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2019年スカウティングコンバインの風景

2019年スカウティングコンバインの風景

今年4月下旬に行われるNFLドラフトに向けて大事なイベントであるNFLスカウティングコンバインが先週から1週間かけてインディアナ州インディアナポリス市で行われました。全チームのスカウト、コーチ、GMらが一堂に集まり招待された選手を見定める「見本市」がこのコンバインです。フィルムでは選手たちの活躍を見れますが、実際の目でそれぞれの選手がどんな選手なのかを確かめることが出来るのがこのコンバイン。それは健康診断から始まり、身体測定、基礎能力テスト、ポジションテスト、そして面接に至るまで様々な角度からドラフト候補生たちを解剖していくプロセスです。

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ベースボール・マガジン社 (編集)

このスカウティングコンバインの出来次第では本番のドラフトでの指名順位が十分変わってしまいますから、参加する選手たちはまさに万全な体制で臨まなければなりません。ここで予想を覆すいい印象を残す選手もいれば、株を下げてしまう選手もいたりと様々です。選手たちにとって見れば夢であるプロ選手になるための登竜門とも言えるこのビッグイベントに一喜一憂するわけです。

それでは今年行われたコンバインで見られた様々なシーンを振り返ってみたいと思います。

数字が全て

カイラー・マレー(Kyler Murray、元オクラホマ大QB)

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今コンバインでもっとも注目を浴びたのが元オクラホマ大QBでハイズマントロフィー受賞者でもあるカイラー・マレーでしょう。MLBオークランドアスレティクスに野球選手としてドラフトされるもそれを固辞してプロフットボールの道へと進むことを決めたマレーですが、カレッジでの大成功の一方で彼のサイズが本当のところどうなのかというところに焦点が集まりました。

スポーツ選手が身長をちょろまかすことはよくあることです。体重は日によって変わりますが、成人の身長が変わるということはほぼありえません。ですからコンバインでの身体測定にてマレーの身長がどれほどなのかが話題の中心となったのです。

そしてその数字とは5フィート10 1/8インチ(約178センチ)でした。スポーツ選手は身長を「盛る」傾向にありますが、マレーの場合はコンバイン前にリストされていた5フィート10インチを多少ながらも上回るものになりました。

マレーの身長が平均よりも低めであるためにドラフトでは手を出すチームがそこまでいないのではないかと言われていましたが、コンバインが近づくにつれ世間の意見は身長はそこまで関係ないという風潮になっていました。むしろ細身であることがプロの猛者ディフェンダーたちからのタックルに打ち負けてしまうのではないかというほうが危惧されているようです。

ちなみに過去のドラフトでマレーと同じように低い身長が危惧されたラッセル・ウィルソン(元ウィスコンシン大QB、現シアトルシーホークス)のコンバインでの身長は5フィート10 5/8インチでしたから、そこまで身長差はないですね。さらに言えばマレーの体重が207パウンド(約94キロ)だったのに対しウィルソンは204パウンド(約92.5キロ)とマレーがウィルソンを上回る数字を残したのです。

手の大きさと腕の長さはウィルソンが上回りましたが(ドラフトではいろいろな測定をするのです)、思ったよりも身体測定での数字が良かったためにマレーのドラフトでの株が急上昇したというのが専門家の意見のようです。

マーキース・ブラウン(Marquise Brown、元オクラホマ大WR)

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マレーと大学時代にチームメートだったWRマーキース・ブラウンは大学時代の活躍度合いから1巡目もあり得る逸材だとされてきました。しかしコンバインでの身体測定の結果、彼のドラフトの株は下落したということです。

というのも彼の身長は5フィート9 3/8フィート(176.2センチ)でさらには体重が166パウンド(75.2キロ)と超軽量だったからです。うえに挙げたマレーと比べても数字的に弱いです。

しかもブラウンは昨シーズン終盤に追った足の怪我のせいでポジション別のテストに参加できないため、身体測定で劣った分を取り返すことすら出来ないのです。

WRとしてキャッチ能力はすでに大学時代に証明済みですが、この軽い体で果たしてプロレベルのCBのプレスカベレージに対抗できるのかという面ですでにスカウトたちの目は彼から離れつつあります。ドラフトされることは間違いないでしょうが、1巡目というのは非現実的になってしまったようです。1巡目とそれ以外では契約金の額が桁違いに変わってくるとされるのでブラウンにしてみれば非常に痛いコンバインとなってしまいました。

D.K.メットカフ(D.K. Metcalf、元ミシシッピ大WR)

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数字合戦という面でこのコンバインを風靡した選手といえば元ミシシッピ大WRのD.K.メットカフでしょう。

40ヤードダッシュは4.33秒でWR陣では3位のタイム。ベンチプレスは首位タイ(27回)、幅跳びは5位の134インチ、その他の測定値も軒並みWR陣内でトップレベルとなりました。これだけでも凄いのですが、身体測定からはじき出された体脂肪率がなんと1.6%だったとか。ちょっと眉唾ものですし、ここまで低いと逆に不健康なんじゃないかと思ってしまいますが、コンバインでインパクトを残したことは確かです。

イライジャ・ホリフィールド(Elijah Holyfield、元ジョージア大RB)

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元ジョージア大RBイライジャ・ホリフィールドは昨年デアンドレ・スウィフト(D’Andre Swift)とタッグを組みジョージア大のランアタックの中核を担いました。1018ランヤードに7TDと活躍したホリフィールドは4年生シーズンをスキップして早期ドラフト入りを表明。そして今回のコンバインに招待されたのですが、残念ながら彼の40ヤードダッシュのタイムは周囲(そしておそらく彼自身も)をがっかりさせるものでした。

ホリフィールドが叩き出したタイムは4.78秒。これはRB陣の中ではビリから2番めのタイムでした。RBが俊足である必要は決してありませんが、流石にこのタイムは遅すぎます。さらに悪い事にこのタイムは同じくコンバインに参加していた2人のパンターと1人のキッカーよりも遅いものだったのです。

RBがスペシャリストよりも足が遅いというのは印象はあまり良くないですよね。


コンバートを拒否

元ペンシルバニア州立大QBトレース・マクソーリー(Trace McSorley)は40ヤードダッシュでQBとしてトップの4.57秒を叩き出しました。ただ下馬評では彼の名前はあまり挙がってきてはいません。

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ペンシルバニア州立大では3年間先発QBを務めましたが、その闘志あふれるプレースタイルで地元ファンの心をガッチリと掴みました。しかしNFLでプレーするとなると前述のマレー、元オハイオ州立大QBドゥウェイン・ハスキンズ(Dwayne Haskins)などが持つポテンシャルには到底及びません。

ただアスリートとしての身体能力はこれまでのプレー並びにコンバインでの数字から見ても明らかで、それを見逃すスカウトたちではなかったようで、実はマクソーリーはQBではなくDBとしてスキルを見定めるセッションに参加しないかと打診されたのだそうです。しかしQBとしてプロ入りすることにこだわるマクソーリーはこれを断ったのだとか。

このようにもともとのポジションではなくそのポテンシャルに合わせて違うポジションで選手の可能性を見てみたいというチームは結構あります。昨年のコンバインでは元ルイビル大のQBラマー・ジャクソン(Lamar Jackson)がWRとしてのスキルを見てみたいと打診されたそうですが、QBとしてプレーしたかったジャクソンはこれを固辞し見事第1巡目にボルティモアレイヴンズから指名を受けました。そして結局ルーキーながら先発の座を確保したのです。

一方でポジションを変えたおかげで大成した選手も多くいます。一番最初に思いつく選手といえば、先月行われたスーパボウルでMVPを獲得したニューイングランドペイトリオッツのWRジュリアン・エデルマン(Julian Edelman)です。彼はケント州立大時代はQBとして活躍しましたが、プロではWRに転向して結果を残しています。

個人的にマクソーリーの話を聞いたとき真っ先に思い浮かんだ選手は元ネブラスカ大QBエリック・クラウチ(Eric Crouch)氏です。2002年のドラフトで3巡目にセントルイス(当時)ラムスから指名を受けたクラウチ氏でしたが、このとき彼はWRとしてドラフトされたのです。しかしハイズマントロフィーも受賞したQBだったクラウチ氏はQBとしてプレーする夢を捨てきれずその後グリーンベイパッカーズカンザスシティチーフスなどを放浪しましたが、結局日の目を見ることなく2011年に現役を引退しています。もし彼がWRとしてプレーしていたらひょっとしたら別の人生を歩んでいたかもしれません。

果たしてマクソーリーはQBとしてプロの世界に降り立つことが出来るでしょうか?

コンバインで株が上がった選手たち

ニック・ボーサ(Nick Bosa、元オハイオ州立大DE)

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QB以外なら総合1位候補筆頭と言われるのがニック・ボーサ。ロサンゼルスチャージャーズ所属のジョーイ・ボーサ(Joey Bosa)を兄に持つニック・ボーサは昨シーズン序盤に怪我で戦線離脱し、そのままカレッジキャリアを終えました。それはこのドラフトにすべてを捧げるために怪我のリハビリをしていたからですが、この一部からは批判の声が上がったボーサの決断はこのコンバインにて正当化されました。

【関連記事】オハイオ州立大DEボーサ、退部・退学へ

どのテストを見ても怪我から立ち直ったということを微塵も感じさせないパフォーマンスを見せ、前評判以上の仕上がりを披露。これならば今後は何もしなくても第1巡目で選ばれることはほぼ確実と言えそうです。

ギャレット・ブラッドバリー(Garrett Bradbury、元ノースカロライナ州立大、OL)

300パウンドを超える巨体ながら40ヤードダッシュで4.92秒を記録。ベンチプレスも34回を数えました。

アンディ・イザベラ(Andy Isabella、元マサチューセッツ大WR)

先に行われたシニアボウル(4年生だけがプレーできるオールスターゲーム)でその名を轟かせたイザベラでしたが、40ヤードダッシュ、20ヤードシャトル、3コーンドリルで好記録を連発。身長が5フィート9インチと小柄なのが気になりますが、スピーディーな彼の能力を欲しがるチームはいるはずです。

モンテーズ・スウェット(Montez Sweat、元ミシシッピ州立大DE)

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260パウンドあるスウェットは40ヤードダッシュで4.43秒を記録。これは255パウンド以上の選手としては最速のタイムだったそうです。WR陣と比べても9番目のタイムということで、巨漢に似合わぬ俊足であったことがわかります。シニアボウルでの活躍と相まってスウェットの株は急上昇中です。

デヴィン・ホワイト(Devin White、元ルイジアナ州立大LB)

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すでにカレッジゲームでその逸材ぶりを遺憾なく披露してきたホワイトですが、40ヤードダッシュで見せた4.42秒はLBとして今年最速だっただけでなく、歴代記録としても3本の指に入る好記録でした。第1巡目に指名されることが予想されていましたが、コンバインでの出来はそれをさらに確固たるものにしたのでした。

デヴィン・ブッシュ(Devin Bush、元ミシガン大LB)

上に挙げたホワイトは今季ドラフトでも注目のLBですが、ミシガン大出身のデヴィン・ホワイトも負けてはいません。40ヤードダッシュ、ベンチプレス、シャトル、コーンドリルといずれのテストでもブッシュはホワイトに肉薄する記録を叩き出しています。

ジャメル・ディーン(Jamel Dean、元アーバン大CB)

もともとオハイオ州立大の選手だったディーンは同校で一度ドクターストップをかけられた過去を持ちます。しかし転校先のアーバン大で復活し活躍。そして今回のコンバインでも全体で2位の40ヤードダッシュ(4.30秒)を記録。この数字だけでディーンのドラフトストックは飛び跳ねました。

アンドレ・ディラード(Andre Dillard、元ワシントン州立大OT)

OLとして5秒を切る40ヤードダッシュ(4.96秒)を皮切りに、より高い運動神経を要求されるシャトルランやコーンドリルでも好記録をのこしたディラード。彼の株も上昇中です。

ノア・ファント(Noah Fant、元アイオワ大TE)

TEが重用される傾向にあるNFLでアイオワ大出身のノア・ファントのポテンシャルは見逃せません。特にレシーバーとして持ち駒を増やしたいチームとしては、40ヤードダッシュを4.5秒で走りきったファントが目に止まったに違いありません。

ラシャーン・ゲリー(Rashan Gary、元ミシガン大DL)

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ゲリーの40ヤードダッシュのタイム、4.58秒は今年のコンバインでのDL陣で最速タイム。このタイムは現在NFLでもっともノッているDL選手、アーロン・ドナルド(Aaron Donald、元ピッツバーグ大→ロサンゼルスラムズ)が2014年のコンバインで記録したものよりも若干早いものです。ゲリーもドナルドと同じ道を歩むことになるでしょうか?

タイリー・ジャクソン(Tyree Jackson、元バッファロー大QB)

決してドライチ級QBとは言い難いですが、40ヤードダッシュで前述のマクソーリーに次ぐ2位の記録(4.59秒)を残したジャクソン。6フィート7インチ(200センチ)という長身、さらにはスキルセッションで見せた強肩も相まって彼の名前がコンバイン後によく聞かれるようになりました。

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