2018年春季トレーニングの風景

アメリカの大学は9月に始業して5月から6月の間に終業するのが通常です。ということで現在こちらは卒業式シーズンな訳ですが、それに先立ち学生アスリートを含む全ての大学生は期末試験に忙しい日々を送りました。

カレッジフットボールの世界で言えば4月に春季トレーニングが終了し、今は自主トレ、ないし自主トレと称される「必須トレ」に励んでいるところです。期末試験が終われば一旦帰宅するアスリートたちも多いでしょうが、その多くは再びキャンパスに戻ってきて夏の間プレシーズンキャンプが始まるまで筋トレやコンディショニングに汗を流す事になります。

NFLドラフトも終わり、ドラフト外フリーエージェントの動きもだいぶ落ち着いてきた事で、カレッジフットボール界は8月のプレシーズンキャンプ入りまで静寂の時を迎える事になります(もちろん先にも述べたように選手たちは常にトレーニングを行う事になりますが)。

そこで今回はまだ紹介できなかった、先に行われた春季トレーニング、特にその締めとなるスプリングゲームの様子を少し紹介したいと思います。15回という限られた練習回数でしたが、その様子から来シーズンのチームの動向を予想できるかもしれません。

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観客動員数バトル

スプリングゲームと言えどもこれはチーム内の紅白戦であり、もっと言えば練習の延長上のものでしか無いのですが、メディアの注目は年々上がる一方で、スプリングゲームが一大イベント化しているのが現状です。昔ここでも触れましたが、かつては春の風物詩として朗らかに行われていたのが、ここまでやんや言われるまで至ることに幾分違和感を覚えずに入られません。

その最たるものがこの試合の観客動員数です。2年前オハイオ州立大は紅白戦だと言うのに10万人のファンがスタジアムに押し寄せました。去年も10万人までには惜しくも届きませんでしたが、多くの強豪とされるチームのスプリングゲームには数万人単位の観客が足を運ぶのです。

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今年はと言うと最多観客動員数を記録したのがネブラスカ大で8万6818人。新HCスコット・フロスト(Scott Frost)監督新体制でのチームに関心を寄せたネブラスカ大ファンの関心の高さを物語っています。

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いかにトップ10チームを紹介します。

  1. ネブラスカ大 – 86,818
  2. ジョージア大 – 82,184
  3. アラバマ大 – 74,732
  4. ペンシルバニア州立大 – 71,000
  5. テネシー大 – 65,098
  6. フロリダ州立大 – 60,934
  7. クレムソン大 – 55,000
  8. フロリダ大 – 53,015
  9. オクラホマ大 – 52,102
  10. テキサスA&M大 – 48,129

今年はオハイオ州立大がランクに入っていませんが(47,803)、これは現在彼らのスタジアムが改修工事中であること、当日が雨天だったこと、そしてその雨天のせいでスケジュールが直前で変わったことが観客動員数激減の理由となったそうです。

なんにしてもものすごい数の人がたかだか紅白戦を見にスタジアムを訪れたことになります。まあ自分ももし近くにお気に入りのチームがあって、試合当日に暇だったら見に行ってしまうと思いますが・・・(笑)。

先発QBの争い

昨年の覇者であるアラバマ大ですが、オフシーズンそしてシーズン開幕までの最大の注目ポイントは「誰が先発QBになるか」の一つに尽きます。

昨年度のナショナルチャンピオンシップゲームでは、過去2シーズン先発の座を守ってきたジェイレン・ハーツ(Jalen Hurts)がジョージア大ディフェンス相手に全く何も出来ず、後半からチームは1年生のトゥア・タガヴァイロア(Tua Tagovailoa)を投入。彼の活躍でアラバマ大は見事な逆転劇を演じて2年ぶりに王座を奪還したのです。

そうなれば当然来季の先発QBはどちらになるのか?という事に最大の関心が集まりますが、春季トレーニングでは残念ながらタガヴァイロアが初日から指の骨折を負って戦線離脱。最後はボールを投げるまでに至りましたが、スプリングゲームは欠場となり、ハーツとの「対決」はお預けとなりました。

ただそのハーツですが相変わらずプレッシャー下でのパス能力の低さが露呈され(というかポケットにとどまれない)、第3番手のQBとされるマック・ジョーンズ(Mac Jones)の方がパスプレーで冴えていたぐらいでした。ニック・セイバン(Nick Saban)監督もハーツのプレーに業を煮やし、「(彼を指導してすでに)3年目だぞ!!」とパサーとしての成長の低さに思わずこう吐き捨てたとか・・・。

メディアの論調はハーツがQBとしての先発の座を失うのが濃厚であるというものですが、過去2年間アラバマ大をナショナルチャンピオンシップゲームへ牽引した先発QBとしてはこの状況は天と地の差です。彼の走りとプレーメーカーとしての能力は疑う余地もありませんが、タイトなゲームで彼のパスプレーがなりを潜めるという状況が変わっていないのも事実なのです。

そんなハーツが先発の座を失うという流れの中で、彼の父親は「セイバン監督はチームが勝つためならどんな決断でもするべきです。しかし私は息子のためにベストな決断をしてやるべきだとも思っています。もしジェイレンが仮にも先発の座を失うのであれば、彼はカレッジフットボール史上最大級のフリーエージェント選手となるでしょう。」と発言し、もしハーツがタガヴァイロアに先発の座を奪われれば、QBとしての出場機会を得るためにアラバマ大から転校もやむなしという意見を発言していました。

セイバン監督からすればどちらのQBも手元に置いておきたいでしょう。二人を使い分けるという作戦ももちろんあるでしょうが、場合によってはコーチ陣は非常に難しい選択を迫られることになるかもしれません。


2年前にクレムソン大デショーン・ワトソン(Deshaun Watson、現ヒューストンテキサンズ)という絶対的なリーダーを失いました。その後を継いだのがケリー・ブライアント(Kelly Bryant)。身体能力はワトソンよりも上とも言われたブライアントはチームをカレッジフットボールプレーオフ(CFP)に導くほど活躍しましたが、一方でワトソンを超えるほどのプレーメーカーにはまだ遠く、特にパサーとしての能力がまだ未開発であることが準決勝戦でのアラバマ大戦でも露呈されました。

そんな中クレムソン大では期待の新人トレヴァー・ローレンス(Trevor Lawrence)に注目が集まっています。かつてこのサイトでも紹介しましたが、全米ナンバーワンQBリクルートと賞されていたローレンスはクレムソン大に進学。そしてスプリングゲームではその才能を遺憾無く発揮し、122パスヤードに1TDという結果を残し、ブライアントの先発QBの座を脅かす存在となりそうな予感を感じさせてくれました。

ブライアントが先発の座を守るか、ローレンスがその座を奪うか、開幕まで気になる所です。


昨年大躍進してナショナルチャンピオンシップゲームまで進出したジョージア大。その要となったのはLBロクアン・スミス(Roquan Smith、シカゴベアーズ)らが率いた強力ディフェンスと、RBソニー・ミシェル(Sony Michel、ニューイングランドペイトリオッツ)とニック・チャブ(Nick Chubb、クリーブランドブラウンズ)を要した全米随一のランオフェンスでした。

しかしその中で1年生ながら先発QBの座を確保し、ミスのない堅実なプレーでチームを支えたジェイク・フローム(Jake Fromm)の存在を忘れるわけにはいきません。ここぞというところで見せた彼のプレーがあったからこそランオフェンスが活きた訳で、昨年の快進撃の陰の立役者に彼の名を挙げたとしても言い過ぎではないでしょう。

しかしそんなフロームも来季を迎えるにあたり再び先発の座が約束されている訳ではありません。というのも新入生に上に紹介したクレムソン大のローレンスに負けじと劣らないタレントの持ち主であるジャスティン・フィールズ(Justin Fields)がいるからです。

すでにフロームよりもポテンシャルは上だと言われているフィールズですが、すでに1月から入学を果たしており、先の春季トレーニングにも参加。そしてスプリングゲームではフィールズがフロームよりも光るプレーを連発していました。決定的な違いはフィールズには高い機動力があること。プレッシャー下でもいざという時はポケットをすり抜けてボールを動かせる能力は魅力的です。

最終的な決断はプレシーズンキャンプまで持ち越されそうですが、昨年フロームが当時先発QBだったジェコブ・イーソン(Jacob Eason、ワシントン大へ転校)からその座を奪ったように、フィールズがフロームから同じことをしたとしても不思議ではありません。


トップチームで言えばオクラホマ大ベーカー・メイフィールドが卒業・ドラフト入り)、サザンカリフォルニア大サム・ダーノルドがドラフト入り)、UCLAジョシュ・ローゼンがドラフト入り)、ルイビル大ラマー・ジャクソンがドラフト入り)、オクラホマ州立大メイソン・ルドルフが卒業・ドラフト入り)らのチームが先発QBを失い来季は新体制で発進することになります。

誰が先発の座を射止めるにしても上に挙げたチームたちは再建を余儀なくされそうですが、もちろん戦力を極力ダウンさせないためにも誰を後継者に選ぶかということは死活問題となります。あるチームでは何年もバックアップを務め出番を待っていた選手にいよいよそのチャンスが訪れ、またあるチームでは未来ある新人1年生選手が数多いる先輩QBたちを押しのけて先発に指名されたり。春の時点で上記のチームで確固たる新先発QBが見つかったという話は聞きませんでしたから、これらのチームでの新先発QB選手指名はプレシーズンキャンプまでお預けとなりそうです。

その他にもオハイオ州立大ルイジアナ州立大フロリダ大らも誰が新たな先発QBとなるかが注目された春季トレーニングとなりました。結局どのチームもこのトレーニング期間で時期先発QBが誰になるのか決めることはありませんでしたが、ファンにとっては次世代を担うチームが誰に率いられるかというのは非常に気になるところです。

またテキサス大では昨年の元来のスターターであるシェーン・ビューシェル(Shane Bucechele)と、彼が怪我で欠場した間活躍したサム・エリンガー(Sam Ehlinger)の先発争いも注目されましたが、ここも誰がその座を射止めるのかという決断は夏までお預けとなったようです。

テキサスA&M大

テキサスA&M大では、オフシーズンに巨額の契約金をもってフロリダ州立大から引き抜かれたジンボ・フィッシャー(Jimbo Fisher)監督初の春季トレーニングとなり、アギーズの新時代とばかりにファンたちのチームへの注目度はうなぎのぼりでした。

そしてチームを一新するということかどうかは分かりませんでしたが、彼らのスプリングゲームが行われたホームスタジアムのカイルフィールドでは通常ペイントをしないエンドゾーンをチームカラーのマルーンに塗ったということでした。

😍😍 See you Saturday! Link in bio. #12thman

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特別仕様の時にしかマルーン色にペイントされなかった彼らのエンドゾーン。フィッシャー監督体制で新たな船出となるチームへのスペシャル感を表したかったのでしょうか?


スペシャルといえば彼らの卒業生で何かと世間を騒がせるジョニー・マンゼル(Johnny Manziel)。2012年に1年生として史上初のハイズマントロフィーを獲得するなど一世を風靡しましたが、プロに入ってはパーティー三昧などでネガティブなイメージが植えつけられ、プロの世界から追い出されてしまった人物。最近彼は更生を誓ってプロ復帰を目指しているようですが・・・。

そんな異端児も母校に帰れば未だヒーローのようで、今回のスプリングゲームにもスタジアムに姿を現していました。そしてゲーム中の一コマ、61ヤードのFGのトライでそのキックがゴールポストに届かずその手前で落下するのですが、そのボールをキャッチしてリターンしたのが・・・。

マンゼルのリターンに会場は大盛り上がり。果たして彼は再びフィールドにたちファンたちを喜ばせることができるのでしょうか・・・。

ミネソタ大

2017年度のシンデレラチームといえばセントラルフロリダ大でしたが、その前年の2016年度はウエスタンミシガン大がレギュラーシーズン無敗で中堅チームとして大いにその名を世に知らしめました。そのおかげでそのチームを率いていたP.J.フレック(P.J. Fleck)監督はBig Tenカンファレンスの老舗、ミネソタ大の監督に就任しました。

彼の初年度となった2017年は5勝7敗と振るいませんでしたが、おそらく彼らが頭角を現すのはあと2、3年は必要かもしれません。しかしフレック監督も持ち前のエネルギッシュさでチーム内の雰囲気はおそらく変わっていることでしょう。

選手と繋がることがうまいことで知られているフレック監督。クレムソン大ダボ・スウィニー(Dabo Swinney)監督を彷彿とさせる彼が以前に変わった手法で選手にスカラシップ(スポーツ奨学金)の発給を発表したことを紹介しましたが、同じようなことを今年のスプリングゲームで行いました。

というのもフレック監督は紅白戦の第2Qに一度試合を止めて、スコアボードのオーロラビジョンでDLサム・レナー(Sam Renner)に新たにスカラシップが授与されることを発表したのです。

選手にとって授業料を免除してもらえるスカラシップ制度を受け取ることができることは、金銭的な事はもとより選手としてチームで認められた証でもあり、これをもらえるもらえないは大きな意味を持っています。それは受け取る選手だけでなく周りのチームメートにとっても嬉しいニュースであり、これが発表されると選手一同レナーを囲み祝福を挙げていました。

ペンシルバニア州立大

以前このサイトでもご紹介しましたが、ペンシルバニア州立大ジェームス・フランクリン(James Franklin)監督のモノマネをするコメディアンで俳優のキーガン・マイケル・キー(Keegan-Michael Key)氏が同チームのスプリングゲームに見参すると宣言していましたが、それが本当に実現したようです。

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紅白戦前、フィールドに入場してくる選手を率いていたのがフランクリン監督・・・と思いきや、彼に扮したキー氏だったのです。

試合中もプレーコーリングをしている風のキー氏が登場。

フランクリン監督の家族写真。しかしフランクリン監督扮するのは・・・。

そしてなんと紅白戦後の会見にも登場!

本物のフランクリン監督が一番楽しんでそうですが、こんなことが許されるのも春季トレーニングやスプリングゲームの醍醐味ですね。


ところでペンシルバニア州立大のスプリングゲームが盛り上がったのはキー氏のパフォーマンスだけではありませんでした。というのも彼らの大ファンだという女の子を特別フィールド上に招待して、その上実際にプレーに投入したのです。

このブルック・フィッシャーちゃん、実はダウン症を持つ女の子なのですが、ペンステートフットボールの大ファンという彼女へのプレゼントとしてチームが用意したイベントだったのです。

QBトレース・マクソーリー(Trace McSorley)からハンドオフを受けるとそのまま並み居るディフェンダーたちをかき分けてタッチダウン!(ゴールライン直前でスパイクしてしまったのはご愛嬌!)選手やマスコットに祝福を受け、一生忘れられない思い出となったことでしょう。

テネシー大

この春季トレーニングを新監督体制で望むチームはたくさんいます。そういったチームのファンたちはチームがどのような色に染まっていくのか興味津々となるでしょう。テネシー大もその一つで今年からは元アラバマ大のディフェンシブコーディネーター、ジェレミー・プルイット(Jeremy Pruitt)氏が監督に就任しました。

タフな指導方法で知られるプルイット監督ですが、早速その片鱗をスプリングゲームで見せていました。

試合終了後の記者会見、プルイット監督は怒っていました。それは選手たちの出来に満足していなかったからです。「一部の選手は完全にプレーすることを止めていた」と。しかもその怒りの矛先は選手たちだけでなく観戦に来ていたファンにも及んだのです。

「今日来ていたファンたちは我々チームを見ているようでした。プレーすることを止めた一部の選手たちのように、なんの理由もなくただそこにいただけのファンも見受けられました。」

アラバマ大という最高峰で帝王学をニック・セイバン監督から直に学んだプルイット監督だからこそ、今のテネシー大の状況に満足できないのでしょう。ナショナルチャンピオンを目指すならそれなりの努力や奮闘が必要であり、それを今のチームに感じられなかったのかもしれません。

選手が常に100%の力を出し切るのは当然ですが、今後テネシー大のファンたちがスタジアムに足を運ぶ際には彼らにもチームを100%バックアップするという意気込みをプルイット監督が要求することを肝に銘じながら応援しなければならなそうですね。

シラキュース大

スプリングゲームはその時点でのチームの現状を図る上で大事な機会ですが、一方で紅白戦ということもあり、実際の試合よりもリラックスした中で行われるものです。そしてそういった状況では上に挙げたようなサプライズや、普段では見ることが出来ない出来事が起こったりします。

シラキュース大のQBレックス・カルペッパー(Rex Culpepper)は最近発覚した精巣ガンの治療に専念するため今年始めにチーム活動から離れましたが、今回行われたチームのスプリングゲームに1ドライブだけプレーするためにチームに復帰しました。

そしてその中でカルペッパーは4回のパスを全て成功させ55ヤードゲインの末にTDを奪う活躍を見せました。

現在もガンと戦い化学治療を続けているカルぺッパーですが、彼にこのようなチャンスを与えたディノ・バーバーズ(Dino Babers)監督やチーム関係者の粋な計らいは素晴らしいですね。

フロリダ州立大

アメリカではYouTubeやテレビなどでよく見られるものに、兵役を終えて完全帰国、または一時帰国する兵士たちが家族に内緒で彼らの前に登場するサプライズ動画があります。涙無くしては見れない感動の瞬間なのです。

そしてそれがフロリダ州立大のスプリングゲームでも見られました。

インターミッションでオーロラビジョンに映し出されたのは、OLデリック・ケリー(Derrick Kelly)の兄で海軍士官のデリカス・ケリー(Derrickus Kelly)氏。ビデオメッセージでは従軍中のためこの紅白戦を観戦できないことを詫びる言葉が流れましたが、次の瞬間フィールドに姿を見せたのは・・・!

この日まで2年間も会えなかった兄弟が再会!どんなに巨漢のケリーも兄の登場にはおそらく彼も涙腺を緩ませてしまったことでしょうね。

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