Big Tenカンファレンスプレビュー

2016年度のBig Tenカンファレンスは驚きと幻滅が入り混じったシーズンでした。下馬評を覆し大外から巻いてカンファレンスを制したのがペンシルバニア州立大。しかし彼らを差し置いてカレッジフットボールプレーオフ(CFP)に進出したのはオハイオ州立大。が、彼らは準決勝戦でクレムソン大に完敗してしまい、「ペンシルバニア州立大がなぜプレーオフ進出に選ばれなかったのか?」という論議まで巻き起こりました。また彼らの永遠のライバルであるミシガン大はシーズン中旬まで無敗を守っていましたが、アイオワ大にまさかの敗戦を喫するとオハイオ州立大にも競り負け、さらにはボウルゲームでもオレンジボウルフロリダ州立大にも敗戦を喫し、後半にかけて尻窄みしてしまいました。また昨年プレーオフに進出したミシガン州立大と西地区を制したアイオワ大はそれぞれ予想を裏切る大失速。結果として全体的には昨年のBig Tenは不完全燃焼な感じが拭えませんでした。

2017年度のBig Tenはどのようなシーズンを送るのでしょうか?今回はその見どころを探っていきたいと思います。

オハイオ州立大はプレーオフに進出できるか?

昨シーズンペンシルバニア州立大にまさかの敗北を喫したせいでカンファレンス東地区のタイトルを逃したオハイオ州立大。しかしシーズン全体を通してのパフォーマンスが評価されCFPに進出を果たします。が、結果的にナショナルチャンピオンとなるクレムソン大に準決勝戦では31対0という屈辱的な大敗を喫してしまいました。

【参考記事】フィエスタボウル:クレムソン大 31、オハイオ州立大 0

この結果に誰よりも怒りを感じているのはアーバン・マイヤー(Urban Meyer)監督以外の誰でもないでしょう。クレムソン大に味わされた31対0という記録はマイヤー監督にとって初めての完封負けで、31点差の敗北も自身最大の得失点差です。過去15年間1シーズン平均2敗しかしてこなかった彼にとってはこのような負け方を味わうことすら稀なのです。

そんなマイヤー監督ですが、この敗戦直後からすでにこの大敗から立ち直るべくテコ入れを敢行。オフェンシブコーディネーターには新たにライアン・デイ(Ryan Day)氏とケヴィン・ウィルソン(Kevin Wilson)氏のダブルコーディネーター制に移行しました。デイ氏はマイヤー監督のフロリダ大時代に学生コーチとして師事し、その後はテンプル大ボストンカレッジを渡り歩いた後、元オレゴン大チップ・ケリー(Chip Kelly)氏が率いていたフィラデルフィアイーグルスサンフランシスコ49ersでQBコーチを歴任。そして今オフマイヤー監督から声をかけられたという経歴があります。またウィルソン氏は昨年までインディアナ大のヘッドコーチを務めていた人物。それまではオクラホマ大のオフェンシブコーディネーターを8シーズン任されていたという過去があります。

攻撃陣のトップがガラリと入れ替わりはしましたが、選手の層だけ見れば昨年からのメンバーが多数残っています(オフェンスは9人、ディフェンスは7人)システムが多少変わるにせよ、選手間の連携などに関して言えば同じメンバーが多ければ多いほどスムースに行くと思われるため、これはチームにとっては大きなプラスなはずです。

また昨年と違い2017年度シーズンは2戦目のオクラホマ大戦、9戦目のペンシルバニア州立大戦をホームで行うことになっており、特に昨年苦渋を飲まされたペンシルバニア州立大戦の前の週はバイウィークで試合がないため、雪辱を果たすために普段よりも倍の準備期間が与えられることになります。

そしてもちろんミシガン大とのライバル決戦も注目されるところですが、マイヤー監督は今の所ミシガン大に6連勝中。こうなればオハイオ州立大がカンファレンスを制し再びCFPの舞台へ舞い戻って昨シーズンの汚名返上を果たす、というシナリオが容易にイメージできそうです。

ミシガン大は石の上にも三年となるか?

ミシガン大は前任のブレディ・ホーク(Brady Hoke)氏の指揮下で大幅にパワーダウンしたチームをジム・ハーボー(Jim Harbaugh)監督の手によって再生、すでにナショナルランキングでも上位に名を連ねるまでに復活してきました。昨年は途中まで全米2位まで上り詰めましたが、前述の通り最後は失速。ハーボー監督就任2年目のプレーオフ進出は夢に終わりました。2017年度は彼の3シーズン目ということでいよいよミシガン大も大躍進を遂げることになるのでしょうか?

しかし、かのリー・コーソ(Lee Corso)氏ならばここでおそらく「Not so fast, my friend!」というセリフを残すことでしょう。

ミシガン大は確実に復活の道を歩み始めており、ハーボー監督の手腕があればプレーオフ進出を成し遂げる日もそう遠くはないでしょう。ただそれが2017年度なのかどうかと言われればちょっと疑問です。なぜなら彼らは2016年度のチームから大量の選手を失ってしまったからです。というのもオフェンス、ディフェンス、スペシャルチーム合わせて実に17人の4年生先発プレーヤーが抜けてしまったのです。さらに悪いことに昨年のスーパープレーヤー、ジャブリル・ペッパーズ(Jabrill Peppers)も4年生シーズンをスキップしてNFL入りを果たしてしまいました。

いくらハーボー監督の手腕がピカイチとは言え、これだけ多くの経験豊かな選手たちが失われれば、それは2017年度の戦績に響かざるを得ないでしょう。

ただ昨年のオハイオ州立大もその前年(2015年度)から合計16人の先発選手を失いながらもプレーオフ進出を果たすことができましたので、ミシガン大が絶対に来たるシーズンに成果を残せないとは言えませんが、この両校の決定的な違いはリクルーティングであり、過去3年間のリクルーティングクラスを見ればオハイオ州立大の方が完全にミシガン大をリードしているのです。

開幕初戦はSECの強豪フロリダ大、そしてペンシルバニア州立大、オハイオ州立大と力のある対戦相手から白星を奪えるか・・・。2017年度のミシガン大が3敗、ないし4敗したとしてもそれは決して「予想を裏切った」結果とはならないかもしれません。

ミシガン州立大は復活するか?

昨年度のミシガン州立大は出だしこそそこそこだった割に結果的には惨敗に終わったシーズンを送る羽目になってしまいました。開幕戦のファーマン大には勝ったものの28対13と不安を残すスタートとなりましたが、2戦目にはノートルダム大から非常にいい形で勝利を奪い、ミシガン州立大の地元でもプレーオフ進出を果たした前年度のような素晴らしいシーズンを期待する人々で溢れていましたが・・・。

そのあとは悪夢の10連敗。唯一奪ったBig Tenカンファレンスの勝利もラトガース大から奪ったものでしたが、先シーズンのラトガース大はオハイオ州立大に58対0、そして翌週のミシガン大戦では78対0という体たらくを見せており、そのチームから奪った勝利が評価されるとは到底思えません。

しかし絶不調だったミシガン州立大が2017年度も不調を引きずるとも思えません。ディフェンスからはその大黒柱であったマリク・マクドゥウェル(Malik McDowell)を失いましたが、それを補うべく攻撃陣でポテンシャルの高いWRドニー・コーリー(Donnie Corley)とRB L.J.スコット(L.J. Scott)率いる地上戦力が絶妙なハーモニーを奏でてくれるでしょう。

ペンシルバニア州立大の台頭で突如として競争率が跳ね上がったカンファレンス東地区をミシガン州立大が制することができるかと言えば、それはちょっと言い過ぎたとは思いますが、少なくとも上に挙げたように再建シーズンに突入するミシガン大にひと泡吹かせることぐらいはできるかもしれません。

ペンシルバニア州立大のマクソリーはハイズマントロフィー最終候補まで残るか?

2016年度のペンシルバニア州立大は2戦目のピッツバーグ大、4戦目のミシガン大戦を落として開幕2勝2敗となり、早くもシーズンに黄色信号が灯ったかに見えました。そんなチームに勢いを取り戻させるには彼らには何かしらの起爆剤が必要でしたが、ジェームス・フランクリン(James Franklin)監督はついにそれを見つけたのです。QBトレース・マクソリー(Trace McSorley)です。

それまでのペンシルバニア州立大の攻撃のかなめと言えば2015年度に1000ヤード以上を足で稼いだRBサクオン・バークリー(Saquon Barkley)でした。しかしマクソリーがシーズンを追うごとにQBとして開花したことでチームに勢いがついたのです。若干2年生だったマクソリーはシーズントータルで3614ヤードのパスにトータル36TDを獲得。特筆すべきはペンシルバニア州立大の最後3試合においてそれぞれ4つものTDを奪ったことです。Big Tenカンファレンスタイトルゲーム(対ウィスコンシン大)とローズボウル(対サザンカリフォルニア大)での彼の活躍は未だに脳裏に焼きついています。

そんな彼がその勢いを2017年度にも持ち越すことができればひょっとしたら2002年度シーズンのRBラリー・ジョンソン(Larry Jonson、ハイズマン投票3位)以来の最終候補選手となる確率もあるかもしれません。そしてもし彼がトロフィーを手にすることができればペンシルバニア州立大出身プレーヤーとしては1973年のQBジョン・カペレッティ(John Cappelletti)以来2度目のの快挙となります。

西地区は?

東地区チームばかりにスポットを当ててきましたが、西地区はどうでしょうか?

Big Tenが二地区制度を敷くようになった2011年度から見てみると現在西地区所属のウィスコンシン大が6回中4度も地区を制しています。2011年から2013年までは現在の「西地区・東地区」ではなく「レジェンド地区」「リーダー地区」という訳のわからない(笑)名称で呼ばれており、チームの振り分けも現在のものとは多少違いますが、それでもウィスコンシン大の強さは相変わらずといったところです。昨年も全米6位にまで上り詰めた彼らが西地区を制し、東地区の覇者であるペンシルバニア州立大とタイトルゲームで対戦しました。

彼ら以外の西地区チームでは2015年にアイオワ大が12勝0敗で最高で全米3位にまで浮上。タイトルゲームではミシガン州立大に敗れましたが、そのよくシーズンとなった2016年度も西地区タイトルをウィスコンシン大と争う展開となるかと思われました。しかし蓋を開けてみれば8勝5敗と減速しウィスコンシン大に地区王者を譲ってしまいます。

そして同じく2015年度に10勝3敗という好成績を残したノースウエスタン大も2016年度にはウィスコンシン大やアイオワ大と西地区の覇権争いを演じると思われていましたが、7勝6敗とアイオワ大と同じようにウィスコンシン大の脅威となることはできませんでした。

ノースウエスタン大は開幕戦のウエスタンミシガン大戦と次戦のイリノイ州立大(FCS)戦で敗北してしまい、初戦2試合ですでに彼らのシーズンを決定づけてしまった格好になってしまいました。しかしシーズンを通して彼らが大敗したような試合は一つもありませんでした。特に当時全米6位のオハイオ州立大と同8位のウィスコンシン大とはそれぞれ24対20、21対7と勝つチャンスは十分ありましたし、ボウルゲームで全米22位のピッツバーグ大戦に勝利したことは非常にいいサインでした。

おそらくノースウエスタン大はこの勢いを2017年度にも持続させたいと策を練っていることでしょう。昨年度のBig TenトップWRと言われたオースティン・カー(Austin Carr)と頼れるLBアンソニー・ウォーカー(Anthony Walker)がチームを去ってしまいましたが、ディフェンス側には9人の先発選手が残留、そしてオフェンスにはスターRBジャスティン・ジャクソン(Justin Jackson)に加え、27TDを含む3000パスヤード越えQBのクレイトン・トーソン(Clayton Thorson)も健在とあり、オフェンス陣も芯は通っています。

これまでウィスコンシン大一辺倒だった西地区ですが、2017年度は「小さな巨人」ノースウエスタン大に注目です。