オハイオ州立大のQB事情

オハイオ州立大は2018年度シーズン後に名将アーバン・マイヤー(Urban Meyer)が主に健康上の理由でコーチングから引退。最終戦となったローズボウルでのワシントン大戦を白星で飾り見事花道を飾りました。そしてマイヤー監督の後継者として任命されたのがオフェンシブコーディネーターだったライアン・デイ(Ryan Day)氏です。

 

ライアン氏はシーズン中にマイヤー監督が3試合の謹慎処分を受けていた際に臨時監督としてチームを率い、無傷の3連勝を収めてマイヤー監督復帰時にチームを手渡しました。その時の評価を受けてオハイオ州立大の新監督に就任することになったデイ氏。彼にとっては初めての監督職が大御所オハイオ州立大ということで、今後デイ体制でのチームの動向が非常に気になるところです。

昨年度のチームはQBドゥウェイン・ハスキンズ(Dwayne Haskins)を中心としたオフェンスに非常に注目が集まりました。ハスキンズはそのサイズ、パス能力、判断力、ともに超カレッジ級で最優秀選手に贈られるハイズマントロフィーの授賞式に最終候補選手として招待もされました。トロフィーはオクラホマ大カイラー・マレー(Kyler Murray)が獲得しましたが、ハスキンズが残した数字だけ見れば彼がトロフィーを受賞していたとしてもおかしくないほどの逸材だったのです。

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そんな彼は次のシーズンに3年生となりますが、シーズン中から噂されていたように来季は大学に戻らずNFL早期ドラフト入りすることを先日発表しました。チームはマイヤー監督からデイ監督へと変わり、そしてスターQBハスキンズもチームを去るということで過渡期に入ろうとしています。

そんな折、オハイオ州立大に強力な助っ人が転校してくることになりました。ジョージア大QBジャスティン・フィールズ(Justin Fields)です。

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ジャスティン・フィールズ

1年生のフィールズは2018年のリクルーティングクラスでクレムソン大QBトレヴァー・ローレンス(Trevor Lawrence)に次いで全米2位の力を持つQBと評価され、鳴り物入りでジョージア大に入学。ここで2年生のジェイク・フローム(Jake Fromm)と先発争いをすることになりますが、先輩から先発の座を奪うことは叶わず、昨年はフロームのバックアップに徹していました。カービー・スマート(Kirby Smart)監督はフィールズを飼い殺しにすることで彼がジョージア大から転校してしまうのを恐れ、フィールズのためのプレーを用意してシーズン中に彼を使ってきましたが、どう考えても昨年度はフィールズを主戦力と考えて彼を使ったとは思えない起用法ばかりでした。

そんなスマート監督の不安は的中。フロームがあと最高で2年間のプレー資格を残しており、このままだとあと2年も彼のバックアップを務めなければならないと悟ったフィールズはジョージアからトランスファー(転校)して新天地でプレー機会を模索することにしたのです。そしてシーズン後にハスキンズ、マイヤー元監督とともにオハイオ州立大の男子バスケットボール部の試合を観戦するフィールズの姿が発覚。これで彼がオハイオ州立大へ転校するのではないかという憶測が流れましたが、案の定程なくしてフィールズの新天地がオハイオ州立大となったことが公表されました。

ただNCAA(全米大学体育協会)の定めるトランスファールールにより、NCAA1部チームから1部チームへ転校した場合、基本的に1年間転校先で試合出場できないという決まりがあります。フィールズはこのケースに当てはまることになり、普通に行けば2019年度シーズンには試合に出れないことになります。

しかしながら彼と彼の弁護士はここでウルトラCの裏技を使って来季からオハイオ州立大でプレーできる資格を獲得しようとしています。

遡ることシーズン序盤。ジョージア大のホームゲームで酒によった同大野球部の選手がフィールズに対して人種差別のやじを飛ばして問題になったことがありました。この選手は野球部から退部させられましたが、実はこの事件を元にフィールズは2019年度シーズンから即プレーできるようNCAAに懇願しているのだそうです。

その理由はこの事件に関して「身の危険を感じたためやむなくジョージア大をでなければならなかった」という主張です。つまり彼が転校しなければならなかったのは特別な理由だったからだ、という一種の「建前」(おそらく)でNCAAを口説き落とそうとしているのだと思います。弁護士は2月中にはその結果が分かるだろうと話しているそうです。

もしそうなればフィールズという元5つ星リクルートがハスキンズが去った後に入ってくるということで、機動系のQBであるフィールズが即戦力としてチームに加入してくれることは非常に喜ばしいことでしょう。

しかしオハイオ州立大に元々ハスキンズのバックアップがいなかったわけではありません。それが来季2年生となるテイト・マーテル(Tate Martell)です。

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オハイオ州立大のテイト・マーテル(#18)

マーテルは2017年度のリクルーティングクラスでトップレベルのQBとしてオハイオ州立大にやってきました。初年度はレッドシャツを使用して経験を積み、そして昨年は1年生としてハスキンズのバックアップを務め自分の出番を今か今かと待っていたのです。

そのマーテルとしては合計2年間出場機会を伺っていたのに、いきなりやってくるフィールズに先発を奪われるなどあってはならないことです。彼はフィールズがまだジョージア大に在籍し、噂でしかこのトランスファーの話がなかったときから、名指しこそ避けたものの明らかにフィールズに向けての挑戦状とも言えるツイートを残していました。また地元紙のインタビューでも「自分は2年間待ったんです。冬の辛いコンディショニングトレーニングやキャンプも全力で打ち込み、私はこれまでの全ての時間をオハイオ州立大で先発QBとして出場するためにつぎ込んできました。だから私は誰と先発の座を争うことになっても逃げ隠れしませんし、必ずその座を獲得してみせます。」

マーテルがそう思うのは当然でしょう。特に今のご時世、トップリクルートとして大学にやってくる選手は大学デビューする前からプロ入りの心配をするような時代です。そのためにはどうしても先発選手として活躍し、世間に自分の存在を知らしめなければならないからです。特にQBとして先発できるのはチームにたった一人ですから。だから誰が来ても勝ち取ってみせる!という彼の意気込みは非常に素晴らしいものでした。

しかし。

フィールズが上記のように来年から即プレーできる可能性を模索しているというニュースが流れた同じ頃、なんとNCAAのトランスファーポータルにマーテルの名前が登録されたのが明らかになったのです。

トランスファーポータルとはトランスファーしたい選手がここに登録することによって全米のコーチたちがその選手にコンタクトを取れるようにするためのものです。通常既に別のチームに所属している選手を他のコーチが転校するように勧誘することは許されていませんが、このポータルに登録することでそれが可能になるというわけです。つまりここに名前があるということはその選手がトランスファーする意思が多少なりともあるということになります。先日紹介したアラバマ大ジェイレン・ハーツ(Jalen Hurts)も最近このポータルに登録したのが確認されています。

あれほど強気だったマーテルがトランスファーすることを少しでも考え出している・・・。中々ドラマチックな展開になってきました。

一部の報道では既にマイアミ大が興味を示しているとか。ちなみにマイアミ大は前出のハーツにも興味を示しているとのことですが、どちらの情報も信憑性は定かではありません。

選手が出場機会を求めてトランスファーするのは何も今に始まったことではありません。しかし早い段階から転校してしまうというここ最近のこのトレンドはちょっと異常です。これは特に強豪校で起きていることですが、おそらくアグレッシブなリクルーティングで有能な選手を多く抱えることになった部内で、普通なら先発を任されてもおかしくない選手たちが溢れてしまっていることが挙げられるでしょう。もちろんそんなことが起き得るチームはほんの一握りですが(例えばここに上がっているジョージア大、オハイオ州立大、アラバマ大など)、QBはチームで一人しか先発出場できませんからその座を奪いそこねた選手が出場機会を求めてチームを出ていくわけです。

あとは強いプロへの執着です。先にも述べましたが、高校時代に5つ星などという高評価を受けた選手はそのままプロに行くことを夢見るわけですが、そのためには誰かのバックアップを2年3年も務めていては叶う夢も叶わなくなるわけです。だから新天地を探すようになる。

しかしそこにはチーム、リクルートしてくれたコーチ、そしてチームメイトへのロイヤリティはありません。つまり自分の夢を叶えるためならば何だってするという姿勢です。それを理解できない古株の人間たちは多くいますし、そういった人たちの批判的なコメントは日常茶飯事です。

兎にも角にも名門オハイオ州立大の次期先発QBが誰になるのか・・・。まずはフィールズが2019年シーズンから即プレーできるようになるかどうかが焦点となりそうです。

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