NCAAの非情な決断

またトランスファー絡みのニュースです・・・。

カレッジフットボールにおいてトランスファーといえば転校のことを指します。NCAAは選手が転校してチームを鞍替えすることを容認しています。そしてトランスファーする理由は様々でしょうが、基本的にトランスファーした選手は新天地での最初のシーズンは試合に出場できない事になっています。

この例外が2つ。1つはその選手がすでに学位を取っていた場合。学位を取得し卒業した後もプレー資格をまだ保有している選手は転校先で即試合出場が可能です。卒業に必要な単位を3年間で取り終えてしまった選手や、在校中のいずれかの年にレッドシャツを宣言しプレー資格を温存したまま卒業を迎えた選手などがこの制度を利用できます。最近ではアラバマ大ジェイレン・ハーツ(Jalen Hurts)が大学院生としてオクラホマ大へ転校していきました。当然学生でなければいけませんから、このケースを使う選手は転校先でもクラスを取らなければなりません。

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そしてもう1つはNCAAからの特例が認められた場合です。このケースが認められるのは簡単ではありませんが、転校しなければならない相当な理由がある場合にだけ救済処置としてNCAAが選手の即時プレー可能を認める場合も稀にあります。

簡単に即プレー可能にしてしまうとトランスファーを決意する選手が増えることが予想され、カレッジフットボールのフリーエージェント化にも繋がりかねないためこのようなルールが定められています。が、この特例というのも実際明言化はされておらず、全てはNCAAのさじ加減次第というのが現状です。

そんな折、転校先で即時プレー可能となるよう申請していた選手のケースが却下されたというニュースが飛び込んできました。ジョージア大からイリノイ大へ転校したTEルーク・フォード(Luke Ford)のケースです。

今季2年生になるフォードは今オフに出身州であるイリノイ州の旗艦大学でもあるイリノイ大へトランスファーしました。その理由は年老いて寿命幾ばくもないおじいさんのために地元に戻ってきたのです。

おじいさんが生きているうちに孫の晴れ姿を見せたい。しかしジョージア大までの移動は体力的に厳しい。だからフォードはおじいさんが元気なうちに自分のプレーを見てもらえるようにイリノイ大へ移ってきたのです。しかし今のルールでは2019年度は試合に出ることは不可能で、彼のプレー資格が解禁となる2020年度シーズンまでにおじいさんが健在かどうかわからないため、今年プレーさせてもらえるようにNCAAに懇願していたのです。

NCAAはこのリクエストを4月の時点で却下。イリノイ大は上告しセカンドチャンスを狙いましたが、2度目のリクエストもあえなく門前払いを食らってしまい、これで結審となったためフォードの願いは叶わなくなってしまいました。

NCAAの見解はフォードのおじいさんはイリノイ大から半径100マイル(約160キロ)以内に住んでおらず、しかも核家族(2世代まで)に数えられないために特例を満たすに至らなかったというものだそうです。

しかし先にも挙げたようにこの特例処置の可否を決める要項は明言化されておらず、フォードのケースが却下されたのには驚きを隠しえません。

フォードは2019年ジョージア大で先発TEとなることが濃厚とされていました。ナショナルタイトルも十分に狙えるチームで先発出場できるのにもかかわらず、敢えて強豪とは決して言えないイリノイ大へ移ったという事実は明らかに自己の利益のため、つまり出場機会を求めるためのトランスファーとは考えづらいです。すなわち寛大な措置をしても良かったのではないかと思うのです。

そこで頭を過るのは今年始めに特例が認められた2つのケースです。

1つはジョージア大QBジャスティン・フィールズ(Justin Fields)。昨年同チームで1年生だったフィールズは2018年度リクルーティングクラスでも3本の指に入る逸材でした。しかしジョージア大にはすでにジェイク・フローム(Jake Fromm)という確固たる先発QBが健在で、フィールズは彼のバックアップ及びトリックプレーの際に登場したほどで出場チャンスは思ったよりも巡ってきませんでした。

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フロームは来年3年生で最長であと2年間はジョージア大に所属することとなり、こうなるとフィールズは最悪自身が4年生になるまで先発の座を奪えないかもしれないという状況に陥りました。おそらく自身がプロへ行くためならこの状況は自分に不利だと考え、転校を決意したのでしょう(あくまで個人的な憶測に過ぎませんが)。

フィールズの転校先、それは名門オハイオ州立大でした。オハイオ州立大は昨シーズン後先発QBだったドゥウェイン・ハスキンズ(Dwayne Haskins、現ワシントンレッドスキンズ)がプロ入りのためにチームを離脱することとなり、ここに空席ができたのです。そこへフィールズが滑り込もうと新天地に決めたのでしょう。しかし今年2年生となるフィールズは通常のトランスファールールに則れば2019年度シーズンは出場することは出来ません。そこで彼らはNCAAに特例を認めてもらうよう申請。

彼が特例を申請する理由はジョージア大で人種差別にあったからだということ。確かに昨シーズン序盤にファン(野球部員。フィールズも実は野球部員だった)がスタンドから人種差別発言をフィールズに向けて発したという騒動があったにはありました。しかしその後もそのようなフィールズが危機を感じるという状況が続いたという報道はありませんし、NCAAがこれだけでフィールズに特例を許すとは考えられないと思いましたが、NCAAはフィールズにオハイオ州立大での即時プレー可能を許可したのです。おそらく人種差別という非常に繊細な理由からことを荒立てたくなかったNCAAの決断だったのでしょう。

そしてもう1ケース。これはオハイオ州立大のQBテイト・マーテル(Tate Martell)です。彼はハスキンズのバックアップを2年務め、いよいよ彼の出番かと言う矢先にフィールズの転校の噂が立ち、当初は先発争いレースに真っ向から立ち向かう発言をしていましたが、程なくしてトランスファーポータルに登録。そしてその結果マイアミ大へ転校していってしまいました。

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彼のケースはおそらくフィールズに先発の座を奪われると危惧し、このままではプレー機会を逃してプロ入りに不利だと考えて別の地でのプレー機会を探った結果なのでしょう。しかし、マーテルにも同じくトランスファールールは適用されるはずでしたが、彼もまたフィールズと同じく即時プレー可能となるようにNCAAに申し立てをしました。その理由は彼をリクルートしたアーバン・マイヤー(Urban Meyer)監督がシーズン後に引退してしまったため、だそうです。この理由は流石にないだろうと思いましたが、なんと再びNCAAはマーテルのケースにもオーケーを出したのです。これには流石に私もビビりました。

フィールズにしてもマーテルにしてもトランスファーした背景にはプレー機会を得るためという利己的な狙いが見え見えです。にもかかわらず彼らに甘かったNCAAの決断には多くの批判が集まりました。

例えば過去にはベイラー大ミシシッピ大でコーチのスキャンダルでゴタゴタが起き、その結果被害を被った選手たちにこの特例が適用されたケースは有ります。この場合は選手たちにとっては防ぎようのない全く関係ない事件の火の粉をかぶったわけですから、これらのケースにNCAAが救いの手を差し伸べるのは非常によく分かる話です。フィールズとマーテルのケースとは明らかに一線を画しています。

それを考えると今回のイリノイ大のフォードの一件は十分に特例を認められるようなストーリーラインがあると思うのですが、NCAAは無情にもノーを突きつけたわけです。ただでさえ嫌われ者のNCAAなのですから、せめてフォード家族に温情をかけてあげても良かったのではないかと思わずに入られません。

イリノイ大のロビー・スミス(Lovie Smith)監督も「ルークはフットボールのためではなく家族のためにイリノイに帰ってきたのです。だから特例が認められる可能性は高いのではないかと考えています」と話していましたからNCAAが却下したことにはショックを受けているのではないでしょうか。

いずれにしてもこのトランスファーに関する特例処置、もう少しトランスペアレントで首尾一貫していてほしいものです。

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