2016年度シーズン第10週目 – Separation Saturday –

アメリカの各地で秋が深まり寒いところでは冬の足音が聞こえ始めてきた昨今。カレッジフットボールもいよいよ佳境に入り始め、トップチーム達にとっては今後一試合も落とせない状況が続きます。プレーオフ進出を決めるCFPランキングが今季初めて公表された第10週目、週末を終えた頃にはプレーオフ進出に近づいたチームとそうでないチームがはっきりと分かれました。

アラバマ大、熾烈なライバルゲームを制す

アラバマ大 10、ルイジアナ州立大 0

ディフェンスとディフェンスのぶつかり合いとなったこの大一番。互いが思うようにスコアリングできない中、試合を決めたのはアラバマ大の1年生QBジャレン・ハーツ(Jalen Hurts)でした。

前半を終えスコアレスとなったこのゲーム。FGすら奪えず緊張の試合展開となりました。試合前、ルイジアナ州立大のドゥウェイン・トーマス(Dwayne Thomas)が放った、「アラバマ大オフェンスを完封してみせる」という宣言がまさに現実のものになりかけていたのです。実際開幕時からルイジアナ州立大のディフェンスは強固でしたが、この日全米トップのアラバマ大を終始押さえ込み全米9位のトータルオフェンス力を誇る彼らを10点にとどめたのです。

しかし彼らよりもさらに凄かったのがアラバマ大ディフェンス。ルイジアナ州立大RBレナード・フォーネット(Leonard Fournette)を昨年に続き今年も完全攻略。今年は彼にトータル35ヤードしか許さず、また全米最強の呼び声高いフロントセブンが相手QBダニー・エトリング(Danny Etling)に襲いかかり彼に5つものQBサックを喰らわしました。

そして試合の決定打となったのはハーツの足でした。どちらも譲らず0対0で迎えた第4Q、自陣10ヤードから攻撃を開始したアラバマ大は90ヤードを約6分かけて12プレーで相手陣内へ進撃。そして最後はハーツがロールアウトしたまま襲いかかるルイジアナ州立大ディフェンダー達を見事にかわし、相手エンドゾーンへ飛び込みとうとう拮抗を破るTDを奪います。さらに返しのルイジアナ州立大の攻撃ではエトリングのパスをアラバマ大DBミンカー・フィッツパトリック(Minkah Fitzpatrick)がインターセプト。そして残り12分半で自陣44ヤードラインから再び攻め始めたアラバマ大は脅威の10分間ドライブを披露。特筆すべきは3つの3rdダウンをハーツが自らの足で全てコンバート。2つ目の3rdダウンは15ヤードとピンチを迎えましたが、見事に1stダウンを奪いルイジアナ州立大ファンのため息を誘いました。10分間のドライブで試合時間を削ぎ落とし、最終的にはFGを決め残り3分弱でスコアを10対0としたアラバマはルイジアナ州立大最後の攻撃も1stダウンを奪わせずに完封。結局ロースコアな試合となりましたが、敵地で厳しい試合を強いられながらも王者アラバマ大が逃げ切ることに成功したのです。

それにしてもこの試合はルーキーであるハーツのルーキーらしからぬプレーが目立ちました。パスは107ヤードしか投げられなかったものの、足で114ヤードを獲得。特にここぞという場面で相手守備陣の隙をつき1stダウンを奪い攻撃権を渡さなかった落ち着き度合いはもはやベテランの域に達しています。ルイジアナ州立大でのナイトゲームと言う全米で見てももっともやりづらい環境でこの様に勝利をもぎ取った事は今季の残りの試合に生かされる事はもちろん、ハーツの今後の選手としての成長にもきっと還元されるに違いありません。

ルイジアナ州立大は前述の通りアラバマ大の重量オフェンスを良く押さえ込んでいましたが、自身のオフェンスが何もさせてもらえず撃沈。これでアラバマ大戦6連敗目と言う不名誉な記録が増えてしまいました。ちなみにアラバマ大がランクチームとのアウェーゲームで完封勝利を収めたのは実に14年振りですが、その時の相手は奇しくも同じルイジアナ州立大(当時14位)。さらに奇遇なのはこのルイジアナ州立大を率いていたのが現アラバマ大ヘッドコーチのニック・セイバン(Nick Saban)監督でした。

アラバマ大はこれでアーカンソー大テネシー大テキサスA&M大ルイジアナ州立大という強豪チームとの4連戦を無敗で乗り越え、いよいよ実質残るは最終戦のライバル・アーバン大戦のみとなりました。もちろんそこに至るまでの2試合を甘く見る事は出来ませんが、セイバン監督率いるアラバマ大選手達が油断するなんて事は考えられませんから、アーバン大との「アイロンボウル(Iron Bowl)」が彼らのプレーオフ進出に向け最大のハードルとなりそうです。

オーバーレーテッド?

ミシシッピ州立大 35、テキサスA&M大 28

今季初のCFPランキングで驚きの4位にランクインされたテキサスA&M大。無敗のワシントン大を追い越して1敗のテキサスA&M大がトップ4入りしたのは、彼らの唯一の敗戦チームであるアラバマ大がダントツで1位であると言う評価の副産物であるとされました。が、「テキサスA&M大がワシントン大より上位であるべきか?」という事に関して論議が交わされる事はどうやら無くなりそうです。というのもテキサスA&M大がミシシッピ州立大にまさかの敗戦を喫してしまったからです。

今季黒星先行のミシシッピ州立大にとってはこの勝利は一攫千金ともいえるものですが、何よりもこの敗戦をしてCFP選考委員会がテキサスA&M大を過大評価しすぎてきた事が正当化されてしまいました。また証拠はどこにもないものの、SECチームに肩入れし過ぎと言われるこの選考委員会のランク付けが改めて露呈されてしまったともいえます。

さようなら、ネブラスカ大

オハイオ州立大 62、ネブラスカ大 3

開幕以来7連勝を飾りウィスコンシン大に負けはしたものの最新ランキングで10位に位置したネブラスカ大Big Tenカンファレンスの強豪・オハイオ州立大と対戦。彼らが勝てればそれこそウィスコンシン大戦での敗戦を帳消しにすることが出来た事でしょうが、ご覧の通りネブラスカ大はオハイオ州立大に手も足も出ず敗退。

ネブラスカ大QBトミー・アームストロング(Tommy Armstrong)は第2Qに頸椎の怪我の疑いでフィールドから病院へ直行するというアクシデントに見舞われ、スタジアムには不穏な雰囲気が流れます。結局アームストロングは何事も無く病院をすぐさま退院し、第3Q途中には試合会場に戻ってきました。が、アームストロングが居ようが居まいがネブラスカ大不利に変化は無く、結果このような大差をつけられることになったのです。ネブラスカ大の快進撃の原動力であったディフェンスはこの日オハイオ州立大オフェンスを全く止められずQB J.T.バレット(J.T. Barrett)率いる攻撃陣になす術もありませんでした。

ジャクソン、ハイズマントロフィーにまた一歩近づく

ルイビル大 52、ボストンカレッジ 7

今季ハイズマントロフィー最有力候補とされるルイビル大QBラマー・ジャクソン(Lamer Jackson)はボストンカレッジ戦でもその力をいかん無く発揮。前半だけで5つのTDを奪う活躍でボストンカレッジ戦を一蹴。彼のこの日の活躍は第1Qでの彼の69ヤードランTDですでに予感されていました。腕の痙攣を起こして前半で退いたジャクソンでしたが、痙攣が治ると再び第3Qに登場。後半にさらに2つのTDを加算して合計7つのTDに絡むパフォーマンスを見せてくれました。これで1試合7TDを奪うのは今季3度目。全米見回してもこれまでたった1試合でも7TDも稼いだ選手はジャクソン以外おらず、彼の凄さを物語っています。

ジャクソンが活躍さえすればルイビル大が負ける事はおそらく無いでしょう。彼らがプレーオフ進出を果たすにはとにかく上位の無敗4チームが負ける事が最条件となりますが、チームの動向も然ることながらジャクソンのハイズマントロフィー受賞の可能性も気になるところ。トロフィー授賞式まで最大4試合を残しているルイビル大ですが、これまでジャクソンはすでに4000トータルヤードに45TDを記録しています。普通に考えればこのまま行けばジャクソンのハイズマントロフィー獲得はかなりの確率で現実のものとなりそうです。

ベイラー大、空中分解

テキサスクリスチャン大 62、ベイラー大 22

先週テキサス大に敗れるまでは全米8位まで上り詰めたベイラー大。1敗を喫して17位まで転落したベイラー大はさらに先週末テキサスクリスチャン大に大敗。上昇気流に乗っていたチームが2連敗でまさに空中分解を起こしてしまったのです。

ベイラー大はチームとしてはこのような大差に繋がるようなミスをした訳ではなく、あったとすればQBセス・ラッセル(Seth Russell)のパスが相手ディフェンダーに奪われTDを与えてしまった一投ぐらいなもの。この試合は単純にテキサスクリスチャン大がベイラー大を凌駕し快勝したというわけです。RBカイル・ヒックス(Kyle Hicks)は5つのTDを含む192ヤードを足で稼ぎベイラー大ディフェンスを翻弄しました。

2週前まではトップ10入りを果たしていたチームとは到底思えない無様な格好を見せてしまったベイラー大は当然ながらプレーオフ進出に値するチームとはお世辞にも言えません。スキャンダルに揺れたベイラー大が開幕以来連勝を重ねていったのは少々話が上手く行き過ぎていたという事でしょうか。

フロリダ大の夢を打ち砕いたアーカンソー大

アーカンソー大 31、フロリダ大 10

取り立てて目立った勝利も無く棚ぼた的に順位をゆっくりと挙げてきたフロリダ大。CFPランキングで11位に位置された彼らにとってプレーオフ進出への道はまだほど遠いものでしたが、そんな矢先にアーカンソー大にまさかの敗退。2敗目となったフロリダ大に残されていた僅かな希望はアーカンソー大によって潰されてしまったのでした。

攻撃陣よりも守備陣の活躍によって勝利を重ねて来たフロリダ大でしたが、アーカンソー大に14対0といきなり2TD差をつけられてしまったおかげで彼らのリズムが狂います。オフェンスに火力が乏しいフロリダ大にとって追う展開になるのは致命傷で、その証拠にこの日の唯一のTDはディフェンスのデューク・ドーソン(Duke Dawson)のパスINTからのTDのみ。また強固なディフェンスが売りの守備陣もこの日はアーカンソー大にやられっぱなしでトータル466ヤードを献上してしまいました。フロリダ大自身のトータルヤードが241ヤードだった事を考えればフロリダ大がこの日大苦戦していた事が伺えます。

この敗戦でフロリダ大はおそらく大きくランクを落とすことになるでしょうが、これによりSECの東地区と西地区での格差が大きく開くことになりそうです。

Big Ten西地区で頭一つ抜きん出たウィスコンシン大

ウィスコンシン大 21、ノースウエスタン大 7

全米8位のウィスコンシン大ノースウエスタン大と対決。持ち前のランオフェンスで試合の主導権を握り、RBコーリー・クレメント(Corey Clement)に32回もボールを託し攻撃時間をコントロール。また強豪オハイオ州立大、ミシガン大のオフェンスにも互角以上に渡り合ったディフェンスがこの日も冴え、ノースウエスタン大のランオフェンスをたったの39ヤードに押さえ込みました。

この勝利によりウィスコンシン大はBig Tenカンファレンス西地区制覇に向け一歩前進。2敗しているもののこの試合の勝利で彼らがトップ10入りに相応しいチームである事を見せつけてくれました。このまま行けば彼らが西地区を制し、東地区代表チームとカンファレンスタイトルをかけて戦うことになります。おそらくそのチームはミシガン大とオハイオ州立大の最終戦の勝者ということになり、どちらが東地区を代表することになってもウィスコンシン大にしては雪辱を晴らすチャンスとなります。プレーオフ進出はチームが2敗していることもあり自力では厳しいですが、カンファレンスを制してローズボウルに出場する事ができれば彼らのシーズンは報われるというものです。

ペンシルバニア州立大、絶好調!

ペンシルバニア州立大 62、パデュー大 24

オハイオ州立大から大金星を奪って以来調子が上向きなのがペンシルバニア州立大。先週はパデュー大相手に大差で勝利し、オハイオ州立大戦での勝利、並びにアイオワ大との勝利(41対14)がまぐれではない事を証明してくれました。CFPランキングでは12位と好位置についたペンシルバニア州立大でしたが、テキサスA&M大ネブラスカ大フロリダ大らが敗戦を重ねたことで彼らが10位以内に飛び込んでいく可能性が大きくなりました。サンダスキー事件の余波でしばらく全米の檜舞台から遠ざかっていたペンシルバニア州立大がここまでランキングをあげてくることはカレッジフットボールファンにとっては大変な朗報だと言えそうです。

不調が止まらないノートルダム大

海軍士官学校 28、ノートルダム大 27

開幕時10位だったノートルダム大はシーズンが進むにつれ負けが先攻し、この海軍士官学校(ネイビー)戦でも1点差で負けてしまいます。これで彼らは今季3勝6敗となりいよいよブライアン・ケリー(Brian Kelly)監督の去就にも影響が出るのではないかとささやかれる昨今、この試合では彼の采配ミスが敗戦に繋がったとも言えます。

第4Qネイビーが4点差でリードする展開でノートルダム大は相手陣内14ヤードまで進行するも4thアンド4ヤードという状況を迎えます。ここでケリー監督は4点差あるところでFGを狙いにいきます。もちろんFGは3点ですのでFGを決めたとしてもネイビー大リードは変わらない訳です。ケリー監督の狙いは自身のディフェンス陣が踏ん張ってもう一度攻撃権を奪い返したかった、ということですが、これまでのノートルダム大ディフェンスを見返してみるとお世辞にも彼らが頼れるユニットとは言えず、案の定ネイビーのランオフェンスを止められないばかりか試合残り時間も刻一刻と減り、結局ノートルダム大に攻撃のチャンスは再び戻っては来ませんでした。

ということでFGではなくTDを奪いにいかなかったケリー監督の采配が疑問視された訳です。また遡れば第3Qに12人の選手が守備についていたというペナルティーが起点となりネイビーにTDを許しましたが、これもコーチ陣のミスとも言え、ノートルダム大が勝てる試合を逃したのです。

過去40年間ネイビーがノートルダム大から奪った勝利数はたったの4度しか無い事を考えればいかにこの敗戦がノートルダム大にとって痛手であるかが分かると思います。ケリー監督がノートルダム大のヘッドコーチとして相応しい人物なのかという疑問を投げかけるには十分な要素とも言えます。これで3勝6敗となったノートルダム大は残り3試合を全勝して6勝6敗としボウルゲーム出場権を獲得する事が最優先事項となるでしょう。大学側はケリー監督を全面的にサポートしていますが、リクルーティングが全てとも言えるチーム作りにおいて現状のノートルダム大は危機的状況にあるとも言えます。ちょっと前にはナショナルチャンピオンシップにも出場したケリー監督率いるノートルダム大ですが、数年でチームの状況は180度変わっており、常勝チームを作り出す難しさを物語っています。

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