ストゥープス元監督が残していったもの

先日コーチングから引退することを発表したオクラホマ大ボブ・ ストゥープス(Bob Stoops)氏。過去18年間もオクラホマ大を引っ張ってきたこともあり、 チームのダイナミクスを大きく変えることになるでしょう。彼がオクラホマ大で成し遂げたことはそう簡単にコピーすることはできませんし、また彼の後継者たちにとっては非常に高いハードルを置き土産にしていったのです。

ストゥープス監督が1999年に監督に就任して以来オクラホマ大で積み上げた白星は190に登ります。そして2000年にはナショナルチャンピオンにも輝き全米の頂点にも立った人物。またテキサス大ネブラスカ大テキサスA&M大オクラホマ州立大テキサスクリスチャン大などが所属( またはかつて所属していた)する強豪カンファレンスであるBig 12カンファレンスにおいて実に10度もそのタイトルを獲得したのです。

オクラホマ大は元々強豪校として知られていましたが、1980年代後半から1990年代にかけてしばらくそのなりを潜めます。 そしてそのチームを再び全米の表舞台に連れ出したのがストゥープス氏でした。さらにその状態を18年間も維持したのです。様々な状況が流動的であるこのカレッジフットボール界で毎年チームを常に上のレベルに留めておくのは想像以上に難しいものです。 しかしストゥープス氏はそれを18年間やってのけたのです。

これを引き継ぐのは誰であっても容易なことではありません。

今回次期監督に指名されたのはオフェンシブコーディネーターを過去2年務めてきた弱冠33歳のリンカーン・ライリー(Linco ln Riley)氏です。 ライリー氏にとってはオクラホマ大でのこのコーチングのチャンスが自身初の監督のポジションになりました。 つまりヘッドコーチデビューがたった33歳にして名門のオクラホマ大になったのです。

ライリー監督にとっては高く険しい道が待っていることでしょうが 、 少なくとも現在のチームの状態は今までと比べても史上最高のものといっても言い過ぎではないくらいとても期待できるものになっています。2015年と2016年には2年連続でカンファレンスタイトルをゲット。最終ランキングでも両年ともトップ5入り。 カンファレンスで内は現在のところ最も安定したチームと言えますし、リクルーティングでもトップ10以内に食い込む勢いです。

これまでストゥープス氏が作り上げてきた勢いとチーム力を考える とそれを受け継ぐライリー新監督には尋常ではないプレッシャーがかけられることでしょう。それにライリー監督は18年間同じ人物が率いてきたチームを引き受けるというタスクも待っています。

例えば下のリストを見てみてください。これはストゥープス監督がオクラホマ大に就任した1999年以降、同一チームで10年間以上コーチをした、もしくは現在もしている他のコーチたちです。

  • カーク・フェレンツ(Kirk Ferentz、アイオワ大):18年
  • ゲリー・パターソン(Gary Patterson、TCU):17年
  • ゲリー・ピンケル(Gary Pinkel、ミズーリ大):15年
  • マーク・リクト(Mark Richt、ジョージア大):15年
  • マイク・ガンディー(Mike Gundy、オクラホマ州立大):12年
  • カイル・ウィッティンガム(Kyle Whittingham、ユタ大):12年
  • レス・マイルズ(Les Miles、ルイジアナ州立大):12年
  • スティーブ・スパリアー(Steve Spurrier、サウスカロライナ大):11年
  • マーク・ダントニオ(Mark Dantonio、ミシガン州立大):10年

数々の名将が名を連ねていますが、これらの監督が各々の所属するカンファレンスにて獲得したタイトルを全て合わせても、ストゥープス監督が一人でオクラホマ大で獲得した総数(10)には及ばないのです。またストゥープス監督の勝率79.8%という数字も上に挙げたコーチたちよりも上をいく数字ですし、元ルイジアナ州立大のマイルズ氏を除けば他のコーチはナショナルタイトルを獲得したことがありません(スパリアー氏はフロリダ大で獲得した過去あり)。もちろん既述の通りストゥープス監督は2000年にそれを手に入れています。

そしてストゥープス監督はチームの成績が悪くなって追い出されたわけでもなく、何かの責任を取って辞めざるを得なかったわけでもなく、チームの状態が上向きのままチームを去っていったという事実もあります。例えば上記のマイルズ監督、リクト監督、ピンケル監督はそれぞれ所属チームでの晩年には成績が降下線をたどっていました。その結果マイルズ監督はシーズン途中で解雇、リクト監督はシーズン後に解雇、そしてピンケル監督は解雇はされなかったものの自ら辞任を決断したのでした。

ストゥープス監督がこのようにチームが上向きのまま去っていったことはその後を継ぐライリー新監督にとっては多少の朗報ともいえます。もちろんこれまで挙げてきたような、彼にとってプレッシャーとなり得る部分も多くありますが、まだまだ勢いに乗っているチームをそのまま手中に納めることができるのはライリー監督にとっては大きなプラスです。ハイズマントロフィー候補QBベイカー・メイフィールド(Baker Mayfield)は健在ですし、カンファレンスを見てもまだまだ他に突出して強いチームはなく、彼らが3連覇するチャンスは十分あります。もちろんトム・ハーマン(Tom Herman)新監督を招いたテキサス大が彼の1年目からパワーバランスを揺るがすようなチームをいきなり作り上げることができれば別の話ですが。

にしてもやはりライリー監督の背負うものは巨大であると言わざるを得ません。ストゥープス監督がオクラホマ大で残した190勝はオクラホマ大フットボール部史上最多勝利数です。またストゥープス監督が就任する前までの同チームの10年間のトータル戦績は61勝50敗3分けということからもわかるように、彼が成し遂げてきたことは同大学でレジェンドと言われているバリー・スウィッツアー(Barry Switzer)元監督やバド・ウィルキンソン(Bud Wilkinson)元監督らに匹敵する偉業なのです。

もちろんライリー監督がオクラホマ大で成功できるかどうかは誰もまだわかりません。しかしながらライリー監督は今後しばらくはストゥープス監督と否が応でも比較されるでしょうし、少しでもストゥープス監督時代の記録よりも下回れば途端にファンや関係者たちから叩かれることになるでしょう。しかも33歳のライリー監督にとってこの仕事が初のヘッドコーチ職なのですから。

オクラホマ大のヘッドコーチに就任した際、ライリー監督は「夢のようだ」と喜んでいたようです。もちろんオクラホマ大の監督のポジションをオファーされれば誰だって食いつくことでしょうが、それが彼にとって後悔とならないことを祈りたいです。