。2015年度の最終戦ではシュガーボウルでオクラホマ州立大に48対20と大勝。チームは完全にSECでタイトルを狙える強豪チームに生まれ変わったのです。
フリーズ氏のミシシッピ大の急成長の影には全米でもトップクラスのリクルーティングの大成功がありました。2013年のリクルーティングランキングでいきなり全米5位に入るほどの成果を見せることができたのです。ただこれには当初から私もきな臭いものを感じていたのですが・・・。
尻上がりにそのチーム力を上げ続けてきたミシシッピ大でしたが、プレシーズンランキングで11位につけた2016年度は5勝7敗と惨敗。またこの頃にはNCAAのルール違反の疑惑が発覚したりしてフリーズ氏体制のメッキが剥がれ始めます。例えば2016年のNFLドラフトで1巡目(13位)にマイアミドルフィンズから指名されたOTラレミー・タンシル(Laremy Tunsil)が学生時代にフリーズ氏から金銭的援助を受けていたと暴露したり、有能リクルートが入学しやすいように便宜を測ったりした疑惑が掛けられ、結局大学側はフリーズ氏に故意はなかったとはいえ過失があったことを認めました。
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そして2017年。フィールド外での事件でミシシッピ大フットボール部のブランド力を低下させてしまったフリーズ氏はなんとしてもフィールド内で結果を残してその批判の声を黙らせたいところでしたが、なんと自身が大学が支給した携帯電話を使って売春婦を雇っていたことが発覚。このことが明らかになるとフリーズ氏は即刻監督を辞任。ミシシッピ大はプレシーズンキャンプ入り直前にヘッドコーチを失うという非常事態に陥ったのでした。
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結局チームはオフェンシブコーディネーターだったマット・ルーク(Matt Luke)氏を臨時監督に任命して2017年度シーズンを6勝6敗で乗り切りました。6勝を挙げたので通常ならばボウルゲーム出場資格が与えられるはずでしたが、先に紹介したルール違反への自主制裁としてこの年はボウルゲーム出場を辞退していました。
そして大学側はシーズン後にルーク氏を正監督に指名。ルーク氏にとって初の監督ポジションが自身の母校という彼にとっては願っても無い展開となったのです。
母校のHCとなったマット・ルーク監督
1995年から1998年にかけてミシシッピ大にてセンターとしてプレーしたルーク氏は2002年から2005年にカットクリフ監督体制時に同大でOLコーチを任され、カットクリフ監督がミシシッピ大から解雇されてデューク大へ移ると彼に追従してデューク大でOL、そして共同オフェンシブコーディネーターを務めることになります。そしてフリーズ氏が2012年にミシシッピ大にやってくると母校へ凱旋。それ以来チームでOLとOCを兼務してきましたが、これまで一度も監督を務めたことはなく今回が彼自身初の監督職となります。
ルーク監督が卒業生だという事実が彼を次期監督に推したことは当然考えられると思いますが、ミシシッピ大にしてみれば彼を監督に指名したのは非常に守りに入った決断だとも取れます。
ミシシッピ大は今後数年NCAAの制裁下におかれるのは目に見えていますし、仮に大金を払って新監督を外から雇った場合、何かの拍子で出ていかれる可能性は十分にあります。そうなれば大学側にとってもチーム育成にとっても二度手間になってしまいますから、卒業生として忠誠心がある故に簡単にはチームを離れる可能性が極めて少なく、また初めての監督ということでサラリーもそこまで大金を積む必要もなく、NCAAの制裁が切れる頃にチームが苦戦していれば首を切りやすいルーク氏に今現在のミシシッピ大フットボール部を託したのは合点がいきます。
もちろんルーク監督にしてみればこのチャンスをガッチリものにするべく来季以降にしっかりと結果を残したいところですが、NCAAはすでに2018年度のボウルゲーム出場を禁止する通達をしていますし、今後も追加の制裁が下る可能性も十分考えられますからルーク監督の前途は多難といえそうです。