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リクルーティングの抜け穴とは?

リクルーティングの抜け穴とは?

 

チームを形成するにあたり、非常に重要なのがリクルーティングです。リクルーティングとは要するにより能力のある高校生を見つけ、勧誘し、加入まで持ち込む一連の作業の事を言います。

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ベースボール・マガジン社 (編集)

 

コーチングが重要なのは当然ですが、やはりそれを忠実に行使できる選手は必要なわけで、それができる選手は多いに越したことはありません。選手を育てるといっても限界はありますから、最初からポテンシャルの高い選手を揃えたほうがいいのは言うまでもありません。

ですからリクルーティングはチーム運営にあたり非常に重要な位置付けをされます。

しかしそういった5つ星や4つ星の選手(リクルーティング上、能力順に星がつけられるのが常です。5つ星が最高位です)の選手を好きなだけ呼び寄せることができるのかといったらそうではありません。それそれのチームに上限が定められており、その限られた枠内でチームに必要なポジションを加味してどの高校生をターゲットにするかを決めるわけです。

実際のリクルーティングの様子などはそのうちお話しすることとして・・・。

シーズンが終わりカレッジフットボールにおいて次の目玉イベントは3週間後に控えた「ナショナルサイニングデー」です。この日にリクルートされている高校生たちが正式に進学・入部する大学を決め、正式な文書に署名する日です。

この日が近づくまでに各チームのリクルーティング合戦はヒートアップするわけですが、口頭ですでにどのチームに進学するか発表する選手たちも多々います。もちろん公式な発表ではないので法的になんの拘束力もないのですが、その「口約束」を破る高校生は多くなく、それによりどのチームがどれだけのリクルートを獲得できるかというランキングすら存在します。

全米のトップレベルチーム達は全米で5つないし4つ星と位置付けられている選手の獲得に躍起になるわけですが、リクルートランキングを見ると上位20チームくらいはたいていお馴染みのチームが名を連ねています。ライバルよりもより良い選手をできるだけ多く勧誘するために皆各々であの手この手を尽くすわけですね。

ときにそれが行き過ぎてNCAAの制裁を食らうことも多々あります。そして近年ではその制裁をかいくぐる「トリック」の存在が疑われています。

表向きは「大学生」をリクルートするといいますが、実際は「フットボール選手」をリクルートしているわけです。同じことに聞こえますが、中身は全く違います。勝つために「フットボール選手」を勧誘するには手段を選ばないという、ルールすれすれの方法も実はあるらしく・・・。

他のチームよりも群を抜いてリクルーティング力があるチームにアラバマ大オハイオ州立大が挙げられます。その力を裏切ることなく彼らはフィールドでも結果を出し、2014年度はオハイオ州立大が、2015年度はアラバマ大が全米チャンプに輝きました。

そしてこの「リクルーティングの鬼」たちに追い抜き追い越せと日々話題を提供してくれているのがミシガン大ジム・ハーボー(Jim Harbaugh)監督です。

最近ではトップリクルートの気をひくためになんとその選手の家に泊まらせてもらったり、別のリクルートを訪問した際には木に登って(!)みたり(彼は52歳のいい大人です笑)、またあるリクルート宅では夜な夜な映画等のストリーミングで有名なネットフリックス(Netflix)をリクルート宅で観賞したりと、かなりアグレッシブにリクルート達に近づいています(媚を売っているともいえる?!)

 

ミシガン大のリクルートといえば、最近2013年時点で既にミシガン大入りを口頭で発表していた4つ星のエリック・スウェンソン(Erik Swenson)という高校生のニュースが出ていました。

ニュースの内容はと言うと、ミシガン大リクルーティングの歴史でも最も最長期間勧誘を続けていたこのスウェンソン君が最近ミシガン大進学を辞めると決意したと言うものです。

2年以上ミシガン大入りを表明し続けたにも関わらず彼がこのような決断を「強いられた」のは、最終的にハーボー監督が見限ったからだと述べています。

ハーボー監督がスウェンソン君へのオファーを取り下げたことは彼にとってはまさに寝耳に水で、進学校を表明するナショナルサイニングデーがあと3週間後と迫った最悪のタイミングでミシガン大に「裏切られた」形となってしまいました。

一方のハーボー監督は引き続きリクルーティングに精を出し、スウェンソン君にオファーするはずだった枠を埋めるため、彼好みの選手を引き入れようとしています。

おそらく前任コーチのブレディ・ホーク時代に勧誘されたスウェンソン君でしたが、ホーク氏が解雇されハーボー監督が就任して事態が一変したのだと思います。もっとも彼にとっては寝耳に水だったと上にも書いた通り、スウェンソン君へのリクルーティングは監督が代わったあとも続けられていたようでしたが。

 

このようにより優れたリクルートを獲得するために、それまでリクルーティングして来た選手を切り捨て枠を補充すると言う、ある意味「掟破り」な方法は強豪チームの中では普通のことになって来ているようです。

 

例えば先にも挙げたアラバマ大やオハイオ州立大は現コーチ、ニック・セイバン監督(アラバマ大)、アーバン・マイヤー監督(オハイオ州立大)が就任して以来、非常にアグレッシブな手法でリクルーティングを行い、結果有能な高校生選手を毎年チームに引き入れる事に成功しています。それが試合での結果に現れていると言っても言い過ぎではないと思います。

アラバマ大では、上限よりも多い人数の選手にスポーツ奨学金を与え、その帳尻を合わせるために在籍選手達の数を減らす「戦略」で奨学金を与えることが出来る最多人数85人に保って来ていると言います。この方法はセイバン監督がアラバマ大に就任してから毎年行われているようですが、セイバン監督自身はこの手法を真っ向から否定しています。

例えば2013年、ナショナルサイニングデーで実に26人ものリクルートがアラバマ大入りを表明しましたが、この時点では実はチーム内には18人分しか奨学金の枠が残っていませんでしたが、シーズンが始まる頃にはきちんと上限枠85人のスカラシップ選手(奨学金を貰った特待生)に調整してきました。

どういう事かと言うと、26人のリクルート全員に奨学金を保証するために足りない枠を補うため、8人の在部の特待選手が何らかの形でチームを去っていったと言う事です。問題はこれが自発的に行われているのか、それともチームがその8人の選手に「戦力外通告」を下して首を切ったのかどちらなのか、と言う事です。セイバン監督は、「学業がおぼつかないとか、チームのルールを破ったとかそういう理由でチームを去る選手はいる事は確かだが、こちらから選手を切る捨てる事はいっさい無い。」と断言しています。

 

そうなると例えば「チーム内のルールを破ったのでチームから追放した」というようなよく聞くニュースはこのようにより多くの有能なリクルートを招き入れるために、在籍している選手で使えない選手や問題を起こす選手をチームから追放しているのか、と思えてきます。

 

オハイオ州立大でも上に挙げたような手法がとられていると疑われていますが、もちろんマイヤー監督もこの手法がオハイオ州立大で横行しているという話を完全に否定しています。

 

奇妙な事にミシガン大の話で出て来たスウェンソン君と同じような状況のリクルートがオハイオ州立大にもいます。4つ星のRBジョージ・ヒル(George Hill)君は2014年からオハイオ州立大に加入すると言っていたのにも関わらずオハイオ州立大への進学を取りやめました。結局ヒル君はピッツバーグ大入りする事を表明しましたが、彼がオハイオ州立大進学を辞めた4日後に別の4つ星RBアントニオ・ウィリアムズ(Antonio Williams)がオハイオ州立大入りを表明しました。これが偶然と言うには話が上手すぎると思いませんか?

 

このような「ロースター管理」はどこでも行われているとみてほぼ間違いなさそうですが、ミシガン大のハーボー監督は実はある程度そのような事はあると話しています。例えば彼が就任したての時、5年目の4年生(5th-year senior)の選手達には必ずしも奨学金がこれまで通り与えられると言う資格は無いとチームに話しています。もともと自分が選んで来た選手でないため、自分のスタイルに合わない選手などはチーム形成の想定外としてなんとか切り離し、翌年の新たなリクルートの為に枠を多めに開けておきたいというわけです。

 

スウェンソン君の件に関しては、NCAAのルールとしてコーチがまだサインしていないリクルートの事を喋ってはいけないと言うことになります。つまりハーボー監督ならびに彼のコーチ陣がスウェンソン君のリクルーティングにおいて何があったのか、公表する必要がない訳です。

 

ハーボー監督がリクルーティングに秀でているのはスタンフォード大でヘッドコーチをしていた時に証明されました。そして彼の母校でもあるミシガン大にヘッドコーチとして凱旋して真っ先に思ったのは、「ハーボー監督ならばミシガン大のリクルーティングは安泰だ」と言う事でした。

 

有能リクルートを引っ張ってくるためならばどんな手も尽くす、というようなモットーが横行している昨今のトップチーム。ミシガン大もハーボー監督の下アラバマ大、オハイオ州立大らに追いつくためにはミシガン大もきれいごとばかり言っていられなくなるでしょう。

あまり見えてこないリクルーティングの様子ですが、実は水面下でいろいろな駆け引きが行われているのです。

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