2018年度CFPナショナルチャンピオンシップゲームプレビュー⑤【監督対決】

今回の対決でアラバマ大とクレムソン大はプレーオフにて4年連続顔を合わせていることになります。しかもその内3回(2015年度、2016年度、2018年度)はナショナルチャンピオンシップがその舞台となりました。それもこれも両校が現在のカレッジフットボール界を引っ張る名将に指揮されているからに他ありません。アラバマ大のニック・セイバン(Nick Saban)監督、そしてクレムソン大のダボ・スウィニー(Dabo Swinney)監督が育て上げてきたプログラムは非常に似通っているなんていいますが、実はこの二人非常に親密なことでも知られています。

お互いがお互いを尊敬し合う間柄の両氏が直接対決する今回の頂上決戦。その二人の事に少し触れてみたいと思います。

ニック・セイバン監督(アラバマ大)

現在67歳のセイバン監督ですが今年でアラバマ大にやってきて12年目となりました。それ以前にはルイジアナ州立大ミシガン州立大トレド大で監督を務め、更にはNFLマイアミドルフィンズでも2年間プロの監督を経験したことがある人物です。

カレッジレベルでの通算戦績は233勝61敗1分けですが、アラバマ大では140勝20敗。特に最近では2011年以来1シーズンに2敗以上したことがないという圧倒的な強さを見せています。そして今回14勝無敗で決勝戦を迎えるわけですが、これに勝てば自身初の完全無敗レコードでシーズンを終えることになります。

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セイバン監督

セイバン監督はリクルーティングを誰よりも大事にし、選手の層を厚くすることによって「ダイナスティー」を築くことに成功しています。特にディフェンスのバックグラウンドを持つ彼が世に輩出するディフェンス陣は毎年全米トップレベル。今のところ現役で彼を超える監督はいないのではないでしょうか。もっと言えばカレッジフットボールの歴史を振り返ってみてもセイバン監督は明らかに歴代のレジェンドたちに肩を並べられるだけの結果を残してきました。

その証拠にセイバン監督はこれまで合計6回(アラバマ大で5回、ルイジアナ州立大で1回)ナショナルチャンピオンに輝いていますが、これはあのアラバマ大のスーパーレジェンド、ポール・「ベアー」・ブライアント(Paul “Bear” Bryant)元監督が持つ史上最多勝利数に並んでおり、もし今年セイバン監督率いるアラバマ大がクレムソン大を破って彼が7度目の全米制覇を成し遂げれば、とうとう長いカレッジフットボールの歴史の中でセイバン監督が最多勝利監督という称号を得ることになります。しかもセイバン監督は2003年から昨年までの13年間の中で(2005年と2006年はドルフィンズ)6度も優勝しているということで、単純計算ならばほぼ2〜3年に1回はナショナルチャンピオンになっているという計算になります。物凄い頻度です。

彼はとにかくチームの統制を取ることに全身全霊を注いでいるようで、何かにつけては選手たちのあらを探して彼らが天狗にならないようにいつも気にかけています。常にハングリーであることを選手たちに要求しているわけです。

それは選手たちだけでなく彼のアシスタントコーチに対しても同じであり、彼らは大抵の場合「セイバンイズム」という帝王学を彼の下で学び、やがて他の大学の監督へと就任していきます。そのいい例が現ジョージア大のカービー・スマート(Kirby Smart)監督であり、オレゴン大のマリオ・クリストーバル(Mario Cristobal)監督であり、テネシー大のジェレミー・プルイット(Jeremy Pruitt)監督であったりするわけです。

またセイバン監督は他の大学で解雇になったコーチを積極的に入閣させることでも有名です。例えば現フロリダアトランティック大のレーン・キフィン(Lane Kiffin、元USC監督)氏、先日解雇されてしまいましたがアトランタファルコンズでOCを務めていたスティーブ・サーキジアン(Steve Sarkisian、元USC監督)氏、そしてこのナショナルチャンピオンシップ後にメリーランド大の監督に就くOCのマイク・ロックスリー(Mike Locksley、元ニューメキシコ大監督)氏などなど・・・。何がすごいかと言えば、毎年コーディネーターが入れ替わるのに戦力がガタ落ちしないということです。これはセイバン監督が求めているチームづくりをアシスタントコーチたちが忠実に再現しているからであり、それは簡単なことではありません。

今年も前述の通りこの試合後ロックスリー氏はメリーランド大へ行ってしまいますが、同氏を起用したセイバン監督の采配は大当たりでした。というのもこれまでのセイバン監督のチームは大抵において強力なディフェンス陣をバックボーンに、ランオフェンスで試合の流れをコントロールするのが上手いチームだったですが、今年は超カレッジ級のトゥア・タガヴァイロア(Tua Tagovailoa)というアラバマ大ではめったに見られないパスに非常に秀でたQBを手に入れ、ロックスリー氏のもとでオフェンスはラン重視からパスアタックでも十分勝てるチームチームに変貌を遂げたのです。

また彼のチーム並びに選手の管理能力も見逃すことは出来ません。今季開幕時に誰が先発QBに指名されるかというのは非常に注目されたことでした。そしてセイバン監督は昨年までの先発だったジェイレン・ハーツ(Jalen Hurts)に変えてタガヴァイロアを起用することにしたのですが、ここでハーツは転校して試合に出場する機会を他チームで模索することも出来たのにも関わらず、セイバン監督と相談した結果彼はアラバマ大に残留することに。そしてSEC優勝決定戦、先発のタガヴァイロアが怪我で退場を強いられるとハーツが登場して逆転勝利をお膳立てしました。もしハーツを説得できずにシーズン途中で失っていた(転校で)としたら、ひょっとしたらプレーオフに進出していなかったかもしれません。ハーツがチームプレーヤーだったということもありますが、タガヴァイロアとハーツを上手く使い分けた

2018年は7年間首位を守ってきたリクルーティングランキングでトップから転落。いよいよアラバマ大時代に終止符が打たれるかと思われました、2019年度の早期サイニングピリオドごのランキングでは再び首位に返り咲いています。今後のチームも安泰と言えそうです。

ただ強いチームを作るだけでなく、その流れを長く維持することが出来るセイバン監督のチーム育成能力は誰にでも真似できるものではありません。それが彼を最強たらしめているわけですね。

ダボ・スウィニー監督(クレムソン大)

一方のスウィニー監督は今年49歳と監督としてはまだ若い方に入りますが、脂が乗ってきたいい時期に入るコーチです。彼は監督としてコーチングに携わるのはこのクレムソン大のみ。クレムソン大に来て2年目となった2008年、当時チームを率いていたトミー・バウデン(Tommy Bowden)監督がシーズン途中に解雇処分になり、大学はスウィニー監督を臨時HCに任命してそのシーズンを乗り切り、後に正式な監督としてクレムソン大を指揮することになりました。

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スウィニー監督

本日までの通算戦績は115勝30敗ですが、就任当初はクレムソン大は今ほどの強豪校ではなく、最初の3年間は勝ち越しと負け越しを繰り返すようなチームでした。しかし2011年度に10勝4敗として二桁勝利を挙げると現在まで最低でも10勝を挙げるシーズンを送り続けています。しかしながら10勝を挙げ続けるほどの力をつけてきたにも関わらず、その次のレベルに中々脱することが出来ない、大舞台に弱いということを何年も言われ続け、しまいには肝心なところでコケてしまうことを揶揄する言葉として「クレムソニング」などという言葉が生まれるようにもなってしまいました。

しかし2015年、開幕から14連勝して全米1位チームとしてプレーオフに進出。そして惜しくも決勝戦でアラバマ大には敗れましたが、この年とうとう「クレムソニング」という汚名を返上するほどの力を見せてくれたのです。以来彼らは4年連続でプレーオフ進出を果たしているというわけです。

それはひとえにスウィニー監督の草の根のリクルーティング活動が種から芽が出て根を張り、そして立派な木に成長していることを意味しています。QBデショーン・ワトソン(Deshaun Watson、現ヒューストンテキサンズ)などのプロでも十分通用するようなタレントを見つけ出して勧誘に成功することによってチームの層を重厚にしているわけです。まさにセイバン監督の取り組み方そっくりです。(もちろん他の監督さんたちもリクルーティングを最重要課題として扱ってはいると思いますが)。

スウィニー監督がセイバン監督と違うのはおそらく選手への接し方なんだと思います。もちろん私はどちらの監督にもあったことはありませんから、メディアでの感じを見てしか感想を述べられませんが、スウィニー監督は選手にとって「いい兄貴」のような存在なのかなと思ってしまいます。いつもインタビューではポジティブで情熱的。思ったことはズバリとも言いますが、その彼の物腰は選手に親近感を与えているような気がします。そしてそういった選手たちに「この監督のためなら着いて行ける」と思わせてくれるのでしょう。でなければ去年NFL入り出来たクリスチャン・ウィルキンス(Christian Wilkins)らが今年も残留などするはずがありません。

監督としてのキャリアはセイバン監督に劣りますが、2016年度には上記のワトソンを擁してアラバマ大をタイトルゲームで倒し、見事全米制覇を成し遂げました。そしてもし今年再び試合に勝てればBCS(ボウルチャンピオンシップシリーズ)が始まった1998年以来となる、セイバン監督、アーバン・マイヤー(Urban Meyer、フロリダ大&オハイオ州立大)元監督、そしてピート・キャロル(Peter Carroll、元USC大;ただし2004年度の分は後に剥奪)に続き4人目の複数優勝を果たした監督となります。


現在直接対決2勝1敗とセイバン監督が僅かにリード。セイバン監督が3勝目を手に入れるか、、それともスウィニー監督が勝って対戦成績を2勝2敗のタイに戻すか・・・。注目の一戦です。

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