オフェンス
ウィスコンシン大のオフェンスは何と言ってもその強力なオフェンシブラインを軸とするラン攻撃。その中心人物は今年2年生となるRBジョナサン・テイラー(Jonathan Taylor)です。昨年先発RBだったブラドリック・ショウ(Bradrick Shaw)が開幕戦で怪我を追ったことでテイラーに出番が回ってきましたが、そのチャンスを最大限に活かし不動のスターティングRBの座を確保。シーズントータルで1977ランヤードに13TDという恐るべきルーキーシーズンを送ったテイラーが今年もウィスコンシン大の地上戦の主役となるでしょう。また前述のショウも怪我から復帰してテイラーの頼れるバックアップとなり、ウィスコンシン大のランオフェンスは全米でも5本の指に入るほどの実力を持っているといえます。
QBには今年3年目の先発選手となるアレックス・ホーニブルック(Alex Hornibrook)が健在です。ウィスコンシン大は元来上記のようにランで攻撃を組み立てるチームなので、彼らにとってはスターQBよりもゲームをコントロールできるQBが必要とされます。そして昨年2644パスヤード、パス成功率62%、25TDを記録したホーニブルックはその役目を果たすには十分なQBといえますが、唯一いただけないのが15つも犯したパスINT。この数字は昨年のBig Tenカンファレンスで2番めに多い数字ということですので、今季ホーニブルックにはランオフェンスを活かせるだけの安定感とターンオーバーの数を減らすことが求められそうです。
しかし何と言っても今年のウィスコンシン大はその強力なOL陣が魅力です。元々ウィスコンシン大は巨漢揃いのOL陣で昔から知られてきたチームですが、今年のメンバーはその中でも最強の呼び声が高いです。まず昨年のメンバー5人全員が据え置きであるということ、そのなかでもRGボウ・ベンシャウル(Beau Benzschawel)、RTデヴィッド・エドワーズ(David Edwards)はオールアメリカン級の逸材、またCタイラー・ビアディッシュ(Tyler Biadasz)とLTマイケル・ディーター(Michael Deiter)もオールカンファレンス候補と言われています。RBテイラー、QBホーニブルックにとってこのような鉄壁のOLを縦にできることは何よりも心強いはずです。
ディフェンス
ウィスコンシン大の十八番がランオフェンスであることは周知の事実ですが、それと並ぶように近年は彼らのディフェンス力にも注目が集まっています。デイヴ・アランダ(Dave Aranda、現ルイジアナ州立大DC)氏、ジャスティン・ウィルコックス(Justin Wilcox、現カリフォルニア大監督)氏らが育て上げてきたディフェンスを昨年引き継いだのは卒業生でもあるジム・レナード(Jim Leonhard)氏です。レナード氏が操った昨年度のディフェンスは失点数でカンファレンス1位(13.9点)、トータルディフェンスでも1位(262.1ヤード)とそれは数字にも現れています。
その昨年のディフェンス陣からは実に7人もの選手が抜け、さらにDLアイゼア・ラウダーミルク(Isaiahh Loudermilk)がオフシーズンの膝の手術で出遅れ、さらにガレット・ランド(Garrett Rand)も6月にアキレス腱を断裂する重症を追って今季絶望的となってしまい、不安材料が無いわけではありません。
しかしそんな中にも一筋の光明はあります。オールアメリカンにも選ばれたLB T.J.エドワーズ(T.J. Edwards)が、NFL早期ドラフト入りを見送って今年もチームに帰ってきたことです。トータル81タックルに7パスブロックを誇ったエドワーズが今年のディフェンスの中心人物となることは間違いありません。またタックル数ではチーム1位となる88を記録したLBライアン・コネリー(Ryan Connelly)もおり、LB陣だけ見れば他の強豪チームと遜色ありません。
問題はDL陣とDB陣の出来です。DL陣からは先に上げたラウダーミルクとランドが出遅れており、またDB陣ではSSダコタ・ディクソン(D’cota Dixon)のみが昨年のメンバーです。つまりLB陣以外は経験値の乏しいユニットであるということです。ただ、ここ数年の出来からも分かるようにレナード氏ら守備コーチらの手腕をもって若手たちがしっかりと空いた穴を塞いでくれることでしょうから、今年のウィスコンシン大のディフェンスを「弱点」とするまでにはいかないのではないでしょうか。
スケジュール
ウィスコンシン大の開幕戦以降3試合は難なく白星を飾れるマッチアップですから、3連勝して早い段階でペースを掴むことができるでしょう。そして4戦目に早くも同じBig Ten西地区所属のアイオワ大との試合が待ち受けます。そして5戦目にネブラスカ大、6戦目にミシガン大とタフな3連戦を消化しなければなりません。
10月最後の第8戦目、ノースウェスタン大戦も侮れませんが、どういう状況になっているかわからないとは言え、10戦目のペンシルバニア州立大戦は今のところウィスコンシン大にとって最大の壁と言えそうです。しかしそのペンシルバニア州立大はこのウィスコンシン大戦の前週にミシガン大との試合も控えており、その結果に寄らず彼らの気持ちが切れている可能性もあり、そうなればウィスコンシン大有利となります。
昨年は終盤にオハイオ州立大と対戦するまで12連勝を飾っていたウィスコンシン大ですが、一方で彼らのスケジュールは軟すぎたと批判を受けたこともありました。それに比べれば今季のスケジュールはタフなものだといえますが、逆に言えばこのようなスケジュールを勝ち抜けることができれば、何の文句もなく彼らをプレーオフ進出に押すことができるでしょう。
総評
昨年のウィスコンシン大はプログラム史上初の13勝を挙げることに成功。そしてその原動力となったランゲームを構築する全米トップクラスのOL陣とハイズマントロフィー受賞候補とも言われるRBテイラーが今年も健在なのは朗報です。またTO率に不安を残すもQBホーニブルックは今季Big Tenカンファレンス内で3本の指に入るQBとの評価がされています。
唯一の不安材料としてディフェンス力を挙げることもできるかもしれませんが、LB陣だけみればカンファレンス内でも随一の力を誇りますし、シーズンを送る過程でDL/DB陣が成長を見せればその不安を払拭することもできるでしょう。しかしそれはアイオワ大との試合までの開幕3週間の間にある程度の形になっていてほしいものです。
2016年度にBig Ten西地区を制したウィスコンシン大はあと少しでプレーオフ進出というところでカンファレンスタイトルゲームでペンシルバニア州立大に逆転負けを喫し、そのチャンスを逃しました。昨年度は12連勝するも再びタイトルゲームで今度はオハイオ州立大に敗れプレーオフ進出は夢のまた夢となってしまいました。今年の西地区の栄冠は再びウィスコンシン大の手に渡ることが濃厚のようですが、彼らとしてはなんとしても東地区王者を倒してプレーオフ進出の切符を手に入れたいところ。
今年は昨年と違ってスケジュールはタフですから、このスケジュールを勝ち抜きさえすれば誰からも文句を言われることなくプレーオフに駒を進められるのではないでしょうか。そこまで行けばまずは目標達成、その後のことは・・・神のみぞ知る、です。
- 試合予定
*太文字はホームゲーム
- 2017年度戦績
- チーム情報
所在地
ウィスコンシン州マディソン市
所属カンファレンス
Big Ten(西地区)
ホームスタジアム
キャンプランダルスタジアム
通算戦績
697勝490敗53分け
通算ボウルゲーム戦績
15勝14敗
ヘッドコーチ
ポール・クリスト
34勝7敗(4年目)
53勝26敗(生涯通算)
前回全米優勝年度
なし
前回Big Ten優勝年度
2012年度
前回ボウルゲーム出場年度
2017年度(オレンジボウル)
- 最近10年間の戦績