オフェンス
今年のオクラホマ大攻撃陣は昨年のメンバーから5人が抜けましたが、その最たる人物がリーダーでありハイズマントロフィーを受賞したQBベーカー・メイフィールド(Baker Mayfield)です。昨年1試合平均獲得ヤード数がチーム新記録となる579.6ヤード、そのうちパスヤードが平均361.8ヤードという数字を叩き出したメイフィールドの抜けた穴を埋めるのは容易ではありません。
そのメイフィールドの後継者候補なのが3年製のカイラー・マレー(Kyler Murray)と2年生のオースティン・ケンダル(Austin Kendall)です。ちょっと前にも紹介しましたが、テキサスA&M大からの転校生であるマレーはMLB(プロ野球)のドラフトでなんと1巡目にオークランドアスレチックスから指名されました。しかしマレーはMLB入りを後回しにしてオクラホマ大フットボール部に残留することを決意。メイフィールドのバックアップを務めてきた彼にとってはいよいよ自分に出番が回ってきたと意気込んでいるでしょう。
しかしだからといってマレーが自動的に今年の先発QBに任命されるわけではなそうです。春のトレーニングではケンダルも非凡な才能を披露していたことですし、またマレーはこのシーズン後にアスレチックスに合流すると考えられていますから、もし能力がトントンならば、来年4年生シーズンを送ることのないマレーよりも、まだ2年生でたくさん経験を積ませることができるケンダルに先発を任すということも考えられます。
実際リンカーン・ライリー(Lincoln Riley)監督もマレーがMLB入りを蹴って大学に残留することになったからと言って先発QBを誰にするかはまだ決めていないと明言していました。現在行われているプレシーズンキャンプでマレーがケンダルを実力で負かし先発の座を確保する必要があります。
QBと違って安定感がありそうなのがRB。昨年2年生だったロドニー・アンダーソン(Rodney Anderson)は1161ヤードに18TDを叩きだし、ジョー・ミクソン(Joe Mixon、現シンシナティベンガルズ)、RBサマージャ・ペリン(Samaje Perine、現ワシントンレドスキンズ)の抜けた穴を見事に埋めてくれました。またレシーバー陣からは昨年のチームの稼ぎ頭だったオールアメリカンTEマーク・アンドリュース(Mark Andrews)が抜けたのは痛手ですが、WRマーキース・ブラウン(Marquise Brown)、シーディー・ラム(CeeDee Lamb)、TEグラント・カルカテラ(Grant Calcaterra)の3人は昨年合わせて2000レシーブヤードを獲得。彼らの今季の活躍が期待されるところ。
ディフェンス
昨年のオクラホマ大ディフェンスは被獲得ヤードでカンファレンス4位となる394.9ヤード、被パスヤードは3位の238.4ヤード、被ランヤードは6位の156.5ヤードという数字を残し、記録の上では2016年度を上回るものになりました。しかしだからといってこれで満足していいはずはありません。今シーズンに向けてコーチ陣はさらにディフェンス力に磨きをかけるだけの若い人材が揃っていると確信しているようです。
今年は昨年のメンバーから6選手が戻ってきます。そのうちフロントセブンは4人、バックフィールドに2人という内訳です。そしてその6人の内4年生はたったの一人ということで、今季のチームは多くの2、3年生で占められることになります。
昨年のフロントセブンのメンバーから抜けたのがDLのダヴォンタ・ランプキン(Du’Vonta Lampkin)、D.J. ワード(D.J. Ward)、LBエマニュエル・ビール(Emmanuel Beal)、オボ・オコロンコ(Ogbonnia Okoronkwo)という主力陣。しかし今年も健在の昨年のメンバー4人に加え、リクルーティングの成功で底上げされた層の厚さを持ってすれば、若さという経験不足を補うことはできるでしょう。
しかしバックフィールドはそうはいきません。DB陣総勢13人(スカラシップ選手)の内、上級生である3、4年生は全部でたったの3人。後は皆下級生のみなのです。経験値がモノを言うこのユニットがこの若さというのは気がかりです。しかも昨年のパスディフェンスは全米87位ということですから不安はなおさらです。
スケジュール
開幕戦はあのレーン・キフィン(Lane Kiffin)監督率いるフロリダアトランティック大。グループオブ5カンファレンス出身チームとは言え、昨年のフロリダアトランティックはキフィン監督の指揮の下40点、50点、時には60点以上を相手からもぎ取るハイパワーオフェンスを披露しました。もちろんそれらの相手はオクラホマ大ほどのレベルではありませんでしたが、この試合ではオクラホマ大のDB陣の力が試される試合になるでしょう。
2戦目には今年からチップ・ケリー(Chip Kelly、元オレゴン大監督)が指揮を執るUCLAと対戦。彼らがいきなりオクラホマ大を脅かすチームになるとは思えませんが、オレゴン大でケリー監督が成し遂げてきたことを考えれば油断はできないです。
3戦目にはカンファレンス戦初戦となるアイオワ州立大。オクラホマ大は彼らに昨年ホームで番狂わせを食らっています。今年はアイオワ州立大でのアウェーゲーム。にわかに力をつけてきているアイオワ州立大とのこの試合、気を引きして目てかからないと昨年の二の舞を踏むことになるかも。
6戦目は伝統の「レッドリーバーの戦い(Red River Shootout)」テキサス大とのライバリー。ライリー監督と同じく今年テキサスで2年目となるトム・ハーマン(Tom Herman)監督が今年一気にテキサス大を脱皮させている可能性も高いので、白熱した試合が期待できそう。
後半戦はテキサスクリスチャン大、カンザス州立大、テキサス工科大、オクラホマ州立大らとの連戦が続きますが、もしオクラホマ大がここまで無敗ないし1敗で11月に突入していたとしたら、おそらく最終戦のウエストバージニア大との試合が今年一番の試合となっている可能性は大です。
総評
昨年度開幕前に新監督に任命されたライリー監督は、2016年度の主力選手だったRBミクソン、RBペリン、WRデイド・ウェストブルック(Dede Westbrook、現ジャクソンビルジャガーズ)という選手を失ったことで戦力低下が予想されていましたが、周囲の予想を覆す素晴らしいシーズンを送ることが出来ました。
今年はメイフィールドという名手が遂にチームを去りましたが、昨年のチームを作り上げたライリー監督の手腕があれば、今年もしっかりと戦えるチームを輩出してくることでしょう。ただこれらの選手はいまだ前任のボブ・ストゥープス(Bob Stoops)氏の息がかかった選手ばかり。ライリー監督の真の実力は彼と彼のスタッフが引っ張ってきた選手たちが揃うあと1、2年後のこととなるでしょう。
逆に言うと、それはオクラホマ大でのライリー監督の真の実力はまだ知る由がない、と個人的には思うのです。そういった意味では今年のオクラホマ大はストゥープス監督の二番煎じの力である程度の結果を残せるかもしれません。それだけでBig 12カンファレンスを勝ち抜き、再びプレーオフの舞台に戻ってこれるのか?現地のメディアの評価が高いのに反比例して個人的には不安を覚えます。
ただ、もし今年もしっかりとしたチームを世に送り出す事が出来たとすれば、それは明らかにライリー監督の手腕によるものとなることでしょうから、そうなれば彼の実力が本物だと言えるでしょう。18年間もチームを率いたストゥープス氏の亡霊から完全に脱却し、オクラホマ大といえばリンカーン・ライリーと言われるようになるためにも、今年も確実に結果を残したいところです。
- 試合予定
*太文字はホームゲーム
- 2017年度戦績
- チーム情報
所在地
オクラホマ州ノーマン市
所属カンファレンス
Big 12
ホームスタジアム
メモリアルスタジアム
通算戦績
896勝324敗53分け
通算ボウルゲーム戦績
29勝21敗1分け
ヘッドコーチ
リンカーン・ライリー
12勝2敗(2年目)
12勝2敗(生涯通算)
前回全米優勝年度
2000年度
前回Big 12優勝年度
2017年度
前回ボウルゲーム出場年度
2017年度(ローズボウル)
- 最近10年間の戦績