早期サイニングピリオド【2019年度リクルーティング】

早期サイニングピリオド【2019年度リクルーティング】

只今ボウルシーズンまっただ中ですが、ボウルゲームに参加するチーム、特にカレッジフットボールプレーオフ(CFP)に進出するような上位チームはその準備に大忙しです。しかしながらそんなチームたちを含め全てのチームにとって同時進行で気を配らなければならないのはリクルーティングです。

このサイトでもリクルーティングの重要性には何度も触れていますが、リクルーティングとは今後大学に入部してくる高校生たちを勧誘することを指す言葉ですが、リクルーティングがチームの命運を握っていると言っても過言ではなく、優秀な選手をめぐるリクルーティング合戦はいつのときでも熾烈を極めるものです。

リクルーティングに関しては実は様々なルールが存在するのですが、それをここで全て語るとキリがないので辞めておきますが(苦笑)、リクルーティングが高校生に何をもたらすかと言えば、選手は意中のチームに入部する代わりに授業料が免除になる、つまりスポーツ奨学金(スカラシップ)を見返りに手に入れることができるというわけです。

ただ、それだけではもちろん他のチームに差をつけることは出来ませんから、「うちに来れば全米優勝を狙えるよ」とか「うちの施設は全米随一だよ」とか「NFLに行きたいならうちのプログラムが一番だよ」とか様々な甘い言葉を17、18歳の少年、またはその家族に投げかけて何とか入部させようと躍起になるのです。

そしてリクルート(勧誘される高校生たちのこと)たちは様々な経過を経て入部する大学を決めるのですが、それを発表しそして公式に進学先の大学と文書で契約を結ぶ(サインをする)日がしっかりと定められています。その日は「ナショナルサイニングデー」と呼ばれ、通常2月の第1水曜日に定められています。この日は高校生たちが地元のTVカメラの前で自分の進学先を発表するのが恒例となっていますが、筆者としては大変滑稽に映ります。

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しかし昨年度からこの「ナショナルサイニングデー」に先駆けて12月の後半に前倒しで進学先を表明できる「早期(アーリー)サイニングピリオド」という期間が設けられました。これは既に進学先を決めていて2月まで発表を待ちたくない生徒たちのために設定された期間。昨年始めて導入されたこのシステムはリクルーティング戦争が新たな局面を迎えると言われました。

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そして今年もこの早期サイニングピリオドが到来。ちょうど昨日(12月19日)がその初日で12月21日まで文書にサインすることが許されています。

実際アメリカにいると高校生のリクルーティングの情報というのは想像以上に溢れているのですが、当サイトではよっぽどのことでない限りそこに触れることはありません。なぜならまず時間がないから(笑)。そしていくら超高校級と騒がれたとしても本当にカレッジで活躍できるのは限られた選手であるからです。ちやほやされる前に実際にカレッジレベルでその力を証明してみろ、と思ってしまうのですね。

兎にも角にも今年の早期最ニングピリオド初日でかなりのリクルート(全体の4分の3と言われています)が進学先を明言しており、それにより2019年のリクルーティングクラスの勢力図も大分見えてきました。それをここで紹介してみたいと思います。

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ベースボール・マガジン社 (編集)

リクルーティングランキング

今年 昨年
1 アラバマ大 ジョージア大
2 ジョージア大 オハイオ州立大
3 テキサスA&M大 テキサス大
4 ルイジアナ州立大 サザンカリフォルニア大
5 ミシガン大 ペンシルバニア州立大
6 オレゴン大 クレムソン大
7 クレムソン大 アラバマ大
8 オクラホマ大 マイアミ大
9 ペンシルバニア州立大 オクラホマ大
10 テキサス大 ノートルダム大

*今年のランキングはESPN、247.com、 rivals.comを合わせたもの

前年度を見ると分かる通り首位が入れ替わっています。「あー、やっぱりアラバマか」と思われる方も多いかと思いますが、実は昨年アラバマ大が首位を明け渡したのは7年ぶりということで、ジョージア大がアラバマ大を抜き、しかもそのアラバマ大が7位にまで転落したことはかなりショッキングな出来事でした。これはアラバマ大の王座陥落を予感させるには十分だったのですが、御存知の通り彼らはそのジョージア大をナショナルタイトルゲームで下して見事全米制覇を成し遂げました。そして今年あっさりと首位を奪い返したわけです。

リクルーティングの土壌が肥えているのはテキサス州、フロリダ州、ルイジアナ州、カリフォルニア州、ジョージア州、オハイオ州だと言われています。それぞれの州の旗艦大学(例えばテキサス州ならテキサス大)が地元の有力リクルートを獲得できるのはよく分かる話ですが、リクルーティング戦争で最も重要なのはどれだけ地元の州内の逸材を拾ってこれるかと、州外から何人の5つ星リクルートを呼び込めるかにかかっています。アラバマ大はアラバマ州とその周辺地域だけでなく西海岸、東海岸、北西部、北東部、大陸部、果てはハワイ州までその触手が伸び(例えばトゥア・タガヴァイロア)、見事に全米中からリクルートを呼び寄せることに成功しています。

ジョージア大はアラバマ大に首位を譲ったものの、全米2位という非常に満足の行く結果に終わっています。彼らはジョージア州の逸材を一手に引き受けて将来は盤石といえます。

3位のテキサスA&M大ですが前年度は15位だったことを考えるとこれはかなりの飛躍と言えます。リクルーティングの天才とも言われるジンボ・フィッシャー(Jimbo Fisher)監督が2年目にして早くも手腕を発揮していることになります。彼らの将来も非常に明るいです。

4位のルイジアナ州立大(昨年14位)、5位のミシガン大(昨年20位)、6位のオレゴン大(昨年18位)もリクルーティングで大きく成功を収めています。特にオレゴン大は今年のリクルーティングクラスでナンバーワンと呼び声の高いカリフォルニア出身DLケイヴォン・ティボデックス(Kayvon Thibodeaux)を獲得することに成功。特にオフェンスで知られているオレゴン大にディフェンスのスター候補が入部してくることに、マリオ・クリストバル(Mario Cristobal)監督のリクルーティングの才能を見る気がします。

一方でオハイオ州立大は今年トップ10から転落(12位)。レギュラーシーズン後に名将アーバン・マイヤー(Urban Meyer)監督が引退を表明しており、その事がこのランクダウンに響いていたとしてもおかしくはありません。

そしてマイアミ大サザンカリフォルニア大もランクを落としています。マイアミ大は2年前に古豪復活の狼煙を上げたかと思えば今年は期待はずれの結果に。またサザンカリフォルニア大も2年前にPac-12カンファレンスのタイトルを獲得したものの、今年は負け越してボウルゲームにすら出場できませんでした。ロサンゼルスという土地の利があり、ネームバリューも十分な彼らがリクルーティング戦争で遅れをとるとなると、今後の動向いかんではクレイ・ヘルトン(Clay Helton)監督のクビも危うくなるかもしれません。

このリクルーティングランキングが即来季の勢力図に影響するとはいえませんが、長くても同じ選手を5年しか囲えないカレッジフットボールにおいて、抜けていく選手たちを補える選手を毎年コンスタントに手に入れることができるかどうかで、大学のプログラムとしての資質が問われることになります。アラバマ大がダイナスティーを築けているのもおそらくリクルーティングが成功していることが大きく関係していることでしょうし、その逆もまた然りと言えます。カレッジフットボール界では、ただ練習をして良い戦略を持っているだけではトップには立てないということなのです。

今後はまだサインをしていない数少ないリクルートを巡ってさらに熾烈な勧誘合戦が続いていくことでしょう。それが2月のナショナルサイニングデーまで続いていくことになりますが、まだ市場に売れ残っている選手、そしてコーチたちにとってはその日まで2ヶ月間の長いプロセスを踏んでいくことになります。

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