母校に対する「嫌悪感」

収容人数10万2455人(全米5位)というテネシー大ネイランドスタジアム。私も一度だけ行ったことがありますが、このスタジアムがスクールカラーのオレンジ一色に染まるとそれだけでアウェーチームは圧倒されてしまうくらいのパワーを持ったスタジアムです。そしてそこを埋め尽くすテネシー大のファンは全米でも指折りの熱狂ファンとして知られており、彼らのチームへの愛情は人一倍です。

ただそれだけにチームが不調な時は嫌が応なく厳しい声が飛んできます。愛ゆえの鞭、ということでしょうか。ただそれが常軌を逸している、と感じている元選手もいるようです。

2006年から2009年まで同チームでQBとしてプレーしたジョナサン・クロンプトン(Jonathan Crompton)は大学入学時には全米でもトップQBリクルートとして大きな期待を背負ってノックスビルのキャンパスにやってきましたが、フィリップ・フルマー(Phillip Fulmer)元監督とその跡を継いだレーン・キフィン(Lane Kiffin)元監督という狭間で複数のオフェンシブコーディネーターに仕えることとなり、結果的にいうと4年生時にはどうにかそれなりの仕事を果たせたとはいえ、入学時の期待を超えることはできませんでした。

テネシー大時代のクロンプトン

これまでNFL、そしてカナディアンフットボールリーグ(CFL)を渡り歩き、現在も未だ現役である(フリーエージェント中)クロンプトンは最近テネシー大に対する思いをインタビューで話していました。が、それはいい思い出ばかりではなかったというものでした。

「大学を卒業して以来、私はテネシー大のキャンパスに2度しか帰っていません。その理由は長い間私の中に植えつけられてきた『嫌悪感』から来るものに他ありません。なぜなら一部のファンから受けた酷い仕打ちが私の中に深く傷を植えつけたからです。もちろん大多数のファンはそのような人たちではなかったことも分かっているのですが。」

アマチュアスポーツとはいえカレッジスポーツ、ことフットボールに関してはファンの熱の入れようは凄まじいものです。テネシー大のような名門チームになると毎年カンファファレンスタイトルを狙えるようなチームをファンは求めますし、それができなければ容赦ない批判をチームだけでなく選手、しかもたかだか20歳前後の大学生に浴びせるのです。

心無いファンの悪口などはどのチームでも起こっていることでしょう。クロンプトンも彼に対する批判や中傷は耐えることができたと言っています。しかし、それが彼の家族に向けられると話は別です。

「もしファンからの批判などが私に向けられたものであればそれは自分自身で受け止めることは出来ました。しかし彼らはその矛先を私の家族に向けたのです。そのことで私はこの場所が心底嫌いになってしまいました。テネシー大は全米でもトップクラスのファン層を持っていることは今でも間違いないと自分でも思いますが、私がプレーした間に私の家族に降りかかったことは未だに忘れることができません。」

自分の贔屓にするチームが結果を出さなければファンのフラストレーションが溜まるのもわかる話です。しかしクロンプトンが経験したようなことはよくある話ではあるとはいえ、行き過ぎているといっても過言ではないと思います。選手はお金をもらってファンのためにプレーしているのではありません(奨学金はもらっていますが)。チームの不調を批判するのであれば大人であるコーチ陣に向けられるべきだと思うのですが。