2019年度ナショナルサイニングデー終わって・・・

2019年度ナショナルサイニングデー終わって・・・

カレッジフットボールにおいて切っても切り離せないのがリクルーティングです。リクルーティングとは大学コーチたちが高校生の未来のカレッジフットボーラーたちを勧誘する一連の行為のことを言います。プロリールであるNFLと違い、カレッジフットボールでは長くても同じ選手を囲うことができるのは5年まで。ですからチームの戦力を高い位置で保つためには将来のスター選手候補を毎年高校から引き抜かなければならない訳です。そういった意味ではリクルーティングはチームの育成において最重要部門であることは間違いありません。どんなに腕の立つコーチでも選手が元々持っている才能を引き伸ばすには限度があるからです。

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ベースボール・マガジン社 (編集)

ですからコーチたちは現役の選手たちを指導するのと同じ、もしくはそれ以上の時間をリクルーティングに充てています。シーズン中でも高校の試合が行われる金曜日には地方へ足を運び、大学の試合がある土曜日当日に戻ってくるとかそういうこともしょっちゅうです。それゆえにリクルーティングコーディネーターというポジションすらあるぐらいです。

そんなコーチたちの草の根運動が身を結ぶのが「ナショナルサイニングデー(NSD)」です。毎年2月の第1水曜日に設定されているこの日、全国に散らばる未来のカレッジフットボーラーたちが進学先を公表し、「ナショナル・レター・オブ・インテント(National Letter of Intent、NLI)」にサインをする訳です。これによりこの選手はスカラシップ(スポーツ奨学金)を受け取る代わりにサイン先の大学に進学することが義務付けられます。

NSDでは特に注目される「ブルーチップ」と称される4、5つ星リクルートがどこの大学に進学を決めるかにメディアの焦点が集まります。そんな選手たちは大抵高校の体育館や多目的ホールなどに地元メディアを集めて大々的に発表会を行います。高校にとっては卒業生が強豪校にスポーツ奨学金で進学することに大変な意味を見いだしているんですね。

個人的にこの「ショー」を見るのは嫌いなのですが(たかだか高校生のために騒ぎ過ぎだと感じるため)、やはりどのチームがどれだけの才能ある選手を入部させることができたのかは、そのチームの将来性を占う上で興味はあります。単純計算でいえばより多くの5つ星選手を保有チームが将来成功する可能性が高くなるからです。まあ5つ星と言われながらカレッジで埋れてしまう選手もいますが・・・。

従来ならばこのNSDがリクルーティングの集大成と言われ、大いに盛り上がる日でありました。と言っても実際にはNSDが進学先を公表できる解禁日ということで、NSDまでに決心できなかった選手はこの日以降でもサインはできるのですが、リクルーティング期間が長いので95%のリクルートたちはこの長いプロセスを終わらすためにNSD当日に進学先を公表するのです。

しかし2017年度からNSDを前倒しにできる「早期サイニングピリオド(Early Signing Period)」なる制度が始まりました。これは進学先をすでに決めていて2月のNSDまで待ちたくない高校生たちのために設立されたもので、12月の第4週目に3日間予定されました。2017年の初年度はこの制度を利用して大半のリクルートたちがこの早期サイニングピリオド中に進学先を決めました。そして2018年度も同じように多くのリクルートたちが書類にサインをしてこの長きプロセスに終止符を打ったのです。

【関連記事】早期サイニングピリオド【2019年度リクルーティング】

高校2年時、もしくはそれより前から大学からの勧誘を受け続けている高校生としてはこのリクルーティングプロセスは労力を費やすものです。高校生としての学業を続けながらフットボールの練習(高校の場合は複数の部を掛け持ちしているのがほとんどですからそれ以外のスポーツの練習も)、そしてリクルーティングプロセスをこなさなければならないからです。ですからもう腹を決めている高校生たちは2月のNSDまで待つ必要がないわけで、そんな彼らは「早期サイニングピリオド」でサインをして肩の荷を下ろしたいんですね。

そんな早期サイニングピリオドのせいでこれまでのような注目を浴びなくなってしまったNSD。しかしそれでも早期サイニングピリオド中にサインをしなかった注目選手は残っていたわけで、それらの有力選手がNSDにどのチームにサインするかに関心が集まっていました。

正直どのリクルートがどのチームに行ったかを逐一全てカバーできるほど時間がない(そしてその気もない笑)ので、ここでは先日のNSDが終わった時点でのリクルーティングランキングをご紹介したいと思います。

(参考:247sports.com

2019年リクルーティングランキングトップ15

順位

チーム

★★★★★

★★★★

★★★

1

アラバマ大

2018年:5位

3

23

1

1

アラバマ大

2018年:5位

★★★★★

★★★★

★★★

3

23

2

ジョージア大

2018年:1位

5

15

4

2

ジョージア大

2018年:1位

★★★★★

★★★★

★★★

5

15

4

3

テキサス大

2018年:3位

2

15

7

3

テキサス大

2018年:3位

★★★★★

★★★★

★★★

2

15

7

4

テキサスA&M大

2018年:17位

2

14

11

4

テキサスA&M大

2018年:17位

★★★★★

★★★★

★★★

2

14

11

5

ルイジアナ州立大

ルイジアナ州立大

2018年:15位

3

11

10

5

ルイジアナ州立大

ルイジアナ州立大

2018年:15位

★★★★★

★★★★

★★★

3

11

10

6

オクラホマ大

2018年:9位

3

13

8

6

オクラホマ大

2018年:9位

★★★★★

★★★★

★★★

3

13

8

7

オレゴン大

2018年:13位

1

11

14

7

オレゴン大

2018年:13位

★★★★★

★★★★

★★★

1

11

14

8

ミシガン大

2018年:22位

2

14

10

8

ミシガン大

2018年:22位

★★★★★

★★★★

★★★

2

14

10

9

florida-logo-500

フロリダ大

2018年:14位

O

17

8

9

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フロリダ大

2018年:14位

★★★★★

★★★★

★★★

O

17

8

10

clemson50

クレムソン大

2018年:7位

1

12

15

10

clemson50

クレムソン大

2018年:7位

★★★★★

★★★★

★★★

1

12

15

11

auburn_50

アーバン大

2018年:12位

2

12

7

11

auburn_50

アーバン大

2018年:12位

★★★★★

★★★★

★★★

2

12

7

12

tennessee50

テネシー大

2018年:21位

2

11

10

12

tennessee50

テネシー大

2018年:21位

★★★★★

★★★★

★★★

2

11

10

13

psu_50

ペンシルバニア州立大

2018年:6位

1

17

5

13

psu_50

ペンシルバニア州立大

2018年:6位

★★★★★

★★★★

★★★

1

17

5

14

オハイオ州立大

オハイオ州立大

2018年:2位

3

9

5

14

オハイオ州立大

オハイオ州立大

2018年:2位

★★★★★

★★★★

★★★

3

9

5

15

notre-dame-logo-100

ノートルダム大

2018年:10位

O

16

6

15

notre-dame-logo-100

ノートルダム大

2018年:10位

★★★★★

★★★★

★★★

O

16

6

 

リクルーティングランキングが即チームの戦力ランキングとなるわけではありません。もちろん4〜5つ星選手が多いほうが戦力が増すと考えるのが自然の流れではありますが、それが即座にチームの成績に繋がるわけではないのです。選手たちがポテンシャル以上のものを大学で出しきれるか、怪我してしまわないか、また選手をリクルートしたコーチ陣が異動または退陣してしまわないか、そういった様々な要素によってチーム力は変わってくるからです。

しかしながら質のいい選手が多いほうが将来的な見通しが立つことも確かです。そういった中でリクルーティングランキングが示してくれるもの・・・それは現状でのカレッジフットボールのトレンドではないでしょうか。

最低でも3年間はその大学で過ごすことになるそれぞれの選手たちはその大学生活でいかに自分がその次のステップ、つまりNFLに近づけるかを考えることでしょう。NFLのファームのような色が濃くなってきている近年ではなおさらのことです。選手たちは進学先でいかに活躍できるか、そして彼らが指導を請うことになるコーチがどれだけ自分をプロ仕様に育ててくれるかを吟味することだと思います。

ですから進学先のここ最近の勢い、どのような監督がいるのかなどがリクルートたちが進学先を絞るのに大きな影響を及ぼします。そしてそれがレクルーティングランキングにも現れているのです。

昨年7年ぶりにリクルーティングランキングの首位の座を明け渡したアラバマ大はいよいよそのダイナスティーも終焉に近づいたかと囁かれたものです。しかし2018年度シーズンは決勝戦でクレムソン大に破れたものの、そこにたどり着くまで圧倒的強さで「アラバマ大、ここにあり」という存在感を見せつけてくれました。その結果今年のリクルーティングランキングでは再び首位奪回を果たしています。

またアラバマ大以下でミシガン大クレムソン大を除く10位までのチームは監督が2年目から3年目というチーム。つまり新監督を迎えてそれぞれのチームがリクルーティングで大成功しているということになります。それはリクルートたちが新体制となったそれぞれのチームに大きな魅力、そして将来性を感じたからこそ多くの高校生たちが進学を決めたのであり、それがランキングに如実に表れています。また10位以内には入らなかったものの、12位のテネシー大の昨年からの躍進(2018年は21位)は目覚ましいです。それは今年2年目のジェレミー・プルイット(Jeremy Pruitt)監督体制に大きな魅力を感じたリクルートたちが多くいたという証拠でしょう。

一方逆にランクを下げたチームは現時点の戦力よりも将来的な意味で不安、もしくはリクルートたちが疑念を持ったために進学をためらったのではないかと読み取れます。その最たるチームはオハイオ州立大です。去年はランキング2位だったのが今年は14位と大きく順位を落としています。それは昨年度で監督から退いた名将アーバン・マイヤー(Urban Meyer)氏に代わり新監督に就任したライアン・デイ(Ryan Day)監督新体制に自分のカレッジフットボール人生を賭けることをためらった高校生が多々いたからだったとしても不思議ではありません。

【関連記事】オハイオ州立大マイヤー監督が引退へ

また昨年6位だったペンシルバニア州立大が13位に落ちたのも見逃せません。2年前はスターRBセイクワン・バークリー(Saquon Barkley、現ニューヨークジャイアンツ)、そして昨年度はQBトレース・マクソーリー(Trace McSorley)を擁して期待度は上がったもののその期待度を上回ることは出来ませんでした。チームの勢いが停滞している感じも否めないペンシルバニア州立大を避けたリクルートも居たかもしれません。

さらにリストにはありませんが、2018年に4位だったサザンカリフォルニア大は今年は20位にまでランクを落としています。昨年負け越し、さらにオフシーズンにはクリフ・キングスバリー(Kliff Kingsbury)氏をOCに起用するもNFLアリゾナカーディナルスの新監督に就任するために逃げられてしまい、クレイ・ヘルトン(Clay Helton)監督の行く末には暗雲が立ち込めています。すでに現役選手も数名転校を表明していますし、さらには早期サイニングピリオドで進学を決めていたにもかかわらずそれを破棄して他校に入学することにした選手もいるくらいです。その不透明さがリクルーティングランキングにも反映されています。

ですからこのリクルーティングランキングは現時点での各チームの将来性を読み取るにはもってこいのツールだと言えそうです。NSDで笑った者、泣いた者、たくさんいると思いますが、果たしてこの結果が将来的にどう影響を及ぼすか・・・。それは彼らが育つ2、3年ごまで待たなければならないかもしれませんが、少なくとも現在のカレッジフットボールのトレンドを計り知るには十分な情報ですね。

【フルリストはこちら

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