A Win-Win Situation!

2年前、ジョージア大は15年に渡りチームを率いたマーク・リクト(Mark Richt)監督と袂を分かちました。それは「合意の上」での離別だとか、辞任だとか、事実上の解雇だとか色々言われたものでした。

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リクト監督下のジョージア大は非常に安定したシーズンを毎年送り、所属するサウスイースタンカンファレンス(SEC)のタイトルも2度(2002年と2005年)獲得。ナショナルタイトルこそ手に入れることはできませんでしたが、毎年強いチームを世に輩出し続けてきました。

たしかに後年は多少力が落ちた感も否めませんでしたが、それでも解雇される前のシーズンには9勝を挙げました。強豪ぞろいのSECで9勝挙げるというのは決して簡単なことではないのです。

しかしリクト監督はジョージア大を離れなければならなかった。それはやはりどうしてもタイトルに手が届かないジレンマからくる苦渋の決断だったことでしょう。メディアを見る限りリクト監督の悪いことが書かれた記事を見たことがないので、コーチとしても人間としても一目置かれた存在だったとしてもなんら驚きはしません。そんな監督をジョージア大は切ったのです。

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ジョージア大時代のリクト監督

この背景にはやはり「セイバン効果」があったに違いありません。それはアラバマ大を毎年のようにSECチャンプに育て上げ、全米制覇を毎年狙えるようなチームにまで成長させたニック・セイバン(Nick Saban)の影響です。

セイバン監督が2007年に監督に就任するまでアラバマ大は1992年以来ナショナルタイトルから遠ざかっていました。しかし2007年以降彼らは2009、2011、2012、2015、そして昨年と5度も全米の頂きに立っているのです。

それを見た他のチームが「我々にもアラバマ大のような栄光を!」と高望みをした結果、それぞれのチームで監督に求めるハードルが極端に上がり、それが満たされなければ彼らは「次のセイバン監督」を探すためにコーチ陣を一掃することをかつてよりもより頻繁に行うようになってしまったのです。

しかし考えてみればセイバン監督がアラバマ大で成し遂げてきていることははっきり言って常軌を逸していることであり、そう簡単に彼らのようなプログラムを作り上げることは出来ないはずです。

それでも大学上層部やサポーターたちはそんなことはお構いなしにリクト監督ほどの人物に見切りをつけてしまうのです。たしかに全米ナンバーワンを目指してみなプレーしているわけですが、勝利至上主義が行き過ぎてこのような状況を招いているともいえます。

リクト監督が解雇された当時、筆者自身もこの決断に首を傾げたものでした。そして「ジョージア大は必ずこの決断に後悔することになるだろう」と思っていました。目先の欲だけで彼ほどの監督を切ってしまったつけが必ずやってくると。

ジョージア大はリクト監督の後釜にアラバマ大でディフェンシブコーディネーターを長いこと務めていたカービー・スマート(Kirby Smart)氏を据えました。スマート監督はそれまでヘッドコーチの職についたことはなく、これが初の大役となったわけですが、一方で彼はセイバン監督の右腕としてアラバマ王国の繁栄に多大なる貢献をした人物でしたから、アラバマ大をモデルとしたチームを作るにはうってつけの人物でした。

そして何よりもスマート氏は元ジョージア大の選手であり、監督未経験だったとしても当時としてはこれまでにないマッチングだったといえます。

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昨年チームの快進撃を指揮したスマート監督

そのスマート監督の初年度となった2016年度シーズンは8勝5敗とデビューシーズンとしてはまずまずの成績でした。そして2年目の昨年度。彼らはSECを制し、プレーオフではオクラホマ大ローズボウルでなぎ倒してナショナルタイトルゲームに進出。優勝決定戦ではスマート監督の元上司であるセイバン監督率いるアラバマ大と対戦。激しい試合の末、オーバータイムの末に惜しくも破れてしまいましたが、2年目にしてここまでチームを導いたカービー監督の手腕は確かなものです。

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一方のリクト監督ですが、ジョージア大を離れたあと程なくしてマイアミ大の監督に就任することが明らかになりました。

マイアミ大は2000年代前半までその強さを保持していましたが、徐々にそのパワーはフェードアウトし、2011年から指揮を取ったアル・ゴールデン(Al Golden)体制ではすっかり中堅チームに成り下がってしまいました。かつての強豪チームの面影は消え失せていたのです。

ゴールデン監督不要論が沸き起こりついに2015年度シーズン途中にマイアミ大は彼を解雇。チームは臨時コーチを立ててシーズンを乗り切りましたが、新監督サーチは必須事項であり、ジョージア大とリクト監督が決別するとにわかにマイアミ大でリクト監督を待望する声が上がったのです。

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上にも挙げたようにリクト監督はジョージア大で15年も勝ち越しシーズンを送ってきた名将。そして何よりスマート監督がジョージア大出身選手だったように、リクト監督もまたマイアミ大出身選手だったのです。そういった意味ではリクト監督のマイアミ大監督就任は起きるべくして起きたことだったともいえます。

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リクト監督は母校のマイアミ大で「第2の人生」を謳歌中

リクト監督の初年度となった2016年度は9勝4敗と素晴らしい船出となり、その翌年となる2017年度シーズンはなんと開幕から10連勝で全米ランキングで最高2位にまで上り詰め、ジョージア大と同じようにプレーオフレースに最後まで居残りました。結果的にはシーズン終盤に連敗してプレーオフ進出はもとよりアトランティックコーストカンファレンス(ACC)のタイトル獲りも逃しましたが、強いマイアミ大が復活したという印象を強烈に残してくれました。

つまりリクト監督と決別してスマート監督に再建を託したジョージア大にとっても、またそのリクト監督を迎え入れて復活の狼煙を挙げたマイアミ大にとっても結果的に良い方向に進んでいるということです。

とくにジョージア大を離れマイアミ大に移って母校の再建に一役買っているリクト監督にとってはそのような気持ちが大きいのかもしれません。誰だって解雇されたいわけはありませんが、その結果母校を率いることが出来ているということは決して悪いことではないからです。

リクト監督もシーズン中にこのように語っていました。

「ジョージア大にしてもマイアミ大にしても今回のことは双方にとっていい方向に状況が進んでいると思います。私自身はここ(マイアミ大)に居れることが本当に幸せですし、ジョージア大ではカービー(スマート監督)が成し遂げていることを皆がハッピーだと感じているに違いありません。」

一方でスマート監督もリクト監督に賛辞を送っています。

「リクト監督は選手たちに新たなエネルギーを注入できる手腕を持っていて、それがマイアミ大で開花しているのでしょう。選手たちは非常にタフなプレーを披露していますし、リクルーティングにおいても優れた結果を残しています。これまでリクト監督がいつ何時でも素晴らしい仕事をしてきたように。」

またリクト監督の指導を受けたジョージア大のLBデヴィン・ベラミー(Devin Bellamy)はマイアミ大を立て直している恩師のことをこう話しています。

「リクト監督は素晴らしいコーチで、彼が私にしてくれたすべてのことに大変感謝しています。監督は選手たちを奮い立たせるのがうまく、規律を守ることの大切さ、そして基礎テクニックの大切さをいつも説いていました。それをおそらく監督はマイアミ大でも実践していることでしょうが、その証拠に彼らはいま素晴らしいフットボールを披露しています。私はリクト監督に対してなんらネガティブな印象を持っていません。」

冒頭でも書いたようにジョージア大とリクト監督の離別には様々な憶測が流れていましたが、チームを去らざるを得なかったリクト監督にとってはある程度のやるせなさがあったとしても不思議ではありません。

しかしジョージア大を去って以来、彼は古巣のことを悪く言うようなコメントをただの一つも残していません。

「ジョージア大の今の状況には私も非常に嬉しく感じていますし、私がリクルートした選手たちが今のチームで成功できていること見て非常に微笑ましく思います。ジョージア大はとっても素晴らしいところです。私そして私の家族にとってもジョージア大は特別な場所であり、今後も彼らが成功していくことを願っています。」

本音ではどこまで感じているかわかりませんが、こういったコメントが残せるというのは彼が本当にジョージア大に愛着が残っているせいだからか、もしくはマイアミ大で結果を残せていることからの心の余裕からくるものなのか・・・。

どちらにしてもジョージア大とマイアミ大での監督交代劇は相乗効果を発揮しているようです。あとはスマート監督とリクト監督が在任中にジョージア大とマイアミ大の直接対決が見れるかどうか、ですね。

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