ジョー・モアヘッド 〜 ペンステートの新しい風

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ジョー・モアヘッド(Joe Moorhead)氏はFCS(フットボールチャンピオンシップサブディビジョン)のフォーダム大(ニューヨーク州ブロンクス)のヘッドコーチ在任中4年間で38勝を挙げ、プレーオフに3度出場するなどし、フォーダム大をFCSで強豪チームに育て上げました。彼の手腕は大学側に長期契約を結ばせるまでに至り、2014年の時点で2022年までの契約更新を結ぶほどでした。

フォーダム大でのモアヘッド氏の活躍は当然全米中に知れ渡ることになります。フォーダム大に在任中、FCSの実質上位リーグであるFBS(フットボールボウルサブディビジョン)のとあるチームからヘッドコーチのポジションをオファーされるも、それを蹴りブロンクスに残留したこともありました。

しかし昨シーズン後、2022年まで去就が安泰であるにもかかわらず、フォーダム大を出てペンシルバニア州立大(ペンステート)のオフェンシブコーディネーターに就任することになったのです。

「私がフォーダム大にいた時から自分が他のチームに引き抜かれるのではないかという噂は幾度も立っていました。そんな時は私の選手たちには『もし私が本当にフォーダム大を去ることになれば、君たちにとってその決断が必ずしも喜ばしいものではないかもしれないが、(その決断に至った理由は)理解できるはずだ』と話していたのです。」とはモアヘッド氏。

フォーダム大の卒業生でもあるモアヘッド氏にとって母校でヘッドコーチとしてチームを率いることができるのはある意味大きな夢であったに違いありません。しかし、そんな安寧を捨て今回大御所のペンステートでの重要なポジションに就いたのです。

ペンステートのオフェンスはヘッドコーチ、ジェームス・フランクリン( James Franklin)監督が就任以後2年間低迷してきました。とにかく攻撃陣にパンチ力がないのです。確かに近年受けたNCAAの制裁によりスカラシップ選手の数が少ないという事実はあるのですが、何よりもオフェンスシステムがことごとく崩壊し、フランクリン監督が継承した腕のある選手たちを活かすことすらできなかったのです。

そしてペンステートが苦戦するればするほどモアヘッド氏の株が上がっていきました。特にペンステートのアシスタントコーチ、テリー・スミス氏とディフェンシブコーディネーターのブレント・プライ氏と親交が深かったことが鍵となりモアヘッド氏は空きが出たペンステートのオフェンシブコーディネーターのポジションの面接をフランクリン監督と行いました。そしてまだ正式にオファーを受ける前からモアヘッド氏はペンステートでのチャンスが非常に魅力であることを感じるのです。

「モアヘッド氏がフォーダム大で敷いていたオフェンスと、我々ペンステートが目指すオフェンスは非常にマッチしていました。さらに彼が我々のコーディネーターに就任することは彼の今後にも良いものになると確信したのです。」とフランクリン監督はモアヘッド氏について語っています。

未だ再建中のペンステートにとってモアヘッド氏が合流することによって得られることは、単にシステムのオーバーホールを敢行するためだけではありません。過去2年間残念な結果に終わったBig Tenカンファレンス内の覇権争いにおいて、オハイオ州立大ミシガン州立大ミシガン大などの強敵と渡り合うためでもあります。

そしてモアヘッド氏が導入するオフェンスシステムは、フランクリン監督のこれまでの「残念なシーズン」を挽回するチャンスを与えてくれるはずです。過去、システムのせいで成果は出ませんでしたが、フランクリン監督はチームの選手個人たちの力は確実に上がってきていると言っていますから、モアヘッド氏のシステムとペンステートの生え抜きの選手たちのタレントはまさに「完璧なコンビネーション」(フランクリン監督)だといえます。

それは選手たちも感じていることのようです。

「(モアヘッド氏が加入して)選手たちはみんなフレッシュな気持ちで新たなスタートを切るという感覚を持っています。モアヘッドコーチは『過ぎてしまった過去は忘れなさい。前だけを向いて歩いていくということ。これがこれから我々が覚えておかなければいけないビジョンだ。』と選手たちに言い聞かせています。そして我々もその言葉を信じ、そしてモアヘッドコーチのコーチングを信じているのです。」と3年生OLアンドリュー・ネルソン(Andrew Nelson)は語っています。

オフェンスシステムに目を向けてみると、ペンステートの攻撃はおそらく劇的に変化することでしょう。モアヘッド氏のオフェンスはよりアップテンポでノーハドルを多用します。これだけとってもこれまでのペンステートとはまったく色の違うオフェンスになります。以前のペンステートは古典的でオーソドックスなオフェンスを使用してきた結果、過去2年間において1プレーの平均距離ではBig Tenで12チーム中11位と散々な結果を残してしまっていました。

談笑するヘッドコーチ、フランクリン監督(左)とモアヘッド氏(右)

過去在籍したアクロン大コネチカット大で養われフォーダム大で開花した、モアヘッド氏が駆使するオフェンスはそのスピードでゲームの流れをコントロールし、相手ディフェンスに対応するタイミングを与えさせません。 そんな近年のカレッジフットボールのトレンドでもあるオフェンスをペンステートに導入するわけです。カレッジフットボールは常に進化しており、それに対応できなければ置いていかれるのが現状です。

新オフェンスの青写真はスプリングゲームでも見られましたが、評価は上々でした。それは元ヘッドコーチで現ヒューストンテキサンズのビル・オブライエン(Bill O’Brien)氏が去った2013年シーズン以来のパンチ力をもったものでした。RBマーク・アレン(Mark Allen)は「これが僕が求めていたオフェンスです」とお気に入りのようで、また「このオフェンスなら相手ディフェンスが常に後手にならざるを得ません」と評価するのは2年生のQBトレース・マクソーリー(Trace McSorley)。おそらく来季の先発QBに任命されることとなるマクソーリーも新オフェンスにいい感触を得ているようです。

選手に期待感を持たせることができるのはモアヘッド氏の十八番であり、ペンステートオフェンスの青写真は選手層の厚さと豊富な経験力が備わっていることを感じさせてくれました。これはここ数年チームに欠如していたことでもあります。

フィールド上ではプレー一つ一つを選手に叩き込むことに全力を注ぎますが、フィールド外ではモアヘッド氏は選手たちに「王者の心得」を教え込むことを主にしています。ミーティングでも、筋トレでも、どんな時でも「チャンピオンのように」こなすことを選手に要求してきました。このような精神的な面でもモアヘッド氏の影響が現れてきているのです。

新しいオフェンスシステム、新たな期待感、そして王者としての心得。モアヘッド氏がペンステートに注ぎ込む新たな風がこれまで残念なシーズンしか送れなかった選手たちに一筋の光を与えているのでした。

「これまで選手たちを見てきて、今までの過去にとらわれている選手はこのチームにはいません。我々もそんなことはすでに忘れてしまっているほどです。これからの未来がどうなるかを知るのに一番の方法は、自らがそれを作り上げてしまうことです。我々は今後とも常に前進することを止めず、時が来れば新たなシステムを導入し、新たなメンタリティーで目標に向かって突き進みます。過去を振り返っている時間などどこにもないのです。」とモアヘッド氏は述べました。

かつてのような強いペンステートが戻ってくるのか。シーズン開幕まで楽しみです。

【参考】USA TODAY