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アイビーリーグ、練習でのタックルを全面禁止へ

アイビーリーグ、練習でのタックルを全面禁止へ

近年アメリカではフットボールに限らずコンタクトスポーツ(選手同士のぶつかり合いがある程度許されている競技)において脳震とう(Concussion)についての議論が激しく行われています。事の始まりは既に引退したNFLの選手達が数年後から十数年後に脳に関わる様々な症状を訴え、最悪の場合には自殺してしまうなど深刻な社会問題にまで発展しています。

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ベースボール・マガジン社 (編集)

脳震とうに関しては以前から研究がなされており、その予防策としてヘルメットの改善やルールの変更、コーチや選手達への教育、スポーツ医学チームの再編など様々な角度からアプローチがなされて来ました。しかし脳への長期的な影響というのはしっかりと分かっていなかったのが実情で、近年現役時代に複数回の脳震とうを受けながらも当時設備が整っていなかったせいもあり、十分な治療を受けないままプレーし続けた選手達が今多くの症状に悩まされているのです。

そういった選手達がNFLに損害賠償の訴訟を起こしたりしたことによりスポーツにおける脳震とうがクローズアップされている昨今。NFLを筆頭に他のスポーツ業界も脳震とうとどう接していくか判断を迫られているのが現状です。

そんな中先週革新的な決断をアイビーリーグの8チームが下しました。それはアイビーリーグ全チーム一致で練習でのタックルを禁止するというものです。

そもそもアイビーリーグといってもあまりなじみが無いかもしれません。アイビーリーグはアメリカ北東部に位置する学問で有名なカンファレンスです。所属チームはブラウン大コーネル大コロンビア大ダートマスカレッジハーバード大ペンシルバニア大プリンストン大イェール大といった、まさにアカデミックで名門中の名門校が所属するFCSのカンファレンスです。唯一ユニークなのはアイビーリーグはFCSでありながらFCSのトーナメントには完全不参加なところです。つまりいかに強くてFCSのナショナルランキングでランクインしていたとしてもカンファレンスのスケジュールが終われば彼らのシーズンはそこで終わると言うところです。

そういったスポーツ、特にアメフトでは上位リーグであるFBSに取り立てて影響が及ぶようなことがないアイビーリーグではありますが、この「タックル禁止」というルールはたとえ下部チームのアイビーリーグの決定だとしても革新的と言わざるを得ません。

「タックル禁止」の最大の目的は練習中の怪我、とくに脳震とうを予防する事にあります。

脳震とうに付いての報告が増えた事によりNFLはシーズン中は練習時のコンタクトを制限するルールを設けました(トータルで14回のコンタクト練習が許されています)。そして多くのカレッジチームたちがこのNFLのルールに準ずるものを制定しています。しかし今回のアイビーリーグのようにタックルを一切排除するというのはなかなか決断出来ない案件です。そして驚くべき事はこの決断を促したのは何を隠そう各チームのヘッドコーチ達なのです。

この決断をリードしたのがダートマスカレッジのヘッドコーチ、バディ・ティーヴェンズ(Buddy Teevens)監督です。既に2010年からタックルを練習から排除しましたが、これによって脳震とうの受傷者数が格段に減っただけでなく、その他の怪我の数も減りそして面白い事にティーヴェンズによると選手の試合時でのタックルのテクニックは逆に良くなったと言っています。昨年ダートマスカレッジは練習時にダミーだけでなくなんと「タックルロボット」なるものも導入して話題になりました。

タックルを禁止して以来、ダートマスカレッジはこれまで全て勝ち越しシーズンを送っており、昨年度はハーバード大と並び同時優勝を飾りました。つまりタックルしなくても結果が出ていると言う訳です。

アイビーリーグのコーチ同士でのこの決定はまだ仮のもので、今後所属チームの体育局長、そして大学長の同意が得られなければなりませんが、ヘッドコーチ同士が意見をすりあわせているのですから、よほどの事がない限りこのルールは正式に制定される事でしょう。

この決定が上位リーグであるFBSのチームにすぐ影響するとは思いませんが、分かっていても誰も出来なかったことを8人のコーチが全会一致で決断したと言う事実が奇蹟に近いです。

確かに前述の通り他のカンファレンスもコンタクト練習の数を制限するポリシーを導入して来ています。Pac-12は2010年にシーズン中は1週間にコンタクト練習出来るのは2度のみと定めています。Big 12も同じく1週間に2度のコンタクト練習を許していますが、その2度のうち1度は実際の試合も加味されるため実際練習出来るのは1週間に1度のみです。

他のFBSチームのコーチもこのアイビーリーグの決定に一定の理解を示していますが、やはり完全にタックルの練習を排除してしまうのにはためらいを隠せないようです。そういったコーチの主な言い分は「練習中にタックルしなかったら試合で正しいタックルを出来なくなり逆に怪我が増える」というものです。ただ無駄なコンタクトは避けたいと言うのはどのコーチも心の片隅に思っているようです。

ティーヴェンズ監督はダートマスカレッジでタックル禁止を早くも導入した事により当時から様々な形で批評・批判されて来たそうです。しかし彼はそんな時こう答えています。

「もし我々がコーチの方法を変えなければ、(脳震とうを予防するために)フットボール自体が無くなり我々はコーチングすることすら出来なくなってしまうのです」

今後この決定に追随してくるカンファレンス・チームはいるでしょうか?

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