化石級のルイジアナ州立大オフェンス

先週末ルイジアナ州立大を11年間率いてきた名将レス・マイルズ(Les Miles)監督が解雇されました。ルイジアナ州立大への期待度が高いため、これを遂行出来ないマイルズ監督を見限った訳ですが、まだシーズン前半戦であるにも関わらず彼のクビを切ったルイジアナ州立大の判断はどうもしっくり来ません。

個人的にはマイルズ監督は好きな人物である為この解雇劇は見ていて非常に残念であり悲しい気持ちにさせられます。今回はそんなマイルズ監督に関して、何故彼は今回このように解雇させられてしまったのかを考えてみたいと思います。

ルイジアナ州立大での初期、マイルズ監督は幾度となくハイリスクなプレーを好んで選んだものでした。フェイクパント、フェイクFG、そして4thダウンプレー...。試合の局面でこういったプレーを成功させてチームを勝利に結びつけたものでした。

しかし近年はそういったガッツのあるプレーコールは鳴りを潜め、非常に単純で独創性のないものになってしまいました。

今年の開幕戦となったウィスコンシン大戦では早くもその点が露呈され、ディフェンスはウィスコンシン大を16点に抑えたもののオフェンスが機能せず全米5位とは程遠い試合展開を見せてしまい、16対14で敗退。現在ウィスコンシン大はトップ10入りを果たしていますが(第5週目現在)、それにしてもこの試合でのルイジアナ州立大の攻撃力の欠如は彼らのシーズンに早くも黄色信号が灯っていたことを暗示していました。

確かにこの試合ではQBブランドン・ハリス(Brandon Harris)の出来は悪かった。オフェンシブラインのプロテクションもおざなりだった。プレーコールの独創性も足りなかった。しかし最終的にはそれを許したマイルズ監督に当然非があったのです

ウィスコンシン大ディフェンスにRBレナード・フォーネット(Leonard Fournette)が抑え込まれた状況でルイジアナ州立大オフェンスはハリスのパスアタックに頼らざるを得なくなってしまいました。しかし彼はその期待に応えることができなかったのです。何故ならそのような場合でのプランの想定をしていなかったからにほかありません。これは最近のルイジアナ州立大チームに顕著ですが、オリジナルのオフェンスプランがうまく行かなかった場合のいわゆる「プランB」を遂行する能力が極端に劣っているのです。

ハリスにしろ他の選手にしろ、ルイジアナ州立大にリクルートされたわけですから、フットボール選手としてのタレントはあるはずなのです。問題は彼らの能力をいかんなく発揮させてあげられるシステムが整っているかどうか、ということになります。つまりこれはマイルズ監督の責任ということにつながっていくわけです。

ハリスは昨年も先発QBを任され、尚且つ現在チーム内には彼以外に実戦でパスを投げた事のあるQBは居ないのです。ならばハリスの能力にあったプレーを組み立てるべきなのですが、コーチ陣の頑固さがそれを許さなかった。しかし物凄い勢いで進化し続けるカレッジフットボールのオフェンス・ディフェンスに柔軟に対応していかなければ、全米はおろか所属するサウスイースタンカンファレンス(SEC)でも生き残ることはできないのです。

ルイジアナ州立大は2011年度にBCSナショナルチャンピオンシップゲームに出場しました。そこではアラバマ大に21対0で敗れましたが、そこから4年経った今でもルイジアナ州立大フットボールは当時のまま。その間オハイオ州立大ミシガン大フロリダ州立大などかつての強豪チームが力を盛り返し、更にはルイビル大ヒューストン大なども台頭する中、変化を求めないマイルズ監督率いるルイジアナ州立大は置き去りにされていきます。

何故マイルズ監督がかつて程積極的に変化を求めなくなったのか、それは誰にもわかりません。ひょっとしたら彼自身も気付いていなかったのかもしれません。

元ルイジアナ州立大監督で現アラバマ大を率いているニック・セイバン(Nuck Saban)監督を例にとってマイルズ監督と比べてみましょう。

最強の呼び声高いディフェンス陣を毎年世に輩出しているアラバマ大ですが、セイバン監督からすればそんなディフェンス陣にも弱点を見いだすことをします。許した得点、許したヤード。特にアラバマ大ディフェンスと相性が悪いオフェンス相手ならば彼らのディフェンスをしても苦戦する事は十分にあるのです。セイバン監督はそんな時は柔軟に対応し、従来はランオフェンスを基本とするオーソドックスな攻撃スタイルが持ち味だったとしても、時として彼らの得意とはされないボールを投げて散らばせるような攻め方を採用する事だってあります。

その証拠にセイバン監督はスプレッドオフェンスを得意とするレーン・キフィン(Lane Kiffin)氏をオフェンシブコーディネーターに据え、結果昨年のパワフルでダイナミックなオフェンスを生業とするクレムソン大を倒し全米制覇を成し遂げることが出来たのです。

それ故アラバマ大は過去7年間で4度もナショナルチャンピオンに輝き、現在も全米1位をキープしているというわけです。

今年に関して言えば例えばアラバマ大のジャレン・ハーツ(Jalen Hurts)、ジョージア大ジェコブ・イーソン(Jacob Eason)、テキサス大シェーン・ビューシェル(Shane Buechele)といった1年生QBが各地で活躍していますが、1年生であっても能力さえあり、その力を十二分に活かせるシステムがあればチームは勝つことが出来ることを実証しています。ルイジアナ州立大にはそれがないのです。

マイルズ監督は基本的にアラバマ大と同じようにランを重視したオフェンスを好んで用います。しかしこれを完璧に遂行するにはトップレベルのRBを用いるだけでなく、相手ディフェンシブフロントを確実に押さえることが出来るオフェンフェンシブライン、DBをしっかりとブロック出来るWR、そして即座にカベレージを読んで対応出来るQBというチーム全体の完璧さが求められるものです。ルイジアナ州立大にはフォーネットというハイズマントロフィー級のRBがいますが、彼の力を活かすことが出来るほどのオフェンシブラインが確保出来ていないのです。にもかかわらず頑にランプレーを続けるところに人々は疑念を抱く訳です。

近代フットボールではスプレッドオフェンスが主流です。なぜならこのスタイルのオフェンスならば多少の弱点がチームにあったとしても点を取ることが出来るシステムだからです。マイルズ監督はなぜもっとこのようなスタイルのオフェンスを取り入れないのか、と専門家でなくてもファンなら疑問に思うところでしょう。

カレッジフットボール全体のトレンドに乗り遅れただけでなく、試合中に相手ディフェンスに合わせて微調整ができるオフェンスを持ち合わせていなかったことが、近年のルイジアナ州立大オフェンスの不調の元凶です。これを頑固なまでに変えなかったマイルズ監督は、いかにヘッドコーチとしてチーム内での信頼が厚かったとしても、この様に結果がついてこない場合ならば今回のような「解雇」という最悪のシナリオを受け入れざるを得なかったのです。

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