昨年のPac-12タイトルは南地区のサザンカリフォルニア大に渡りましたが、一方でカレッジフットボールプレーオフにはあぶれてしまいました。2年ぶりのタイトル並びにプレーオフ進出を狙うワシントン大、2連覇を達成して念願のプレーオフに駒を進めたいサザンカリフォルニア大、復活を画策するオレゴン大、ハイズマントロフィー候補を擁するスタンフォード大・・・。一方でUCLAやオレゴン州立大、アリゾナ州立大など今年1年目の監督に率いられるチームなどもあり、今シーズンのPac-12カンファレンスは前年度よりも話題を提供してくれそうです。
北地区
ワシントン大
今年5季目を迎えるクリス・ピーターセン(Chris Petersen)監督体制のワシントン大ですが、ここまでの彼らのチーム育成には目を見張る物があります。特に2年前にはプレーオフに進出し、そして昨年も10勝を挙げるなどコンスタントに勝ち星を重ねています。今年はその10勝チームから実に16人もの選手が残留。ベテランでありPac-12内で指折りのQBジェイク・ブラウニング(Jake Browning)、RBマイルズ・ガスキン(Myles Gaskin)、昨年カンファレンス戦でパスTDを5つしか許さなかったバックフィールドが揃い踏みで、2年ぶりのカンファレンスタイトルを目指します。
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スタンフォード大
これまでスタンフォード大はQBアンドリュー・ラック(Andew Luck、現インディアナポリスコルツ)、RBトビー・ガーハート(Toby Gerhart、元ミネソタヴァイキングス)、RBクリスチャン・マカフリー(Christian McCaffey、現テネシータイタンズ)とスター選手を輩出し続けてきました。しかしそのどの選手もカレッジフットボールの最高峰のアワードであるハイズマントロフィーを獲得するまでには至りませんでした。が、その連敗記録も今年で終わるかもしれません。期待の星RBブライス・ラブ(Bryce Love)は昨シーズン怪我に悩まされながらも2118ランヤードに19TDを稼いで一躍名を馳せました。彼がスタンフォード大オフェンスの原動力となることは間違いありませんし、彼ならばハイズマントロフィー獲得も夢ではないかもしれません。しかしそのためにはチームも彼を後押ししなければなりませんが、サザンカリフォルニア大、オレゴン大、ノートルダム大との対戦を控える彼らのスケジュールは容易くはありません。
オレゴン大
ここ数年低迷を続けるオレゴン大は2014年に出場したプレーオフ準決勝戦で勝利して以来ボウルゲームで勝ち星がありません。今年はマリオ・クリストーバル(Mario Christobal)新監督の下で再起を誓います。QBジャスティン・ハバート(Justin Herbert)は投げても走っても活躍できる選手であり、彼を守るOL陣の経験値も高く、またDL陣はここ数年のオレゴン大では非常に強力なユニットと評価されています。WR陣とDB陣の層の薄さが気になりますが、今年はかつてのような大量得点を叩き出すオレゴン大を再び拝めそうです。
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カリフォルニア大
若き指揮官ジャスティン・ウィルコックス(Justin Wilcox)監督体制となりカリフォルニア大は確実に進歩の一途を辿っていますが、今年はと言うとまずQBが誰になるのかという問題に尽きると思います。WR陣はチームに貢献できそうな人材が揃っており、またOL陣も昨年と同じメンバーが揃い踏み。また昨年100ヤード超えを成し遂げたRBパトリック・レイド(Patrick Laird)も健在とあり、QB次第で今年のカリフォルニア大は化ける可能性は大いにあります。
ワシントン州立大
チームで過去3年間先発QBを務めたルーク・フォルク(Luke Falk、現テネシータイタンズ)の後釜として期待されていたタイラー・ヒリンスキー(Tyler Hilinski)が、今年1月に自ら命を断つという悲劇に見舞われたワシントン州立大。これで試合出場経験のあるQBが皆無となり、精神的にもシステム的にも大きな試練が待ち受けます。昨年は最高で8位まで上昇したワシントン州立大ですが、今年は我慢のシーズンとなりそうです。
オレゴン州立大
近年オレゴン州立大はカンファレンス内でも苦戦が続きますが、そんなチームを今年から率いることになったのはOBでもあるジョナサン・スミス(Jonathan Smith)監督。1998年から2001年までQBとしてプレーしたスミス氏は2001年のフィエスタボウルでノートルダム大を破り11勝1敗という成績を残した時の先発QBでした。そんなオレゴン州立大での勝ち方を知っている人物が指導者として帰ってきたのは、負け方しか知らない今のチームにとって起爆剤となりそうです。今年からいきなり彼らが旋風を巻き起こすとは思えませんが、長い間カンファレンスの下位をウロチョロしていたオレゴン州立大にとってはそこから脱出するにはスミス監督に長いビジョンでチームを育成してもらいたいものです。
南地区
サザンカリフォルニア大
タレント揃いのサザンカリフォルニア大(USC)ですが、今年は1980年以来となる、先発QB(サム・ダーノルド、現ニューヨークジェッツ)、先発RB(ロナルド・ジョーンズ、現タンパベイバッカニアーズ)、先発WR(デオンテイ・バーネット、現テネシータイタンズ)の3人を同時にオフシーズンに失い、いかに層が厚いと言えどもこの損失は簡単に埋まるものではありません。そういった意味では今年のUSCオフェンスは予測不可能の未知数で溢れているともいえます。ディフェンス陣はしっかりしていますから、9月に組まれているスタンフォード大、テキサス大、アリゾナ大の試合を終えた頃に彼らの真の実力が明らかになるのではないでしょうか。
ユタ大
ユタ大は昨年度Pac-12カンファレンスチームで唯一ボウルゲームで白星を上げたチームとなりました。2005年からチームを率いているカイル・ウィッティンガム(Kyle Whittingham)監督が常に安定してある程度の成績を残せてきているのは、変動が激しいPac-12では稀有なことです。その安定さは今年のチームにも十分反映されており、多くの選手が昨年のチームから残留しただけでなく、コーチ陣も据え置きという非常にレアなチーム状況になっています。3戦目にワシントン大、5戦目にスタンフォード大と対戦することになっていますが、このうち1試合でもものにすることが出来ればUSC、オレゴン大との試合が俄然面白くなりそうです。
UCLA
UCLAを敵としてかつて苦しめた元オレゴン大のチップ・ケリー(Chip Kelly)氏を新監督に迎えたことは、あまり元気がなかったUCLA界隈を大いに興奮させてくれました。そして南地区レースがワイドオープンであることを考えれば、ケリー監督体制のUCLAが初年度から飛ばさないとも言えません。高速オフェンスを得意とするケリー監督のオフェンスをフィールド上でリードするのは新入生で機動力系のQBドリアン・トンプソン-ロビンソン(Dorian Thompson-Robinson)と言われており、そのハイテンポのオフェンスは経験値の低いOL陣でも補えるとされています。ただケリー監督がオレゴン大で育成したようなチームを世に放つまでにはまだ時間がかかりそうです。
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アリゾナ大
今年から元テキサスA&M大のケヴィン・サムリン(Kevin Sumlin)監督に率いられることになったアリゾナ大。何と言っても彼らの絶対的な注目選手はQBカリル・テイト(Khalil Tate)です。昨年のコロラド大戦ではQBとしてはFBSの新記録となる327ヤードを足で稼ぎその週のPac-12週間MVPに輝くとなんとそこから4週連続MVPを獲得しました。走って投げれるテイトがこれまでこれと言って光るところがなかったアリゾナ大に久々に現れた救世主であることはいうまでもありません。しかし彼らはテイトだけではなく9人が昨年のメンバーとなるディフェンス陣、そしてワシントン大とスタンフォード大との試合が組まれていないという幸運もあり、サムリン監督1年目からそれなりの結果を残すかもしれません。
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コロラド大
昨年の先発QBスティーヴン・モンテズ(Steven Montez)、そして彼のパスを受け取るタレントぞろいのWR陣が今年も健在。2016年にコロラド大がブレークした時から先発RBを任されていたフィリップ・リンジー(Phillip Lindsay、現デンバーブロンコス)の抜けた穴を埋めるのは簡単ではありませんが、通算2153ヤードという記録を引っさげてバージニア工科大から転校してきたトラヴォン・マクリミアン(Travon McMillian)が即戦力として活躍してくれるでしょう。ただ昨年FBSで8番目にワーストとなる39つものQBサックを許してしまったOL陣には先発経験者が2人しかおらず不安要素ではあります。2016年に南地区を制したことでマイク・マッキンタイアー(Mike MacIntyre)監督へのハードルは上がりましたが、そのシーズンを今年再現するのは並大抵のことではありません。
アリゾナ州立大
通算46勝32敗とアリゾナ州立大としては決して悪くはない成績を残しながら昨年トッド・グラハム(Todd Graham)監督が解雇されたことはカレッジフットボール界に少なからずショックを与えました。しかし彼の後釜としてハーム・エドワーズ(Herm Edwards)氏を新監督に指名したのは、グラハム氏を解雇したことを遥かに上回るショッキングなニュースとなりました。NLFで長年コーチをしてきたエドワーズ監督がカレッジ界でどのようなチームを育成してくるか興味がありますが、少なくともQBマニー・ワトキンス(Many Watkins)が戻ってくるのは朗報といえます。どちらにしてもチームの勝敗に限らずエドワーズ監督の存在だけで彼らが注目されることは明らかです。
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AGS予想
本命:ワシントン大
対抗:スタンフォード大
穴:UCLA
大穴:アリゾナ大