ハーボー監督 vs SEC – 新たななるライバリー

 

ミシガン大ヘッドコーチ、ジム・ハーボー(Jim Harbough)は元ミシガン大QBであり、去年チームにヘッドコーチとして凱旋した、チームのもはやアイドル的存在(?)ですが、選手としてもコーチとしてもこれまでSECチームと絡むことはなかなかありませんでした。

ハーボー監督とSEC

選手としては1984年のシュガーボウルでのアーバン戦がありますが、この時は彼はまだバックアップQBでしかありませんでした。また翌シーズンにサウスカロライナ大と対戦していますが、当時サウスカロライナ大はSECに所属しておらず(独立校でした)本当の意味でのSECチームとの対決は先に上げたアーバン大のみということになります。

コーチとしてはというとスタンフォード大ではレギュラーシーズンでもボウルゲームでもSECチームと対戦することはありませんでした。そしてミシガン大の新コーチとしてデビューした昨シーズン、ボウルゲームにてようやくSECチームの強豪、フロリダ大とシトラスボウルで対戦。41対7で完勝を収めたのでした。

このようにこれまでハーボー監督とSECとの関わりはほぼ皆無でありましたが、ちょっと前にも紹介したようにこのところSECとの「場外対決」が取り上げられています。

ミシガン大復活への道

ミシガン大がスプリングブレーク(アメリカの大学の春休みのこと)にフロリダ州に遠征して春季トレーニングをするということにSECがまったをかけたことを紹介しました。

2006年からBCSシステムが終焉を迎えるまで(=プレーオフ導入以前)アメリカ南部に主要チームが固まるSECチームがカレッジフットボール界では圧倒的強さを発揮してきました。その間アメリカ北部を本拠地とするBig Tenカンファレンスは財政的にはSECに匹敵するものの、フィールド上ではSECチームには差をつけられるばかり。リクルーティングの土壌がどんどん南部に集中することによって地理的なディスアンドバンテージを背負うばかりでなく、ミシガン大が全米の表舞台から消え、 他の所属チームも台頭することもないままBig Tenは以前の強いイメージを失いかけていました。

しかし2013年にオハイオ州立大がアーバン・マイヤー(Urban Meyer)を新コーチに据えたのがBig Tenにとっての大きな起爆剤となりました。2014年には2002年以来のナショナルタイトルを獲得しBig Tenの存在感を魅せつけてくれました。しかしBig Tenが本当の意味でカレッジフットボールを代表するカンファレンスに返り咲くにはオハイオ州立大の活躍だけでは足りなかったのです。それはそのオハイオ州立大と切磋琢磨してカンファレンスを盛り上げてきた永遠のライバル、ミシガン大の復活です。この2チームが全米のトップチームとして走り続けることこそSECと渡り合うためには「最低条件」だったわけです。そしてその鍵となるのがハーボー監督です。

ミシガン大をどんな手を使ってでも栄光の時代へと導かんとするハーボー監督の試みは1年目のオフシーズンからすでに始まっていました。ハーボー監督が全米を渡り歩き、高校の臨時コーチとして小さな高校を訪れ続けました。これはもともとはペンステートのジェームス・フランクリン(James Franklin)監督が始めたことだったのですが、ハーボー監督のよりアグレッシブなアプローチが全米中で注目を集めました。SECではこのような行動は許可されておらず、ハーボー監督がSECのテリトリーである南部に進出してくるのを恐れていました。なぜならこの「全米ツアー」はその名を借りたリクルーティングの何ものでもなかったからです。

フロリダ州遠征

このように今までならだれも目をつけなかった方法でリクルーティングを行うハーボー監督。ナショナルサイニングデーではこれまでどの大学もやったことがなかったライブイベントを行い、そこにトム・ブレディ(Tom Brady)やデレク・ジター(Derek Jiter)などの著名ゲストを招いて最大にサイニングデーを盛り上げました。その甲斐あってか今年のリクルーティングクラスは全米5位にランクされました。そして極めつけが春休みの遠征トレーニングときたわけです。

「このフロリダでのトレーニングキャンプの目的はチームの絆をより深めることにあります。それにフロリダでは練習だけでなくビーチに行ったり春休みを楽しむこともできるのです。チーム全員がフロリダまで自費で旅行に行く事なんて到底無理な話ですから、選手にとってもこの遠征は楽しみなものになるはずです。」とハーボー監督は語っています。

しかしやはりそれは建前上の理由であることは誰の目から見ても明らかです。彼らがキャンプを貼る場所はIMGアカデミーという、スポーツ選手を主に抱える教育機関。高校と同レベルの施設です。そしてこのアカデミーは今年のリクルーティングで5人のトップ100選手を排出している、まさにタレントの宝庫なわけです。そこをキャンプ地に撰んだというのは偶然と言うには都合が良すぎますよね。

そして来年のナンバーワンリクルートと呼ばれている選手が現在どこでプレーしているか・・・。もう想像できますよね。お察しの通りLBのディラン・モーゼス(Dylan Moses)はIMGアカデミーの3年生となる選手です。また現在モーゼス選手の他にIMGアカデミーに所属する3選手がトップ50に挙げられています。ルール上はミシガン大はそれらのリクルートとコンタクトを取るのは禁じられています。しかしミシガン大の存在感が示されるだけでリクルート達にはそれが「メッセージ」として植え付けられることでしょう。それだけで北部にいてなかなか南部のリクルート達とふれあうことができないミシガン大にとっては大きなプラスとなるのです。

ハーボー監督の奇抜なリクルーティング方法として、リクルートの家に行って一晩泊まってくるというものがありましたが、まさに今回のフロリダ遠征はチーム全員でリクルートのいる場所へ泊まりに行くようなものなのです。

ハーボー監督に噛み付いたSEC

この遠征にSECが「待った!」をかけたわけですが、それも頷ける話です。SECのテリトリーからタレントが流出するのを防ぐための抵抗でありますが、他の見方をすればやはりどんな手段も選ばないハーボー監督を恐れているとも見えます。

SECの主張は春休みなのに選手を拘束するとは何事だ!という所なのですが、実際のところSEC(そしてその他のFBSチーム)もまたボウルゲームというイベントのために選手の冬休みを奪っていると言っても言い過ぎではないと思います。バスケットボールに至ってはアメリカの主要休暇であるサンクスギビング(感謝祭)やクリスマスブレーク、そしてスプリングブレークを股にかけて全米中で試合が行われています。故にミシガン大のケースだけをとって文句を言うのはイマイチ説得力に欠けていると言わざるを得ません。

かつてBig TenはSECのアグレッシブすぎるリクルーティングの手法に苦言を呈してきました。が、ハーボー監督の登場によりそれが逆転したのです。ハーボー監督はルールの範囲内でアグレッシブにミシガンブランドを全米中に売り込み、新しいリクルーティングのテリトリーを開拓しようとしているのです。

こうした革新的なアイデアは往々にして批判を浴びる対象になるものです。ライバル校のコーチやそのファンたちが声を荒らげハーボー監督の手法を批判するのはわからない話ではありません。しかしルール違反を侵しているわけでもないわけで、大半の批判はそういった方法を思いつかなかった、もしくは思いついていても実行できなかった人たちの「やっかみ」と見るのが自然ですね。ハーボー監督がミシガン大のヘッドコーチを託された理由は「ミシガン大を再び最強チームに復活させること」なわけですから、その為にどんな手を使ってでもいいリクルートを連れてこようとするのは当然の行動なわけです。

どちらにしてもハーボー監督対SECという新たなライバル関係は、あまりニュースがないオフシーズンにもってこいのネタを提供してくれました(笑)。ただ強いて言うなら、FBSチームの内情を知るものとしては、ミシガン大のフロリダ遠征はチームスタッフたちにしてみればとんでも無く大迷惑なイベントだろうということでしょうか。いろいろな準備のことを考えると多分みんな迷惑がっていると思いますよ。

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