ドゥーリー氏がリクト監督を想う

2015年度シーズン後にジョージア大が15年間チームを率いてきたマーク・リクト(Mark Richt)氏を解雇した時、全米中はショックを受けたものでした。ジョージア大でナショナルタイトルを獲得することは叶いませんでしたが、毎年毎年非常にいいチームを輩出し、その安定感とプロフェッショナリズムはジョージア大のファンだけでなく、多くの人々から愛されていた人物だったからです。

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しかし勝利への要求がどんどん高まるにつれ、ただ強いチームを作ったり、人々から好かれるだけのコーチだけでは物足りず、常にナショナルタイトルを狙えなければならないという、半ば理不尽に高すぎるハードルが設置されてしまい、リクト監督もその餌食になってしまったのでした。

今でもこの解雇劇を納得できない人たちはいるでしょうが(私もその中の一人です)、元ジョージア大監督であり元体育局長でもあったヴィンス・ドゥーリー(Vince Dooley)氏も当時の大学の決断には疑問を呈しており、今回のインタビューでもその思いを語ってくれました。

「(現体育局長の)グレッグ・マクガリティ氏は監督を交代させるという大変難しい決断をしなければなりませんでした。マーク・リクトは私が連れてきた監督であり、自分には彼に長いことチームを率いてほしいという強い思いがありました。だから、もし自分が体育局長だったとしたら、まずシーズン後にマークに『次のシーズンが重要だぞ』と話し、あともう1年は彼に任せていたでしょう。」と自分だったら2015年のあの時期にリクト氏を解雇しなかっただろうと話したのです。

自分が任命したコーチがあのようにチームを去らなければならなかったのを見るのはドゥーリー氏にとっては辛かったことでしょう。しかし勝利主義をゆく大学側にとっては今すぐにでもSECタイトルならびにナショナルタイトルを獲れるチームが欲しかったのです。

2001年にジョージア大に就任したリクト監督は翌年2002年と2005年にサウスイースタンカンファレンス(SEC)チャンピオンを獲得。それに加えて2003、2007、2011、2012年度にSEC東地区を制覇。15年間で二桁勝利は9回とこれだけ見れば素晴らしい数字ですが、やはりナショナルタイトルを取れなかったこと、そして2005年度以来カンファレンスタイトルからも遠ざかっていることから、チームは苦渋の選択を下さなければならなかったのでしょう。

非情な決断ではありましたが、増え続ける監督のサラリーに加え、巨額の投資がなされているフットボール部にはやはりそれなりの見返り、つまりタイトル獲得がなければ釣り合わないというわけです。

特にSECでは当時アーバン・マイヤー(Urban Meyer、現オハイオ州立大)監督率いるフロリダ大レス・マイルズ(Les Miles、当時)監督率いるルイジアナ州立大、そしてニック・セイバン(Nick Saban)監督率いるアラバマ大がSEC出身チームとしてナショナルタイトルを獲得しているのを見れば、ジョージア大だって「次は我々にも!」と思うのは不思議ではありません。

ジョージア大でリクト監督が成し遂げてきたことを、ナショナルタイトルを取れなかったことや、2つしかカンファレンスタイトルを獲得できなかったことで、「失敗だった」という風に括ってしまうのはどうかと思います。しかし、年々強豪チームへのし掛かる高すぎるゴール設定がジョージア大にリクト監督を解雇させたのです。もちろん結果を残せなかったリクト監督への批判は当然といえば当然ですが。でもこれが中堅チームであったならばこの成績で監督を解雇することはなかったでしょう。強豪チームである故の結果であったのです。

ドゥーリー氏のこの発言は何も現ヘッドコーチのカービー・スマート(Kirby Smart)監督を非難するするものではないとも言っています。

「彼(スマート監督)は非常に素晴らしい素質を持っています。彼はこのリーグ(SEC)で勝つために何をしなければいけないか熟知しています。彼はジョージア大でプレーし、(アラバマ大の)ニック・セイバン氏に従事してきてコーチングを学んできました。ここでもチームは上々ですし、リクルーティングも大変うまくいっているようです。ですから、我々ジョージア大の未来は大変明るいと言えるでしょう。」とスマート監督を讃えています。

リクト監督はご存知の通りジョージア大を去ったその直後に彼の母校であるマイアミ大のヘッドコーチに就任。かつて王国を築いたマイアミ大もここ最近苦戦続きでしたが、リクト監督就任初年度の前シーズンには早くも9勝4敗という好成績を残し、新天地でいいスタートを切りました。

リクト監督がジョージア大を去らなければならなかった経緯は未だに疑問が残りますが、それも1年以上も前の話。ジョージア大ではスマート監督が、そしてマイアミ大ではリクト監督がそれぞれいいスタートを切っています。何が起きても止まってくれない「時」と同じように、この件についても水に流さねければならないのはドゥーリー氏もわかっていることでしょう。ただ自分の息のかかったリクト監督のことなのでやっぱり思いは人一倍なのでしょうね。