カンザス州立大でのトランスファーを巡る騒動

最近当サイトではアラバマ大ニック・セイバン(Nick Saban)監督、ミシガン大ジム・ハーボー(Jim Harbaugh)監督、フロリダアトランティック大レーン・キフィン(Lane Kiffin)監督と言った、おなじみの人物に混じってカンザス州立大ビル・シュナイダー(Bill Snyder)監督のことを取り上げる事がちょくちょくありました。それは個人的に彼のような昔気質のコーチが好きだということもあるのですが、今回は彼に関してちょっとネガティブなニュースを紹介しなければならなくなりました。

サットンのトランスファーがブロックされる

カンザス州立大では最近来シーズン2年生となるWRコーリー・サットン(Corey Sutton)がチームを脱退してトランスファー(転校)するという話が持ち上がっていました。選手がチームから出て行くという話は良く有る話ですが、なぜ話題になったのかと言うと、サットンが転校先でスカラシップ(スポーツ奨学金)を貰う為にはカンザス州立大からスカラシップをリリースされなければならないのですが、これをシュナイダー監督が頑に拒んだというのです。

シュナイダー監督がサットンをリリースしなかった理由は、サットンがカンザス州立大でスカラシップを受け取れるのは4年間チームでプレーすると約束したからであり、その約束を守らずにチームを出て行くのであれば、それなりの代償を支払わなければならない、ということらしいです。

シュナイダー監督の失言

フラストレーションが溜まったサットンはこの現状をツイッターで露わにし、それが元で全米のニュースとなったのですが、当初シュナイダー監督は彼の決断を変える事は有りませんでした。しかし後日のインタビューで彼はつい口を滑らせ、過去にサットンが薬物検査で2度も陽性反応を示していた、というかなりセンシティブなプライベートの情報を話してしまったのです。

紳士的で多くの人から尊敬されてきたシュナイダー監督ですが、さすがにこのコメントには批判が沸き起こってしまいました。いくらヘッドコーチでも薬物検査の結果のような情報を口にするのは一線を画している、と。

そもそもなぜサットンがトランスファーしようとしたかというと、彼がリクルートされて入学した時、WRコーチからサットンが1年目から試合に出場出来るとさんざん言われてきたにもかかわらず、いざシーズンが開幕するとこのコーチから『シュナイダー監督は1年生を試合に使いたがらない』と言われ、結局昨年度は10試合に途中出場するもたったの4捕球に留まりました。そしてサットンは「裏切られた」と感じ、カンザス州立大を出る覚悟を決めたのです。

サットンがリリースされる

結局このシュナイダー監督の失言により全米中で批判の声が高まった為、監督はすぐさまこの発言を謝罪。そしてサットンを正式にリリースする事を決めたのでした。

「コーリー、並びに彼の家族に対し、私が先日センシティブでプライベートな情報を発してしまったことをお詫び致します。私の発言は明らかに行き過ぎたものであり、大変後悔しております。」とはシュナイダー監督。

この様に選手がトランスファーを決めたのにも関わらず、所属チームがリリースしない為に転校先でスカラシップを授与されないというケースは珍しい事ではありません。ちょっと前にもマイアミ大で似たようなことが起きていましたから。

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トランスファーを巡る問題

ヘッドコーチは複数年契約を結んでも別のところでいいオファーが有れば契約途中であるにも関わらずチームを出て行く事は良く有ります。それは彼がリクルートしてきた選手達を置き去りにすると言う、言わば「裏切り行為」でも有る訳です。一方で今回のサットンのように選手は新天地にトランスファーする事を制限されるケースもあります。たしかに入部した時に奨学金をもらってそのチームでプレー出来るというのは特権です。それだけにコーチ陣はその選手にチームにいてもらいたいと思う事でしょう。だからといって選手がトランスファーしたいと思った時、彼らの行き先を制限するというのはどうなのでしょうか?トランスファーしたいと思うには相当な理由がある訳で、それを決めたというのは大変な決断だったに違い有りません。

リリースされなくても転校はできます。しかしアメリカの大学の学費は年々膨れ上がるばかり。スカラシップ無しでは学業を続けられないという選手は山ほどいます。だから全所属チームから正式にリリースされて転校先でもスカラシップを貰えるようにするのは選手並びにその家族にとっては重大なことなのです。

ここはシュナイダー監督は是非寛大になって欲しかった。77歳の名将なのですから小さい事にこだわらずに・・・。ひょっとしたらこのようなケースを許せば他の選手達も気に入らなければ転校しよう、というアイデアを安易に行使してしまう事を恐れてサットンを「人身御供」として使いたかったのかもしれません。分からない話でもありませんが、結局こうしてシュナイダー監督は得るものは何も無かったのですから。