波乱!【第7週目レビュー】

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カレッジフットボール第7週目、本サイトが取り上げた目玉ゲームオクラホマ大テキサス大の「レッドリーバーの戦い」でしたが、この試合が霞んでしまうほどのドラマがこの週には潜んでいました。しかもそれは週末の土曜日を待たず金曜日から始まっていたのです。

シラキュース大 27、クレムソン大 24

全米2位のクレムソン大にとって今シーズンはすでにカンファレンスタイトル獲り、そして3年連続プレーオフ進出、並びに全米タイトル2連覇を視野に入れており、このシラキュース大戦は単なる通過点にしか過ぎないはずでした。特に昨年の対戦では54対0とクレムソン大が完膚無きまでにシラキュース大をのしていたですからなおさらのことです。しかしそこに落とし穴が隠されていました。

油断したとは思いたくないですが、全米でもトップクラスのクレムソン大のディフェンスがこの日はこれまで見せてきた圧倒的なパワーを披露することなくあっけなく先制点を許してしまいます。この出だしがこの夜の悪夢を予感させていた・・・とは誰もその時は思っていなかったでしょうが、明らかにこの試合でクレムソン大の歯車は狂っていました。

そしてすでに足首の怪我で100%ではないQBケリー・ブライアント(Kelly Bryant)がビッグヒットをくらい退場。のちに脳震とう(Concussion)と診断されこの日はフィールドに復帰することはありませんでした。

この時点までクレムソン大オフェンスはいつものダイナミックさを披露するに至っていませんでしたが、ブライアントが退場したことでさらにそれは悪化。決して鉄壁とは言えなかったシラキュース大のディフェンスを崩すことが中々できませんでした。そしてこのチャンスを見逃さなかったのがシラキュース大オフェンスです。試合の流れは徐々にホームチームであるシラキュース大に移り、攻撃権所有時間もクレムソン大より10分も上回り、また相手よりも100ヤードも多くオフェンシブヤードを獲得。そしてそれが結果的に今回の大番狂わせへと繋がったのです。

プレシーズン前に「シンデレラボーイズ」候補チーム八選という記事を投稿してシラキュース大が今季ブレークするのではないかと予想しましたが、まさかクレムソン大を倒す偉業を成し遂げるとは思いもしませんでした。QBドノヴァン・マクナブ(Donovan McNabb)氏が在籍していた1998年以降特に目立ったシーズンを送ることができなかったシラキュース大ですが、今季2季目となるディノ・バーバーズ(Dino Babers)監督にとってこの勝利は大きな意味を持っていると言えます。それは彼の試合後のスピーチからも感じることができるでしょう。

一方昨年のピッツバーグ大戦に引き続きカンファレンス戦で思わぬ敗戦を喫してしまったクレムソン大。この試合に負けてしまったとは言えどACCタイトルレースで彼らが依然として有利であることは変わらないと思いますが、それでも「無敵ではない」ことを露呈してしまったことは確かです。そんな敗戦を味わったダボ・スウィニー(Dabo Swinney)監督ですが、試合後にバーバーズ監督と握手を交わした時、潔く彼らの勝利を祝う言葉を贈っていたようです。なんとも気持ちいい監督ではありませんか。

カリフォルニア大 37、ワシントン州立大 3

現在も完全に消火できていないカリフォルニア州で起きている山火事の影響で観客はまばらな上にその観客の中にはマスクを装着している人もちらほら見られる中で行われた、金曜日のこの一戦。カリフォルニア大は今シーズン一番のパフォーマンスをこの試合で披露し、ワシントン州立大にリードを一度も許すことなく驚きのワンサイドゲームをやってのけました。

この快挙の要因はカリフォルニア大のディフェンスです。超重量パスオフェンスの申し子とも言えるワシントン州立大QBルーク・フォルク(Luke Falk)に5つのパスインターセプションに1つのファンブルを誘発させることに成功。フォルクはこの試合まで今シーズン合計2つしかパスINTを記録していなかったことを考えるといかにカリフォルニア大ディフェンスがフォルクを攻略したかが垣間見えると思います。またディフェンシブラインもワシントン州立大のオフェンシブラインをことごとく決壊させフォルクに9つものQBサックを浴びせたのでした。これではいくらフォルクでも得点できないわけです。

ワシントン州立大のディフェンスは今季チームの快調に一役買っていましたが、この日はカリフォルニア大オフェンスに手も足も出ず、QBロス・ボワーズ(Ross Bowers)並びにチームのランオフェンスが効果的に昨日して全米8位チームから37点もの大量得点をダッシュしたのでした。ボワーズは下のようなアクロバティックなTDランまで披露する始末。

ワシントン州立大にとっては非常に痛いカンファレンス戦での敗戦を喫しましたが、この後にも紹介するように彼らのライバルでもあるワシントン大も土曜日に初黒星を喫したことが不幸中の幸いと言えるでしょうか。

アリゾナ州立大 13、ワシントン大 7

今季アリゾナ州立大は昨シーズンから合わせて11試合連続で平均30点以上の失点を相手に許しトッド・グラハム(Todd Graham)監督の去就問題にも発展しかねていたところ迎えたこのワシントン大戦。全米5位のワシントン大はこれまで平均得点数が43点ということでアリゾナ州立大には分が悪すぎる相手だと思われましたが・・・。

試合開始からオフェンスはなぜかクリックせず、5回連続パントを余儀なくされる展開となりここ数年のワシントン大としてはなかなかめずらしくスコアボードに得点を刻むことができない展開が続きます。

第3Qに入りようやく得点のチャンスとしてFGを狙う場面が訪れますが、このキックすら外れ得点を奪うことができませんでした。結果的にワシントン大がこの日奪えたオフェンスヤードはトータルでたったの230ヤード。さらに悪いことに3rdダウンコンバージョンを成功させたのは14回中たったの3回。数字の上ではFBS内でも下から数えた方が早いアリゾナ州立大のディフェスからワシントン大がやっと点を奪えたのは第4Qの後半でした。

こうして昨年のカンファレンスチャンプでありプレーオフ進出チームであったワシントン大はらしくない格好で負けるはずがなかったアリゾナ州立大からノックアウトパンチを食らったのです。カンファレンスタイトルを狙う上で彼らにはまだまだチャンスは残っていますが、プレーオフに再び舞い戻るにはそれを決める選考員会に対して非常によくない印象を与えてしまいかねない敗戦となってしまいました。

ルイジアナ州立大 27、アーバン大 23

ちょっと前の記事でも書いたようにトロイ大から無様な敗戦を喫したルイジアナ州立大はこのまま下降線をたどるかと思われましたが、全米21位のフロリダ大にアウェーで競り勝つと先週は10位のアーバン大をホームに迎え、これを返り討ちにしてランクチームから2連勝。一体この間に何が起きたのかわかりませんが、墜落しかけていたチームに新たな浮力を与えてくれる展開になってきました。

一方のアーバン大はクレムソン大戦での敗戦以後チームは徐々に上向きになり、4連勝を飾って今季最高となる10位にランクされるなど絶好調。批判が絶えることないガス・マルザーン(Gus Malzahn)監督にしてみれば意気揚々と敵地に乗り込んで行ったことでしょう。

実際のところ試合開始から一時は20対0と予想通りのアーバン大リードで試合は進んでいきましたが、後半になるとルイジアナ州立大のディフェンスが目を覚まします。彼らの善戦でアーバン大は5回連続パントを強いられ、しかもそのうちの一つはルイジアナ州立大のD.J.チャーク(D.J. Chark)にエンドゾーンまでボールを運ばれる始末。アーバン大ディフェンスも同じように踏ん張って後半ルイジアナ州立大オフェンスにはFG2つしか許しませんでしたが、チャークのパントリターンTDが決め手となりルイジアナ州立大がこの大一番を制したのです。

オフェンスのパワー不足は否めませんが、一時は監督の座さえ危ないと言われたエド・オルジェロン(Ed Orgeron)監督の舵取りは今のところ成果を発揮しているといえそうです。

オクラホマ大 29、テキサス大 24

今週もっとも注目されると思われていたこの「レッドリバーの戦い」でしたが、上記に紹介したようにトップチームが次々と敗れていく試合のせいでこの試合の注目度は完全に薄れてしまいました。

それでもスコアをみればわかるようにファイナルスコアは4年連続となる非常に僅差となったこの試合。しかしこの試合の決定づけたのはオクラホマ大QBベーカー・メイフィールド(Baker Mayfield)と彼が操るオフェンス力がテキサス大よりも上回っていたことでした。

しかしその差は微小だったと言えます。テキサス大の1年生QBサム・エリンガー(Sam Ehlinger)はハイズマントロフィー候補のメイフィールドと対等に渡り合い、この日2TDを含む384パスヤードを記録。ルーキーとは思えない活躍を見せてくれましたが、テキサス大のディフェンスはオクラホマ大にラン攻撃で174ヤード(1TD)、パス攻撃で302ヤード(2TD)を許してしまい、オクラホマ大の優れたバランスオフェンスを攻略することができなかったのです。これが勝敗を分けました。

テキサス大は未だ再建途中とは言えトム・ハーマン(Tom Herman)監督のもと確実に進歩を遂げていると言えます。オクラホマ大はアイオワ州立大から食らったまさかの敗戦をいい形で克服して現在カンファレンス内で唯一の無敗チームであるテキサスクリスチャン大を追いかけます。

マイアミ大 25、ジョージア工科大 24

先々週マイアミ大が対戦したフロリダ州立大にて相手にとどめを刺す逆転のTDを奪ったのはWRダレル・ランガム(Darrell Langham)でしたが、この劇的なキャッチを披露するまで彼はチーム内で3度しかパスを補球したことがありませんでした。そんなほぼ無名選手であったランガムですが、先週のジョージア工科大戦でも試合終了間際に貴重なスーパーキャッチをしでかしました。

ジョージア工科大に2点リードされて迎えた第4Q残り時間42秒。ジョージア工科大陣内43ヤードラインで4th&10ヤードでコンバートできなければ敗戦濃厚と後のないマイアミ大でしたが、QBマリク・ロジアー(Malik Rosier)からの難しいパスを間一髪のところでランガムがキャッチ。見事に4thダウンをコンバートしたマイアミ大は数プレーの後にFGを決めて土壇場で逆転して1点差でジョージア工科大を振り切り無敗を守ったのでした。

こうして2戦連続でチームを救うスーパーキャッチを見せたランガムはマイアミ大で一番有名な選手となったのでした。

サザンカリフォルニア大 28、ユタ大 27

開幕前からハイズマントロフィー候補として期待されていたサザンカリフォルニア大のQBサム・ダーノルド(Sam Darnold)は今季その期待に応えられるような大活躍を見せつけるには至ってきませんでした。そのキレの悪さはこのユタ大戦でも尾を引き、3つもボールをファンブルしてそのうちの2つも相手のTDに繋がるなど昨年度のような輝きは何処へやら・・・と思わずため息も出てしまうパフォーマンスの連続でした。

しかし偉大なるQBとは得てしてミスを犯していたとしても一番肝心な時にその時一番のプレーを披露してチームを勝利に導くものです。それをダーノルドはこの試合でやってのけたのでした。

前半をユタ大リードの21対7で折り返した後半。この時までサザンカリフォルニア大が前半の時点で14点差あったものをひっくり返して勝利に導いたのは2005年が最後だったらしく、この展開は非常に嫌なものでした。しかしそんな「迷信」を打ち砕いたのがダーノルド本人でした。後半に息を吹き返してまるで別人のようなパフォーマンスを見せてくれたダーノルドは立て続けに2つのTDをお膳立てして試合を同点にすると、第4Q中盤に11プレーのロングドライブを演出し、最終的にRBロナルド・ジョーンズ(Ronald Jones II)のアクロバティックなTDが決まってついに逆転。

ユタ大も粘ってTDを奪い返して同点にするチャンスを得ましたが、延長戦へ持ち込まずにそのまま逆転勝ちを狙った2ポイントコンバージョンが失敗に終わり、辛くもサザンカリフォルニア大が虎の子の1点を守ってこの接戦を制したのでした。

決して綺麗な勝ち方ではありませんでしたが、サザンカリフォルニア大はなんとか1敗を守りきりカンファレンスタイトルへの望みを繋ぎました。それもこれもどんなにミスを犯しても戦い続けたダーノルドの力に寄るところが大きかったのだと思います。