ナショナルチャンピオンシップゲームレビュー【完全版】

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オーバータイムの末に13点差あったスコアをひっくり返して劇的な勝利を収め、2017年度のナショナルチャンピオンに輝いたのはアラバマ大でした。これでアラバマ大はニック・セイバン(Nick Saban)監督が就任して以来5度目の全米制覇。もっと言えば2009年にセイバン監督がアラバマ大で初めてナショナルタイトルを獲得して以来9年間で5回も全米の頂点に立ったということですごいスピードでその栄冠を獲得していることになります。

今回のジョージア大との決戦は終始リードを奪われる展開でたいへん苦しいゲームとなり、アラバマ大にとっては慣れない試合運びとなりました。それでも同点に追いつきそして逆転勝利を演じてこれまでとは違った今回のタイトルゲームを簡単に振り返ってみたいと思います。

(本当ならばガッツリ振り返りたいところですが、試合の翌日から寒波を逃れてフロリダに南下中なのであります)

*試合中に残したツイートも参考にしてみてください。

試合の方はメディアの予想を総合すると非常に似通ったチーム同士の戦いながらアラバマ大がやや有利というのが大半を占めていました。ただセイバン監督がこれまで「師弟対決」において11連勝無敗であり、長いことセイバン監督のもとでアシスタントを務めたジョージア大のカービー・スマート(Kirby Smart)監督がこれに挑戦するという構図が多々取り上げられました。個人的にはこれはジョージア大がアラバマ大を倒すというブラフにも聞こえたのですが・・・。

試合は最初のジョージア大の攻撃でQBジェイク・フローム(Jake Fromm)のパスをアラバマ大ディフェンスがインターセプト。

いきなりアラバマ大の先制パンチが決まったかに見えましたが、その後はフロームは落ち着きを取り戻し、また彼らの主力であるRBニック・チャブ(Nick Chubb)とソニー・ミシェル(Sony Michel)を軸としたランオフェンスが徐々に効いていきます。

一方のアラバマ大オフェンスはジョージア大ディフェンスの方の肩の力が抜けると彼らのスピード感のある守備に阻まれ1stダウンを奪うどころかヤードすら稼げなくなり、得意のランオフェンスを披露できずにいました。またパスが得意でないアラバマ大QBジェイレン・ハーツ(Jalen Hurts)も自身の得意の機動力でヤードを稼ぐことは多少できましたが、オフェンスにリズムを与えることはできず、ジョージア大のペースに巻き込まれてていきます。

それでも全米1位を誇るアラバマ大ディフェンスの奮闘でジョージア大のスコアのチャンスを2つのFGのみに抑えていましたが、パスプレーで遥かにハーツを上回るフロームが要所要所でパスをつなげてアラバマ大陣内へ強襲。そして第2Q残り7秒でジョージア大WRメコール・ハードマン(Mecole Hardman)の1ヤードランTDが決まって13対0と点差が広がり前半を終了。

アラバマ大は試合前の予想に反して10年ぶりに前半完封されるという絶不調。

前半終了時の記録

アラバマ大 ジョージア大
4 ファーストダウン 16
94 トータルヤード 223
1/6 3rdダウンConv. 6/11
約10分 ボール所持時間 約20分

数字を見ただけでもわかるようにジョージア大がゲームの流れを完全に掌握。アラバマ大はディフェンスが孤軍奮闘しますが、オフェンスに全くいいところがなくこのままだと勝利云々よりもスコアを挙げることすらできないのではないかと思ってしまうくらいの展開でした。その要因のすべてをQBハーツだけに押し付けるのは酷ですが、攻撃の起点となるはずの彼が逆に攻撃のチャンスを摘んでいる状態でした。

アラバマ大がこの状況から抜け出し、奇跡の逆転劇を現実のものにするためには「何かとんでもなく大きな変化」が必要でした・・・。

そしてハーフタイムにアラバマ大コーチ陣が苦肉の策として取ったのが、なんと先発のハーツをベンチに下げ1年生のバックアップであるトゥア・タガヴァイロア(Tua Tagovailoa)を投入するというものでした。先発QBとして25勝2敗という素晴らしい戦績を残してきたハーツをこの大舞台で交代させるというのは並大抵の腹積もりでできることではありませんし、しかも先発経験が全くないルーキであるタガヴァイロアを起用するというのは大博打であったに違いありません。

ただタガヴァイロアがハーツよりも優れたパサーであることは知られていたことであり、ボールを全く動かせなかったアラバマ大オフェンスとしてはこの試合に勝つためにはこれぐらいの荒治療が必要だったのです。にしてもそれをタイトルゲームで行ったコーチ陣の度胸は大したものです。

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そしてタガヴァイロアは見事にコーチたちの期待に応えます。荒削り感は否めませんでしたが、前半見られなかったパスプレーでオフェンスに微かな希望が生まれ始めます。

後半開始直後に浮き足立つタガヴァイロアを序盤はジョージア大ディフェンスがアタックしてサックを喰らわしたりパスインターセプトを奪ったりします。

彼が落ち着いてくると1stダウンを奪ってジョージア大陣内へ攻め込みます。そしてついに第3Q8分あたりでタガヴァイロアからWRヘンリー・ラグス(Henry Ruggs III)へのTDパスが決まりついにアラバマ大がこの日初得点を挙げます。

アラバマ大が反撃の狼煙を挙げたと思った矢先、ジョージア大も負けじとすかさず反撃。アラバマ大ファンにため息をつかせるフロームからハードマンへの80ヤードのロングTDパスが決まって点差を再び離します。

しかしタガヴァイロアの活躍のお陰でアラバマ大オフェンスに余裕が生まれ、また途中から投入された第3のRBであるナジー・ハリス(Najee Harris)の変化の効いた走りが功を奏しここでもコーチ陣の采配が際立ちます。そしてドライブが続くおかげでディフェンス陣に一息つくチャンスが生まれます。これが終盤に効いてくるのでした。

更に2つのFGを加えて20対13まで巻き返してきたアラバマ大。第4Q終盤に同点に向け敵陣内へ突入していきますが、残り時間4分を切ったところでジョージア大陣内7ヤードラインでアラバマ大は4thダウンを迎えます。ここでセイバン監督はFGではなくコンバージョンを選びます。そしてスナップを受けたタガヴァイロアはジョージア大DLの激しいプレッシャーを受けながらそれを交わしつつエンドゾーンでフリーになったエースWRカルヴィン・リドリー(Calvin Ridley)を捉えてついに同点に追いつきます。

この時点で試合の流れは前半ジョージア大が掴んでいたものがアラバマ大に完全に移っていました。そして同点となった直後のジョージア大の攻撃でもアラバマ大ディフェンスが一度もファーストダウンを与えずに残り2分50秒でアラバマ大が逆転のチャンスを得ます。タガヴァイロアとN.ハリスの活躍でアラバマ大は残り3秒でジョージア大陣内17ヤードまで攻め込み、あとはFGを試合終了とともに決めて大逆転勝利・・・となるはずでした。

しかし勝利の女神はジョージア大を見捨ててはいなかったようで、アラバマ大Kアンディ・パパナストス(Andy Papanastos)がなんと36ヤードキックを大きく左にフックして外してしまいます。これで試合はオーバータイムへ。

オーバータイムでもアラバマ大ディフェンスの勢いは衰えず3rdでフロームが再びサックを食らって13ヤードも交代。ジョージア大は51ヤードの超ロングFGを余儀なくされます。が、ロドリゴ・ブランケンシップ(Rodrigo Blankenship)がこの超重要なロングFGを決めて首の皮一枚つなぎます。

後攻のアラバマ大は最初のプレーでタガヴァイロアがサックを食らって16ヤードも後退。アラバマ大のキッカー、パパナストスはブランケンシップほど頼れるキッカーではないのでこの16ヤードの後退は大きな痛手でした。・・・しかし。

次のプレー、タガヴァイロアはスナップを受けてドロップアウト。ジョージア大DBのカベレージをギリギリまで読み、また視線でDBを釘付けにしてWRデヴォンタ・スミス(DeVonta Smith)にワンオンワンの状況を作ります。そしてタガヴァイロアァら放たれたボールは左サイドでDBを交わしたスミスの手の中に。そのままスミスはエンドラインを超えて逆転サヨナラのTDが炸裂。劇的なナショナルチャンピオンシップに幕を下ろすプレーでアラバマ大が見事今季の全米チャンプに輝いたのでした。

試合終了時の記録
(カッコ内は後半の記録)

アラバマ大 ジョージア大
22 (18) ファーストダウン 22 (4)
371 (277) トータルヤード 365 (142)
3/14 (2/8) 3rdダウンConv. 8/19 (2/8)
26:17 (約16分) ボール所持時間 33:43 (約14分)

前半と比べると後半の方が明らかにアラバマ大が攻勢に出ていたことが上の数字からも伺えます。

途中出場ながらエース級の活躍を見せた1年生のタガヴァイロア、そして攻め込まれても決して諦めずに奮闘し続けたディフェンスのお陰でアラバマ大は2年振りの王座奪還。そして後半のオフェンスのテコ入れを敢行しそれが見事的中したコーチ陣の手腕は見事としか言いようがありません。

一方ジョージア大はせっかく作ったモメンタム(勢い)を後半に入って多少守りに入ってしまったせいで失ってしまいました。チャブ、ミシェル、そしてLBロクアン・スミス(Roquan Smith)ら攻守にコマを揃えなが後一歩のところで勝利を逃したジョージア大にとっては非常に忘れられない試合となってしまいました。特に準決勝戦ではチャブとミシェルは二人とも100ヤード以上の走りを見せたものの、このアラバマ大戦ではミシェルが98ヤード、チャブは25ヤードに抑えられてしまいました。スミスは両チームトップとなる13タックル(9ソロ)にサックも1つ記録しましたが、後半のアラバマ大の怒涛の流れを止めることはできませんでした。

37年越しのナショナルチャピオンまであともう少しというところまで来ましたが、その栄冠はお預けとなってしまいました。

また試合後は後半ベンチに下げられてしまったアラバマ大QBハーツにも注目が集まりました。これまで不動の先発QBであったにも関わらず、こんな大舞台で交代させられてしまったことは彼のプライドを大いに傷つけたことでしょう。しかしサイドラインで彼は腐らずルーキーのタガヴァイロアを鼓舞し続けていました。来年のチームでハーツが先発QBになれるかどうもわからないですが、少なくともリーダーとしての素質は健在のようです。

この勝利で自身6度目のナショナルチャンピオン(ルイジアナ州立大で1回、アラバマ大で6回)となったセイバン監督はついに同校でレジェンドであるポール・ベアー・ブライアント(Paul “Bear” Bryant)に並びました。過去9年で5回のナショナルタイトルを獲得したセイバン監督は確実にカレッジフットボールの歴史にその名を残しました。

これで2017年度の全日程を終了。これからしばらくは寂しくなりますね。

【ハイライト動画(40分)】