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2018年NFLスカウトコンバインの風景

2018年NFLスカウトコンバインの風景

NFLドラフトを目指す選手たちにとっての登竜門がスカウティングコンバインです。これは選手たちがプロチームのジェネラルマネージャー、コーチ、スカウトらの前で様々なテストを行って、自らの身体能力を披露する、いわばドラフト候補生の「見本市」であります。

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ベースボール・マガジン社 (編集)

もともとコンバインはドラフト前の選手たちを一堂に集めて身体検査していたのが始まりです。一部のチームが合同で行っていたこの身体検査にリーグ自体がのっかって現在のような一大イベントになりました。

【参考記事】NFLドラフトの歴史

これまでコンバインはインディアナ州にあるルーカスオイルスタジアム(旧RCAドームインディアナポリスコルツの本拠地)で行われていますが、今年も2月27日から1週間に渡り様々なテストが選手たちに課せられました。その種類はフィジカルテストから健康診断、さらにはメンタルテストにまで及びます。そのテストリストが以下のものです。

  • 40ヤードダッシュ
  • ベンチプレス(225パウンド/102キロのバーベルを何回上げられるか)
  • 垂直飛び
  • 幅跳び
  • 3コーンドリル
  • シャトルラン
  • ポジション別ドリル
  • 面接、など

これらのテストを行って各選手のベースラインを計るわけですが、たとえ注目の選手と位置づけされていなくても、このコンバインで名を上げてドラフトでの株をあげることのできる選手も少なくありません。招待されないと参加できないのがこのスカウトコンバインですので、参加できた選手はある程度の実績がある選手と言えますが、コンバインの結果で彼らのキャリアが変わると言っても言い過ぎではないのです。最も最後にモノを言うのは実戦での能力であることに変わりはないと思うのですが。

そんな中今年も4月に行われるドラフトに向け少しでも高順位でチームに指名されるよう、もしくはボーダーラインの選手がどこかしらから拾われるように選手たちはシーズン終了後からトレーニングに励んできました。コンバイン、そしてこの後に各地で行われる「プロデー(Pro Day、コンバインに呼ばれなかった選手たちのために各地で行われるスカウトイベント)」仕様のトレーニングを積む選手は多くいます。少しでも多くのベンチプレスを、少しでも早く40ヤードダッシュを走れるようにそれ専用のトレーニングに明け暮れる選手が山ほどいるわけです。実戦とはかけ離れていますが、ここでの記録がドラフトでの自分の評価に影響するとなれば、誰だって死に物狂いでコンバインやプロデーでベストの結果が出るように鍛錬するでしょう。

それでは今年行われたコンバインの様子をかいつまんでご紹介したいと思います。

シャキーム・グリフィン(元セントラルフロリダ大LB)

大学時代に名を馳せた選手たちが顔を連ねる中、今年のコンバインで話題をかっさらったのは間違いなくセントラルフロリダ大出身のLB、シャキーム・グリフィン(Shaquem Griffin)です。

まず度肝を抜いたのはベンチプレス。回数は20回でしたが、それを義手である左手を使ってこなしたのです。

また40ヤードダッシュでは227パウンド(106キログラム)のLBながら4.38秒という驚異的な数字を叩き出しました。LBとしては2003年以来の俊足タイムということでベンチプレスだけでなくここでも義手というハンディキャップを微塵とも感じさせないパフォーマンスを見せてくれたのです。

また面接や質疑応答のセッションでも多くの関係者を唸らせたグリフィン。たとえ片手が義手でもそれをバリアと感じずにこれまで努力してきた姿、そして彼のパフォーマンスが集まった候補選手の多くを上回ったことで彼の株はうなぎ上りに。本当にドラフト本番で指名されるかどうかはまだわかりませんが、一つ言えるのは彼はこのコンバインで数え切れないほどのファンを作ったということです。

セイクワン・バークリー(元ペンシルバニア州立大RB)

今期ドラフトで最も注目されている人物の一人にペンシルバニア州立大出身のRB、セイクワン・バークリー(Saquon Barkley)がいます。最終的にハイズマントロフィー授賞式にも呼ばれることはありませんでしたが、彼の前半戦での大活躍を見れば彼が今年のドラフトでドライチ選手となったとしてもなんら不思議ではありません。そしてそれを証明するようにコンバインでも周囲を唸らせる数字を残しました。その中でも彼の40ヤードダッシュは体重225パウンド(105キロ)ながら4.41秒と言う俊足振りを発揮。

これは昨年のトップRBである元オハイオ州立大のイゼキール・エリオット(Ezekiel Elliott、現ダラスカウボーイズ)の4.47秒を上回る数字であります。また垂直飛びでも41インチ(104センチ)としてここでもエリオットの32.5インチを大きく上回る結果を残しました。

ラマー・ジャクソン(元ルイビル大QB)

2016年度のハイズマントロフィー受賞者であるルイビル大出身QBラマー・ジャクソン(Lamar Jackson)は今の所QBよりもWRとしての方がプロチームに魅力を感じられているようですが、それは彼がQBとしては「小さすぎる」からだと言う話もあるそうです。しかし彼とほぼ同じプロポーションをもつQBに2011年にシンシナティベンガルズに指名されたアンディ・ダルトン(Any Dalton、元テキサスクリスチャン大)が上げられます。ダルトンは総合35位で選ばれただけでなく、シンシナティではそのまま7年間先発QBを務め9600万ドル(約100億円)の報酬を得るまでに至りました。ですからジャクソンが小さいからと言ってWRに転向すべきと言うのはちょっと合点がいかないです。

オーランド・ブラウン(元オクラホマ大OL)

OL出身で元オクラホマ大のオーランド・ブラウンは第1ラウンドで指名されることが予想されていますが、彼はベンチプレスのテストでなんとたったの14回しか記録を残せませんでした。いくらベンチプレスの回数がプレーの質に直接関わらないとは言え、この数字は痛い。と言うのも1987年以来スカウトコンバインでベンチプレスを14回以下しかできなかった選手は誰一人として1巡目で指名されていないからです。専門家の話ではこのことだけでブラウンが1巡目で選ばれることはないと話しています。1巡目とそうでないのでは契約金にもえらい差が出ますから、ブラウンとしては大きな痛手の何物でもありません。


コンバインではとかくベンチプレスの回数とか40ヤードダッシュのタイムだとかが取り上げられますが、もしコンバインから何かを学んだり、もしくは単に話のネタを探したいのならば面接(インタビュー)のセッションに注目して見てはどうでしょうか?

ベーカー・メイフィールド(元オクラホマ大QB)

元オクラホマ大QBで昨年度のハイズマントロフィー受賞者でもあるベーカー・メイフィールド(Baker Mayfield)はこのドラフトクラスで大目玉選手という訳ではありませんが、注目を集める選手であることに変わりはありません。彼の選手としての能力はいうまでもありませんが、プロチームたちにとっては彼のパーソナリティの方が気になるところのようです。すでにカレッジ時代に飲酒で逮捕されたり、相手チームのホームフィールドにオクラホマ大の旗を突き刺してみたり、相手チームを必要以上に挑発したりと、色々と騒ぎを起こした選手でもありました。チームとしては選手としての質だけでなく一人の人間としてのキャラクターにも注視したいところ。そんな中フィールド外でのやんちゃぶりがかつてのジョニー・マンゼル(Johnny Manziel、元テキサスA&M大)に似ていることから彼と比較されてしまう傾向があるのですが、当然ながらメイフィールドはこれを毛嫌いする訳です。コンバインでのインタビューでもマンゼルと自分は全く違う人間であるということを念を押していました。

また自分はこのドラフトクラスで一番正確なパサーだとか(昨年の数字からすればそれは事実ですが)、低いと言われる自分の背丈は関係ないだとか、自分なら苦戦しているフランチャイズ(=クリーブランドブラウンズ)を建て直すことができるとか、とにかくビッグマウスな訳です。その物言いが生意気だと言われていることも知っていますが、自身はそれを「生意気じゃなくて自分に自信があるというだけです」と言ってのけたり。チームとしては彼の言動を気に入る者もいれば、彼を指名するのを躊躇してしまうチームも出てくるのは頷けます。もちろんフィールド上で結果を残せれば誰も文句を言わないわけですが、そうでなかった場合のダメージ(金銭的・人的)は甚大です。メイフィールドが指名されるのは確実でしょうが、どのチームにそして何巡目に名前が呼ばれるのか早くも興味深々です。

ジェイリン・ホルムス/サム・ハバード(元オハイオ州立大DL)

今年のドラフト候補選手には数名のオハイオ州立大出身選手たちがいますが(毎年のことですが)、彼らには昔の傷をえぐるような質問が飛び交いました。昨年オハイオ州立大は当時2位だったペンシルバニア州立大に乗り込んで1点差の逆転勝利を挙げてプレーオフレースに復活した機運を見せていましたが、その翌週のアイオワ大戦でまさかの大敗を喫してしまいました。当時のこの試合を見れば「一体彼らに何が起こったんだ?」と思わざるを得ないほどの不甲斐なさで、せっかくペンステート戦で勝ったのにその勢いを自ら止めることになってしまったのでした。そして「何が起こったんだ?」という質問は何も私たちファンだけが持っていたことではなく、プロのスカウトたちもその疑問を抱いていたようで、今回のコンバインでは数人のオハイオ州立大出身選手にその質問が向けられたのです。DLのジェイリン・ホルムス(Jalyn Holmes)は「あの試合で一体何が起きたのか未だに私にもわかりません。その答えを未だに探していると言ってもいいです。アイオワ大はあの日彼らのキャリアの中でベストゲームを演出することができたのです。そして私たちはあの日自分たちのプレーを披露することができませんでした。」と曖昧な答えに。また同じくDLのサム・ハバード(Sam Hubbard)は「それは答えるのに非常に難しい質問です。」と苦い口調で話すばかり。まさか彼らも今更あの悪夢について語らされるとは思っても見なかったでしょうね。

アントニオ・キャラウェイ(元フロリダ大WR)

元フロリダ大のWRアントニオ・キャラウェイ(Antonio Callaway)は1年生時にフレッシュマンオールアメリカンに選ばれるなど将来を期待された選手でしたが、素行の悪さが目立ち、2017年度シーズンはチーム活動参加を禁止され1試合も試合に出場することはありませんでした。このシーズン後にチームは新監督として元ミシシッピ州立大のダン・マレン(Dan Mullen)氏を招聘しましたが、キャラウェイは4年生シーズンをスキップしてドラフト入りを表明していました。もちろんコンバインでは彼の素行の件を面接で尋ねられた訳ですが、彼は自分の素行の悪さのせいでジム・マクエルウェイン(Jim McElwain)氏を退陣に追い込んだと話しました。確かにフロリダ大は昨年喫した7敗のうち3敗は1TD以内差での敗戦でしたから、もしキャラウェイが出場できていればひょっとしたらチームは7勝6敗となってマクエルウェイン氏のクビも繋がっていたかもしれません。しかし、マクエルウェン氏は昨シーズン終盤に「家族らが脅迫されている」という根も葉もないことを発言して大学側の信頼を失って監督の座を追われたと見た方がしっくりきます。よってキャラウェイの発言はプロチームの関係者たちに少しでもいいところを見せたいという「盛られた話」なのかもしれません。


中には残念ながらコンバインで怪我をしてしまったり、ドクターストップをかけられてしまった選手もいたようです・・・。

ロナルド・ジョーンズ(元サザンカリフォルニア大RB)

小柄ながらそのクイックネスでフィールドを沸かせたサザンカリフォルニア大出身のRBロナルド・ジョーンズ(Ronald Jones)でしたが、コンバインでは40ヤードダッシュ中に太ももの肉離れを起こし戦線離脱。実は数週間前から太ももの張りに悩まされていたということで、前出のバークレーなど有能RBがひしめき合う今年のドラフトに向けコンバインでテストをやり切れなかったのは大きな痛手です。

ビリー・プライス(元オハイオ州立大OL)

今年のドラフトで1巡目に選ばれると目されているオハイオ州立大出身OLビリー・プライス(Billy Price)ですが、ベンチプレスのテスト中に大胸筋を断裂する重傷を追ってしまったそうです。自らの能力を披露する場で大怪我をするとは最悪のシナリオです。

マウリス・ハースト(元ミシガン大DL)

今季ドラフトのDL選手内でも高い評価を得ている元ミシガン大のマウリス・ハースト(Maurice Hurst)ですが、今回のコンバインでの身体検査に引っかかってしまったそうです。詳細は分かっていませんが、なんでも心臓に関わるコンディションだそうで、彼はその後の身体テストに参加できなくなってしまいました。今後より精密な検査を受けることになるのでしょうが、もしこのせいでプロへの道が閉ざされてしまったら、プロ選手になるという夢が打ち砕かれるばかりか、手に出来たはずの大金も水の泡になってしまう可能性も・・・。もっとも心臓の状態が思わしくないのであれば、むしろ早期に発見できてよかったという見方もできますが。それにしても不思議なのは、詳細がわからないとはいえドクターストップがかかるような心臓のコンディションをミシガン大のメディカルスタッフがなぜ見逃してきたのかということです・・・。


その他ではワイオミング大出身のQBジョシュ・アレン(Josh Allen)がこのコンバインで大きく株を上げたとか言われていますが、コンバインでのパフォーマンスがフィールド上でのパフォーマンスに直接結びつくかといったら疑問ですから、このコンバインで良い数字を残せたと言われる数多くの選手にしても、この結果だけに一喜一憂するのはどうかと思います。

どちらにしてもこれからドラフト本番までのあと約6週間、ドラフト候補選手たちの眠れない日々が続きそうです。

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