新レッドシャツルールの影響

カレッジフットボールでは今季から新たな「レッドシャツ(Red Shirts)」ルールが制定されました。この新制度が出場機会を求める選手たちの希望となり、コーチたちを悩ませる頭痛にもなり始めています。

「レッドシャツ」制度とはなにか

カレッジフットボール選手には基本的に4年間のプレー資格が与えられています。しかしまだ成長過程の選手や上級生が詰まっていて出場チャンスが訪れないような選手たちは、出場機会に恵まれないままプレー資格を無駄に使ってしまうということも考えられます。この状況を救うために、敢えて予め選手をシーズン中にプレーさせない代わりにその分のプレー資格を後回しにできる制度のことを「レッドシャツ」といいます。その多くは1年生時に宣言されますから、多くて5年間チームに所属することが出来るということになります(試合に出場できるのは4年間)。

たまに耳にする「レッドシャツシニア(4年生)」とは過去のある時点でレッドシャツとなったためにチーム所属5年目の4年生となった選手のことを言います。「レッドシャツフレッシュマン(1年生)」も同じようにチーム在籍2年目でも1年生扱いされる選手のことを指します。その対をなす言葉として「トゥルーフレッシュマン(真の1年生)」がありますが、これは所属1年目からレッドシャツ制度を使用していない、プレー資格も学年も本当の意味での1年生という意味の言葉です。

レッドシャツ制度は選手の育成や戦力確保のためにほぼ全チームで使用されている制度ですが、近年コーチたちはレッドシャツ選手が試合の実戦経験を積めないことを理由にNCAA(全米大学体育協会)にルール改正を求めてきました。これまでは試合に少しでも出てしまうとプレー資格を使用したことになってしまい、例えば実質3番手のレッドシャツQBがいたとして、試合中に1番手と2番手のQBが相次いで怪我で退場しやむを得ずこのレッドシャツQBを投入したとしたら、この選手のプレー資格はこの時点で使用されたという扱いになってしまいます。これがシーズン最終戦にでも起こってしまったとしたら、その時点までプレー資格をセーブしてきたことが無駄になってしまうというシナリオもあり得るわけです。

レッドシャツルールの改正

この状況を打破するルール改正を長いこと求めてきたコーチたちの声にNCAAはついに耳を傾け、今年から4試合までならレッドシャツ扱いでも試合に出れるという、超画期的な新ルールが制定されたのです。

【関連記事】転校ルールとレッドシャツルールが改正へ

当初は試合出場の機会がないような選手が、既に試合の結果が決まってしまったようなゲームでプレーさせることで実戦経験を植え付けるために使われたり、危機的状況でプレーさせてもレッドシャツ資格を破棄しなくてもいいようなふうに使われたりすることが予想されていました。現に今季そのように使用しているチームも多く居たことでしょう。

しかし、一方でシーズン途中で先発の座を下級生に奪われてしまったベテラン選手(上級生)たちが4試合プレーした後に出場機会を求めて他のチームへ転校するという現象が起きつつあります。それは先週で4試合を消化したこの週に顕著に見られる様になりました。

つまり4試合プレーしてもその後にレッドシャツを宣言すればその翌シーズンにもう一年プレー資格をとっておくことが出来るわけです。もちろん同じチームに居残ることを前提にこの制度を利用するチームや選手はいるでしょうが、そうではなく転校して新天地を探すという選手もちらほら現れているというのです。

新ルールの影響

アラバマ大の昨年までの先発QBであり、今年から2年生のトゥア・タガヴァイロア(Tua Tagavailoa)にその座を奪われたジェイレン・ハーツ(Jalen Hurts)がこの制度を利用して今シーズン中にチームを離れるのではないかと噂されてきましたが、現在3年生のハーツはこの12月に大学の学士号を修得予定ですので、この学士号を獲得してから転校するのではないかと言われています。それに彼はチームプレーヤーとしても知られており、自分のプレー資格を他のチームで使うためにシーズン途中で退部するようなことはしないのではないでしょうか。

一方、クレムソン大では先週先発ケリー・ブライアント(Kelly Bryant)に代わって途中出場した1年生QBトレヴァー・ローレンス(Trevor Lawrence)が今週末のシラキュース大戦で先発出場することがダボ・スウィニー(Dabo Swinney)監督によって明らかにされました。この決断を日曜日に聞いたブライアントはスウィニー監督と腹を割って話をしたそうですが、月曜日と火曜日のチーム練習を休んだ翌日の今日(水曜日)、ブライアントはクレムソン大から転校する決断を下したのです。4年生のブライアントは今週1度でもフィールドに経てば今年でカレッジキャリアは終わってしまいます。つまり先に述べた新レッドシャツルールを利用してどこか別のチームで来年プレーしようとしているわけです。

【関連記事】クレムソン大QBブライアントが転校へ

ローレンスがクレムソン大の将来を担うQBであることは承知の事実ですが、ブライアントが抜けるせいで彼らのバックアップQBの状況は極めて厳しくなります。もしローレンスが活躍した先週のジョージア工科大戦がまぐれだったら?もしローレンスがシーズン絶望の怪我でも負ったりしたら?新しいレッドシャツの影響でクレムソン大は今非常に厳しい現実を突きつけられているのです。

ただなぜスウィニー監督はこの時期にこのような決断を下したのか・・・。1年生のローレンスを出場させるために4年生ブライアントから先発の座を奪うことがどれだけ彼のプライドを傷付けることになるのか、そしてその結果ブライアントがトランスファーすると言い出す可能性が出てくる、それは想定の範囲内だったと思うのです。

にも関わらずこのような苦渋の選択をしたのは、ひょっとしたらコーチ陣がブライアントを飼い殺しにするのではなく、敢えて5週目に突入する前に先発交代のニュースを伝えることで、功労者でもあるブライアントにチームに残るか、もしくは他チームでセカンドチャンスを狙うかという選択肢を与えた・・・という親心があったのかもしれません。完全に憶測でしかありませんが。

予備軍達

他にも既に何人か同じように5試合目を待たずに転校することを表明した選手たちがいますが、その予備軍もまだ控えていることでしょう。

例えばノートルダム大のQBブランドン・ウィンブッシュ(Brandon Wimbush)。現在4年生の彼は昨年からの先発QBでしたが、先週のウェイクフォレスト大戦では3年生のイアン・ブック(Ian Book)が先発し51点という大量得点を獲得する手助けをしました。おそらくブックがこのままウィンブッシュから先発の座を奪うことになるでしょうから、そうなると今4年生のウィンブッシュはブックのバックアップとして過ごすか、退部して来年別のチームでプレーするかを選択しなくてはならなくなります。

またマイアミ大はQBマリク・ロズィアー(Malik Rosier)をベンチに下げンコシ・ペリー(N’Kosi Perry、表記はンコシかウンコシで迷いましたが、ンコシと聞こえるのでこっちを採用します)を先発起用することを決めました。ロズィアーは現在レッドシャツ3年生なのでもうレッドシャツは使えませんが、彼もシーズン後に進退を考えなければならなくなるかもしれません。

このように新レッドシャツルールがいいことばかりをもたらすわけではなく、特にスター選手をベンチに下げるような大きな決断をくださなければならないとき、そのタイミングも大事になってきます。またトランスファーしてプレー資格を1年増やさせないために、その選手を5試合以上起用した後にロースターを変えるようなことがあれば、それはそれで裏切り行為とも取られかねません。

今後、コーチ陣たちは選手たちのマネージメントにおいて新たな戦略を迫られることになりそうです。

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