CFPナショナルチャンピオンシップゲームプレビュー⑦

見どころ

いよいよ迫った2017年度のナンバーワンチームを決めるCFPナショナルチャンピオンシップ。サウスイースタンカンファレンス(SEC)チーム同士の戦いとなりましたが、このマッチアップは両チームが同じカンファレンス出身という点だけが類似点ではありません。

二つのチームのスタイルはまるで双子の兄弟を見ているようです。フィジカルでディフェンスを重視したコーチに率いられ、お互いがそのパワーでラインオブスクリメージを制覇し、オフェンスでは昔ながらの重厚なランアタックで試合の流れを手元に手繰り寄せる、そんな同じようなチームが頂上決戦で相見えるのです。それもこれもジョージア大のカービー・スマート(Kirby Smart)監督がアラバマ大のニック・セイバン(Nick Saban)監督の下で王道学を学びそれをジョージア大に還元しているからに他ありません。

キックオフを間近にしてこの試合でどの点に注目して観戦すべきか、ちょっと考えて見たいと思います。

ジョージア大RBデュオはアラバマ大ディフェンスに通用するか?

昨年すでに全米トップレベルのRBデュオであったジョージア大のニック・チャブ(Nick Chubb)とソニー・ミシェル(Sony Michel)。彼らは昨年度のシーズン後に早期NFLドラフト入りしていてもおかしくありませんでしたが、二人は示しをつけたように4年生となる2017年度もチームに残留することを決めました。そしてその決断は正しかったと断言できます。

1年生QBであるジェイク・フローム(Jake Fromm)がまだまだ発達途中である状況でチャブとミシェルは文字通り今季のチームを引っ張ってきました。その最たる結果は先日のローズボウルで如実に現れ、ミシェルは3TDを含む181ランヤード、チャブも2TDに145ヤードと大暴れ。前半31対17と大きくリードを奪われながらも後半に追いつき逆転した原動力となりました。

この時の対戦相手であるオクラホマ大はもちろん良いディフェンス陣を擁していましたが、今回対戦するアラバマ大のそれとは比べることはできません。これまで1試合平均約92ヤードしか相手に許してこなかったアラバマ大のランディフェンスは全米1位にランクされており、ジョージア大がこれまで対戦してきたどのチームよりも優れたユニットであるとされています。しかもアラバマ大の守備陣はシーズン後半にかけて満身創痍となっていましたが、レギュラーシーズン終了後より1ヶ月の時を経て迎えたシュガーボウルではディフェンス陣が生まれ変わったようにシャープで元来の強力なディフェンス力をクレムソン大に対して披露しました。LBアンフェニー・ジェニングス(Anfernee Jennings)がシュガーボウルで怪我を負いナショナルタイトルゲームに出場できなくなったのは痛手ではありますが、それを加味しても彼らのディフェンスは並大抵のものではありません。

そんなアラバマ大ディフェンスに対してチャブとミシェルがオクラホマ大戦のように自由に仕事をさせてもらえるとは思えません。しかしたとえロングランが獲得できなくても1stダウンと2ndダウンでそれなりの距離を稼ぐことができればそれだけで攻撃にテンポが生まれます。硬い石でも叩き続ければヒビは入るもの。たとえ小さなヒビでも時間が経てばやがて崩れていく可能性は十分にあります。二人のスピードがあればアラバマ大ディフェンスに対してでもそれをなし得ることができるのではないでしょうか。

ただ彼ら二人が止められてしまうとジョージア大は苦しくなります。アラバマ大もジョージア大がこの2RBを多用してくることは周知のことでしょうから、試合が始まればジョージア大のランオフェンスが勝つか、アラバマ大のランディフェンスが勝つかという単純明快な展開になると予測されます。

アラバマ大QBハーツの出来は?

ここまでプレビュー連載を読んでいただければお分かりかと思いますが、アラバマ大QBジェイレン・ハーツ(Jalen Hurts)は典型的なポケットパサーではありません。そしてパスの精度自体も決して高いとは言えない選手です。しかしもともと彼はポケットパサーとして存在する必要はないと考えます。

準決勝戦のクレムソン大戦でも24回のパスで16回を成功させ120ヤードに2TDととり立てて驚くべき数字ではありません。しかも2つのTDのうち1つはDLダロン・ペイン(Da’Ron Payne)へのトリックプレーでした。しかしそれでもアラバマ大が勝利するには十分でした。このシュガーボウルでは珍しく1つファンブルを犯したものの、ハーツは従来ターンオーバーを滅多にしないQB。先にも述べた通りチームの攻撃スタイルはラン重視ですから、RBダミエン・ハリス(Damien Hurris)にボ・スカーボロー(Bo Scarbrough)といった選手に加え自身の足で十分に試合をコントロールできるのです。

昨年のクレムソン大とのナショナルチャンピオンシップでは、試合1週間前にオフェンシブコーディネーターが入れ替わったという大きな壁を乗り越えなければならなかったことを含めても、ハーツのパスの精度に低さが仇になったと言われています。1年生だったからしょうがなかったとも言えますが、それを経験して2年生となったハーツはシュガーボウルでは去年のタイトルゲームの時よりも落ち着いていたように思えました。

アラバマ大のオフェンシブラインはランブロックに長けているユニットですが、もしパスプレー時にジョージア大の強力なフロントセブンからハーツを守れなくなると、昨年のクレムソン大との試合の時のようにハーツのパスの精度が落ちる可能性は十分あります。そうなればアラバマ大のオフェンスは単調化し、さらにジョージア大ディフェンスは守りやすくなるというものです。

つまりアラバマ大のオフェンスの良し悪しはハーツのQBとしての出来にかかっているといっても過言ではありません。ジョージア大LBロクアン・スミス(Roquan Smith)率いるフロントセブンからのプレッシャーを受けた時にどうハーツが対応するかで試合は決定してしまうかもしれません。昨年から自身のパサーとしての未熟さをハーツは耳が痛いほど聞いてきたでしょう。それをモチベーションとして試合に臨み、是非ともそのような批判をする人たちの鼻を明かしてほしいものです

ジョージア大QBフロームの出来は?

今季開幕戦途中から出場して以来先発QBの座を守り抜いてきたジョージア大のジェイク・フローム。彼の今シーズンの記録を見てみても突出するものは正直何もありません。しかし1年生ながらジョージア大のスターティングQBの座につき続けることができたのは、RBチャブやミシェルらの助けがあったからだけでなく、彼が1年生とは思えない落ち着いたプレーを披露し続けることができたからではないでしょうか。

唯一彼が見るからに苦戦していたのはレギュラーシーズン中に対戦したアーバン大くらい。あとはリマッチとなったアーバン大とのSEC優勝決定戦や先日のローズボウルでのオクラホマ大戦では試合の立ち上がりこそ浮き足立っていたものの、すぐに落ち着きを取り戻し自分のすべき仕事をしっかりとこなしていました。その最たるものはターンオーバーを犯さない、ということです。実際ローズボウルではたったの1度もボールを相手に奪われることはありませんでしたし、このようなパフォーマンスがアラバマ大戦でも求められることになるでしょう。

フロームは今季活躍したオクラホマ大のベーカー・メイフィールド(Baker Mayfield)のようなスターQBではありませんし、チームは彼にメイフィールドのようなプレーを要求もしません。チャブとミシェルのランプレーを効果的にお膳立てするためのパスプレーを確実にこなすだけでいいのです。

問題は彼とジョージア大OL陣がアラバマ大フロントセブンの怒涛のプレッシャーに耐えられるかどうかです。彼らはデカく、スピードがあり、非常にアグレッシブなユニットです。昨年のアラバマ大ディフェンスはカレッジフットボールの歴代でもトップクラスの1つに数えられるほどでしたが、今年のユニットも負けじと劣りません。

しかしもしフロームのパスが要所要所で決まりそれが得点につながればジョージア大のタイトル獲得に大きな貢献となるでしょう。

アラバマ大ディフェンスは勢いを持続できるか?

シーズンを通してディフェンス陣、特にLB陣では怪我人が絶えず常に猫の手も借りたい状況だったアラバマ大ですが、レギュラーシーズン終了から1ヶ月の療養を経て迎えたシュガーボウルのクレムソン大戦では見事に本来のアグレッシブなディフェンスが復活。その結果全米1位のクレムソン大相手にTDを一つも奪われることはありませんでした。この試合でのディフェンス陣がこのナショナルタイトルゲームでも同じような働きをしてくれるでしょうか?

ジョージア大の強力なOL陣とそれを縦に道を切り開いていくRBチャブとミシェルを攻略することはアラバマ大ディフェンスにとって大きな試練となります。しかしクレムソン大戦での彼らの活躍を見るとその心配も多少和らぐというものですが、前述の通りLBジェニングスが膝に重傷を負いこのタイトルゲームを欠場するという痛手を負いました。彼の不在がどう影響するか非常に気になるところです。

一つ朗報なのはレギュラーシーズン後にテネシー大の新監督に就任することになったディフェンシブコーディネーターのジェレミー・プルイット(Jeremy Pruitt)氏が現在もDCとテネシー大HCを兼任する生活を送っていますが、今のところこのことが彼のディフェンスの指揮系統に問題を起こしていないというところでしょうか。昨年はオフェンシブコーディネーターだったレーン・キフィン(Lane Kiffin、現フロリダアトランティック大監督)がタイトルゲーム1週間前にチームをさりスティーブ・サーキジアン(Steve Sarkisian、現NFLアトランタファルコンズOC)氏を急遽代役に抜擢してこのことが試合結果に影響したと言われていましたから。

軍配は・・・?

多少の違いはあれど非常に似通ったチーム同士の対決となったこの全米王座決定戦。アラバマ大は昨年タイトルゲームで味わった敗戦の悔しさをバネにここまでやってきて、いよいよその雪辱を晴らすチャンスを手に入れました。一方のジョージア大は1980年以来37年ぶりのナショナルタイトルを目指し、31人もの4年生が率いるチームが全ジョージア大ファンと卒業生たちの期待を背負ってメルセデスベンツスタジアムに乗り込みます。

またジョージア大のスマート監督にとっては恩師でもあるセイバン監督に挑戦状を叩きつけるという構図にもなっています。これまでセイバン監督は師弟対決において11勝0敗という圧倒的強さを誇っています。お互いの手の内を知っている同士の対決、どちらの方が相手の隙をついて勝利をものにすることができるでしょうか?

全米随一のランオフェンスとディフェンス陣のぶつかり合い・・・。広い全米で大変ローカルなタイトルゲームとなってしまいましたが、この試合を見ない理由が見当たりません。

個人的にはアラバマ大有利か・・・とも思いますが、スマート監督がついにセイバン監督の牙城を崩すというシーンも容易に想像できますし、またジョージア大には個人的によく知る選手もプレーしているため、ジョージア大に肩入れしたい気持ちもあったりします。が、正直どっちが勝ってもおかしくないのだろうな、というのが本音です。

あとは楽しみにキックオフを待とうではありませんか!

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